※この作品はR-18です。

もしも『あなた』が『ろうきん』の雑貨屋ミツハのお客さん第1号だったら?   作:サリオン

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サブタイトル変更。


プロローグ
第1話 ミツハ、『あなた』と出会う


 

「はぁ……お客さん来なさすぎ……あんなにビラまいたのになんでかな……」

 

 異世界で雑貨屋を開店したものの、開店初日から三日間、商品の購入はおろか、店内に足を踏み入れた者すら一人もおらず、ミツハは早くも老後に備えて金貨8万枚貯めることを諦めかけていた。

 

「コレットちゃんの村とかだったら、よそ者に警戒心があるのが普通だからこんなこともあってもおかしくないけど、ここは王都。この国の規模がどのくらいかまだよくわかってないけど、王都ならもっと新しいお店に興味をもってくれる人がいてもいいよね……」

 

 うなだれて、ぼやくミツハ。

 

 王都とはいえ、新しいお店はそんなにほいほいとできないし、たいがい贔屓にしてるお店で購入するものだし、この立地は表通りから少し離れた閑静なところで、王都の外の商人や旅人が通ることもなく、ミツハも外の人間をお客としてターゲットにしてなかった。

 

 それに……屋根にソーラーパネルなんて、この世界の人々には得体の知れないものがあり、『雑貨屋』などというものもこの世界ではあまり知られてなかった。

 

『百円均一のお店』がない時代に『ダイ●ー』の看板を掲げるようなものである……

 

 恐竜のお店? などと首を傾げられるのがオチだ。

 

 つまり、『何を売ってる店なのか分からない』から、だれも足を踏み入れないのである。

 

 

 そんな閑古鳥の鳴く、この世界には何百年も早すぎるお店に──────

 

 

 チリリン

 

 

 鳴り響く鈴の音。

 

 

「…………え?」

 

 

 ぽかんとだらしくなく口を開いたミツハ。

 

 ミツハの真正面の扉には、その鈴の音にギョッと驚いた男性──────『あなた』がいた。

 

 そう。

 

『あなた』だ。

 

 ミツハと違って『異世界転生』したのかもしれないし、ミツハのように『異世界転移』したのかもしれないし、『スマホ/タブレット/パソコン』から『異世界憑依』したのかもしれないし、『あなた』というのは二人称ではなく個人名かもしれない。

 

 とにかく、『あなた』は、山野光波──────ミツハに出会ったのだった。

 

 

 ミツハは、正面のガラスに映り込んだ口を開けた少し間抜けな自身の顔を目にすると、口を閉じ、きりりと待機モードから迎撃モードにシフトする。

 

(……って、別に入ってきたお兄さんとドンパチするわけじゃないんだけどねっ!! でも……ついに……お客さん第1号キタ────(°∀°)!! 開店したものの人っ子一人入って来なくて、若干、諦めてたんだよね……うう…………できれば、わたしと同じくらいの年齢の、お貴族様や大商人で働いている三人くらいの女の子が良かったけど……贅沢は敵だ!! この際、ちょっと冴えない感じのお兄さんでもウェルカムウェルカムッ!! 色々とサービスしちゃうよっ!! 何か買ってもらうまで、スッポンのごとく吸い付いて離さないよっ!! ぐえっへっへ……)

 

 

 などという内心をおくびにもださずに、ミツハは天使のような笑みを浮かべると、

 

 

「いらっしゃいませ♪ Pia♥雑貨屋ミツハへようこそ♪」

 

 

 右手の手のひらで店内を指し示して、挨拶したのである。

 

 

(って、好感度上げて店員とチョメチョメささせる気かっ!! 18禁かっ!! ……店員のわたしとチョメチョメさせる気ですか……この小説は18禁ですか……そうですか……)

 

 などと自分の世界でブツブツと呟いてセルフツッコミに忙しいミツハに『あなた』は、若干、ひきながらも、「雑貨屋……?」と疑問を口にする。

 

 庶民の識字率は低く、『雑貨屋』という概念もこの世界には浸透していないのである。

 

