※この作品はR-18です。

テイマー職は奴隷商!?   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第31話『近親相姦するエルフ』

 この世界がまだゲームだったころ、イベントに出てきたキャラクター。

 それが生きていのが、100年前だって?

 

「ほぉ新人、お前詳しいな。俺も大昔に聞いた気がせんでもないが、ぼやっとしか覚えとらん」

 

 新人の言葉に陰毛髪が感心する。

 ボクも同じ気持ちだった。情報提供助かる。

 

「あ、いえ、自分はそういう歴史の話好きで、書物読みあさってたことあるだけッスよ。って、そんなことよりもッスよ! もし、あのエルフの姉がエルフェイだとしたら……」

 

 新人たちがリョウへと視線を向けた。ボクもつられてそちらを見る。

 彼はエリィの父に向って、問うていた。

 

「オメェ、名前はァ?」

 

「……”アーサルト”だ」

 

「くは……くはははッ! お前があの(・・)アーサルトかァ! 100年前に活躍し世界を震え上がらせたとかいう、『範囲殲滅魔法』の担い手かァ!」

 

 ボクはその名前も知っていた。

 姉であるエルフェイとともにイベントに出てきていたからだ。

 

「くははッ! まさか死んでなかったとはなァ。こりゃァ、いい拾いモンをしたもんだ」

 

 周囲の奴隷商からも感嘆の声が漏れていた。

 珍しいものを見た、と。

 

「いやはや、ほんとにおもしれェな。くはははッ! 神話にゃ近親相姦が多い、英雄色を好む、なんてェのはよくある話だが……くははッ」

 

「っ……」

 

「それに、過去の英雄も現代においてはただの人ってェことだァな。弱ェ弱ェ、100年前で止まってやがる。悪いが今の人間サマの敵じゃねェよ」

 

 なんてことだ。これは警戒しないといけない。

 もしかしたら、ボクのマジックやスキルも通じないことがあるかも。

 

「あいにく、そんな旧式の攻撃魔法なんざ通用しねェよ。わざわざ人族が自ら魔法の詠唱をして、発動するなんざもってのほか。戦闘はただ指先ひとつ――引き金を引けば、それで済むんだからよォ」

 

 手に持った魔銃をちらつかせ、リョウは言う。

 彼を含め、奴隷商人みんなの腰にホルスターがあった。

 

 どおりでエリィの父――アーサルトが現れても、平気だったわけだ。

 文字通り、戦力がちがった。

 

「つっても、ここまで威力が高いのはオレらにとっても貴重だがよォ」

 

 たしかに、言われてみると。

 リョウや巨漢の男、少年がもつ魔銃と、それ以外の連中が持つ魔銃では細工の精密さに差異があった。

 

「しっかし、くははッ。100年もの間、姿を消していったいなにをしてたのかと思えば、ただセックスしてただけかよォ。お高くとまってやがってるけどよォ、所詮はエルフも下半身の生きものってか!」

 

 リョウは周囲へ問いかけるように叫ぶ。

 

「えェ、オイ! なァエルフども! おまえらも、こんな同族嫌いじゃねェのか? だっておまえらときたら、なんちゃって潔癖ヤロウの集団だもんなァ?」

 

 今、アーサルトに突き刺さっている視線は、奴隷商人のものだけではない。

 同族からの鋭い視線もまた、彼に向けられていた。

 

『裏切り者め』

 

『汚らわしい』

 

『所詮は過去、人間と手を組んでいたような者』

 

『結局は戦闘好き、人間のような野蛮人』

 

 アーサルトに投げられたのはそんな罵倒、ではなかった。

 

 

「――アーサルトはワタシたちの大切な仲間です!」

 

 

 だれかが言った。

 その声にみんなが続いた。

 

「そうだ! 彼はたしかに道を誤った。だが、それをきちんと清算して余るほどのことを、彼は成し遂げた」

 

「彼の償いはすでに済んでいる!」

 

「アーサルトさん! わたしたちはみんな、あなたの味方ですよ!」

 

「そうだ、そのとおりだ」

 

「ここにいるやつで、あんたに助けられたことのないやつなんていない!」

 

 エルフたちの声援がアーサルトへと届く。

 彼らは「諦めるな!」と叫んでいた。

 

「ふゥん。だが、いいのかァ? コイツァ今、オマエたちは見捨てて、自分の姪だけを救おうとしてるんだぜ。そんなヤツァ、死んだほうが……」

 

「それはわたしたちを助けることが不可能だとわかったからだ! 彼は英雄としてではなく、ひとりの人族として、自身の大切な人を願った。それのなにがいけない! どこがおかしいと言うんだ!?」

 

「チッ、つまんねェヤツらだなァ」

 

 リョウが呟いた。

 ボクはそれらの話を聞き終え、あまりにも残酷な可能性に気づいてしまった。

 

 アーサルトは姉と子を作ったという。

 しかし、話を聞くにエリィとエレナの母親は同じではない。

 

 ならば今、エリィの母親はどうなっているんだ?

 そもそも……生きているのか?

 

 そんな疑問に答えるかのように、エルフのひとりが叫んでいた。

 

「アーサルトの妻がエルフェイを殺してしまったのだって、事故みたいなものだった! エルフェイが抵抗せずにそれを受け入れたのだって! そして、後悔した彼女が自ら命を断ったことも――」

 

「おいバカっ!?」

 

 残酷以上に、最悪の事実だった。

 これをエリィはどんな気持ちで聞いているのだろう?

 

「なんだァ、アーサルトよォ! テメェ、ただ近親相姦するだけじゃ飽き足らず、不倫だったのかよ! それで姉も妻も殺しちまってるとか……くはははァ! マジで救えねェ! ただのゲスじゃねェかァ!」

 

 リョウはそう挑発した。

 しかし、エルフたちのアーサルトを擁護する空気は変わらなかった。

 

 

 ――ただ、エリィだけを除いて。

 

 

 彼女は……いや、彼女だけが、知らなかったのだろう。

 推測でしかないが、アーサルトが本当に愛したのは姉のほうだったのではなかろうか?

 

 ゲーム時代の設定では、戦場では鬼神のごとき働きをする彼女も、平時ではとても”おしとやか”だった。

 そのギャップが人気だった。

 

 だとしたら、今までずっとエリィが「おしとやかになれ」と言われていたのは。

 エレナと比べられることが多かったのは。

 

 アーサルトの気持ちもわからないではない。

 本当に愛した人との娘は姪扱いで、2番目との女との子どもはじつの娘扱いなのだ。

 

 だが、それはあまりにも……。

 点と点とが繋がって線になっていく。

 

 エリィの瞳に、暗い色が宿っていた――。

 

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