※この作品はR-18です。

堕落の空装武神   作:天木武

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番外編2 氷の美少女

◇

 

 

「馬鹿者! なぜ勝手な行動をした!」

 

 対魔忍の本部があり、養成機関も兼ねている五車学園。その教官室に有無を言わせぬ鋭い声が響く。学園の制服に身を包んだ、先日捕らえられ、その後救出された穂村奏はビクッと身を震わせ、怯えたように俯いた。

 険しい表情で奏を見つめてそう問い詰めたのは、「最強の対魔忍」とも呼ばれる井河アサギ。対魔忍として時に自分も任務に就くと同時に、ここ五車学園の教官として対魔忍の卵達の育成に励む彼女は、今回の奏の命令違反に対して厳しい声で叱責していた。

 既に奏が学園に戻れてから数日が経っている。尋問の際使用された薬の後遺症やまだ残る心の傷など、全快とはいいがたいものの、体力はほぼ回復したために教官室に出頭した矢先の出来事であった。

 

「……申し訳……ありません」

「お、お姉ちゃん! かなちゃんも反省してるし酷い目に遭ったんだからそこまで言わなくても……」

「さくらは黙っていなさい」

「そんな……碧さんまで……!」

 

 目の前で縮こまる後輩を可哀想に思ったアサギの妹のさくらが助け舟を出そうとする。が、共に救出作戦に参加した峰麻碧によってその舟は沈められてしまった。

 

「報告は碧とさくらから聞いた。お前が凜子を思う気持ちはわかっているつもりだし、だから直談判に来たお前をバックアップの任に就かせた。しかし、いくら凜子を思っているからと言っても、命令違反が許されるわけではない」

「……はい」

 

 何も弁解できない。命令違反を犯して単身で乗り込んで捕まった挙句、救出任務のために仲間の手も煩わせた。何と叱責されようと反論の余地はない、と奏はわかっていた。

 

「言いたいことはあるか?」

「……ありません。どんな重い罰も受ける所存です」

「そうか」

 

 その言葉に嘘はない。ようやく対魔忍となれたわけではあるが、その資格を剥奪されるような降格も覚悟していた。命令を違反するような忍びは不要。それに「面白い手品」程度の異能の力しか持たない自分など、本来対魔忍として相応しくなかったのだろうとさえ思えていた。

 

「では、罰として3日間の謹慎を命じる」

「えっ……?」

 

 それ故、僅か3日間の謹慎、という処分に奏は虚を突かれた。信じられないという表情でアサギを仰ぎ見る。

 

「……あなたはもう十分反省したわ。それに、米連の連中から拷問紛いの尋問まで受けた。……そのことは、私もわかっているつもりよ。確かに命令違反は許されないことだけど、絶対に仲間を見捨てないという対魔忍としてのあなたの意志、よくわかったわ」

「アサギ先生……」

 

 さっきまでの口調が嘘のように、アサギの声は優しかった。

 

「奏、あなたはいずれ立派な対魔忍になる。だから焦ってはダメ。そして仲間を信じなさい。凜子とゆきかぜが生きていると聞いたというあなたの報告、無駄にはしない。今仲間達が情報収集に当たってるわ。……何も出来なくて悔しいかもしれないけど、今はその身体を休めなさい。凜子もゆきかぜも、必ず助け出してみせる」

「はい……!」

 

 感謝の気持ちと共に、奏は深く頷いた。自分が未熟であり、命令を無視したことを情けなく思いつつも、そんな自分を認めてくれたようなアサギの言葉は、今の彼女の心に深く響いた。危うく涙をこぼしそうになるのを堪え、顔を上げる。

 

「碧。奏に付き添ってあげて。保険医の姫荻(ひめはぎ)沙希(さき)なら、心のケアと投与された薬物の後遺症を抑える薬を処方してくれるはず」

「あ……。わ、私1人で行けます。碧先生の手を煩わせなくても……」

「いいのよ。少し甘えるぐらいであなたは丁度いいの。無理して背伸びすると、今回のように周りが見えなくなってしまうのかもしれないんですから」

 

 今回のことを引き合いに出されて碧にそう言われては、何も言い返せない。おとなしく従い、碧に連れられて奏は教官室を出ようとする。

 

