◇
凜子がアンダーエデンの奴隷娼婦となってから数日。リーアルと交わした賭けの約束の期日までようやく折り返しを迎えていた。
汚辱にまみれた奴隷娼婦披露会を終えてからずっと客を取り、男に抱かれ続けている。時には甘い恋人のように接することを要求され、時には性欲の捌け口として乱暴に犯される。中には同性であるにも関わらず肌を重ねることを望む女性や、一度に複数名を相手にすることもあった。醜悪なオークから金持ちの人間まで。正式に客として凜子を買ったゾクトに抱かれたこともある。客によって強要してくるプレイは様々、中には対魔忍コスチュームや米連時代の格好を模した衣装をリクエストされることもしばしばだった。
扱われ方から衣装まで客の望み次第。さらには客の希望があれば胎内への射精まである有様。しかしそれでも凜子の心は飲まれることなく、どうにかここまで正常を保ってきていた。
(……大丈夫、まだ大丈夫だ)
裸に近いビキニの格好で、部屋で身体を休めていた彼女はそう自分に言い聞かせる。来る日も来る日も多くの相手をし続け、疲労が全くないわけではない。それでもアリーナでの公開凌辱に比べればまだ気が楽に感じていた。いや、もしかしたらもう身体が慣れてしまったのかもしれず、それはそれで憂慮すべき事態ではあった。だが、娼婦として振舞っている間は心を凍りつかせている凜子にとって、今の方がまだ楽だとさえ思えていた。
(確かに客を取るたびに、身体は乱れてしまうが……私の心は正常だ。だが娼婦でいなくてはいけない時期はまだ続く……。言ってみれば娼婦となるまでは短距離走だったのに対し、今は長距離走のようなものだ。大きな疲労こそないものの、終わりは見えない……。とにかく消耗を抑えることしか、今の私には出来ない。あとは……ゆきかぜが耐えてくれれば……)
そう考えつつ、表情に苦いものが浮かんでいることを自覚していた。ついさっき、ゆきかぜからのメッセージを受け取ったのだが、頭に何かの器具をすっぽりと被せられた姿は実に痛々しく見えた。聞こえる声も、これまでの数度のメッセージよりも力なく聞こえ、明らかに憔悴しているとわかった。ようやく媚薬ローション塗布の訓練が終わり、今度は頭に取り付けられた器具による擬似凌辱訓練なるものに移ったそうだが、それがかなりつらいものだったらしい。懸命に強がっているが、それが空元気だと長い付き合いの凜子には手に取るようにわかっていた。
(ゆきかぜ……つらいだろうが、今が正念場だ。どうか頑張ってくれ……!)
顔を合わせられぬ後輩を慮ったところで、部屋の扉がノックされた。だが開けられる様子はなく、外から娼館のスタッフが声をかけてくる。
「凜子ちゃん、リーアル様から話あったと思うけど、そろそろVIPのお客様が見えるから。衣装の要求はなかったからそのままでいいけど、くれぐれも失礼のないように」
「わかっている。努力する」
短く受け答え、いつでも客を迎えられるよう、凜子は扉の前で正座をして待つことにした。その間に、これからのことについてふと考えを馳せる。
(それにしても……私の当初の予定を変更させてまで、直々にリーアルに要求を捻じ込めるVIPか……。下手なことをしたら、またリーアルに何か言われ兼ねんな)
本来、今日の凜子は久しぶりにアリーナに出て戦う予定だった。しかしVIP待遇の相手からリーアルに直接要請があり、その予定が急遽変更されて客を取ることとなったのだ。アリーナで負ければ公開凌辱の憂き目が待っている。はっきり言ってここで客を取る方が楽だ、とさえ思えてしまっていた。だがそれだけ自分はここでの娼婦としての生活に馴染んでしまっているのかと気づき、自嘲的な笑いがこぼれる。
(戦うより客を取った方が楽とか思い始めるようになってしまったら、私もいよいよかもしれんな。……しかしVIPの相手……まさか私達を売った米連の司令とかではあるまいな)
だとするならなかなかつらいものがある。すぐにでも復讐してやりたい自分の感情を押し殺して抱かれろ、というのはさすがに厳しい。だがそれならリーアルやゾクトも同じようなものか、と思ってしまい、やはりここでの思想に頭が染まりつつあると、軽く頭を振って考えを消すことにした。
部屋の外に人の気配を感じ、トントン、と控え目にドアがノックされたのは、それからすぐのことだった。既に凜子は三つ指を着いて頭を下げているが、違和感を感じてもいた。
(珍しいな……。大抵はスタッフに促されればそのまま入ってくる客がほとんど。それをわざわざノックをして、それもこれだけ控え目に、か。よほど奥ゆかしい人物なのか?)
