※この作品はR-18です。

堕落の空装武神   作:天木武

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ミッドナイトミラージュ

◇

 

 

 リーアルとの約束の期間もついに残り1日となった。だがタイムリミットに近づくにつれ、ラストスパートとばかりに課せられる責めは苛烈になっていった。

 

「あっ、あっ、ああああぁッ! 前も……後ろも……そんな激しくされたら……!」

 

 それはゆきかぜに限った話ではない。確かにゆきかぜは訓練を終えた後に秘所への刺激を遮断され、心を折る目的で不浄の穴を犯され続けているのは事実だ。しかしリーアルの命令に従えないとなった時点で負けとなる凜子もまた、その対象であった。

 今、凜子は自室で客を取って身体を売っている最中だ。しかもその相手の数は2人、加えて人間よりも大柄で筋肉質な魔族の男達である。

 

「激しくされたらどうなるんだ? 何も考えられなくなって狂っちまうか?」

 

 体格だけでなく、局部のサイズも巨大な男によって身体が揺さぶられる。膣と肛門をそれぞれペニスで貫かれ、男に抱え上げられた状態で前後から挟まれてのサンドイッチファックに、すっかり娼婦として慣れてしまっている凜子は耐えられず悦びの声を上げた。

 

「あああーッ! す、すごい……! あそことお尻がぁ……!」

「こうされるのが好きだろ? 昨日もこうされて大勢の前で何度もイッてたもんな」

「むしろそうされたかったから、昨日は前と同じ相手なのにわざわざ負けたんじゃねえか?」

「ち、ちが……! う、く、ああああぁッ!」

 

 娼婦となってからしばらくは客を取らされ続けていた凜子だが、数日前から再び地下アリーナでのショーに参加させられていた。VIPの割り込みで1度は立ち消えとなったが、日取りを改めて再び予定が組まれた形である。

 その復帰戦においては勝利を収めていた。相手はコウモリ使いの魔族の少女。見た目に騙されてはいけないということは先日のアネモネとの戦いで身に染みている。しかし相手はうまく力を制御できなかったか、大した攻撃も出来ずに凜子に刀を突きつけられて呆気なく降参した。魔族とはいえ見世物として相手が犯されることに心を痛めつつも、その日は凌辱ショーを回避することが出来たのだった。

 

 しかし昨日の戦いではそうはいかなかった。相手はかつて煮え湯を飲まされた、あのアネモネ。凜子にとってリベンジマッチとなった戦いだが、相手の手の内を知っているはずなのに、またしても死神の呼び糸(アヌビス・コール)に捕縛され、力を吸収されて敗北した。そして大勢の前で幾度となく絶頂を迎え、口と膣と肛門を汚されてしまったのである。

 

「違う? でも三穴責めでイきまくってたのは事実だろ? それに……おっぱいもあんなことになっちまってよ」

「やっ……やめろ……! そ、それだけは……!」

 

 アナルを犯し続ける男が後ろから乳房を揉みしだく。傍から見ただけでは何も変なところなど無いように見えるそこは、昨日の公開陵辱ショーの時から異変が起きていた。

 

「やめろとか言ってる割には、昨日は随分と喜んでたじゃねえかよ。ほら、こうされると……」

「あ、あ、あああああッ! ダメ……ダメえええええええええッ! おっぱいがジンジンしてきて……! あ、ああ、出る……出ちゃうううううううぅッ!」

 

 ブシッ、ブシャッと凜子の乳腺から勢いよく白い液体が噴き出した。だがそんな異様ともいえる光景を見ても男達が驚く気配はない。

 

「ハハハ! すげえ勢いじゃねえか!」

「どれ……。お、ほんのり甘くてうまいぜ、お前のおっぱい」

「あ、あぁ……。く、うぅ……」

 

 快感と同時に訪れる耐え方がわからない脱力感に、凜子が身体を震わせる。子供を身ごもった、という類がこの現象の原因ではない。

 昨日、敗北後の凌辱ショーの時のことである。リーアルの命令ということで亜人がある薬物を打ち込んだ。それが魔界の医療技術によって作り出された、一時的に母乳が出てしまうように身体を改造する薬だったのだ。

 結果、凌辱時にそのことを利用して身体を玩具のようにされた。アネモネの糸で乳房を絞り上げられて乳絞りを強要され、その度に母乳を噴出して胸による絶頂を極めてしまう。男性でいう射精のような解放感に、疲労を感じつつも性感帯の胸は蕩け、乳絞りの度に客達を大いに沸かせた。

 