「それでは……。失礼しました」

「じゃーね、かなちゃん。ゆっくり休んでね」

 

 アサギは無言だったが、表情は明るかった。その代わりとばかりにさくらが声をかける。そんな2人の様子に僅かに表情を緩め、奏は碧と共に教官室を後にした。

 

「お姉ちゃん、最初から謹慎程度で済ませるつもりなら、何もあんな風にきつく言わなくたってよかったじゃん!」

 

 奏の姿が見えなくなると同時、天真爛漫な妹はクールな姉へと噛み付く。

 

「一応けじめというものはあるでしょ。……私だって、あの子が身体と心に負った傷を考えたら、きついことは言いたくなかったわよ。でも、対魔忍である以上そうはいかない。……とはいえ、十分過ぎるほどその身でわかっていたんでしょうけど」

「だったらやっぱり言わなくてよかったじゃん! ……その辺私と違って融通効かないんだから」

「あら、私から言わせてもらえば、さくらみたいなのはだらしないって言うのよ」

「何それー! 姉だからって余裕かましちゃってー!」

 

 教官室にさくらの無邪気な声が響く。いつまで経っても子供のような妹の振る舞いに、姉はやれやれと大きくため息をこぼしていた。

 

 

 

◇

 

 

 救出された後に学園内をちゃんと歩くのは初めてだった。さほど長くここから離れていたわけでもないのに、やはり懐かしいと奏は感じていた。

 

「アサギさん、ゆきかぜと凜子に続いてあなたまで連絡がつかなくなったと聞いて物凄く取り乱したんですよ」

 

 と、不意に碧はそう告げてきた。驚いて奏は視線を移す。

 

「勿論、私も心配でしたけど。捕まってしまった場合のことまで想定して、私とさくらが救出に適任だったんですが、アサギさんも最初は同行するって言って。学園を空けるわけにいかないからとどうにか説得して思いとどまってもらったんです」

「そう……だったんですか。……すみません、私なんかのせいで」

 

 やはり申し訳なさを覚えて俯いてしまう奏。だが碧はそんな教え子の肩に優しく手をかけた。

 

「なんか、なんて言わないの。あなたも対魔忍の1人なんですから。でもよくわかったでしょう。あなたが傷つけば仲間が悲しむということを忘れないようにしなさい。……今後は無茶はダメよ」

「……はい」

 

 本当ならもっと叱責されてもおかしくない。なのに、教官達は皆優しかった。そのことが嬉しくもあり、同時に気を使わせているようでどうしても肩身が狭く感じてしまっていた。

 

「あら、穂村さんじゃない。命令違反をしたって聞いたけど、アサギ先生のお叱りを受けたところかしら?」

 

 そんなことを考えながら保健室へと向かっていたところで、自分を呼ぶ声に気づいて奏は視線を移す。そこに立っていた水色の髪をした級友の少女を目にし、表情に僅かに影が差した。

 

「あ……。氷室(ひむろ)……さん……」

 

 清楚な顔立ちと佇まい、しかし視線は氷のように冷たく奏を見つめている。氷室花蓮(かれん)、氷遁(ひょうとん)の術を操る五車学園の生徒であり、若くして優秀な対魔忍だ。

 

「凜子さんのことを追いかけて直談判して、達郎君から抜け駆けするように任務を取っておきながら、命令違反を犯して連れ戻されたと聞いたわ。……呆れたものね」

 

 風紀委員でもある花蓮は元々堅い性格だ。よって命令違反ということが許せないのであろう。加えて、今彼女が言ったとおり、今回奏が就いた任務は本来なら凜子の身内である達郎か、あるいは成績優秀な花蓮に任されるはずだった、という噂も流れている。そのことも要因にあるのではないかと思うと、奏は言い返すことは出来なかった。

 

「花蓮、そのぐらいにしなさい」

「いえ、氷室さんの言うとおりです。……悪いのは全て私ですから」

「へえ、随分と物分りがいいのね。自分の力に自惚れて、痛い目でも見てきたのかしら?」

「花蓮!」

 

