◇
『……おおよその話はわかりました。ですが、あなた1人での行動は許可できません。既にあなたの身元も割れてしまっているという危険性もあります。今報告を受けたゆきかぜと凜子の件は、直ちにアサギさんに伝えます。ですから……』
「
肩口まで黒い髪を伸ばしたまだ若い少女が声を荒げ、通信機から聞こえてくるなだめようとする温和な声に噛み付いた。切れ長な目は彼女の不満そうな心を表すかのように普段よりも鋭さを増している。
彼女は凜子の後輩である。バックアップとして米連に潜入した凜子、ゆきかぜ両名と対魔忍本部である五車学園との橋渡しをする新米対魔忍であった。しかし定期連絡が途絶え、どうするべきかを学園に窺い立てたところ、撤退という命令を言い渡されたことに納得がいっていなかった。
「どこかに一時的に捕らえられているのだとしたら、事は一刻を争います! もしまだ基地内に捕らえられていてこの後警備がより強固な場所へと移送、などということになってしまったら、救出はより困難になってしまう……。せめて現在の凜子師範とゆきかぜさんの置かれている状況の把握だけでもしたいんです。そして可能なら2人を助け出したい……。とにかく、これは急ぐべき案件です!」
『あなたの気持ちはわかります。『
「なぜですか!? 救出隊を編成して、なんて悠長なことを言ってはいられないはずです! こうしている間にも、もしかしたら凜子師範は……!」
『
それまでの諭すような声色から一転。有無を言わせない様子で冷たく呼ばれた自分の名に、奏――
『私達対魔忍は何があっても絶対に仲間を見捨てません。凜子もゆきかぜも必ず助け出します。だから戻ってきなさい。これは命令です』
「
奏は名を呼んだ通信相手――教官の
『あなたまで何かあっては事です。任務は放棄、退きなさい』
普段は母性を感じさせる、穏やかなはずの碧の声は厳しかった。「任務放棄」。だが自分の任務など一体なんだったのだろうか、と奏は内心で毒づく。
奏に与えられた任務は米連に潜入したゆきかぜ、凜子両名のバックアップ。しかしバックアップと言えば聞こえはいいが、実際は2人の状況の定時報告、あるいは何かがあった場合に学園と橋渡しの連絡役でしかなかった。
そしていざ2人に異常が発生してみれば自分への命令は撤退である。忍びの里に伝わる剣術「逸刀流」の門下生であり、皆伝して師範という座に着く凜子を仰ぐ奏からすれば、その相手を見殺しにして退けという命令は到底受け入れられなかった。
『聞こえてますか、奏? 返事は?』
剣の腕前では師範に遠く及ばないことはわかっている。それでも新米といえど対魔忍の1人という自負はあったし、自信もあった。凜子が潜入任務を行うと知ったときは自分も同行させてもらうように直談判に赴いた。その結果として今の任務を任されたわけだが、共に任務に当たりたかった奏は無論不満を覚えずにはいられなかった。
『どうしたの? 応答しなさい』
「……申し訳ありません、先生」
バックアップが任務なら、可能な限り情報を入手してから、欲を言えば捕らわれた2人を救出してから退くべきだ。その結論に行き着いた奏は考えるより早く、教官への謝罪の言葉を口にしていた。
『あなた、まさか……!』
「手ぶらで帰るわけにはいきません。おそらく基地内に凜子師範とゆきかぜさんに関する情報があるはず。それを手に入れ、あわよくば2人を助けます。罰なら、私が戻った時に如何様にでも」
『ダメよ奏! 待ちなさ……』
一方的に通信を切り、奏は纏めたままだった荷物を解く。そしてもし荒事になった際に自衛できるよう持ち込んだ戦闘用の装束と愛刀を見つめた。
(凜子師範、ゆきかぜさん……待っていてください。学園で待つ達郎君のためにも、必ず……!)