考えをめぐらせると同時、その予想が当たっているかのようにゆっくりと扉が開いた。人が入ってくる気配を感じ、扉が閉められる音を聞いてから、凜子は商売の口上を述べ始める。
「本日は当店にお越しいただき、また、私をご指名いただき、誠にありがとうございます。奴隷娼婦の秋山凜子と申します。まだ新人で不慣れな点が多くありますが、精一杯ご奉仕させていただきますので、よろしくお願いいたします」
述べ終えても、相手が動く様子も、声がかかることも無かった。妙だと思い顔を上げて相手の顔を見て、なんとなく凜子はその理由を悟った。
相手はまだ若い青年だった。それもヨミハラに似つかわしくない、初々しく、かつ弱々しい表情を浮かべて戸惑っている。かなりの引っ込み思案ということは容易に予想がついた。
「あの……えっと……」
相手の青年は一度凜子を見たものの、その後視線を彷徨わせて何かを話そうとするが、うまく先が続けられない。やれやれと小さくため息をこぼし、凜子は立ち上がった。
「そんなに緊張なさらないでください。何か、お茶でも飲みますか? その方が落ち着くかもしれませんし」
「あ……。お、お願いします」
凜子を指名する客のほとんどは話す時間も惜しいといきなりベッドに押し倒すのだが、中にはあまり経験がないのか、戸惑う客もいた。その比ではないほどに今回の客は困惑している様子だが、ひとまず相手に任せるよりは自分がリードした方がいいだろうと判断し、2人分のお茶を用意して凜子はベッドに座る青年の隣に腰を下ろした。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
だがやはり情けない青年は時々凜子を見るものの、視線は定まらずに小さく縮こまったままだった。その様子に、ふと凜子の頭に学園に残っているはずの、弟の達郎の姿がダブる。
(そういえば……。この頼りなさ、なんだか達郎と似たような雰囲気を感じるな……。あいつは……元気でやっているのだろうか……)
しばらくはゆきかぜのことばかり考えていて、その彼女の恋人であり、同時に弟でもある達郎のことまでは頭が回らなかった、と思い出す。
そのことはさて置き、無言でお茶を飲んでいても始まらない。いや、始まらないなら始まらないでこのまま終われば楽であるに越したことはないのだが、アンダーエデンに来て自分を指名したからには当然肌を重ねるのが目的のはず。だがわざわざ自分を指名しておきながらそんな様子がない、さらにはとてもVIPの人間であるように考えられないと疑問に思った凜子は、そのことを尋ねてみることにした。
「あの、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「何でしょう……?」
「ご指名いただいたのは嬉しいのですが、なぜ私だったんですか? 私はここではまだ新人、それに館の主にも無理を通したとも窺いました。そこまで私にこだわってくださった理由が知りたくて……」
「あ……。ご、ごめんなさい……」
責めたつもりはないのに謝罪の言葉がとんできて、凜子は思わず慌ててしまう。
「いえ、こちらこそ申し訳ありません。出過ぎた事を尋ねてしまって……」
「違うんです。その……あなたを指名したのは……僕の父なんです」
「え?」
話が見えないと、凜子は首を傾げた。これまで話を進めようとしなかった青年が先を続ける。
「父はある企業の社長なんです。それで、ここの偉い人と知り合いらしくて……。あなたの噂を耳にして、是非僕の相手をさせたいと頼み込んだ、と言ってました」
リーアルと繋がりのある、とはあまりよろしくない企業なのではないかとふと勘繰ってしまう。加えて自分の噂、とは一体どのようなものか。しかしそれをわかったところで今の状況ではどうすることも出来ない。凜子はそのまま質問を重ねた。
「では……ここにいらしたのもお父様に言われて、ということですか?」
「はい。……恥ずかしい話ですが……僕はまだ童貞です。それどころか、女性とちゃんと付き合ったこともありません。父もそのことを知っていて、先日誕生日を迎えた時に『いい機会だから男になれ』と言われて……。それで、言われるがままにここに連れて来られて。父が偉い人と話して、是非ともあなたに、と頼んだみたいです」
なるほど、と凜子は納得した声を上げていた。何故自分なのかはその父親に聞かなければわからないだろうが、それでも相手のおどおどした態度も、ここに来た理由も理解できる。