 普段温和なはずの碧に強い口調で名を呼ばれ、思わず花蓮は身を竦ませる。

 

「それ以上言うことは……」

「いいんです、先生。全部、事実です。私は自分の力に自惚れて先走り、結果捕まって辱めを受けた。……彼女に指摘された通りです」

「辱め……?」

 

 下腹部を撫でるようにしながら言われた奏の言葉に、思ってもいなかったという様子で花蓮はそう呟いた。そのやり取りに表情を僅かに暗くした碧は、ここで切り上げるべく「さあ」と奏を促しその場を去ろうとする。

 

「待って……!」

 

 もしかしたら今自分は触れてはいけないことに触れてしまったのかもしれない。そう思い至り、罪悪感を覚えた花蓮は2人を呼び止めようとした。だが碧の拒絶するような目に、それ以上追及できずに立ち尽くしてしまう。そうこうしているうちに2人の姿は遠ざかり、やがて階段へと消えていった。

 

 

 

◇

 

 

 保険医の姫荻沙希によるカウンセリングと薬の処方を終え、奏は寮にある自分の部屋に戻ってきていた。眼鏡をかけた、見るからに優しそうな沙希は碧同様包容力のある女性で、自分の体験を聞いて心を痛めているようだった。親身に話を聞いてもらえたことで少し気持ちは楽になった気がする。加えて後遺症を抑える薬も渡してもらい、精神的に余裕を持つことは出来た。

 しかしそれで心と身体の傷が癒えたわけではなかった。アサギや碧はほとんど叱責もせず配慮すらしてくれていたが、逆にそれがつらかった。まだまだ未熟、対魔忍として不適格。いっそ先ほどの花蓮のようにはっきりと言ってくれた方が、心としてはすっきりしたようにすら思えている。

 そして身体。米連の男達に輪姦されたために胎内に精液を浴びてしまったが、それの対処は帰還後すぐに行ってもらった。だがそれより問題なのが尋問の際に使用された薬だ。沙希の話では使用された薬の成分がわからなくては特効薬を用意するのが難しく、しばらくは対症療法に頼るしかないという話だった。一応数種類の薬を用意され、カウンセリングの時にも服用している。が、それでは効果が薄いのか、今現在、奏の身体には後遺症の症状が現れ始めていた。

 

「うっ……くうっ……」

 

 学園から離れていた分の学業の埋め合わせをしようとしていた矢先。薬の後遺症――身体の疼きを覚え、その手を止めて奏はベッドへとうずくまった。だが一向に疼きは治まる気配がない。むしろ身体全体へと広がっていき、呼吸が荒くなって汗も浮き出てくる。

 

「あぁ……はぁ……はぁ……」

 

 口からこぼれる吐息には甘い色が混じっていた。「1本で女を強制的に発情させる」と言われた薬を何本も身体に投与された。事実強姦であり、心では拒絶していたにも関わらず奏は幾度となく絶頂を迎えさせられるほどだった。そしてそれは今も身体を蝕み、発情させてしまっていた。

 

(身体が……熱い……。すごくエッチな気分になって……。でも自慰なんて……そんなはしたないこと……)

 

 奏とて年頃の少女だ。自慰の経験ぐらいはある。だがどうしても抵抗を感じてしまい、頻繁に行っているわけではない。しかしそんな抵抗感を簡単に打ち崩すほどの衝動。気づけば左手は胸、右手は股の間へと移動してしまっていた。

 

「……あっ!」

 

 いけないこととわかりながらも、下着越しに女性器の割れ目をなぞり上げてしまう。瞬間、身体に甘い痺れが走り、同時に左手で胸を愛撫し始めていた。

 

(あ……。胸、自分で触ってるだけなのに……気持ちいい……。それに……あそこも……。段々濡れてきて……)

 

 じわり、と小さくショーツに染みが生まれる。指先の感覚でそれがわかりながらも、止めることが出来ない。

 

(ダメ……なのに……。薬飲まないと……。こんなことしてちゃ……)

 

 心と裏腹、指の動きは止まらない。一層激しく布越しに擦り上げ、胸も自分でもみくちゃに捏ね回す。

 

(これ……。もうすぐ……イッちゃう……)

 