◇
日が落ち、夜が更けるのを待って、奏は行動を開始した。先ほどまでの普段着と違い、橙を基調とした身体にフィットする対魔忍装束を身に纏う。動きやすさを重視しているために露出は比較的大きい。ざっくりとV字に開かれた胸元にはスレンダーな身体に相応しい、決して大きいとはいえずとも形のよい胸の形がはっきりと浮かび上がっている。袖も存在しないために腕は腋の下まで露わになっており、下半身へと目を移せば健康的な太股が眩しく映えていた。衣装と同系色のヘアバンドで髪をまとめ、背に一振りの忍者刀、さらに腰にも刀を2本差す。
任務用の完全装備に身を包み、奏はゆきかぜと凜子が最後に出撃する際に拠点としていた基地付近へと来ていた。警備は厳重だが、手薄な場所、及び内部構造はもしもの場合に備えて調べ上げて把握している。
(2人は確かにここに来たはず。そしてその後に定期連絡が途絶えた。任務中に敵勢力捕らえられてしまったか、あるいは正体がばれてしまったなどのそれ以外の何かに巻き込まれたか。いずれにせよ、定期連絡が出来ないほどとなると、状況はよくない……。だけど、そもそも凜子師範とゆきかぜさんの2人は学園内で若手のホープ、あのアサギ先生でさえ一目置くほどの存在。それに師範の「空遁の術」はさくら先生の「
不気味に静かな基地を油断なく睨みつけつつ、やはり何かあるに違いないと奏は考えを頭の中でまとめた。そうであるとするなら、基地内での出来事を詳しく知っているであろう相手に直接問い質すのが、危険ではありそうだがもっとも手早い。第一、これだけの規模の基地に首尾よく忍び込んだとしても、相当数の監視カメラや侵入者感知用の装置があることだろう。発覚するのは時間の問題ともいえる。ならば下手な小細工は抜きにしてスピードを優先すべきだと、無茶があるとわかりながらも決心した。
闇に紛れ、赤外線センサーに気をつけつつフェンスを飛び越えて侵入。光源の隙間を縫うように奏が駆ける。事前に調べた警備の薄い扉から内部へと滑り込み、目指すは司令官室。地理は頭の中に入っている。基地内部への侵入からさほど時間をおかずして、奏は司令官室を見つけ出し、音もなく部屋の中へと忍び込んだ。
部屋は暗い。おそらく司令官は寝ているのだろうと奏は考える。それでも夜目の効く対魔忍には問題はない。寝室のドアノブへ手をかけようとした、その時。
「来客には、少々時間が遅すぎるんじゃないかしら?」
突如として聞こえてきた女の声に、奏は反射的に振り返っていた。直後、部屋の照明が点けられる。その光の中、奏が今入ってきた入り口のすぐ脇に金髪ショートカットの女が立っていた。鞘に入った軍刀のような剣を左手に持ち、頭には黒の軍帽。さらに黒のスパッツにタンクトップ、そこに同色のジャケットを羽織った格好だ。
「あと部屋に入るときは一言断りを入れるものよ。それも相手がこの基地の司令官となればなおさら、ね」
冗談めいた口調の相手を睨みつけつつ、だが相反するように奏の心は穏やかではなかった。
(この人……いつからこの部屋に……!)
部屋の中に人の気配はなかったはずだ。となれば、仮にも対魔忍である自分が気づかなかった、ということになる。そんなこと通常ではありえない。つまり、自分の察知能力以上に、相手の気配を殺し潜む能力が上回っていたというのだろうか。
「どうしたの? 驚いて口も利けなくなっちゃった?」
「……あなたが、この基地の責任者ですか?」
隙のない目で相手を睨みつけつつ、奏は口を開く。だが相対する女は対照的に、どこか楽しげに微笑を浮かべた。
「いいえ。この基地の司令ならそこでぐっすり……いえ、ぐったりの方がいいかしら。ともかくお休み中よ。今日はお疲れだったみたいで1度しか相手してくれなかったし」
「破廉恥な……。ではあなたは……ここの司令官の愛人、ですか?」
「それも違うわ。私はクルミ・S・坂崎。ここの司令に雇われた、まあ傭兵みたいなものよ。それで、あなたのお名前は、子猫ちゃん?」
クルミ、と名乗った女はそう言うと奏に返答を促してきた。が、口を閉じたままその質問を流す。元より何も答える気はなかった。
「だんまり……か。じゃあここに来た目的は? この基地に忍び込んで司令に会って何をするつもりだったの? 暗殺? そのなりだと……対魔忍かしら?」
再び奏は無言を通す。クルミは特に機嫌を損ねたわけでもなさそうだったが、滲み出る殺気は本物、そして相変わらず隙は見当たらなかった。
「これも答えてくれないの? かわいい顔して頑固ね。ま、いいわ。……嫌でも言いたくなるようにしてあげる。その方が、私も楽しめるものね……!」
これまでの笑みと異なる、獲物を追い詰めたかのような獰猛な笑顔と共にクルミは無造作に剣を抜き、鞘を放り投げた。僅かそれだけの動作。にもかかわらず、奏はゾワゾワと鳥肌が立つのを感じていた。
(この人……間違いなく強い……!)
逸刀流の稽古の際、師範である凜子と手合わせした時と同様の重圧感。下手をすれば自分の命すら奪われかねないと思いつつ、奏は背の忍者刀をゆっくり抜き、正眼に構えた。
一方のクルミは型も何もない、我流らしい。それでも迂闊に仕掛ければ危険と、本能が警告していた。
「あら、随分と刀を持ってるようだから二刀流とか、それ以上を期待したのに。……ともかく、行くよ!」
無遠慮にクルミが踏み込む。迎え撃とうとする奏だが――。
(なっ……!)