「……なんだかすみません。こんな情けない男で」
「そんなこと。私にも弟がいますが、気の強い方ではなくて……。いつも私や、強気な恋人に振り回されてますよ」
「そう……なんですか。……なんだか弟さんが羨ましいです」
「恋人といっても、元々幼馴染の関係でしたから。その延長線上で……」
「あ、そのことじゃなくて……」
てっきり女性と付き合ったことがない、という話から弟を羨ましがっていると思っていた凜子だが、それは予想が外れたらしい。では何が羨ましいのだろうか、と考え込む。
「その……凜子さんみたいな綺麗でかっこいいお姉さんがいるなんて、羨ましいなって」
「なっ……!」
ここに来てからというもの、恥ずかしい思いは数え切れないほどしてきたつもりだった。だが余りにも不意打ちに、そして直接的に言われたために、凜子は顔を真っ赤にして照れてしまった。
「ご、ごめんなさい! 急に変なこと言って……」
「い、いや……。面と向かって言われたから……つい驚いてしまった……」
あまりの動揺に口調が素に戻ってしまい、しかもそのことに凜子は気づいていない。心を落ち着けようかと、目の前のお茶を喉に通し、間を作る。
「凜子さん……普段はそんな感じで話すんですか?」
「え? ……あっ。今、驚いたせいで普通に話してしまって……。申し訳ありません」
「いえ、いいんです。というか、その方が僕も気兼ねなく話せるというか……。普段通りな感じで話してもらってもいいですか?」
「そういうご要望でしたら、遠慮なく。……実のところ、私も丁寧な言葉遣いをするのはあまり得意ではなくてな。助かるよ」
相手の雰囲気から弟と話しているような錯覚を覚えつつあった凜子としては、その方が気が楽だった。ここに連れて来られてからというもの、姉という立場を忘れていたが、久しぶりにそのことを思い出したような気分になる。
気づけば、頼りなさげなこの青年に自分の弟を投影していた。達郎との仲は良好だが、別にブラコンというほどではない、と思っている。それでも、久しぶりに身内を思い出させるような雰囲気に、凜子はこの青年の力になりたいと思っていた。いや、そもそもVIPとして丁重にもてなさなくてはならない客だ。満足して帰ってもらわなければ、リーアルになんと言われるかわからない。
「それで、このまままったりお茶を飲みながら和むのもいいが……。男になれ、と父親に言われてきたのだったな。……私なんかでよければ、協力するよ」
「えぇ!? で、でも……」
「ここはそういう店だ。君もわかっているのだろう? ……それに、興味がないわけでもないはずだ。私の胸を気にしながらも見ないようにしていた様子だしな」
「あ、え、えっと……。ごめんなさい……」
図星を突かれたらしく、青年はまたしても縮こまってしまった。しかし凜子は微笑を浮かべ、その顔を覗き込む。
「謝る必要はない。男としては正常な反応だと思う。それとも……初めての相手が娼婦の私では、不満か?」
「そ、そんなこと! ……むしろ勿体無いぐらいです」
「じゃあ……始めてもいいか?」
官能的な表情で凜子は尋ねた。まるでその瞳に魅入られたように青年は凜子の顔を見つめたまま、ゆっくりと頷く。それを確認し、艶やかな唇が震える唇へと重ねられた。
「んっ……。んんっ……」
2人の甘い吐息が部屋に響く。口内を割って舌が進み、絡み合う。初めは戸惑った様子だった青年もだんだんとなれてきたのか、凜子にリードされる形で次第に積極的になってきていた。
「んぅ……んぁっ……。どうだ? キスするのも、初めてだろう?」
「あ……はい。女の人の唇って……柔らかいんですね……」
思ってもいなかった感想に、凜子は小さく笑った。それから顔を離し、飲みかけのお茶を受け取って移動させつつ尋ねる。
「何かリクエストはあるか? 基本的に、何でも応じるように言われている」
「じゃあ……。これから凜子さんのことをお姉さんだと思ってしてもらっても……いいですか?」
再び予想外の内容だったために虚を突かれる。青年は補足しようと慌てて付け足した。
「その、僕は一人っ子で……。兄弟がいなくて、ずっと頼りになる兄か姉がいればと思っていたんです。それこそ、凜子さんみたいなお姉さんが欲しかったんです」
「なんだか……照れるし複雑だな。私には実際弟がいるわけだからな……」
「そう……ですよね。ごめんなさい……」
「あ、いや……。構わない。客の要望には応じるのが、ここのルールだ。……じゃあ今からしばらく、私は君の姉だ。それでいいか?」