 淫裂を擦りながらも、指は気持ちいいポイントを探って移動する。そして見つけた割れ目の上部、小さな肉芽へと触れると、身体がビクッと跳ねた。

 

「あ、あっ……」

 

 見つけた性感帯を指が撫で回す。服の上から胸を刺激していた左手はいつの間にか服の中へと入って下着を押しのけ、胸の頂を指の腹で転がしていた。

 

「はっ……あんっ……。ダメえっ……」

 

 口では否定の言葉を述べつつも、手は止められない。身体は昂り、もう制御が出来なくなっていた。快楽への段差を上り、疼きで溜まっていた欲望が解放される。

 

「んっ……んんっ……! あああッ!」

 

 2箇所の突起を指で弄り回し、奏は身体を痙攣させてオーガズムを迎え入れた。艶かしい吐息がこぼれ、絶頂の余韻に浸る。だが――。

 

(ダメ……。これじゃ……足りない……)

 

 身体の疼きが収まらない。もっと全身をめちゃくちゃにしたい。あの時、下劣な男達にされたような暴虐にまた晒されたい――。

 

(ち、違う……! そんな、そんなの……!)

 

 苦痛であった過去の傷さえ、今の奏は甘美な快楽であったかのように錯覚してしまっていた。保険医の沙希はこうならないようにカウンセリングもしてくれたはずなのに、それを踏みにじろうとしている。嫌なはずのことを求めようとしてしまっている。

 このままではいけない。処方された薬を飲めば少しは身体の異常が収まるかもしれない。そう思い、上がった息のまま、薬を取りに机に向かおうとした、その時。

 

「穂村さん? いる?」

 

 不意に、部屋のドアがノックされ、声がかけられた。予測していなかった出来事に奏は身体を震わせ、上ずった声で尋ねてしまう。

 

「だっ、誰ですか?」

「氷室です。お話したいことがあるんだけど……。今いいかしら?」

 

 もしかしたら今の恥ずべき行為がばれてしまい、風紀委員である花蓮がそのことを咎めに来たのだろうか。一瞬そんな馬鹿げた考えも浮かんだが、いくらなんでも考えすぎだろうと、奏は立ち上がる。が、今ので衣服が乱れたままだったと気づき、慌てて身なりを整えなおした。

 

「あ……。もしかして都合が悪かったら……」

「いえ、大丈夫です。今開けます」

 

 思えば、そこで断ってもいいはずだった。しかし奏は花蓮に叱ってほしいと、無意識のうちに思っていたのかもしれない。自分では律することの出来ない心に喝を入れてもらえば、少しは平常の心に近づけるかもしれない。そしておそらく花蓮はさっきの続きを言いに来たのだろう。だとするなら、今のこの心に冷や水をかけてくれるはずだ。そう考えたために、ドアを開けて客人を招き入れようとしていた。

 開いた扉の前に立っていた花蓮は、ついさっき、奏をなじった時とは全く違う表情を浮かべていた。どこか申し訳なさそうな、心を痛めているような。そこに違和感を覚えつつ、奏は尋ねる。

 

「どうしたんですか?」

「その……。直接顔を合わせて言いたいことがあって。入っても?」

「え、ええ」

 

 相手の態度への疑問で頭が一杯になり、部屋へと通してしまう。が、今さっきここで自慰をしてしまっていたということにようやく思い当たった。もしかしたら匂いか何かで勘付かれてしまうかもしれない。

 しかしそれは取り越し苦労だとすぐわかった。相手は特に何を気にかけた様子でもなく、いや、そんな余裕すらないようにさえ見えた。

 

「それで……話ってなんですか? 氷室さんの……私を許せないと思う気持ちは理解しているつもりです。命令違反など、対魔忍にとってあるまじき行為ですから。謝罪と反省の言葉を重ねても足りないとわかってはいますけど……」

「違う、そうじゃないの。……むしろ逆」

「逆?」

 

 カーペットの座布団の上に正座で座って向かい合った2人。だが視線を交わすことはなく、ずっと目を伏せていた花蓮が不意に頭を下げた。

 