眼前に軍刀を構えたクルミが迫っていた。振り下ろされる切っ先に合わせ、忍者刀をぶつける。
「へえ、やるじゃない!」
どうにか初撃を弾いたことに対して賞賛の声が飛んでくる。しかし力に押されて奏は数歩後ずさっていた。さらに相手は遠慮など無しに打ち込んでくる。
「くっ……!」
二合、三合と剣を交わしたところで、クルミが大きく飛び退いた。仕切りなおし。だがこの選択に救われたのはむしろ奏の方だった。
「なかなかの腕前ね。伊達にここまで侵入してくるわけじゃない、ってことかしら。だけどまだ本気出してないでしょ?」
問いかけには答えずとも、内心で奏は頷いていた。確かにまだ切り札を切ってはいない。
「……次は頭と身体か、上半身と下半身か、右半身と左半身か。叩き斬るつもりでいくから。死にたくないなら、本気で来た方がいいよ」
だが今目の前の相手が放つプレッシャーとその言葉が嘘ではないという威圧感に、もはや選択肢はないと悟った。やるしかない。ここで自分の術を出し惜しみすれば、相手の言うとおり命を落としかねない。
「……わかりました。私の本気、お見せしましょう……!」
心を決め、奏は精神を集中させた。
「
腰に差していた二振りの刀が、奏の手に触れることなく飛び出す。これこそが奏の切り札、飛燕剣。傀儡の術の応用で刀を操り、擬似的に多刀流とする方法だ。
今しがた飛び出した切っ先がクルミへと向く。生きた刃は左右から挟みこむように斬りかかった。
「へえ、そのための刀かい! 面白い手品じゃないか!」
驚いた様子は見せつつも、むしろクルミは愉快そうに言い返してきた。自身の術を馬鹿にされたと感じ、奏は声を荒げつつ踏み込む。
「手品と言うのであれば、この変幻自在の刃、交わしてみなさい!」
宙に浮かぶ刃の左右同時の斬り込み。クルミはそれに対し、一歩退いて大上段から刀を振り下ろし、力任せに2本をまとめて叩き落した。
「もらったッ!」
狙い通り。2本を囮にして相手に刀を振らせ、その隙に本命の自身の剣を打ち込む。頭の中で立てたシナリオに沿って、最後を飾ろうと奏が忍者刀を振り下ろそうとした時――。
相手の顔が、笑っていると気づいた。
「ツバメ返し!」
返す刀で斬り上げられ、奏の必殺だったはずの刃が防がれる。――のみならず。
「きゃあああッ!」
乾いた音と共に忍者刀が折れ、奏の華奢な身体が部屋の壁へと吹き飛び、叩きつけられた。
「あがッ……! くうっ……」
「手品は面白かったし狙いもよかったんだけどね。私の得意技が返す刀……ツバメ返しだったのが運の尽きかな。あんたの必殺技、飛燕剣だったっけ? ……同じツバメでも、こっちの方が鋭く飛んだみたいだね」
互いの技名に引っ掛けた皮肉をぶつけられても、奏は何も返せずうな垂れるだけだった。愛用の刀同様、彼女の心もまた折れてしまっていた。
「さあて、どうやって可愛がってあげようかしら。肌を切り刻む? 身体をサンドバッグにする? 鞭打ちとか電流責め、なんてのも面白そうね」
喉元に刀を突きつけられ、奏の顔を冷や汗が流れ落ちた。
「くっ……! こ、殺しなさい……。捕虜になんてなるぐらいなら、死んだ方マシです……!」
「声が震えてるよ? 本当は死にたくなんてないんでしょ? 安心していいわ、殺しはしない。その方が楽しめるもの」
「あ、あなたは……! 互いに剣を交えた勝者としての誇りがないのですか!? 敗者をなお貶めるつもりですか!?」
「誇りなんてものはないね。私にとって自分が楽しいか楽しくないか、それだけが全てよ。……口は立派に利けてるね。なら、大丈夫そうか」
クルミは刀を引き、峰を肩へと乗せた。殺す気はない、という言葉は本当なのだろう。
「今の物音はクルミか!?」
と、そこでようやく寝室から司令官と思われる筋肉質な男が顔を出してきた。寝巻き姿であり、今の今まで異変に気づいていなかったと見える。
「侵入者ですよ、司令。あなたにご面会だそうで」
「な、なんだと?」
侵入者、という言葉に一瞬男は青ざめた。が、その相手が頼りになる傭兵によって目の前で無力化させられているとわかるとすぐに顔色が元に戻る。
同時に部屋の入り口が荒々しく開けられ、武装した兵士数名がなだれ込んできた。
「失礼します、司令! 何か異常がありましたか!?」
「あったわよ。もう片付いたけど」
さも何事もなかったかのように述べるクルミに対し、兵達は「侵入者」と呼ばれた少女を見つけ、一斉に銃口を向けた。
「ちょっと、撃たないでよ。その子には聞きたいことがたっぷりあるの。ずっとだんまりで名前すら教えてくれないし。……それに尋問するってなったら、あんた達も盛り上がるでしょ?」
付け加えたクルミの最後の一言に、兵達に下卑た笑顔が浮かんだ。
「言われてみりゃそうだな」
「さっすがクルミの姐さん。わかってるぜ」
