※この作品はR-18です。

テイマー職は奴隷商!?   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第43話『ヒロイン、ゲットだぜ!』

 

「あたし、あなたに協力するわ」

 

「エリィ!?」

 

 アーサルトがエリィの発言に声を上げる。

 ボクはもう笑いを堪えるのが大変だ。

 

 ありがとう、アーサルト。

 お前がバカなおかげで、より容易くエリィの協力を漕ぎつけることができたよ。

 

「お父さん、さっきは言うこと聞かなくてごめんなさい。でも、でも今度こそ助けるから! 絶対にあたしが助けてあげるから!」

 

「エリィ、お前は……」

 

「お父さん、これ以上は口を開かないほうがいいですよ。お身体に障りますから」

 

 ボクはそう、アーサルトを牽制した。

 にっこりとまるで、本当に彼の安全を願っているかのような笑みで。

 

「エリィ、決めたんだね。お父さんを助けるためにがんばるって」

 

 分かり切っていることを、あえてもう一度問う。

 徹底的にエリィの逃げ道を奪う。

 

「うん、大丈夫。あたしも、あんたのこと信じるって決めたから」

 

 腹を括って、自信に満ちた表情で、目には希望の光を宿して。

 ほぉんと、バカだよねぇえええ!

 

「じゃあ、いくよ。抵抗しないで、心を安らかに、受け入れるんだ」

 

 ボクはエリィを抱きしめた体勢のままに唱える。

 彼女の耳元で、まるで囁くかのように。

 

 

「――マジック<テイム>」

 

 

 ボクの手から魔力の光(エフェクト)が溢れ出した。

 エリィの周囲を渦巻き、徐々に光の牢獄を形成していく。

 

「ぅ……ぃぎっ……、ぅぅぐ……っ!」

 

 エリィが苦悶の声を漏らした。

 もしかすると本能が、他者への隷属に拒絶反応を起こしているのかもしれない。

 

 生物としてはじつに正しい。

 だが、それを彼女自身が捻じ曲げる。

 

「ぅぐ……う、ん! ぎぃ……っ! まけ、る……もんか!」

 

「エリィ、がんばるんだ! キミなら必ず、お父さんを救えるよ!」

 

 ボクは正直、感心していた。

 思春期くらいのバカな子どもってスゴイな。

 

 思い込みだけで、自ら地獄を進むことができるのだから。

 よろこんで奴隷になろうとしているのだから。

 

 まったく、ボクにとってありがたすぎる!

 やがて、光は急速に収束をはじめた。

 

「ぅぎいいいいいいいいい!?」

 

「あいだだだぁあああ!? ちょっ、このクソガキ、手ぇっ!?」

 

 エリィがボクに縋りつくかのように手を握りしめた。

 というか、腹の脂肪を掴んでいた。

 

(ぎゃぁあああ!? 痛い痛い痛い!? けど、途中でやめるわけには!?)

 

 ちぎれそうなほどの激痛。

 余裕だと思ったのに、なんでこんなところで!?

 

 ボクがいよいよ耐え切れなくなって、エリィを殴り飛ばそうとした、その瞬間。

 ガクンと彼女の身体から力が抜けた。

 

 ボクの腹の肉が解放される。

 まばゆい光が弾け散り、そして……エリィの柔肌にはっきりと奴隷紋が刻まれた。

 

 ――成功、だ。

 

「えへへ……。あたしがんばったよ。これでお父さんも、褒めてくれるかな……」

 

 沸々と、ボクも遅れて達成感がやってくる。

 一時は奴隷商人たちの殺されかけていた。

 

 けれど、今はもうちがう。

 確率の壁を超え、ボクは生き残った。

 

 じつはずっと不安だった。

 スキル<交渉術>で押し殺していたが、マジック<テイム>の成功率は100パーセントではないのだから。

 

 しかし、ここは現実だ。

 ならば使えると思った……ゲーム時代にはなかった、いわゆるシステム外スキル。

 

 たとえるなら、これまでボクが行っていたテイムは『ボール(・・・)を投げつける』だ。

 そして、今回行ったのは『仲間になりたそうな目で見ている』。

 そのハイブリッド。

 

 周囲でざわめきが起こりはじめていた。

 やがて、それは悲鳴や喝采に近いものへとなっていく。

 

「かぁぁぁあああはっはっはっはっはっはぁ!」

 

 団長が大笑いし……。

 そして、その顔から表情を消した。

 

「こいつはぁ、ってくれよったのぅあんちゃんやぁ?」

 

 さっきまでは遊びだった。

 しかし、今は明確に敵意を感じる。これまでとは比べものにならない威圧感。

 

「約束じゃけぇ、あんちゃんにアーサルトをくれてやろう。もちろん、あとから力ずくで奪うようなこともするつもりもないけぇのぅ。<契約>はまだ有効じゃからなぁ」

 

「じゃあ……」

 

「とはいえ、このまま帰すんじゃあ、わしらも納得できんのぅ」

 

 凄惨な笑みを浮かべ、なにかの合図化のようにゆっくりと片手を上げた。

 ボクはイヤな予感に襲われた。

 

 もしかしてボクは勝つことに意識が行きすぎて、”勝ってしまった”あとを考えられていなかったのでは?

 たとえば、もし、周囲の森に……外部協力者がいたとしたら!?

 

「ま、まだです」

 

「うぬ? なんの話かのぅ? わしらの勝負はもう、決着がついたと思うがぁ?」

 

 ボクは頭を必死に働かせる。

 いつまでこの<交渉術>による思考へのプラス補正が続くかもわからない。

 

 時間はない。

 攻撃手段として考えられるのは、やはり魔銃か? それも狙撃のような?

 

 いや、待て。

 そもそもゲンブから合図を送ってボクへ危害を加えさせれば、それは契約違反になるのでは?

 

 つまり、攻撃以外の手段?

 たとえば契約そのものを無に帰すような……。

 

(まさか、<契約>を破棄するような……マジックを無効化するような魔導具が存在するのか!?)

 

 ちらりと見れば、職業『調停官』の奴隷商人がひっそりと移動している。

 ボクは自分の思考が正しかったことを確信した。

 

 今思えばゲンブは、アーサルトという超高級品を賭けることに対して不用意過ぎた。

 もとからリスクがゼロだったのだとすれば、納得がいく。

 

「さて、ここいらでもう一度だけ聞いておこうか。あんちゃんは……」

 

 どこかわざとらしくゲンブが問うた。

 

 

「――あんちゃんは、ウチへ入団するっちゅうことでいいんじゃよなぁ?」

 




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