「……ごめんなさい。あなたのことを何も知らず、私は酷いことを言ってしまって……」

「ど、どうしたんですか、急に……」

「……あなたが保健室に行ったと知って、姫荻先生に無理を言って教えてもらったの。私はてっきり、命令違反で先生に怒られたか、交戦した相手に後れを取った程度のことだと思ってた。でも……捕らえられて厳しい尋問をされて……その上辱めまで受けたと聞いて……」

 

 出来れば隠しておきたかった事実ではあったが、知られてどうこう、というつもりは無い。結局は自分が招いた失態だ。甘んじて受け入れるつもりでいる。しかし目の前の少女が自分のことのようにつらそうな表情を浮かべているのが、奏にはわからなかった。一度は叱責したほどの憎い相手のはずなのに、わざわざ部屋を訪ねてきてまで謝罪の言葉を述べる意味はなんであろうか。

 

「氷室さん、頭を上げてください。私は何も怒っていません。むしろ命令違反を犯した以上、なんと言われようと仕方の無いことだと思っています」

「それでも……女性として貶められ、辱められて……。そんなあなたに冷淡な言葉をぶつけてしまったなんて……。私は、無神経すぎた自分が許せなかったの」

 

 花蓮と目が合う。僅かに涙を浮かべるほどに同情してくれる姿に、奏は言葉に出来ない感情を覚えていた。あの氷のような堅物の風紀委員が、自分の感情を露わにしている。それが、不思議と美しく思えた。

 

「確かに命令違反の件を遺憾に思っているのは事実よ。でも、想像に耐え難い苦しみを受けたあなたをなじる権利なんて私にはない……。なのに、知らなかったとはいえ、一方的に言いたいことを言ってしまって……。ごめんなさい」

 

 再び花蓮が頭を下げる。普段弱いところを全く見せない相手のそんな姿に、奏はふと、凜子に対して抱いている思いに近い感情を持った。名の通り可憐で儚く美しい。この少女と仲良くなりたい。いや、それ以上の関係になりたい――。

 

『女が女を愛することだって、なんらおかしいことじゃないのよ』

 

 不意に、尋問の最中にあの女傭兵に言われた言葉が、重ねられた唇の記憶が、愛撫された胸の感触が、頭をよぎってしまう。恥辱にまみれたあの間、媚薬で強制的に発情させられていたために男を受け入れている間も望まぬ絶頂を迎えてはいた。だがその中でも同性同士で肌を重ねた時は、殊更に甘い時間だった。

 そう思ってしまった心は、身体にも変化を促す。ついさっきまで薬の後遺症で疼いていた身体が、そのことを思い出したかのように熱を帯び始める。目の前の少女が愛しくてしょうがない。めちゃくちゃにして、そしてされたい――。

 

「……言葉だけでは足りないとわかってる。だから、もし私に出来ることがあったら何でも言って」

「何でも……?」

 

 その単語に心が大きく揺れ動く。言葉を紡ぐ相手の唇が何よりも蠱惑的に見え、もう心の中の衝動を抑えることは出来なかった。

 

「ええ。微力ながら力に……。って、ちょっと穂村さん!? 顔真っ赤よ! だいじょ……! んんッ!?」

 

 花蓮の言葉は途中で途切れた。奏によって押し倒され、唇で唇が塞がれる。何が起こっているかわからず目を見開く花蓮をよそに、奏は尋問の際に女傭兵にされたように、舌と舌とを絡ませ合った。甘い吐息をこぼして美少女が美少女を貪り、口内へと舌を這わせ続ける。

 

「んっ……んぅ……んちゅ……あぁ……」

「ぷあッ!? ほ、穂村さん!? 一体何を……!」

「身体……熱くて……。捕まった時に使われた媚薬の後遺症で……身体の疼きが止められなくて……。うっ……くうッ……!」

 

 なおも滾(たぎ)る欲望。相手の衣服を破いて乳房を愛撫し、美少女が穢れゆく様を見ながら果てたい。膣内を指で弄り回し、泣き叫ぶ姿を自分のものにしたい――。

 

「だ、ダメ……ダメぇッ!」

 

 だが奏は残る理性で何とか踏みとどまろうとする。自分に同情してくれた級友にこれ以上酷い仕打ちなどしてはいけない。その一心で、発情した身体をどうにか押し込もうとした。