賞賛の言葉を受けつつ、クルミはかがんで奏へと顔を寄せる。悔しそうに俯く対魔忍の顎に手をかけて無理矢理上を向かせ、女傭兵はその表情を覗き込んだ。
「そういうわけだから、せいぜい頑張ってね、子猫ちゃん」
「……何をしても無駄です。私は、何も話しません」
「アッハッハ! いいわね、その澄ました態度。それがいつまで続くか楽しみだよ」
相手の妖艶な笑みに思わず身震いする。近づいてきた兵達に左右の腕を掴まれ、奏は無理矢理立ち上がらされた。
「それじゃ、まずはそいつらに可愛がってもらいなさい。私もしばらくしたら様子を見に行ってあげるわ」
◇
基地の地下。捕虜の拘置、あるいは命令違反などの者に対する懲罰房代わりに使われるスペース。奏に対する「尋問」はそこで行われていた。
「んむううっ……! ひゃっ……ひゃめへぇっ……!」
奏の上半身は縄によって縛り上げられ、両手も後ろ手に拘束されていた。右足は膝を曲げた状態で身体の前に持ち上げられて吊られているために、左足と身体を戒める縄でバランスを取って立っている状態だった。スーツを破られ乳首まで露わになっている胸には、わざとくびり出されるよう縄をかけられ、それが彼女の羞恥心をなお煽っている。使われている縄は特別製、縛り方も特殊であるために縄抜けも出来ない。
さらに口には自害防止として口枷――ボールギャグが嵌められている。そのせいでまともに言葉を発することも出来ず、さらに涎を止めることも叶わないために、無様な姿を敵に対して晒さざるを得なかった。
もはや「尋問」とは名ばかり。いくら自害防止という名目とはいえ、情報を得る気など最初からない、というのは口枷の時点で明らかだった。滑らかな肌を縛り上げ、声を発せず舌を噛んでの自害も出来ない状況にした上で、案の定兵達は奏を慰み者にし始めた。秘裂を貫かれ、処女を奪われてから、既に何人もの男の精を胎内に受け続けている。
「よし、出そうだ……! しっかり受け止めろよ!」
乱暴に腰を打ち付けていた男が声を上げた。それに対して奏は首を激しく横に振って拒絶の意思を示す。
「むああぁッ! ひゃら……ひんひんひひゃうぅッ!」
「何言ってるかわかんねーんだよ! おら、出すぞっ!」
間を置かずして下腹部へ流れ込む熱い濁流。もう今日何人目かもわからない膣内への射精に、奏の身体が打ち震えた。
「ひゃあああああぁぁッ!」
ペニスを引き抜かれ、股間から精液がこぼれる。そのタイミングにあわせるかのように、緊縛された身体がビクッビクッと痙攣し、その様子に兵達からは嘲笑が飛んだ。
「おい見ろよ。この女、レイプされてまたイってるぜ!」
「さすが米連きっての天才科学者、フレア・バレンス博士特製の媚薬だ。そこら辺のものなんざ目じゃねえ。1本使うだけで強制的に女を発情させて、これだけよがり狂わせちまうんだからな」
「でもフレアって女だろ? 噂じゃ自分で効果を試してキメセクしてるような色狂いとか聞いたぜ。まったくとんでもねえ奴だな」
既に奏を犯し終えた兵達が雑談を交わしている。凜子とゆきかぜに関する情報がないかと、全身の疲労と恥辱に耐えながら耳を澄ませる奏だが、ここまで有力な情報は誰一人としてこぼしていなかった。
(せめて言葉を発することが出来れば、何かしら話を聞き出せるかもしれないのに……。言葉まで封じられて……こんな耐え難い辱めを……!)
うまく働かない頭をどうにか動かす。しかし囚われの身でまともに言葉も発せない現状では、情報も何もあったものではない。その前に自分の身をどうにかしなくてはならない。縄抜けを試そうとしたが早々に不可能という結論には達している。加えて身体の異常。最初に打たれた薬のせいで全身が熱を帯び、望まぬ性交にも関わらず、それを快楽として受け入れてしまっていた。先ほど兵が言っていた通り、かなり強力な効果なのだろう。
「次は俺だな。順番が来る前に壊れてるかと思ってたが、なかなかタフなお嬢ちゃんで嬉しいぜ」
奏の前にまた別な屈強そうな男が立つ。既にその股間はそそり立っており、早く目の前の女を犯したいとうずうずしているようでもあった。
(なんて下劣な……! 動けない女性に薬まで投与して、自分達の都合のいいように嬲るなど……。外道共め、絶対に許さない……!)
まだ心は折れていない、こんな拷問には屈しないという意味を込め、奏は目の前の男を睨みつける。しかし身体を縛られ、だらしなく涎を垂らした状態でそんなことをしたところで、その男の嗜虐心をそそるだけだった。
「いいねえ、まだそんな目が出来るのか。んじゃ、手加減はいらねえな!」
「ふぐぅうううああぁッ!」
言い終えると同時、無理矢理押し広げられた膣口に肉槍が捻じ込まれる。悲鳴のようなくぐもった声を上げながらも、ここまでの男達同様にそれを受け入れてしまう。
(くうっ……。なんという屈辱……! 嫌なはずなのに……身体は……ううっ……淫らに快感を欲しがってしまっている……! こんなの……ああっ……!)