 しかもその薬は数日間効果が持続するという悪辣なものだった。賭けの期間の最終日まで、この異常体質状態のまま過ごさなくてはならない。案の定、凜子を抱きに来る男達は皆母乳が噴き出ることを面白がって執拗に胸を揉み、吸い付いてきた。未経験の快感に戸惑いながらも身体は正直に反応してしまい、凜子は度重なる射乳責めに悶え続けていた。

 

「よかったなあ、凜子ちゃん? こんなうまい母乳が出せるなら、いい母親になれるぜ?」

「何も……よくないぃ……! ああッ!」

「くそっ、お前ばっかずるいよな。じゃあおっぱいの代わりに……俺はここでもしゃぶることにするかな」

 

 後ろからアヌスを抉り続けていた男は、乳房に吸い付く前の男へと文句を述べた後で、凜子の腋の下へと舌を這わせた。

 

「あっ、ああああっ! そ、そこぉ……!」

「もうヨミハラ中で有名だぜ? 斬鬼の対魔忍様は腋マンコが弱点だってな」

「そんなこと……! あ、ああひゃああああっ! やめて……腋の下はいやああああああぁッ!」

 

 腋窩を舐めしゃぶられ、羞恥心と嫌悪感が煽られる。だが、それと別にむず痒さと同時にゾクゾクと駆け上がるものがあるのも事実だった。どんなに心で拒絶しようとしても止められない。膣、肛門、乳房に加えて腋の下という4点責めが、凜子の心を追い詰めていく。

 

「う、くうぅ……! あっ、あっ、ああぁんッ!」

「甘い声出しやがって、エロ女め」

「ち……がうぅ……! ああっ……! わ……私……エロ女なんかじゃ……」

「いい加減認めちまえよ! 気持ちよくてもうイきそうなんだろ、ほら!」

 

 腕の付け根を舌で舐(ねぶ)っていた後ろの男が腰を突き上げる。

 

「あッ……! がはッ……!」

 

 下腹部に広がる圧迫感に凜子の顔が強張る。だが苦しみを感じたのは一瞬だけ。次に4箇所からの快楽が迫ると、それすらスパイスとして昇華させていた。

 

「お、おおおおおッ! お尻……お尻ィ……!」

「エロくなかったら、ケツをこんな風に抉られて感じるなんてことはねえんだよ! しかも激しくされるほどに感じやがって!」

「じゃあリクエストに答えてやるとするか。ガンガン突きまくってやるからイきまくれよ。それで中にたっぷり出してやる」

「お、いいねえ。本気でいくとするか」

 

 抱えあげた凜子の身体を固定し、前後から腰が激しく打ちつけられた。胸と腋への責めは緩んだ代わりのハードピストンに、凜子は髪を振り乱してよがり狂う。

 

「あ、あ、あああああああーッ! うああああッ! んおおおおおぉーッ!」

「ハハッ! まともに喘ぎ声もあげられねえか! まるで獣だな!」

「中ビクビクして、イってやがるのか? でも休ませねえぜ。俺達がイくまでイきっぱなしになってな!」

 

 断続的なオーガズムの波が訪れ、それが引く前にまた次の絶頂がやってくる。気を失うことも許されず、快楽の渦の中に飲まれた凜子は身悶えることしか出来なかった。

 

「そろそろ出すぞ……! ちゃんと子宮で受け止めやがれ!」

「こっちもだ! オラァ!」

「やっ……やめッ……! あ、あ、ああああああああああッ!」

 

 膣と直腸に熱い精を浴び、凜子は身体を震わせて一際大きく達した。抱え上げられた身体が震え、薬の影響を受けた胸からは母乳が噴き出る。しかし絶頂感が収まる前に、先に射精を終えた男達はもう用はないとばかりにベッドへとその身体を放り投げた。

 

「あ、あ、あぁ……。う……あぅ……」

 

 乱暴に扱われてまともに思考すら働かず、凜子は身体を震わせることしか出来なかった。そこに男達の無慈悲な声が聞こえてくる。

 

「よし、次は前後交代だな」

「ああ。母乳が出なくなるまで飲んでやる」

 

 暴虐の限りを尽くされ、心が音を上げそうだった。しばらく前に娼婦の方が戦うより楽だとさえ思えたのはまるで嘘だったように思える。

 

(それでも……あと……1日なんだ……)

 

 ようやく巡らせられた思考で、凜子はそう自分に言い聞かせる。期限間近、だからこそリーアルは焦って、こうして自分への責めを激しくしたに違いない。ここさえ乗り越えれば、ゆきかぜは自由の身となる。そういう約束だと、自分を奮い立たせようとした。

 

「おい、いつまで伸びてんだ? 時間の限り犯し続けてやるって決めてんだ、次いくぞ」

「そ……そんな……。もう少し……休ませて……」

「あぁ? 奴隷娼婦の癖に客に口答えすんのか? ……こりゃあ身体に直接分からせてやる必要があるな」

「確かにな。まあどっちにしろ手を緩める気はねえんだけど」

 