 

「ご、ごめんなさい……! でも……止められない……! 離れて……! このままじゃ……氷室さんにもっと酷いことをしてしまう……!」

「穂村……さん……」

 

 驚いた様子で苦しむ姿を眺めていた花蓮だったが、自分の唇に指を当て、意を決したように小さく頷く。そして自ら奏の傍に近寄ると、再び唇を重ね合った。

 

「ん……んんっ!?」

 

 2度目のキスは、さらに甘く奏の身体に響いた。それまでの苦悶が嘘のように消え、充足感が身体を満たしていく。

 

「ぷあッ……! はぁ、はぁ……。ひ、氷室さん……どうして……」

「二言はないわ。私に出来ることなら何でもする。……その、男性との経験もないし……それに女性同士っていうのは……ちょっと驚いたけど……。もし、私でその疼きを止められるなら……この身体、好きにして」

 

 その言葉に、発情しきっていた奏の理性のタガが外れた。花蓮をベッドへと押し倒し、強引に衣服を剥ぎ取る。

 

「きゃっ……!」

 

 奏と比べるとより小振りな胸が露わになる。躊躇うことなくそこに口と手を這わせ、同時に残った手で奏は自分の胸を刺激し始めた。

 

「あ、ああっ……! ほ、穂村さん……そんな乱暴な……!」

 

 悲痛な叫びも、今の奏の耳には届かなかった。欲望の赴くままに美少女の胸を嬲り続ける。

 

「う、あ、あああああっ! あん、あぁん……」

「氷室さん……かわいい……。胸、気持ちいいですか……?」

「そ、そんなの……わからな……! ああっ!」

 

 口ではそういいながらも、なだらかな双丘の頂は言葉以上に正直に尖っていた。綺麗な桃色の突起を摘むように片方を口に咥えて舌で転がし、もう片方を指の間で扱(しご)きあげる。

 

「うぅはあぁッ! そ、それ……すごい……! 身体痺れてぇ……!」

「自分でやるのと……どっちがいいですか?」

「自分でなんて……あ、ああっ! したこと……ないぃ……!」

 

 オナニーすらしたことがないという堅物で無垢な美少女を汚すという背徳感。それさえ今の奏には嗜虐心をそそられるスパイスにしかならない。乳首を責める舌と手の動きが激しさを増す。

 

「ひ、いっ、あ、ああああっ!」

「本当にしたことないんですか……? ここ……こんなになってるのに……?」

「し、知らないぃ……! なりたくてなってるわけじゃ……ないからぁ……!」

 

 未知の快感にどう抗ったらいいかわからない様子で、懸命に言い訳をしようとする花蓮をますます虐めたくなってしまう。奏も脱ぎかけていた上着を完全に脱いで自らの乳房を露出させると、そのまま肩を震わせて荒く呼吸する花蓮の上に覆いかぶさる。そして自身の頂を相手のそれへと擦りつけ、感嘆の声をこぼした。

 

「あ、ああぁ……!」

「だっ、ダメぇッ! 穂村さん……それ、それぇっ!」

 

 敏感な部位を擦り合わせ、悦びの声を上げる2人の美少女対魔忍。とろんと蕩けた2人の瞳が合い、打ち合わせをしたでもなく手を握り締めて唇を重ねる。

 

(穂村さんの唇……柔らかくて……。それに……胸もこんなに気持ち良いものだなんて……)

 

 離れた唇から唾液の糸が伸びた。熱い吐息をこぼしつつ、身体も経験したことないほどに火照っていると花蓮は感じていた。

 

「氷室さん……すごくドキドキしてる……」

「そういう穂村さんだって……」

「ええ……。見てください……。私のあそこ……もうこんなになってしまってるんです……」

 

 そう述べた奏の下着はぐしょぐしょに濡れ、愛液が太股まで垂れてきている状態だった。糸を引きながら下げられたショーツに、思わず花蓮の視線が釘付けになる。

 

(す、すごい……。あんなに濡れて……。あ、あぁ……なんだか……エッチな気分になっちゃう……)

 