激しく腰を打ちつけられても、ここまでの輪姦で膣はこなれてきており、投与された薬のせいで身体も出来上がってしまっている。さらに不幸なことに、対魔忍として磨かれた精神力も相俟って、奏は狂うことも堕ちることも出来ずにこの暴虐を受け続けていた。
「やってるわね」
その時、先ほど聞いた女性の声を奏は耳にしていた。聞き間違えるはずがない。苦汁を舐めさせられ、今こうして自分が虜囚となる原因を作った張本人、クルミ・S・坂崎。
「むああぁッ! んううぅっ……んんんんんっ……!」
「あら、お取り込み中だったかしら」
「これは姐さん。もしかしてこの捕虜に話ですかい?」
「まあそんなところ。でも気にしないで続けて。大した話じゃない、世間話みたいなものよ。抱かれながらでも聞けるような内容だから」
兵達が用意してくれた椅子に腰掛け、軍帽の角度をずらしながら、手に持った資料へと目を落とす。目の前で奏が男に犯されているにもかかわらず、そのことには全く興味がないようだった。
「それで、何か喋った? ……ああ、そんなものをつけてたら喋りたくても喋れないわね。外してあげて」
秘裂を貫いたまま一度腰の動きを止め、男はクルミの指示にしたがって奏のボールギャグを外す。長時間開口を強いられていた口から涎がまとまって扇情的に滴り落ち、荒い呼吸がこぼれていた。
「はぁ……はぁ……。こ、こんらころをしれも……」
「あらあら、かわいそうに。ずっと口を開いてたせいで呂律も回らないか。……それとも、フレアが作った薬のおかげで気持ちよすぎて、かしら?」
キッとクルミを睨みつけ、反論しようと奏が口を開く。
「あっ……あああっ!」
だがそのタイミングを見計らったかのように男が腰を突き入れ、その声は喘ぎ声へと変わってしまった。
「その分だと後者もあるかもね。ま、どうでもいいわ。そろそろあなたの名前、話してくれる気になった?」
「んっ……い、言っらはずれす……。話すころは……あっ、ああっ……なにもないっれ……」
「そう。まあ別にいいわ。こっちで勝手に調べさせてもらったから、穂村奏さん」
快感の声を押し殺しつつ、しかし名前を言い当てられたことに奏の口から悔恨の呻き声が漏れていた。
「対魔忍っていう私の見立ては当たったみたいね。それで、なんで忍び込んだわけ?」
続けてのクルミの問いに対しても奏は無言を貫く。だがその反抗的ともとれる態度が質問を投げかけた当人ではなく、今奏を犯している最中の男の気に障ったらしい。
「おい、姐さんが聞いてんだ、答えろ!」
力任せに腰を突き出す。太いペニスがまだ男慣れしていない膣の最奥を抉り、奏は目を見開いた。
「あっ、あ、あがああああああああぁッ!」
快感よりも痛みの方が勝り、縛られた身体が暴れる。身を引き裂かれるような感覚によって、奏の口から咆哮が走っていた。
「こらこら、女の子は優しく扱わなきゃダメでしょ。ま、激しくやられた方が興奮するってのも事実だとは思うけど」
そんな様子を見てもクルミは顔色ひとつ変えない。男の方も気にした様子もなく、さっきまでと同様にピストンを繰り返し始めていた。
「あ、あ、あっ、ああっ……」
「可愛い声を聞かせてくれるのはありがたいけど、やっぱり答えてくれないわけね。……あなたが忍び込んだ目的、秋山凜子と水城ゆきかぜに関することかしら?」
その2人の名前に、思わず奏は目を見開いてクルミの方を見てしまう。一瞬遅れてから、しまったと後悔するが、もう後の祭りだった。
「なるほど、やっぱりそうか。『スカイエッジ』と『ライトニング』。あの2人のことを探しに来た……さしずめ、あなたの任務は2人のバックアップ、という辺りかしら」
「あっ……。う、うっ……」
自分の口からは何も言っていないにもかかわらず次々と暴かれていく情報に、奏は歯噛みするしかなかった。
「ちょっと待ってください姐さん、その2人ってつい先日ここ配属になった、あの巨乳と貧乳のコンビですよね? 確か『空装武神』とかっても言われた。対魔忍……だったんですか?」
「あんたら、女を胸でしか判断できないの? でもまあ、そうだよ。目的は不明だけど、こっちの動向を探るか、技術を盗もうって線じゃない? それでまあ……詳しくは機密で言えないけど、2人は表向きは任務中行方不明、殉死扱いだ。これで知りたいことはわかったかな、奏ちゃん?」
先ほどからずっと男を受け入れ続けている女囚へと、クルミは問いかける。
「まだ……んんっ……聞きたいことがあります。『機密』と言ったからには……あ、あっ……。あ、あなたはそれ以上のことも知っているはず……。ふうっ……あううっ……! 凜子師範達の現在の居場所を……くうっ……知っているんじゃないんですか……?」