 勝手な言い分と共に、さっきアナルを犯し続けていた男が凜子を正面から抱え上げた。そして挟み込んだ男と同時に、2箇所への挿入を始める。

 

「う、ぐぅあああああああぁッ!」

「おお、マンコもアナルに負けないぐらいいい締りじゃねえか。んじゃ、あとはおっぱい、と……」

 

 ピストンを開始しながら乳首へと口がつけられる。まだ先ほどの絶頂の波が引かないうちの再開に、凜子は苦しげに声を上げた。

 

「あっ、ああああッ! ま、まだ……身体がぁ……!」

「関係ねえよ。声出せるなら十分だ。オラ、あんあん喘いでどんどん締め付けろ」

「いやぁ……! いやああああああぁッ!」

 

 凜子の声が部屋へと響き渡る。しかしそれでもあと1日、どうにか耐え切ればいい。その思いと共に、凜子の心は官能の波へと飲まれていった。

 

 

 

◇

 

 

 一方、ゆきかぜも凜子同様に客を取らされていた。相手にしているのは魔族との混血と思しき男。リーアルとそこそこの親交があったらしく、奴隷娼婦見習いとして研修中というゆきかぜの話を聞いて是非指名したいと言ってきたという話だった。

 そのリーアルと似ているかのように腹は突き出し、年は中年といったところだろうか。ゾクトのような激しさは無いものの、陰湿さにおいては奴隷商人の比ではなかった。

 

「ゆきかぜちゃん、僕のオチンチン入れてほしくなったらいつでも言うんだよ?」

「そんな……こと……。あ、あああっ!」

 

 全裸で四つん這いの姿勢を取らされ、ベッドに結ばれたロープによって四肢を縛られたゆきかぜがシーツに爪を食い込ませながら喘ぎをこぼす。男はまだ自身の性器を挿入していない。最初に胸を愛撫し、それが終わった後は現在の姿勢を強要させて器具でアナルを責め始めた。ゾクトに抱かれてから既に数人の客の相手をしているが、ここまで基本的に激しいアナルセックスがほとんどだったために、趣向の異なるこのプレイに戸惑ってもいた。

 

「まあ言わないなら言わないでいいよ。まだ時間はあるからね。言ったら入れてあげる。でもゆきかぜちゃんのイクところが見られれば、僕は満足だからね」

「う……くうっ……。あ、ああっ、ああああああッ!」

 

 お尻の穴を抉り続けるアナルバイブの出し入れと震動で軽く達してしまう。それでもお構い無しに男は器具を動かす手を休めようとはしなかった。

 

(こいつ……なんで……。自分の快感なんて二の次……私がイっちゃうところを見て楽しんでるなんて……!)

 

 擬似凌辱で体感させられたシチュエーションの中にはそういうものもあった。だが現実で、しかもここまで頑なに器具による強制絶頂を強いられるとは思ってもいなかった。

 もしかしたらリーアルはここまで計算尽くなのかもしれない。これまでと異なるプレイを体験させることで揺さぶろうとしているのではないだろうか、という考えが思い浮かぶ。

 

(何をしてきても関係ない……。あと1日……あと1日なんだから! もうこんなに汚された私だけど……でも達郎ならきっと迎えて入れてくれる……。そして、私はお母さんを捜さないといけない……! 私を信じてくれている凜子先輩のためにも、もう少し……もう少しだけ耐えれば……!)

 

 一度はゾクトによって壊されかけた心だが、待っていてくれるはずの恋人の達郎、自分が捜し出さなくては母親の不知火、そして身をなげうってくれている相棒で先輩の凜子という親しい人達への思いだけを支えに、どうにか持ち直していた。それでも初めてを奪われた、という事実は彼女に重くのしかかる。だが1番大切な場所はまだ守れているのだ、と自分に言い聞かせていた。

 しかし、同時にその最後に守られた聖域が、彼女にとって重い枷となってもいた。訪れる絶頂は肛門でのみ。事実、ゆきかぜの身体には果ててはいるものの、どこか満たされないもどかしさが生まれてもいた。同時に、ずっとお預けを食らっている子宮への刺激もますます恋しくなっていた。

 

(だ……ダメ! そんな欲望に飲まれちゃ……!)