 はしたない姿を見られても、今の奏は羞恥より悦楽の方が上回っているようだった。恥ずかしがる様子もなく小さく笑うと、花蓮のスカートをたくし上げる。

 

「ねえ……。氷室さんのあそこは……どうなってるんですか?」

「ま、待って!」

 

 懇願を無視し、ストッキングが脱がされる。黒い布地に隠れていまひとつよく見えなかった、申し訳程度にリボンのついた純白の清楚な下着が露わになった。

 

「氷室さんの下着……思ったより地味ですね」

「わ、悪かったわね! 人に見せるものじゃないんだから……別にそんなのどうでも……!」

「勿体無いですよ……。せっかくかわいいのに」

「か、かわ……!」

 

 普段は氷のような態度であることの多い相手が顔を真っ赤にして照れているのを見て、奏はいたずらっぽく微笑む。それからその下着にも手をかけた。

 

「あっ……」

 

 まだ毛も生え揃っていない恥丘が晒される。奏ほどではないにせよ濡れてはいたが、そのことよりも自身の秘密が暴かれてしまったことに花蓮は動揺していた。

 

「み……見ないで……! 私、あそこに全然毛が生えないし、胸も小さくて……。ずっとコンプレックスだったの……」

「そんなこと……。気にしなくていいじゃないですか。……氷室さん、こんなにかわいいんですから」

「だっ、だから……!」

 

 続けて何かを反論しようとした花蓮だったが、奏の唇に塞がれた。もう数度は交わしているキスをしつつ、奏の手が花蓮の秘所へと伸びる。

 

「んっ……。あっ! そ、そこっ……!」

「そして、エッチですよね……。ここ、もうこんなに濡らして……」

「そ、それは穂村さんが……。ひぃやあぁん!」

 

 膝を着いて跨る形になった奏が、花蓮の秘裂をなぞる。それだけで花蓮の口からは可愛らしい声が漏れてしまう。

 

「氷室さん、風紀委員なのに……女性同士でこうやって、感じて濡らしちゃってるんですね」

「う、うぅ……」

 

 被虐心を煽られるようなことを言われても、何も言い返せなかった。むしろそれがゾクッと身体の芯に響いてくる。

 

(な、なんで……。こんな気持ちになっちゃうの……? 私……今物凄く興奮してる……)

 

 その心中を見抜いたのか、割れ目をなぞるように指を動かしていた奏が秘唇を開き、その中へと指を押し進めてきた。

 

「だ、ダメ……あ、あ、あああああっ!」

 

 否定の声を上げようとするが、それよりも膣内に浅く挿入された指の快感の方が勝ってしまい、花蓮は喘ぎ声を上げていた。自分で触ったことなど入浴時に洗うためがせいぜいで、先ほど告白した通り自慰の経験などない。だが愛液を漏らすほどに出来上がった身体は、他人の指を入れられても嫌悪感を感じることはなかった。

 

(う……嘘……!? 気持ちいい……これ……すごく気持ちいい……! それに……穂村さんも自分のあそこに……あんなに指を入れてしまって……)

 

 右手で花蓮の、左手で自身の秘裂へと奏は指を滑り込ませて刺激を続ける。その恍惚とした表情に一瞬花蓮は目を奪われるが、次の瞬間は身体に走る甘い衝動に、シーツに爪を立てて握り締めていた。

 

「ひゃうぅ……!」

「あ、あ、あ、ああっ……。1人でするより……気持ちいい……!」

「穂村さん……そんなに気持ちよさそうな顔で……。あぁ……もう……!」

 

 手持ち無沙汰になっていた花蓮の両手が、奏の首へと回された。そのまま自分の顔へと寄せ、唇を重ね合う。

 

「んっ……。んちゅぅ……んんん……!」

(キス……すごい……! あそこもグチュグチュってなって……もう……蕩けちゃいそう……!)