相手の青年は途端に顔を明るくし、頭を下げて感謝の言葉を述べる。その様子を見て、そして自分が姉として演じるということでなおさら本当の弟と接しているように錯覚してしまっていた。
(ますます達郎だな……。いや、いかん……。そんな考えは捨てよう。今の私はただの娼婦……客の要望で姉を演じるだけの娼婦なんだ)
思考を切り替え、凜子は再び唇を重ねた。リードして舌を絡ませながら、手を相手の股間へと当て、ズボン越しに手を這わせる。
「あっ……! 凜子さん……それ……!」
「こら、今の私は君の姉だ。それ相応の呼び方をしてくれないか?」
「ご、ごめんなさい……姉さん」
自分で呼ぶように言っておきながら、「姉さん」と呼ばれると不意に心臓が高鳴った。いざ呼ばれてみれば懐かしいような、それでいて新鮮な思議な感じだった。「凜子姉」と呼ぶ達郎とまた違う呼ばれ方に、別な弟が本当に出来たような錯覚さえ覚えそうになる。
キスを交わしつつ、凜子は相手の股間を擦り続けた。次第に膨らむそこを、相手は恥ずかしいと思っているのか、困ったような表情を浮かべ、どうしたらいいかわからないという風な様子だった。
「恥ずかしがる必要なんてない。それに私を好きなようにしてくれ。ほら……このおっぱい、ずっと気になっていたんだろう?」
いまひとつ踏み込めない擬似弟の手を取り、申し訳程度に隠していた布を取り払って自分の豊満な胸へと触らせる。少し抵抗感がある様子だったが、性への好奇心が勝ったのか、恐る恐る指に力を込め、感触を確かめるように指を動かし始めた。
「どうだ? 私の……姉の胸を触った感想は?」
「柔らかい……。女の人の胸、こんなに柔らかいなんて……」
「遠慮しなくていいぞ。少し乱暴なぐらいでも……ああっ……私は気持ちよく感じるからな……」
凜子の言葉尻に甘い色が混じる。その誘うような雰囲気と当人の許可を受け、胸を揉む力が増した。さらに手持ち無沙汰だったもう片方の手も空いていた方の乳房へと伸ばし、捏ね始める。両胸から得られる快感に僅かに身悶えしつつも、凜子はズボンを押し上げる股間を擦り続けた。
「ね、姉さん……! 僕……!」
「ああ……わかってる」
そう言うと凜子はベッドから降り、跪いて相手のズボンを下ろす。そこからこぼれ落ちたペニスは確かに勃起してはいるものの、持ち主の性格を表すように控え目なサイズ。そして何より、勃起した状態でも先端部分しか包皮から露出しておらず、亀頭が皮を被ったままのいわゆる仮性包茎であった。
「……僕、これがコンプレックスなんです。あそこの大きさも小さいし、女の人はこんなのを見たら馬鹿にするんだろうな、って……」
「気にすることはない。医学的にはなんら問題はないそうだ。色々な相手のペニスを見てきたが、人それぞれだ。そこまで心配しなくてもいい」
「そう……なんですか。博識なんですね」
本当は知りたくもないのに睡眠学習で無理矢理学ばされたものだ、と口に出しかけて、凜子はどうにかそれを飲み込んだ。リーアルは奴隷娼婦としてのたしなみやテクニックの他に、そういった雑学的な知識まで刷り込んできたらしい。忌むべき行為ではあるが、異性の知識が皆無と言ってもよかった凜子にとって純粋な知識として捉えられていた。
そそり立ったペニスへと奴隷刻印の浮かんだ舌を伸ばし、ゆっくりと先の部分を舐めていく。入念に舌を這わせ、それが鈴口に触れるとビクッと相手の身体が強張った。
「そ、そこ……!」
「気持ちいいだろう? もっと気持ちよくしてやるからな……」
「で、でも……。そんなところ汚いから……」
「汚くなどない。……弟の身体が、汚い訳ないだろう?」
いつしか、本当に姉であると思い込みかけてしまう奴隷娼婦。やりすぎはよくないとわかっていても、身を委ねたいという誘惑があることもまた事実だ。これまでもっと汚らわしいペニスを持つ者の相手をさせられたこともある凜子は、嫌悪感など全く感じずに舌で奉仕し続け、やがてそれを口の中へと咥えた。
「う……あっ……!」
慣れない刺激に弟代わりの青年が反射的に声を上げた。だがリードする側に回っている凜子にとってその反応が実に心地よく、ジュルジュルと音を立てて皮とペニスの間に舌を潜り込ませて愛撫していく。
(あぁ……。このチンポ……なんて美味しいんだ……! 今まで相手にしてきたケダモノ共のモノと違って、初々しい臭いと味が広がって……。弟の包茎童貞チンポ……たまらない……!)