 

 自分にそう強く言い聞かせると同時、角度をつけるようにアナルバイブが押し込まれた。腸壁越しに渇望する膣への刺激が下腹部に響き、頭が真っ白になる。

 

「あああーッ! それ……それええええぇ!」

「なるほど、ゆきかぜちゃんはアナル側からオマンコを小突かれるのが好きなのか。まあ自分でオマンコ弄れないんだからしょうがないよね。ほら、我慢しないでイッちゃえ」

 

 小馬鹿にしたような言い方に心は苛立っていた。が、身体は与えられる刺激を甘美に感じ、上り詰めようとする。

 

(こんなムカつく喋り方する奴にいいようにされて……! あぁ……でももうダメ……! 仕方ないの……私は娼婦で言うことを聞かないといけないし、もう身体が変になっちゃったから……しょうがないの……!)

 

 言い訳をするように心でそう思うと同時、急に気が楽になった。拒絶しようとしていた気持ちが解放され、快楽を享受し始める。

 

「あっ、あっ、あんっ……! ああっ……んんんっ……」

「お? 声が変わったかな? 気持ちいい?」

「んくっ……。そんな……」

「正直に言っていいんだよ? ここには僕とゆきかぜちゃんしかいないんだから。意地張るより、気持ちいいのは気持ちいいって言っちゃった方が、ゆきかぜちゃんも楽しめるでしょ?」

 

 楽しむつもりなど無い。そう言いたかったが、もう身体は止められなかった。ペースを上げられた器具の抽送に反応してしまい、制御不能の衝動が押し寄せる。

 

「くうっ……う、あああああぁ……! だ、ダメェ……! もう、もう……私……!」

「イッちゃう? いいよ。ちゃんと見ててあげるから、お尻でイッちゃえ」

「いやぁ……! こんな……! あ、あ、あぁ……! やだ……イク……イッちゃうううっ! あっ、あっ、ああああああああああっ!」

 

 突き出された腰がガクガクと震え、ゆきかぜはアナルアクメを極めた。男性器を挿入されたわけでも無しに、それ以前に性器ではない肛門への器具責めで達してしまったという事実に、一度は快楽に流された心に惨めな気持ちが浮かんでくる。

 

「あ、あぁ……。はぁ、はぁ……」

「イッちゃったね? 気持ちいいのに懸命にそれを我慢しようとするさっきの表情、すごくよかったよ。もっと虐めたくなっちゃうなぁ」

「う、うぅ……」

「それで、どうかな? 僕のオチンチン欲しくなった?」

 

 あくまで陰湿に、心を屈服させて首を縦に振らせようようと男は問いかける。しかしゆきかぜも強情だった。身体を開発され尽くされ、ゾクトに2つの初めてを奪われ、心が砕かれかけてもなお、完全には折れていない。それでもここまでの調教で段々と心にもダメージを負っている。ここで自らの言葉で欲求をしてしまったら、あと1日を耐え切れずにもう簡単に流されてしまうかもしれないと、無言のまま首をゆっくりと横に振った。

 

「うーん、頑固だね。でも僕は嫌いじゃないよ。じゃあ次は……これを使おうかな」

 

 アナルバイブを引き抜きながら、どこか楽しげに男はそう言った。深い絶頂の余韻が冷めやらぬ状態で器具を引き抜かれたことでまた軽くイッてしまいながらも、ゆきかぜは首だけを動かす。そこで男が手に持つ、球体が数個並んだ器具を目にして顔を青くした。

 

「何……それ……」

「知らない? アナルパールっていうんだよ。このゴルフボールみたいな球体をお尻が飲み込むときと吐き出すときに快感を得られるってわけ。あとは押し込まれることで直腸内の圧迫感を楽しむことも出来るかな」

「や……やめて……。そんなの……入らない……」

「大丈夫だって、ゆきかぜちゃんはもう立派なアナリストだから。あ、アナリストってアナルが大好きな女の子のことね。それに先輩の……凜子ちゃんだっけ? その子もこれを全部腸内に飲み込んで、衆人環視の中で手を使わずにひり出したそうだから。……あれ? でも半分で止まっちゃったから、あとはリーアルの奴が手伝ったとか言ってたんだったかな」

 

 ゆきかぜは言葉を失う。あのクールで凛々しい凜子がこんなものを腸内に押し込まれ、人前でそれを手を使わずに排泄のようにひり出す。想像出来なかったし、したくもなかった。こんなものを押し込まれるぐらいなら、この男の、おそらく性格に似て貧相であろうペニスを受け入れた方がかなり気が楽にさえ思えてくる。

 

(でも……それはダメ……)

 

 しかしその考えを自ら否定する。ゆきかぜ自身よくわかっていた。心が弱い方に流れれば、もう立ち直るだけの気力もない。自らの口で懇願する、などということをしてしまえば、今度はお尻ではなく膣にまでも求めてしまいかねない。ずっと子宮は疼き続け、本当なら今すぐにでもそこでの絶頂を味わいたいというのが、浅ましいが本音ではある。だがそれは許されない。あと1日、なんとしてもその期間を耐え切らなければと口を真一文字に結ぶ。