 

 官能の波に酔いしれる淫らな風紀委員。いよいよ身体は熱を抑えられず、もうすぐ最高の悦波を迎え入れようとしている。そのことを感じ取り、同時に自身もそうであった奏は、膣内への指の抽送をやめ、敏感な肉芽への愛撫へと切り替えた。

 

「んっ……ぷあッ!? あ、ああっ! そ、そこぉ!」

「あぁ……。気持ちいいですか……? ここ、クリトリスは物凄く感じるから……あんっ……」

「こ、これ……! あ、あ、あ、あああっ! な、何か……何かきちゃう……!」

 

 絶頂を知らない身体は、未知の感覚としてしかそれを捉えられなかった。それでも本能的にそれを迎え入れるためにこれまでの行為を行ってきた、とわかっていた。

 

「わ、私も……! もう……イッちゃいそう……! 氷室さん……あ、あ、イクッ、イッちゃうううううううぅッ!」

「穂村さん……身体ビクビクって震えて……。あ、くる……きちゃう……! あ、あ、ああああああああぁッ!」

 

 同時に身体を痙攣させ、2人は絶頂を迎えた。ベッドに崩れ落ち、荒い呼吸をしながら互いに視線を交わす。

 

「はぁ……はぁ……」

「……ありがとう。そして、ごめんなさい、氷室さん」

 

 不意に述べられた感謝と謝罪の言葉に、花蓮は僅かに首をかしげた。

 

「私を受け入れてくれて……。でも、無理矢理つき合わせてしまったことは……本当に申し訳なく思ってます」

「何よ今更。散々私の身体を弄んでおいて……。でも言ったはずよ、二言はないって。……身体の疼きは、収まった?」

「さっきよりは。あとは薬を飲めば、多分大丈夫だと思います」

「そう。よかった」

 

 花蓮はそう述べると仰向けに寝転がり、天井へ大きくため息をこぼした。

 

「……まったく、風紀委員の私が自ら風紀を乱すようなことをしてしまうなんて」

「あ……。ごめんなさい……。私のせいで……」

「そうよ、あなたのせいよ。……だから、責任を取って、私ともっと仲良くなりなさい」

「え……?」

 

 言っていることがわからないと、奏は花蓮を見つめる。しかし言った本人は一瞬視線を合わせた後、どこか恥ずかしそうに天井へと再び視線を逸らしてしまった。

 

「……あなたは私の秘密を色々知ってしまった。今日ここであったことや……私のコンプレックスに感じてる身体のこととかも。そこまで知られてしまったわけだし、何より……肌を重ねあってしまったのだから……もう仲良くするしかないじゃないの」

「氷室さん……」

「それに命令違反をしてしまうような悪い子には、私みたいなしっかりした人がついてないといけないでしょ?」

「う……」

 

 反論したくとも出来ない。肌を重ねあっていた時と一転、終始花蓮にペースを握られ、奏はたじたじになってしまっていた。それを見た花蓮はいたずらっぽく小さく笑う。

 

「……今日ここであったことは2人だけの秘密。でも、もしまた身体が疼いて止まらなくなってしまったときは……私を呼んで。私達はもう友達以上の関係になってしまったのだから。わかったわね、奏(・)」

「はい……。ありがとう、氷室さん」

 

 その返答に、不満そうに花蓮はため息をこぼす。

 

「あのね、私が名前で呼んでるんだから、空気読みなさいよ。花蓮でいいわ」

「わ、わかりました……花蓮」

 

 ぎこちなく名前を呼ばれ、氷の美少女は小さく笑みをこぼした。そして「友達以上」と言った言葉は嘘ではないかのように、ゆっくりと唇を重ね合う。今日何度目かわからないキスを終えて互いに視線を交わし、笑顔を見せ合う。

 

「……まずいわね。これ、癖になっちゃいそう……」

「風紀委員がそれじゃ、ダメじゃないの?」

「そうよ、まったく……」

 

 文句を言いながらも、花蓮の心の中に嫌な感情は浮かんでこなかった。「友達以上」の関係となった対魔忍の仲間。この仲間と、共に高めあっていこう。そんな思いが、彼女の心の中に芽生えつつあった。

 

 




期間限定カードのHR対魔忍、氷室花蓮にスポットを当てた話です。期間中にたまたま引けたので、風紀委員という設定を使って書こうと思ったのがきっかけです。
対魔忍で貴重な攻撃割合アップスキルと攻撃特化のステ、あと見た目がかわいいので重宝してます。
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