パン、パンと肉がぶつかり合う音と喘ぎ声に交じってに投げかけられた質問に、女傭兵の口の端が僅かに上がった。
「やっと喋ってくれたわね。しかもなかなかいい線ついてる。……ええ、私も少しは話を聞いている。でも詳しくはここの司令しか知らない。ただ、彼は私の雇い主だから、私が口添えをすれば、もしかしたら教えてくれるかもね」
妖艶な笑みを浮かべ、クルミは立ち上がった。手に持った資料を椅子へと放り投げ、ゆっくりと奏のところへと近づいてくる。
「ねえ、取引しない?」
「とり……あっ……ひき……?」
「ええ。こっちの条件を飲んでくれるなら、2人のことを教えてくれるよう、私が司令に口添えしてあげる。それであなたが知りたい情報を教えてくれたら、代わりに……あなたには対魔忍本部の情報を、定期的にこちらに連絡してほしいの」
「なっ……!? 私に……くっ……仲間を裏切ってスパイになれと言うんですか!?」
浮かべられた笑みは変わることなく、奏の顔が覗き込まれた。反射的に目を背け、顔を逸らしてしまう。
「悪くない話だと思うけど? あなたはこんなレイプ紛いの尋問から解放され、知りたい情報を知ることも出来る。代わりにこちらに少し情報を流すだけでいいのよ?」
「断ります……! 私は……あうっ……対魔忍としての誇りを捨てるつもりはありませんし……あ、ああっ……! 仲間を裏切ることも……う、あ、ああああっ!」
「ごちゃごちゃぬかしてないで姐さんの言うことを聞いたほうがいいぜ、ほら!」
「ちょっとストップ」
奏が折れないとわかったところで、男はより激しく腰を突き入れていた。だがその様子を見たクルミが止めるよう指示を出す。
「あんた、もう出そう?」
「え? あ、いや、まだもうちょっと大丈夫ですが……」
「丁度よかった。……ねえ奏ちゃん、即答なんてつまらないから時間をあげる。この男が射精するまで、考えるといいわ」
「必要……ありません……。何を言われても……んんむッ!?」
反論しようとした矢先、奏の唇がクルミのそれによって塞がれた。舌同士が絡み合い、逃げようとしても狭い口腔内でそれも叶わない。
(じょ、女性同士でキス……!? 男の人ともしたことないのに……何でこんな……! で、でも……なんだかこれ……頭の後ろの辺りがジーンとするような、変な感じが……)
苦しそうな息と呻くような声が鼻から漏れ、女性同士による接吻は扇情的な絵となっていた。さらにクルミが男に合図を出し、止まっていたピストンが再開される。慣れない経験と、同時に秘部を貫かれ続けていることで、奏の目が僅かに潤んだものに変わっていた。
「んんっ……んんふぅ……。んむっ……ぷあッ……!」
「可愛い。物凄くウブな反応。ねえ、取引に応じてくれるなら、私がもっと気持ちよくしてあげるわよ?」
「よ、余計なお世話です! 私は気持ちよくしてほしいなんて……ああっ!」
クスリと笑みをこぼし、クルミは犯され続ける奏の耳元へと口を寄せて囁く。
「女同士のキス、すごくよかったでしょ? ……奏ちゃん、興味無いように振舞ってるけど、男の子より女の子の方が好きなんじゃない?」
「ち、ちが……うぅっ……」
「本当は好きなんでしょ? 師範……秋山凜子のこと。恥ずかしがらなくてもいいわ。女が女を愛することだって、なんらおかしいことじゃないのよ。……命懸けでここに忍び込むほど、好きなんでしょ?」
普段自分が凜子に対して密かに抱いている思いを赤裸々に抉られているように感じ、奏は何も返せなかった。その強さと美貌から、凜子は五車学園の男女問わずに人気がある。男子との色恋沙汰に全く興味を示さないためにレズ説まで囁かれ、女子の間でファンクラブなどというものが密かに出来るほどだ。
奏もそんな凜子に憧れた。ファンクラブにこそ入ってないものの、逸刀流を学び、少しでも近づきたいと懸命に努力した。だがその動機は、本当に憧れからだけであろうか。もしかしたら自分は、今目の前の女性に言われているような恋愛感情さえ抱いていたのではないだろうか。
「……ッ! 違う、違うッ!」
忍び寄る悪魔の囁きに抵抗するように、奏は頭を激しく横に振って叫んだ。
「そんな邪な感情からじゃありません! 私は師範を尊敬して憧れて……あううっ……!」
「何も違わないわよ」
クルミの手が形の良い奏の乳房へと伸びる。優しく愛でるように、その五指が双丘を捏ねていく。
「う、あ、ああっ……。むっ、胸ぇ……」
「尊敬して、憧れて、それでおしまい? 師範に認めてほしかった、自分をもっと見てほしかった……。そうじゃない?」
「あ、あっ……。か、勝手なことを……あくっ……言わないでください……!」
胸を責める指は次第に中心へ。かわいらしい乳輪をなぞるように動く。