 

「まあとにかく、これを入れてあげるよ。でもオチンチン欲しくなったらいつでも言ってね。じゃあいくよ」

 

 悩める少女のことなどお構い無しに、男は球体の1つ目を押し込もうと力を加えた。しかし大きなサイズになかなか入りそうに無い。

 

「ま、待って! あ、あぁ……! そんなの……入るわけないぃ……!」

「大丈夫大丈夫。最初だけだから。はい、力抜いて」

 

 グポッ、と球体の1つ目が肛門をすり抜けて体内へと入ってくる。その異物感に思わずゆきかぜの顔が引きつった。

 

「あっ……う……あぁ……」

「ほら、もう1個入ったよ。でもあと7個残ってるから、頑張ってね」

 

 明るい口調と裏腹、無慈悲な内容にとうとう泣きがこぼれた。

 

「い……いや……! お願い、もうやめて……!」

「どうして? 気持ちいいでしょ? それとも僕のオチンチンが欲しくなった?」

 

 それだけは絶対に言えない。やはりゆきかぜは口を閉じることしか出来なかった。それを器具の方がいいと男は勝手に解釈したらしい。

 

「やっぱりアナルパールの方がいいんだね。じゃあ2個目いくよ」

「や……やだ……! やめて……! 私……おかしくなっちゃう……!」

「いいよ。お尻でイクことしか考えられないぐらいおかしくなっちゃえ」

 

 2個目の球体が押し付けられる。恥も外聞も捨て、ゆきかぜは泣き叫んだ。

 

「もうやだ……やだぁ……! やめてええええぇッ!」

 

 絶叫が響き渡ると同時。無情にも2つ目の球体が腸内へと飲み込まれる。今さっき上げた叫び声は甘い色を含んだ喘ぎ声へと変わっていた。

 

 

 

◇

 

 

 東京の華やかな街並みから外れたスラム街。昼でさえ不気味なその地区は、今は日が落ちた夜ということもあってなおさら薄気味悪さを漂わせていた。そんな雰囲気に違わず、街はならず者達が溢れ、お世辞にも治安がいいとはいえない。そういった夜の街を女性が1人で歩くなど、自殺行為以外のなにものでもなく、通常では考えられないだろう。

 だがそんな常識などまるで知らないかのように、1人の少女が街の中を闊歩していた。青みがかったストレートヘアに切り揃えられた前髪。冷たさを帯びた目と身体から発する気配が、人を寄せ付けない空気を纏っている。

 事実、彼女に声をかけてくる男はいなかった。いや、少し前にはいたのだが、女性の華奢な身体に似つかわしくないほどの怪力で殴りつけられ気絶していた。その光景を目撃してしまった男達は彼女に声をかけるなどという愚行はせず、さらに瞬く間にならず者達のネットワークでその少女の存在が広まったために、以後絡もうする男達もいなかった。同時に、その人間離れした力を目撃したある者達はこう囁いてもいた。「あの女は対魔忍ではないか」と。

 

 少女は大通りから1本路地へと入り、さらに細い裏道へと躊躇無く足を進めた。だがひと気の無いその細い裏路地で、不意に足を止める。

 

「いるんだろう? 出てきたらどうだ?」

「何しに来やがった」

 

 街を歩いていた少女が辺りに言うと同時。返事の代わりに声がかけられ、カチャリという音と共に後頭部に何かが突きつけられた。

 

「二度と来るんじゃねえって言ったろ」

「それが姉に対する態度か? ……まったく呆れたものだ」

 

 言うなり、怯んだ様子も全く無しに「姉」と言った少女は振り返った。だが後頭部に突きつけられていたもの――拳銃の銃口を避けることなく、その前に頭を置いたまま話し始める。

 

「変わらないな、愛子(あいこ)。元気そうで何よりだ」

「元気そう? 言うに事欠いて面白くもねえ挨拶だな」

 

 愛子、と呼ばれた少女はそう吐き捨てるように言う。金に染めた髪に野生的にギラついた目。腰のガンベルトから抜かれた髪同様金色の拳銃の先は、動かされることなく姉の眉間へと狙いを定めていた。

 

「私は戻る気はないよ。死にたくなければとっとと帰りな。いくら異常な回復能力を持ち、不死身とまで言われる八津紫(やつむらさき)といえど、頭を吹っ飛ばされて心臓にも風穴空けられたら平気じゃいられねえだろ?」

 

