※この作品はR-18です。

テイマー職は奴隷商!?   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第40話『マジック<契約>』

「見せてもらおうじゃないか。おぬしの<テイム>を!」

 

 ボクは外堀を埋められていた。

 いや、逃げ道を塞がれた、といったほうが正確かもしれない。

 

「それとこれはれっきとした商談じゃからのう。マジック<契約>を使わせてもらおうぞぉ? 契約を破ったときの罰は……”凄惨な死”とでもしておこうかのぅ。苦しみ、泣き叫び、絶望し、二度とこの世に誕生したいなどとは思えぬようにしてやろぅ。……おい!」

 

 条件を述べ終えた団長は、とひとりの奴隷商人を呼び寄せた。

 

 恐らく彼が、職業『調停官』を所有しているのだろう。

 マジック<契約>が使える人材なのだろう。

 

「では契約しようぞ。……っと、そうじゃそうじゃ。いつまでも怯えて奴隷化に挑戦さぬ、などというのは”興”醒めもいい所じゃからのう。制限時間も設けておこう」

 

「……イヤ、だ」

 

「うぬ? なにか言ったかのう? わしは耳が遠くてのぅ? 聞こえんかったわい」

 

「いっ、イヤだぁあああーっ!」

 

 さっきまでの全能感はウソだったみたいに消えていた。

 ボクは全力でこの場から逃げ出そうとし……。

 

 ――バンッ!

 

 破裂音が響き、進行先の地面が吹き飛んだ。

 ボクは腰を抜かして、みっともなく尻を着く。

 

「ありゃ? 撃ち殺すつもりだったのに、びっくりするほど足が遅くて狙いがズレちゃった! うう~最悪だ~、マイナス10点!」

 

 撃ったのは、アーサルトの足も吹き飛ばしていた少年だった。

 あのガキ、ゲーム感覚で人を殺そうと……。

 

 ほかの団員がぐるりとボクを取り囲み、四方八方から銃口を向けてきていた。

 「もう逃げんじゃねえぞ」と暗に言っていた。

 

「き、ひ、ひぃっ……」

 

 どうしよう、どうしたら、どうすれば!?

 泣き言が止めどなく溢れてきた。

 

「かぁっはっは、どうしたぁ? 急にもよおしでもしたかぁ? じゃが、まだ商談の途中じゃからのぅ?」

 

 恐ろしい笑みを浮かべ、ゲンブが語りかけてくる。

 ボクはなんて甘かったんだ。

 

「おいリョウ、それをあんちゃんに渡してやれぃ」

 

「あいよォ。……くははッ」

 

 笑いながら、リョウはこちらへとエリィを突き飛ばした。

 座り込んだボクに覆い被さるように、彼女が倒れ込んでくる。

 

 ボクの腹の脂肪がクッションになって、ぼよんっと跳ねた。

 エリィとボクの目が合った。

 

「ね、ねぇ。あんた、あたしを助けなさいよ。お父さんを助けなさいよ。あたし、あんたを助けてあげたじゃない? お礼をするのは当然でしょ? あんた、あいつらの仲間なんでしょ? 同じ人間なんでしょ? どうにか説得しなさいよぉっ!」

 

 その理不尽な言葉にボクは怒りを……覚えていなかった。

 代わりにボクの中にあったのは性的興奮だった。

 

(そうだ、今のエリィは……ボクに縋るしかないんだ)

 

 アソコがムクムクと膨らみはじめる。

 今のボクは裸だ。

 

 むき出しのイチモツに触れる、エリィのやわらかな太ももの感触。

 胸に添えられた体温の高い手のひら。

 

 恐怖で歪んだ表情と、なによりボクに縋るまなざし。

 ここさえ乗り越えれば……これが、すべて。

 

「ごくりっ」

 

 のどが鳴った。性欲で恐怖が紛れていく。

 同時にボクはあることに気がついた。

 

「……きひっ」

 

 今のボクとエリィは一心同体なのだ。

 運命共同体なのだ。

 

 ボクが失敗すれば、彼女もまたあいつらの奴隷になる。

 立場はまったく同じだ。

 

 頭を巡るのはふたつの言葉。

 『まだ商談は終わってない』『お礼をするのは当然』。

 

 スキル<交渉術>の効果はいまだ健在。

 いける、とボクは考察する。

 

 ここで彼女を商談に巻き込むのだ。

 そうすれば――彼女に対しても<交渉術>が働かせられる!

 

 勝機はまだ、ボクの手の中にあった。

 

「きひっ。……わかった。その条件でいい。もし失敗すれば、ボクはお前たちの奴隷となろう」

 

「ほぅ、認めたのぅ? では、宣言してもらおうか!」

 

「契約書の作成、完了しました。では、発動します――マジック<契約>!」

 

 職業『調停官』の男が、契約内容の記載された羊皮紙を掲げた。

 マジック発動の宣言とともに、魔力の光がほとばしる。

 

「『合意』するぞぃ」

 

「『合意』する」

 

 ゲンブとボクの言葉に、魔力が反応する。

 契約書に集っていた魔力が、触手のようにエフェクトを伸ばしてボクたちへとまとわりついた。

 

 やがて、体内へと吸い込まれるようにして消え……。

 契約完了だ。

 

「では、さっそく<テイム>を使ぅてもら……」

 

「――その前にひとつ、いいですか?」

 

「なんじゃ? <契約>の取り消しは今さら利かぬぞ? わしぁ同意するつもりはない」

 

「いえ、そうではありません。ひとつ、契約内容について確認したいことがあるだけです」

 

 ボクは痛いほどの心臓の高鳴りに耐えながら、言葉を発する。

 

「契約内容に『ボクはひとりでテイムを実行する』とありますが、それはだれもボクのテイムに手助けやアドバイスをできない、ということですよね?」

 

「そうなるのう。じゃから、あんちゃんひとりきりでさっさと<テイム>を唱えぃ。そして、失敗して奴隷に堕ちるがよかろぅ。わしらもあまりヒマでは……」

 

「いいえ。ボクが言いたいのは、つまり……裏を返せばその条件っては――」

 

 

「――だれもボクのテイムを、ジャマをできない」

 

 

「と、いうことですよね? だって手を出されたら、それって『ひとり』じゃなくなりますから」

 

「ほぅ、なるほどのぅ。遅延行為は契約違反とみなすが……逆にいえば、タイムアップまでは、わしらがあんちゃんに手出しすることもできぬ、か。なかなか考えたのぅ、そりゃ盲点じゃったわい」

 

 ――言質は取った。

 

 これでひとつめの条件はクリア。

 この勝負――勝てる!

 




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