「ねえ、他の男に師範を渡すようなことはしたくないでしょう? 他の男と仲睦まじくしている様子を見たくなんてないでしょう? ……なら、あなたのものにすればいいの。こうやって肌を合わせて、気持ちいい快感を知れば、師範は男なんていらなくなる。あなただけを見るようになるわ……」
「よ、
「少しだけサービス。秋山凜子と水城ゆきかぜの2人はおそらくまだ生きてるわ。今は囚われの身のはずよ。……あなたが有力情報を持って帰って師範が助け出されれば、きっと感謝される。そうしてあなただけを見てくれる、あなただけを愛してくれるのを想像したら、ここがキュンってならない?」
指が胸の頂を優しく摘む。身体の構造を知っている同性の愛撫のせいか、無骨な指に荒々しくされるものとは別の衝撃が奏の身体を駆け巡った。
「あ、あ、あああッ!」
「師範もあの大きな胸をこうして撫で回されたら、きっと気持ちよくなってくれるはずよ。さっき私がしたみたいなキスしたら、誰にも見せない表情をあなただけに見せてくれるかもしれない。でも、帰ってきてくれなければそれも叶わないじゃない。……意地を張るのはやめて、私の話を聞いてくれれば、師範は無事返ってくるかもしれないわよ」
「う、ああっ……。あ、あ、あっ……」
しばらく答えを待っていたクルミだったが、返事の代わりに返ってくるのが喘ぎ声だけとわかると少々興醒めしたようにため息をこぼした。
「あ、姐さん……!」
さらにずっとペニスを埋没させていた男も余裕のなさそうな声を上げる。つまらなそうに男に一瞥をくれ、興味なさそうに口を開いた。
「残念、時間切れね。いいわよ。思いっきり中に出してあげて」
「い、嫌あぁッ……!」
「へへ……。じゃ、遠慮なく……!」
許しをもらった男は膣奥へと男根を押し込む。そのまま子宮目掛け、欲望の塊を吐き出した。
「う、うああああぁッ! あ、熱い……! 熱いのが……私の中にいぃッ……! あ、あ、ああああああぁぁッ!」
奏が縛られた身体を痙攣させた。ややあってしばらく続いた射精が終わり、男がペニスを引き抜く。逆流した精液が膣口から零れ落ち、奏の足元に新たな水溜りを作っていた。
「う、ううっ……。はぁ……はぁ……」
「最後に一応聞いておくわ。さっきの私の話、乗る気はない?」
屈辱と疲労で、俯いて息を切らせていた奏だったが、その言葉に対して顔を上げ、キッと相手を睨みつけた。
「……愚問です。仮に私があなたの話に乗り、情報を手に入れて師範を助けることに成功したとして、仲間を売って助かったと知れば、師範は私を軽蔑するでしょう。それに私も対魔忍の端くれ。仲間を売るような真似は出来ません」
まっすぐ過ぎる反論に、しかしクルミは機嫌を損ねた様子はなかった。僅かに唇の端をあげ、ゆっくりと口を開く。
「強情でいいわね。それでこそ、虐め甲斐があるというものよ。……楽しかったわ、奏ちゃん。またそのうち、遊びに来てあげる」
言うなりクルミは踵を返した。そして感情が無いような声で、男達に冷酷に指示を飛ばす。
「フレアの薬、追加していいわ。あれ、強力な媚薬効果が目玉だけど、同時に覚醒作用も相当なものだから休ませる手間も省けるでしょ。溜まってそうな連中に声かけて、前も後ろもどんどん
その言葉に奏の顔から血の気が引いた。対照的に男達は色めき立ってギラつく視線を女囚へととばしてくる。
「ま、まだ私を辱め続けるつもりですか!?」
「あなたが悪いのよ? 私はちゃんと逃げ道も用意してあげた。それを蹴ったのはあなたなんだから。……じゃあね、奏ちゃん。元気でね。フフフ……」
含み笑いと共にクルミが地下を後にする。やがてその後姿は、奏を犯そうと群がる男達によって見えなくなっていった。
◇
「オラァ、出すぞ!」
「あ、あぁ……。うぅ……」
奏が囚えられてから丸一日が経った。その間ほぼ休む間もなく代わる代わる膣と肛門を犯され続け、既に体力も精神も激しく消耗していた。全身は精液でベトベトに汚され、床には胎内から吐き出した精液と愛液の混じったものが水溜りを作っている。だがそんな状態であっても米連特製の媚薬によって強制的に発情させられ、覚醒作用によって意識を失うことは許されず、それでも強靭な精神力によってかろうじて理性を保っていた。
「チッ、さすがに反応が薄くなってきやがった。おい、もう1本追加しろ」
「これ以上は過剰投与で死んじまうぞ? 姐さんが殺すなって言い残して行ったらしいし、何かあったら俺達が怒られるぜ」
男の言葉を証明するように、奏の腕には痛々しい注射痕が点々と残っていた。既に相当数の媚薬が打ち込まれたことを表している。
「大丈夫だろ。相手は対魔忍様だ、そう簡単に死にはしねえよ」