 八津愛子。それが銃を突きつける少女の名前だった。優秀な盲目の対魔忍である八津九朗(くろう)と、次代の対魔忍隊長を担うであろうと期待される「ポストアサギ」として名高い、今目の前にいる八津紫の実の妹である。彼女も兄や姉同様、優れた対魔忍であった。だがある時に縁を切り、今は抜け対魔忍として己の腕だけを信じて、この街で危険な仕事に手を染めて暮らしていた。

 

「大体派手に暴れすぎなんだよ。街の連中が奇妙な女……対魔忍らしき女が来たと騒いだからすぐわかった。だから対魔忍は馬鹿だと言われるのさ。……ま、事実無能だとは思うがな」

「こうした方がお前に会うのに手っ取り早いと思ったからやったまでだ。……対魔忍を無能と言うか? もはや対魔忍でもないお前が」

 

 眉間に銃口を向けられたまま、紫は全く引かなかった。妹も姉を射殺さんと睨みつけ、その気迫を証明するように指は引き金にかかったままである。

 

「……いや、埒の明かぬ話を続けてもしょうがない。本題に入る」

「知らねえ。興味ねえ。そして私は戻らねえ。……さっさと帰りやがれ。でないと、本当にぶっ放すぞ?」

 

 聞く耳持たず、というぐれた妹に対して、姉も引かなかった。視線を逸らすことも、怖気づくこともなく口を開く。

 

「お前のことではない。……いや、出来れば無論お前にも戻ってきてほしいが。私がここに来たのは、お前に聞きたいことがあってだ」

「聞きたいこと? ハッ! 私には何も教える義理はないね。そもそも抜け対魔忍である私に頼らなくちゃならないほど、対魔忍様ってのは役にもたたねえ情報網しか持ってねえのかい?」

 

 愛子の挑発に紫は一瞬押し黙った。だが再びゆっくりと話し出す。

 

「……裏の世界の情報がほしいんだ。お前の言いようで言うなら、所詮対魔忍は政府の犬……。裏の情報までは把握しきれない」

「それで困った時だけ私を頼る、と。随分と都合がいいもんだな」

「少し前、私達の仲間が潜入任務中に消息を絶った。足取りは不明、おそらく囚われてどこかに移送されたと考えられる。だが我々に気づかれずに痕跡を完全に消せるとするなら、光の当たらない闇の場所に他ならない」

「へえ、ヘマやってとっ捕まったと。かわいそうに。今頃殺されて海の中にでも沈められてるか、女ならオーク共の子供でも孕んでるかしてるんじゃねえのか?」

「消息を絶ったのはお前もよく知っている秋山凜子、そしてその相棒で後輩の水城ゆきかぜだ」

 

 その名を聞いた瞬間、ここまで紫の話を適当に聞き流していた愛子の顔色が変わった。姉を小馬鹿にしたような態度が途端に消え、真剣そのものになる。

 

「……ちょっと待て。あの凜子が捕まっただと?」

「今現在消息不明だ。私達も懸命に情報を集めているが……」

「あいつが得意の忍法による緊急離脱すら失敗して捕まったってのか!? 私と同じ『空遁の術』使いでありながら私より遥かに優れた、己の身まで跳躍できるという使い手のあいつが!?」

 

 愛子の使用する忍法は凜子と同じ空遁の術。しかし同じ術であっても中身が根本的に異なる。とはいえ同じ術使いであったため、凜子は彼女にとってよき理解者でありライバルでもあった。それ故、その実力は誰よりもよく知っていた。だからこそ、凜子が捕らえられたという事実が信じられなかった。

 

「私も若手ホープである凜子とゆきかぜがあっさり敵の手に落ちた、などと考えたくはない。だが消息を経って既に2週間ほど過ぎ、連絡も手がかりも何もない……」

「……クソッタレが。やっぱり何も変わってねえ。その間抜けな体制も、後手後手に回る対応も。大体ゆきかぜって、ずっと行方不明の不知火さんの娘だろ? 親子揃って行方知れずなんて笑えねえ冗談だ。……いい加減に気づけよ、姉貴。あんたの大好きなアサギ様は、所詮その程度なんだよ」

「アサギ様を愚弄する気か! 対魔忍は仲間を絶対に見捨てないと、囚われた2人のことをどれだけ思って心を痛められているか……お前にわかるのか!」

「そうやってあの人は昔から綺麗事ばかりじゃねえか! 戦いに自分の恋人が巻き込まれてぶっ殺して、それでなお仲間は見捨てないとかぬかす。お高い理想を掲げるのは結構だがな、結局あの人は上っ面しか見えてねえんだよ! この街を見てみろ、その日を生きるのに精一杯な連中だって大勢いる。なのに正義の最強対魔忍様は、そんなものには目もくれねえ。私達には特別な力があるのに、世間体を気にしてそれを使ってやろうともしねえ。そこに嫌気が差して私は抜けたんだ。そして味方が捕まったら見捨てないと言いながらも情報が集まらないと慌てふためく。大した身分だよ!」