口の中で器用に皮を剥き、今度は亀頭へと舌で奉仕する。恥垢を丹念に舐め取るように舐めまわした後、口を
「そ、それ……!」
「んっ……んじゅるっ……。ろうら? きもひいいらろ?」
初めて受けるフェラチオの快感に、青年の身体が大きく震える。ペニスの根元まで咥え込み、それから亀頭付近まで唇を戻す。凶悪なサイズでもないために全く苦にならない口淫に、やっている凜子まで昂り始めていた。
「ぷあっ……! これ以上このペースで続けたらもう出てしまいそうだな。でもそれでは勿体無い。もう少し、口で続けたいが……いいか?」
「は、はい……。任せます、姉さん……」
姉さん、という単語が聞こえるたびにキュンと胸が高鳴る。今すぐにでも射精させ、それを飲み干したい衝動を抑え、今度は陰嚢へと舌を伸ばした。2つ並んだ玉袋の皴を伸ばすように舌を動かし、睾丸の入った袋を口に含んで動かす。娼婦としての経験は浅いものの睡眠学習によって性技を刷り込まれ、実技研修でゾクトを唸らせたほどの舌使いは、女を知らない青年にとってはどれも甘美で、刺激的であった。
「す、すごい……! 気持ちよすぎて……!」
「タマもいいだろう? そろそろ出したいか……?」
「だ、出したい……! 姉さん、僕もう……我慢できない……!」
「そう焦るな。お前の大好きなここで、最高に気持ちよくしてやるからな……」
そう言うと凜子は再び竿部分へと対象を戻し、自慢の豊満なバストを寄せ、作った谷間でペニスを挟み込んだ。そこで
「お、おっぱいが……。僕のあそこを包んで……!」
「ちゅぱ……んちゅ……。気持ちいいだろ? もう我慢しないでいいぞ。姉のパイズリで、思いっきり出してくれ」
凜子の胸を動かすペースが速まる。それに呼応するように挟み込まれた肉槍はビクビクと脈打ち、もうすぐ限界を迎えることを表していた。姉として、この弟の精液を沢山出させてやりたい。その一心で凜子が遮二無二ペニスを刺激し続けると、とうとう青年が悲鳴を上げた。
「出、出るっ……! 姉さん……あ、ああっ!」
勃起していた怒張が爆ぜ、白濁液が凜子の顔へとかかる。熱い精を浴びながらも、凜子の顔は恍惚としていた。舌を伸ばして口元についた精液を舐め取って喉を鳴らし、その味に全身が打ち震える。
(苦くて美味しい……。初々しい味だ……。これが弟の味……。達郎もこんな味なのだろうか……。もう……たまらない……!)
止められない欲求に従い、指で顔に飛び散った精液を
「ご、ごめんなさい。堪え性が無くて、すぐ出してしまって……。しかも顔に……」
「そんなこと気にしなくていい。それより……気持ちよかったか?」
「もう、すごく……。自分の手でするのと……全く違いました」
「そうか、よかった。……それに、まだまだ元気そうだしな」
凜子の視線は青年のペニスに注がれていた。出したばかりだというのにさほど萎えていない。サイズも出る量もさほどではないが、若いからか1度の射精で衰えないというのは、身体のスイッチが入ってしまった凜子にとって重要なことだった。
「もう私のあそこがチンポを欲しくてウズウズしてるんだ。ほら、見てくれ……。こんなにグチャグチャになってしまっている……」
そう述べると、凜子は腰を突き出して秘唇を指で開いて見せた。クパァと中を見せた膣口から溜まった愛液が糸を引いて零れ落ち、身体が発情状態にあることは明らかだった。
媚態を晒す凜子の女性器に、青い男子の興味の目は釘付けになっていた。生唾を飲み込み、まじまじとそこを見つめる。その様子にすぐにでもペニスを飲み込みたいという衝動を抑え、少し遊んでみようという悪戯心が生まれた。
「ふふふ……。そんなにじっと見つめてどうした? 珍しいか?」
「はい……。女性のあそこを見たのなんて……初めてで……」
素直な受け答えに小さく笑みがこぼれる。立ち上がった凜子はベッドの上に座ると、膝を曲げて足をM字に開脚し、性器が見えやすい姿勢を取った。
「ほら、これでよく見えるだろう……? さあ、姉さんのスケベマンコを好きなだけ弄るといい」
「こ、これが……。女の人の……」
「なんだ、見てるだけでいいのか? 弄っていいんだぞ? 指を出し入れして、姉をイかせてくれ……」
弟を演じる青年の指が伸びる。ヒクヒクとオスを求めて収縮を繰り返す膣穴に中指が押し込まれ、快感の電流が身体を走った。
「あ、あぁ……」
「姉さんのあそこ……。指をすごい締め付けてくる……」
