あんな親は死んだほうがいい。
そう言おうとした瞬間、ボクは吹き飛ばされていた。
「んぐぼっがっ!?」
ボクはマジックではなく物理で殴り飛ばしていた。
それにはテオも油断していたのか、防御が間に合わなかったらしい。
ボクはテオの背中から吹っ飛んで、地面を転がった。
幸い、エルフのSTRはそこまで高くないので重症にはならなかったが、ちょっとHPが減ったじゃねーか!
「使えねーなこのゴミ! ちゃんとボクを守れよ!」
テオがのっそのっそと、ダルそうな足取りでボクを起こしに来る。
まさか、命に別状がないからってわざと助けなかったわけじゃ……ないよな?
「お父さんを、悪く言うな!」
エリィの怒声がボクの鼓膜を揺らした。
魔力が蜂起し、彼女の髪が揺れていた。
ボクは全身を突風に叩かれたような圧を感じた。。
「お父さん、は……」
だがそれはだんだんと弱まっていく。
エリィの言葉もそれっきりで、結局また、とぼとぼと歩きはじめてしまう。
(ふぅ、セーフ。けど、なんなんだよさっきから)
そう不満を抱えながら、ボクは彼女を追った。
エリィがふと「いつもはね、」と、ぽつぽつ言葉を紡ぎはじめる。
「いつものお父さんはもっと優しいの。ううん、厳しいことはは厳しいんだけど、でもそれは全部あたしのためっていうか。怒るときだって、どうしていけないのかちゃんと説明してくれるし」
そう話すエリィはどこか誇らし気な表情だ。
しかし、「でも」と暗い表情に戻ってしまう。
「お父さんは、あんたたち人間については危険だっていうばかりで。そのクセ、人間がどんなものなのか聞いてもはぐらかして、ほとんど教えてくれない」
いや、そりゃそうなのでは?
人間の話=さっきの奴隷商団なるものの話、なのだとしたら。
子どもに性奴隷やらレイプやらの話をしたがる親はいないだろう。
知らないままでいられたなら、それが一番幸せ。大人がそう考えても、仕方のないことではなかろうか。
事実、エルフの村で過ごしているかぎり安全なのだろう。
ボクのように自分がなにもしてなくても、とばっちりを食らうこともあるが、そんなのは稀だろう。
「村の、ほかの子たちはみんなそれで納得してる。『はーい』って言って村から出てこない。それがあたしにはわからない」
「……」
「なんで? なんでそんな簡単に納得出来るの? なんでそんな風に理由なしに受け入れられるの? 自分で見て、聞いて、知って、理解することなしにそんなことができるなんて、絶対おかしい」
エリィはどこか怒っているかのように言う。
そして「だから、あたしは思ったの」と続けた。
「みんなは弱い。心も力も。だけどあたしはちがう。あたしは勇敢で強いの。だから……」
と、そこで唐突にエリィは言葉を止めた。
まるでなにかに気づいたかのように。
「……そうよ。そのとおりよ!」
「ぇ、と?」
目から鱗が落ちたような、あるいは憑きものが落ちたようにすっきりした表情。
いつしかエリィは視線を上げていた。
「あたしは強いのよ……強いのよ! だったらなんでこんな風に、理由無しに、お父さんの言うとおりに秘密基地へ向かってるのよ?」
その目には、すでに迷いはなかった。
エリィはちらりとこちらを見てから、そっぽを向いた。
え、なに?
と思っていると、彼女はぼそぼそと言った。
「気づけたのは、まぁ、その、ほんの1ミリくらいはあんたのおかげかもしれなくもないわ。フンっ」
もしかしなくてもこれ、感謝してる?
つまり、まさかこれがウワサに聞くデレ期か!?
うれしい、うれしいのだが……ボクは全然話についていけていなかった。
戸惑っていると、エリィはパシンと自身の頬を叩き「よし!」と踵を返した。
「そうと決まれば行動あるのみ! 今からお父さんのとこいくわよ!」
そんな台詞とともにエリィは駆けはじめる。
ヤバい。なんだか面倒なことになってる気がする!?
エリィがどんな考えでそんな結論に至ったのかは知らないが、少なくとも判断が間違っている。
短絡的な行動だとしか言いようがない。
あんなにも”勇敢”な父親の姿を見たにも関わらず、それを無為に返すような行動を取るなんて……引き返すなんて選択肢だけは、ありえないだろう。
というかボクが、そんな危険なところに行きたくない!
しかし、抵抗することもボクには難しかった。
結局、そのままついていくことになってしまった。
そして……。
* * *
エルフの村へと辿り着いたボクたちが見たのは――人間の集団に犯されるエルフの女たちだった。
「なに、これ」
エリィがポツリと呟いた。
「いやぁああああ!」
「ひぐぅぎいぁああああいいいぃっ!」
「グボォっ!? ゲボボぉぇあ……」
人間の集団に犯され、エルフの女たちが悲鳴を上げていた。
ボクはその光景に――陵辱現場に、見惚れていた。
だれかのセックスを生で見たことなんてない。
ネットの動画でだけだ。
しかし、そんなものはこの
ボクの常識は一瞬でぶっ壊されていた。
あまりにも圧倒的で、あまりにも生々しくて……。
ボクはしばし、思考が停止していた。
あまりにも膨大なピンク色の情報の波に翻弄される。
勝手に次々と目移りしてしまい、酔ってしまいそうだ。
だが間違いないことがひとつ。
ここはボクにとっての……。
――楽園だ。
エリィはまだなにが起きているのかわからないらしい。
しかし、なにかイヤなことが起きていることは理解しているのか震えていた。
と、そのとき。
「キャァアアアっ! い、イヤっっ! 離してっ! お願いっ!」
ひときわ甲高い悲鳴が響いた。