 

 紫にとって敬愛するアサギを好き勝手に罵られ、瞳に怒りの色が灯る。だがそれは愛子も同じ。彼女にとって学園にいたころは友人であった凜子が捕らえられたのに、まともに対策も取れずに体裁のいいことだけを言い続けることに、我慢がならなかった。

 

「……平行線だな。いや、元より私達と決別したお前に、何を言っても届かなかったか」

「そういうことだ。さっさと消えろ、クソ姉貴。二度と来るんじゃねえ」

「ああ、そうしてやる。だがその前に、凜子のこと……いや、何かそれらしい情報は本当にないのか?」

「知るかよ! とっとと失せやがれ!」

 

 怒鳴りつけられ、姉は一瞬悲しそうに瞳を伏せた。それから踵を返し、ゆっくりとその場を去っていく。が、しばらく歩いたところで足を止め、振り返ることなく呟いた。

 

「……愛子。私も兄上も、それにアサギ様や皆もいつでもお前が戻ってくるのを待っている。だから……」

 

 その先の言葉は、銃声でかき消された。青く艶やかな髪が数本、虚空に舞っていた。

 

「ぶっ殺すぞ」

 

 強い侮蔑の色を含んだ言葉に、もう姉は妹に声をかけようとしなかった。夜の街に消え行く紫の後姿を見つめつつ、愛子は腰のガンホルダーにハンドガンを戻す。それから収まらない心のまま、怒りに身を任せて近くのビルの壁へと拳を叩きつけていた。

 

 

 

◇

 

 

 紫が愛子の下を立ち去って数時間後。アウトローの街で生きる愛子は独自の情報網を使い、凜子の情報をどうにかかき集めようとしていた。対魔忍連中に対する義理はない。が、捕らえられたのがかつて友人であった凜子となれば話は別だ。多少自分が危ない橋を渡ってでも、何かしらの手がかりを手に入れてみせる。

 いや、むしろあえて自分を餌にする、という意味でも、愛子は片っ端から情報を当たった。ついさっき姉がとった手段と同じ。元対魔忍である自分が情報を求めていると知れ渡ることで、邪魔に思う連中が現れるかもしれない。そこを返り討ちにして、情報を得ればいい。仮にも悪党共が巣食う街で己の腕だけを信じて生きている彼女である。驕りなどではなく、それが最適と考えていた。

 

 行動を開始してからさほど経たないうちに、早速獲物が食いついた。情報屋の1人から、もしかしたら手がかりとなるかもしれないという連絡が入る。頼りにしている壮年の情報屋は、元から険しい顔をさらに強張らせているようだった。

 

「お前の撒き餌に食いついた奴からの要望がこのメモに書いてある。相手はひと気のない廃ビル街をご所望だ。そこで直接会って話をする、と。……愛子、元対魔忍のお前の腕はよくわかってる。だがバックについているのがあのノマドだとしたら、いくらお前でも……」

「わかってるよ。私だって自分と相手の力量は見極められるつもりだ。無茶はしねえ。……とにかく助かるよ。すまねえな、あんたにも危ない橋渡らせるような真似しちまって」

「なに、情報屋なんてのはいつも危ない橋の連続だ。気にするな」

「これで嫁さんと子供に何かうまいものでも食わせてやってくれ。じゃ、あんたも気をつけて」

 

 メモと引き換えに大目の謝礼を手渡し、愛子は情報屋と別れる。受け取ったメモに目を落とし、場所を確認するとまっすぐそこへと足を進めた。

 

 指定された場所は不気味に静まり返っていた。罠に警戒しつつも、同時に待ち伏せの気配は無いことも確かめる。

 と、前方の物陰から1つの影が姿を現した。愛子が感じた気配はその1つのみ。1人でいるということは罠でない可能性も高い。とすれば、馬鹿正直に情報をよこしてくれるかもしれないと若干の希望も持ちつつ、しかしその男の目深にローブといういかにもな格好と隠しきれない殺気から、そうとも判断しかねると考えた。

 

「よう。情報くれるのはあんたか? いい内容なら、金は弾ませてもらうよ」

 

 警戒心を解くことなく、愛子はそう言葉を投げかける。が、返事はない。

 

「逆にしょうもねえような内容なら……」

 

 不意に男が駆け出した。ローブから覗いた手には、殺意の篭った刃の鋭い剣。

 

「支払いは鉛玉だ!」

 

 相手を敵、と認識したと同時だった。目にも止まらぬ速さでガンホルダーから拳銃が抜かれ、間髪入れず弾丸が放たれる。見事な2連発の早撃ち(クイックドロー)。

 