今しがた奏の膣内に精を吐き出した男が部屋の机の上に置いてあった注射器を手に取った。虚ろな目でその様子を目撃した奏が弱々しく懇願する。
「い、嫌……。もう……薬……やめて……」
「そうはいくかよ。俺はまだ出したりねえんだ、もっとアンアンよがってくれなきゃ面白くもねえ」
注射器を手に男が近づく。恐怖で怯えながら、拒絶するように奏は力なく首を横に振った。
「お願い……します……。これ以上は……私……死んじゃう……」
「まだ口利けるなら大丈夫だろ。こいつで元気出して、どんな可愛い声を聞かせてくれるか楽しみだぜ」
そう言って男がさらに一歩分歩み寄った、その時。
「――じゃああなたは絶命する瞬間、どんな声を聞かせてくれるんでしょうね」
冷たく、怒りに満ちた女の声だった。直後、奏に迫ろうとしていた男の首が胴体から分かれる。
「無言、ね。つまらない男」
「な、なんだこの女!? いつの間に!」
突如として部屋の中に現れた人間に男達はざわついた。ムッチリと肉付きの良い身体を忍び装束のような緑のスーツで覆い、手にはたった今1人の男の命を奪った小太刀。温和そうな顔立ちと裏腹、今その目は鋭く男達を睨みつけていた。
「碧……先生……」
奏の口が動いた。名前を呼ばれた女性――峰麻碧は声の主へと目を移し、それまで鋭かった目に慈愛の色を浮かべる。
「今助けてあげますね、奏」
「助けるだと? てめえ状況わかってんのか?」
兵達は銃火器を手に取り、碧へと照準を定めていた。その数、10名程度。間隔を空けて半包囲状態で碧を威嚇している。
「対魔忍といえど、この数に囲まれたらどうしようもねえよな? あんたもなかなか美人だ。投降するってんなら命はとらねえで、そこの女と同じように可愛がってやるぜ?」
「あら、美人なんて嬉しいですこと。……でも言ってる内容は最低。反吐が出そう」
「このアマっ……!」
続けて何かを言おうとした男は、それが叶わなかった。いつ間に近づいたのか、胸には碧の小太刀が深々と突き刺さり、心臓を貫いていた。
「う、うわああああああ!」
「撃つな! 同士討ちに……ぐええぇっ!」
そこからは一方的だった。至近距離ということで誤射を怖れて発砲できない相手を尻目に、碧の刃が次々と命を絶っていく。自分の教え子を嬲られた怒りで、その手に迷いは微塵もなかった。
ものの数十秒で、部屋の中には碧と奏しか残らなくなっていた。脅威の排除を確認し、碧は奏へと近づき、身体を戒めている縄を断ち切る。
「もう大丈夫よ」
「せん……せぇ……」
長時間の拘束と拷問から解放された安堵で、奏は碧の腕の中で涙をこぼした。全身が汚されたままにもかかわらず、教え子を我が子のように優しく抱きしめて語りかける。
「かわいそうに……。でも、生きていてくれてよかった」
「ごめんなさい……。私、命令を無視して……」
「まったくよ。無茶もほどほどに、ね」
優しく背中を撫でて諭してから、碧は耳に装備したインカムへと語りかけた。
「さくら、聞こえてますか? こっちは奏の救出に成功しました。そっちはどうです?」
『ゴメン、碧さん。間の悪いことに丁度ここの司令官が不在みたい。情報抜き出そうと端末も漁ったけど、ユッキーと凜子ちゃんの有力情報は何も……わわっ!』
直後、インカム越しに銃声が響き渡る。今碧が通信した、共にこの基地に忍び込んだ相手――アサギの妹の
「さくら!? 大丈夫ですか!?」
『だ、大丈夫! でもこりゃさっさと引き上げた方がいいね! 碧さん、当初の予定通りにかなちゃんを連れて脱出お願い!』
「わかりました。あなたも気をつけて!」
通信を終えると碧は奏を抱きかかえた。その彼女に「あ、あの……」と奏が尋ねる。
「何です?」
「さくら先生も……来てるんですか?」
「そうよ。私の彼女の忍法は相性がいいですからね。脱出できたら後でちゃんとお礼言いなさいね」
そうか、と奏はぼやける頭で考えた。碧の得意とする術は「
「……そろそろかしらね」
ポツリと碧が呟いたその時、上の方で爆音が鳴り響き、建物が揺れる。
「爆発……?」
「陽動用のね。前もって仕掛けておいたの。……さあ、この隙に混乱に乗じて脱出といきましょうか。そして帰りましょう、私達の五車学園へ」
やはり碧の笑顔には母性がある、と奏は感じていた。その顔の前に安堵感があふれ、これまでの疲労がどっと押し寄せてくる。抱えられた身体に感じる揺れで教官が走り出したと感じ、それが心地よい子守唄のように奏の身体に響いてくる。短い間のはずだったのに長年戻っていないように錯覚する学園を頭に思い浮かべ、しかし同時に師範を救い出すどころかまともな情報すら得られなかったという無念も抱きつつ、奏の意識は心地よい眠りへと落ちていった。
対魔忍属性で米連の攻撃UPスキルって不憫過ぎでしょ……。