「気持ちいいからな……。さあ、好きなように動かしてくれ……」
その助言を受け、ゆっくりと指が動かされる。普段捻じ込まれるペニスや娼婦披露会のときに咥え込まされたディルドなどからすると比較にならないほど細い指であるが、「相手が弟」というこのシチュエーションの影響もあって、膣壁をなぞり上げられるたびに普段以上に身体は敏感に反応していた。
「あぁ……あんっ……。い、いいぞ……。でも少し、女性を丁寧に扱いすぎじゃないか……?」
「え、えっと……。あまり気持ちよくない……ですか……?」
「いや、気持ちはいいが……。ふぅっ……。少々じれったいな……。もっと激しくしてもらってもいいか……?」
「こう……ですか?」
これまで恐る恐るという具合で出し入れされていた指が速度を増す。途端に凜子の腰が小さく跳ね、膣壁からは粘つく液体があふれ出してきた。
「あ、あぁ……! いい……! あっ、ああっ……」
感じ始めたその様子に自信を持ったのか、指の動きに躊躇がなくなった。激しさを増した刺激にここまでリードし続けてきた立場が交代し、初めて相手に主導権が渡る。艶のある喘ぎ声と指を動かすたびに聞こえる水音が辺りに響き、淫靡な雰囲気を作り出していた。
「あっ、あっ、あっ……。は、あぁっ……! そ、そのまま……続けてくれ……」
だが凜子がそう言った時、不意に指の動きが止まった。
「ど、どうした……? なぜやめる……?」
「さっき姉さんは僕のを舐めてくれたから……。僕も口でしてみたいんですけど……いいですか?」
好きにしていい、と言っているのに丁寧に許可を求める姿に思わず顔がほころんでしまう。
「ああ、勿論だ。好きなように舐めてくれ……」
姉からの許しを得た弟は舌を伸ばし、膣口を舐め上げた。これまでと異なる生暖かい感覚。犬のようにひたすら秘部が舐められ、ピチャピチャと唾液と愛液が交じり合う音が響く。
「あっ……はぁっ……。どう……だ……? 私のあそこ……どんな感じだ……?」
「甘酸っぱい匂いがして……。なんだか……変な……エッチな味です」
「エッチな味、か……。ふふっ、面白いことを言うな」
艶かしい笑みを見せ、だが次にもうその顔は快楽で蕩けた。次第に身体は絶頂を迎えようとしているが、いまひとつそれに向けての刺激が足りないことにもどかしさも感じる。もっと激しくしてほしい。入り口だけでなく、奥まで刺激がほしい。
そう思っていた時だった。不意に舌先が膣口の上、勃起していた肉芽に触れた。瞬間、凜子の身体が強張り、上半身が仰け反る。
「ひゃああぁんっ!」
「ご、ごめんなさい! 僕何か……」
「ち、違うぅ……! そこ……クリトリス……もっと舐めて……」
「ここ……ですか?」
陰核へと舌が這う。再び悦波が身体を襲い、凜子は嬌声を上げて歓喜した。
「そ、そこぉ……! あ、ああっ……! いい、クリトリスペロペロ舐められて……私、もう……!」
「姉さん、イクんですか……?」
「あ、ああ……! もうイってしまう……! ガチガチに勃起したクリトリス弟に舐められてイクうッ……! あ、あ、あひゃああああああああぁんッ!」
全身を痙攣させ、凜子は大きなオーガズムを迎えた。余りの快感にプシッと股間からは潮を吹き、舐め続けていた青年の顔へと飛沫がかかる。
「はぁ……はぁ……。す、すまない……。顔を汚してしまって……」
「いえ、大丈夫です。僕もさっきやってしまったし、お互い様です。それで……これ、潮……ですよね?」
「ああ。そのぐらい気持ちよかった、ということだよ。……さて、私ばかり気持ちよくなっていてもよくないな。いよいよこの姉マンコに、君の弟チンポを入れてほしいんだが……いいか?」
「はい。1回出したはずなのに、姉さんのエッチな姿を見てたら、また興奮してきちゃって……」
青年の言葉通り、彼の股間はもう我慢できないとばかりにそり立っていた。先ほど嚥下した精液の味を思い出し、無意識に喉を鳴らす。
凜子は青年に横になるよう指示し、自分はその上に跨る形を取った。姉と弟という演技でのプレイなら、これまで同様自分がリードすべき。そう考えての判断だった。
「じゃあ……入れるぞ」
いやらしく蠢く膣口へとペニスを当て、ゆっくりと腰を沈めていく。膣壁を割って入ってくる若々しいオスの感触に、凜子の顔に恍惚とした色が浮かんだ。
(き、きたぁ……! 大きくも太くもないのに……弟チンポ……気持ちいい……!)