『あなた』の言葉にミツハは、思考の海から引き揚げられ、このお店の紹介をする。

 

「はい♪ 夕食のおかずからミサイルまで幅広くカバーする豊富な品揃えが売りのお店です♪ 東方から取り寄せた珍しいものもありますので、ごゆっくり店内を見て回って下さいませ♪」

 

 そういうと、ミツハは買い物カゴを渡したあと、「後はご自由に〜」とにっこり笑みを浮かべると定位置に座り、たまにチラリと、『あなた』を盗み見していたぐらいだった。

 

 店内には監視カメラが無数にあり、ミツハから『あなた』の様子がモニターから手に取るようにわかるのだが、やっぱり、異世界での初のお客さんは、生で見たい。

 

(普通、雑貨屋というものは、日本であっても、入店したからといって、必ずしも購入してくれるとは限らない…… しかし、ここには、日本から取り寄せたこの世界にはない品物があるから、きっとその物珍しさ、画期的な機能に気づいてくれるだろうから、入ってくれればこっちのもんだよ!)

 

 ミツハとしては、店内に一歩でも足を踏み入れれば、後は勝手に購入してくれると高をくくっていた。

 

 人はそれを、取らぬ狸の皮算用という……

 

 

『あなた』 が店内を見て回った後、ミツハは買い物カゴが空なのに気づき、

 

「 気になった商品はおありでしたか? 」

 

 念のため、聞くことにした。

 

『あなた』の「買いたいものがなかった」という返答にミツハは、呆然とする。

 

「……え? なかった……? 」

 

 なんで? 

 どうして? 

 

 ぐにゃあ〜〜〜〜と、某麻雀漫画のように景色が歪むミツハ。

 

 

(そ、そうだ……! ここにあるのは、ほとんどこの世界にはない革新的なもの! つまり、一見しただけじゃ、どんな用途なのか分からないってことじゃないッ! く……山のミツハ、一生の不覚ッ!! せっかくのお客様第1号をここで返すわけには行かないっ! 考えろ、考えるんだ、ミツハ! って、どこの冒険野郎だッ!)

 

 

「おーいおーい」と『あなた』がミツハの目の前に手を振っていると……

 

 

 ミツハは意識を取り戻し、ペコリと頭を下げると、

 

 

「はっ……! これは、失礼しました。 店内の商品は、この国では珍しいものなので、わたしが店内を案内致します。 また、栄えある来店第1号特典として、お客様には、特別に購入品の使い方を実際に用いてわたしがお教え致します♪ 今しかないチャンスですよ!? やるなら……? 今でしょッ!」

 

 グッと拳を握りしめて、力説する。

 

(通常ない、特別のサービスをつければ、利用したくなるのがお客様の心理ってもんよ! さらに今しかない、と煽り、考える時間を奪う。 クックック……これは勝った!)

 

 すでに勝った? 気でいるミツハ。

 

 少し頭が残念な美少女である。

 

 

『あなた』は、ミツハの怒涛の勢いにのまれて、コクコクと頷く。

 

『あなた』は、意志薄弱の流され系の主人公である。

 なんなら前髪が長くて目が隠れている。

 

 え? 

 

 ……ないって……? 

 

 …………ミツハの精神と一部融合した『大いなる意思』の欠片が『あなた』にも融合して、色々なもの(体力とか若さとか精力とか髪の毛……など)取り戻したかもしれないし、そうではないかもしれない……

 

 

「かしこまりました…… と、その前に…… わたくし、ミツハ、と申します。 当店のオーナー兼店主を務めております。以後お見知りおきを♪」

 

 と、貴族でもない、そんじょそこらのモブの『あなた』に、可愛らしいカーテシーを振る舞うミツハ。

 

 そんな『あなた』とミツハは、この後、まさか……あのような関係に……というのは、無粋だ。

 

 全ては、『あなた』の御心のままに……

 

 

 