「踊れ、鋼鉄のバレット!」

 

 1発目はまっすぐ相手の胸の中心へと着弾した。だが僅かなラグをおいて頭を撃ち抜いた2発目。それは実に奇妙な弾道を描き、相手の後(・)頭(・)部(・)から命中していた。

 これこそが凜子と同じ術の使い手でありながら、全く異なる愛子の空遁の術、「空奔(そらばし)り」であった。五感や己の身体を「跳ばす」凜子に対し、見えない壁を作り出して銃弾を乱反射させ「跳ばす」のが愛子である。優れた射撃技術と合わせ、忍法も併用しての狙撃能力は他に類を見ないほどのものだった。

 

「馬鹿が。襲い掛かってくるなら身の程をわきまえてからにしな」

 

 心臓と脳を撃ち抜いた。「不死覚醒」と呼ばれる脅威の再生能力を持つ彼女の姉でさえ絶命する絶対の2発。

 しかし次の瞬間、愛子は目を見開いた。確かに相手はそれ以上足を進めることはなかった。が、血を出すことも倒れることもなく、崩れるようにその場で溶(・)け(・)た(・)のだ。

 

「なっ……!?」

 

 気配も殺気も生者のそれだったはず。術か何かによって目の前にいたはずの男が作り上げられたということすら、皆目検討がつけられなかった。同時に、動揺する彼女の右腕に柄のようなもので殴られた鈍い痛みが走る。思わず手の力が抜け、愛用のハンドガンがするりと手から落ちた。

 

「動くな」

 

 さらに背後から首筋に薙刀らしき刃が突きつけられた。腕を殴られるまで気配すら感じ取れなかった。自分を上回るほどの使い手が身を潜めていたことを見抜くことが出来なかったと、背中に冷たいものが走る。しかし一方で、今命令されたその女性の声をどこかで聞いたことがあったようにも感じていた。

 

「……今の今まで気配殺してやがったのかよ。あの偽物も見事だ。溶けて水になったところを見ると、水遁の術使いか? 何者だ、あんた」

「黙りなさい。動くなと言ったはずよ。口も動かさないで」

 

 さっきより少し長く聞こえた声に、愛子の顔に驚愕の色が浮かぶ。突きつけられた得物が薙刀、水遁の術で作ったと思われる偽物(フェイク)、そしてかつて何度か聞いたことがあるはずの、記憶に残る声……。

 

「その声……まさか……!」

「口を閉じなさい。本当にその首を切り落とすわよ」

 

 三度聞こえた声に間違いないと心は確信する。だが同時に、聞こえる声色から相手も本気で言っているとわかり、愛子はそれ以上質問を重ねられなかった。

 

「警告よ。これ以上この件に首を突っ込むのはやめなさい。ここから先は対魔忍ですら踏み込むことの許されぬ、光さえ射さずに完全に閉ざされた闇。このまま引き下がるなら見逃してあげる。断るなら首が身体と分かれることになる」

 

 嘘や脅しではなく本当にやるとわかる、抜き身の刃のような冷たい声だった。対魔忍時代も、抜けたその後もそれなりに修羅場をくぐってきた愛子でさえ冷や汗を流すほどの凄味があった。

 

「あなたの出る幕は無い。おとなしくしていなさい。そして、私のことも忘れなさい」

 

 だが次にかけられた言葉は、どこかその冷たさが少し緩んでいた。その気になれば、この場で自分の命を奪うことなど容易なはず。なのに警告で済ませようとしてるのはなぜかと、困惑する愛子を尻目に、さらに背後の女は続ける。

 

「……噂には聞いていたけど、本当に里を抜けたのね。突っ張るのもいいけど、あなたこそ身の程をわきまえて、無茶は程々にしたほうがいいんじゃないかしら。紫や九朗にあまり心配をかけてはダメよ」

 

 ついには温かみすら感じる色を孕んだことで思わず愛子は背後を振り返る。しかし既に相手の姿は蜃気楼のように消え去り、夜の闇が広がるだけだった。

 

「なんで……なんでだよ! なんであんたがここに……! 行方不明だったんじゃねえのかよ! 裏切ったのか、それともそうじゃないのか……どっちなんだよ!?」

 

 見えない相手に対して愛子は叫ぶ。だが答えは無い。1度は明確な敵意を見せていながら、その実自分への配慮すら見せた言動に彼女は戸惑っていた。真意は計りかねない。しかし、今さっきまで背後にいた人間は間違いないと、暗く沈む闇へと愛子は声を張り上げた。

 

「なあ頼むよ……説明してくれよ……! 不(・)知(・)火(・)さん!」

 

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