姉としてすっかりのめり込み、倒錯的な思いすら背徳の快感へと昇華させてしまう。ここに連れて来られてから幾度となく性交を強要されたが、身体は堕ちつつも心では拒絶することがほとんどだった。しかし今回は違う。ほぼ初めてと言ってもいい、心が率先的に受け入れての性交。そのために、これまで以上の快感が凜子の身体に広がっていた。
「あ、あ、あぁ……!」
「う、ううっ……! ね、姉さんの中……うねうねって……!」
ペニスが根元まで埋没したところで、2人は互いにそう歓喜の声を上げた。そのまま快感を貪るように、凜子は腰浮かせては落とし、抽送を始める。
「あん、あん、ふああああぁんッ! あはぁ……腰……止められないぃ……!」
完全にスイッチの入ってしまった凜子の蕩けた声が響く。自分主導で腰を動かせるために微妙にポイントを動かし、感じやすいGスポットを擦るように調整する。先ほどのクンニリングスで1度絶頂を迎えた身体はより敏感になっており、Gスポットを刺激されるたびに凜子の身体には小さなオーガズムが訪れていた。
「姉さん……そんなに腰を動かして……。あぁ……」
と、聞こえてきた声で、夢中だった凜子はようやく相手の視線に気づいた。騎乗位で腰を振っていたために爆乳が激しく上下に揺れ、それを恨めしそうに見つめていたのだ。自分の快楽で頭が一杯になって気配りが出来なかったと反省し、凜子は前かがみになって胸を近づける。
「あ……」
「ほら……これが気になるんだろう……? いいぞ……。揉んでも吸ってもいい、私のこのいやらしいおっぱいをめちゃくちゃにしてくれ……」
手持ち無沙汰気味だった精神的弟への姉の配慮。前屈みになったことで目の前へと迫ったたわわな果実に、ここまで奥手だった青年が自ら手を伸ばした。先ほど1度触ったその感触を再度確かめるように、ぐにぐにと揉みしだいていく。
「はぅん……。い、いいぞ……。もっと……あぁ……乳首も虐めてくれ……。口で吸って……あ、はぁん……歯を立てたっていい……!」
言われた通りに青年は豊満な胸へと吸い付いた。騎乗位の上下運動で激しく揺れる乳房を逃がさないように乳首を口に咥え、歯を立てて軽く甘噛みする。
「はひゃあああぁんッ!」
嬌声と共に凜子の腰が一瞬止まった。慌てて口を離して謝罪の言葉を述べようとした青年だが、その相手の顔が快感で蕩けきっているとわかると、言葉を飲み込み、代わりに再び乳首へと口をつける。
淫らな擬似姉弟のデュオは、より激しく奏でられていた。ずっと余裕のある様子でリードし続けた凜子も、膣に男を受け入れて自ら動き、同時に胸を責められていることでその余裕が無くなり、代わりに青年の方がより凜子を気持ちよくしようと腰を跳ねさせてより深く挿入しようとする。まるで本当の弟と心を通わせることが出来たかのような錯覚に、凜子の心にある種の達成感のような幸福が満ち溢れていた。
「ね、姉さん……! 僕、もう……!」
その時、「弟」が切羽詰ったような声を上げた。それに対して「姉」は優しく声をかける。
「ああ……。いいぞ、私の中に思いっきり出してくれ……!」
「で、でもそれじゃ……!」
「いいんだ……! 姉の子宮に、弟の子種汁を出してほしい……! 私は、お前の精液を中出しされてイきたいんだ!」
切実な凜子の欲求に小さく頷くと、青年は身体を起こす。自然と対面座位の体位に移行し、より激しく積極的にピストンし始めた。
「あ、ああっ! 突かれてる……! 私の、姉のオマンコ、弟チンポにズコズコ突かれてるううぅッ!」
能動的に動いてきたのがここに来て受動へと変わり、たまらずに髪を振り乱して悶える。ペースの早まりから、もう間もなく待ち望むときが来ることが、本能的にわかっていた。
「で、出るッ……! ああ、姉さん、姉さん!」
「出してッ……! 私の中に、熱い弟ザーメン沢山出してええええぇッ!」
凜子が吠えた瞬間、胎内に熱い濁流が流れ込んだ。一滴たりとも逃すまいと自らの子宮口に押し付けたペニスから精液が
「き、来てる……! 私の子宮に……精液沢山……! あ、ああ……イク……! イク、イク、イクイクイクイクイっちゃううううううぅぅッ!」
上半身を弓なりに仰け反らせ、凜子は深く甘い絶頂を極めた。最後の最後まで精を搾り取ろうと膣は幾度と無く収縮を繰り返し、その度に身体が官能的な悦びで打ち震えた。
「あ、あ、あぁ……。すごい……。こんな……こんな凄いアクメ……初めて……」