(実年齢は18才なんだけど日本では14、15才に見られてて、この世界だと東洋系はさらに幼く見られて、11、12才って思われちゃうんだよね。 だから、このお客さんには、わたしのことは、ただの従業員って思われないようにしっかり立場を示す必要があるわけ)

 

 などとひとりごちるミツハは、『あなた』の目を見つめて、にっこりと微笑んで、

 

「もしよろしければ、お客様のお名前を教えていただませんか? 」

 

 個人情報……げふんげふん……今後とも長い付き合いになるかもしれない常連さん候補の名前を尋ねる。

 

 

『あなた』は、 突然、可愛らしい美少女の店員さんに名前をきかれ、しどろもどろになりながらも、名前を答える。

 

「………………様ですね…… いいお名前です♪ 今後ともご贔屓にお願いしますね♪ では、店内をご案内致します♪」

 

 ミツハがカウンターから出て、『あなた』のそばに立つ。

 

 すごくいい匂いがして、『あなた』は、少し緊張する。

 

 店内に幼い美少女の店員と二人きりなのだ。

 

『あなた』の内心のドギマギなど素知らぬミツハは、『あなた』の腕を掴んで、無邪気に、

 

「まずはお兄さんが一番気になったものからご説明しますね♪ 案内をお願いします♪ って、わたしが案内するはずなのにあべこべですね♪ テヘッ♥」

 

 上目遣いで舌をチロッと出してくるではないか。

 

『あなた』は、鋼の意志で、下半身の分身に、沈まれ、沈まれ、と祈りを捧げた。

 

 この店内の隣は、街の治安を守る衛兵の詰め所になっており、少しでも少女に不埒なことをしようものなら、甲高い悲鳴をあげられ、お縄なのだ。

 

 少し小悪魔感もありそうなミツハは、ただ純粋に、『あなた』のことを、映えある異世界お客様第1号として見ており、『あなた』の中に、大好きな『お兄ちゃん』や、頼りになる『お父さん』を感じていたりもした。

 

 なんせ、ずっと、お店に一人でお客さんを待ち続けていたのだ。

 

 この世界でも元の世界でも、ミツハは、基本的に孤独。

 

 何日も会話らしいことをしておらず、人恋しかったのだ。

 

『あなた』は、腕にあたるミツハのささやかな膨らみに気づかぬふりをしつつ、紳士に、真摯に、と胸中に呟きながら、店内で最も気になった一角に案内する。

 

 

 

「……………………へ?」

 

 

 

 素っ頓狂な声が『あなた』のすごく近くで聞こえた。

 

 

 

 

 

「ジョ……………………」

 

 

 

 じょ? と『あなた』は、首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

 

 ハンドマークに日(・)本(・)語(・)で『18禁』と書かれた赤い暖簾の先の二階へ続く階段こそが『あなた』がもっとも『気になったところ』だった。

 

 

 

 

『あなた』が雑貨屋ミツハでもっとも気になったモノとは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョークグッズゥ〜〜ッ!?」

 

 

 

 

 ジョークグッズ、つまり、大人の玩具だった。

 

 

 

 ミツハの叫びが王都の一角に響いたのだが、その意味を知る者は、今は彼女しかいなかった…………

 

 

 

 

 

 

 

『ろうきん』の世界でだれになりたい?

  • ①来店第1号のお客さん
  • ②隣の詰所のおじさま
  • ③コレットちゃんのパパ
  • ④ミツハのお兄ちゃん
  • ⑤ミツハのお父さん
  • ⑥ミツハのお母さん
  • ⑦クラウス(ボーゼス家伯爵)
  • ⑧アレクシス(ボーゼス家長男)
  • ⑨テオドール(ボーゼス家次男)
  • ⑩シュテファン(ボーゼス家執事)
  • ⑪ルーファス(ボーゼス家執事)
  • ⑫国王(サビーネちゃんのパパ)
  • ⑬ウルフファングの隊長さん
  • ⑭ルッツ(不動産屋)
  • ⑮チンピラA
  • ⑯チンピラB
  • ⑰チンピラC
  • ⑱隣の詰所の新人
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