身体だけでなく、心まで満たされるエクスタシーの余韻に凜子は酔いしれる。相手の青年がこの日女を知って男になったのと同様、自分も初めて、本当の意味で女としての悦びを知ったのだと、定まらない視点で虚空を見つめながら思っていた。
◇
激しく絡み合った性交を終え、シャワーを浴びてから部屋のベッドに2人は腰掛ける。シャワー後の冷たい飲み物を持って来てくれた凜子に小さく礼を言いつつ、青年はそれを口へと運んだ。
「……ありがとうございました。最後、身体まで洗ってもらって……」
「何、あれもサービスだ。昔、弟と一緒に入ったときのことを思い出して、懐かしくて楽しかったよ。……まあ本音を言えば、まだ元気があるようならそのままもう1度、というのも考えていたがな」
「う……。ごめんなさい……」
シャワーの際、凜子は自慢の胸をはじめとして、身体を押し付けるようにして相手を洗っていた。普通の男性ならこれで間違いなく股間が反応しそうなものだが、2度の射精を経た、元々精力がある方でないらしい青年はそうはならなかった。あまり負担をかけるのもよくないと、凜子も自重したために今こうして和んでいるわけである。
「いや、無理をして君に何かあったら大ごとだからな。私も怒られかねん。……せっかく気持ちよく終わったんだ、その方がお互いにいいだろう? あ、いや……その前に気持ちよかったのか、聞いていなかったな」
「言うまでもないことじゃないですか。言葉じゃ言い表せないぐらい気持ちよかったですよ。……僕を男にしてくれて、ありがとうございます」
小さく下げられた頭に、思わず凜子は恐縮してしまう。
「そ、そんな改まって言われると、なんだか……」
「あはは……。凜子さん、凄くクールでかっこいいのに、そうやってどぎまぎするとかわいいですね」
「か、かわいいとか……! そんな、いきなり言うんじゃない……」
顔を真っ赤にし、凜子は飲み物を飲んで誤魔化そうとした。その様子を見て、青年はもう1度小さく笑う。
「とにかく、今日はありがとうございました。こんなことを言うのは変かもしれませんが……もし良かったら、また凜子さんに会いに来たいです」
「ああ、私も……」
そこまで言ったところで、凜子は言葉を切った。姉を演じる以前に娼婦である間はそうなるよう演じていたのだが、危なく完全に失念するところだった。いつまでもこんなところにいる気はない。賭けに勝ち、ゆきかぜが解放されて仲間が助けに来るまでの辛抱として、自分はここで奴隷娼婦という立場を甘んじて受け入れているだけなのだと思い出す。
「あの……もしかして、嫌……ですか?」
「あ、いや、そうではない。私もまた君になら会いたい。それは本心だ。だが、ずっとここにいるかどうかは……私もわからないからな」
「そう……ですか……」
青年の表情が暗くなるのを見て、少し胸が締め付けられる感覚を凜子は覚えていた。だが対魔忍である以上、いつまでもここにいたいなどと願うなど論外。可能な限り早く脱出しなければならない。
そっと相手を胸元へと抱き寄せる。そしてなだめるように優しく頭を撫でながら語りかける様子は、まさに本当の姉弟のようでもあった。
「出会いがあれば、別れがある。人の一生なんてものは、そんな一期一会の繰り返しだ。だから私のことは、君の心の隅にでもしまっておいてくれ」
「凜子さん……」
「そしてそういう過去を糧として、自分の足で一歩を踏み出すんだ。……君がそんな強い男になってくれることを、私は願っているよ」
胸に顔を埋められた青年が「……はい」と短く、だが力強く答えるのがわかった。それだけで充分だった。意図せず凜子の顔が緩む。
「……さあ、そろそろ時間だ。今日は君と肌を重ねられて嬉しかった。縁があれば、また会おう」
「はい。今日は本当にありがとうございました」
相手は立ち上がり、深々と頭を下げる。それから部屋の入り口へと向かおうと数歩足を進めたところで不意に歩みを止め、凜子の元へと駆け戻ってくる。何事かと問うより早く。顔を引き寄せられ、凜子の唇に彼のそれが重ねられた。
「……ありがとう。さよなら、『姉さん』」
そう述べ、青年は微笑を浮かべて部屋を後にしていった。呆然と見送った凜子は、ややあってからその唇をどこか寂しげに指でなぞる。それからポツリと、独り言のように呟いた。
「……ああ、さようならだ、『弟』よ」
自分には本当の弟がいる。その弟の元に帰るためにも、どんなことがあろうとここから抜け出さなくてはならない。その日まで己の心を絶対に保ち続ける。精神的な弟との今日の出会いはその心をより強く持たせてくれると、凜子はそんな気がしていた。