※この作品はR-18です。

堕落の空装武神   作:天木武

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冷酷なる蜘蛛姫

◇

 

 

 ゾクトによる睡眠学習の確認と娼婦の研修から数時間後。凜子は昨日と同様、地下アリーナの控え室にいた。しかしその顔は昨日以上に険しい。間に休憩を挟んだとはいえ、意識を飛ばされるほどの激しい絶頂を経たために疲労が完全には抜け切っていない、という理由はある。だがそれ以上に、心の方がすり減らされているように感じていることが気がかりだった。

 

(リーアルは、私が無意識のうちに娼婦を演じて心を麻痺させることで消耗を抑えている、と言った……。確かに演じようとした気がするのは……うっすらと覚えている。だがそれ以上に身体の乱れに心が飲み込まれ、自制が効かなくなっていたのは事実だ。……悔しいが、心も表面的な部分までは支配されてしまっているのかもしれない。しかし、奴はまだ私を警戒している……。つまり、私の心の根幹、そこさえ奴に犯されずに約束の期間を耐え切れば……おそらくは大丈夫なはずだ)

 

 今現在はやはり身体は平常、心も理性を保てている。もしも心が完全に堕ちてしまえば、これだけの強い意思は生まれず、身も心もあの醜悪な男に捧げてしまうのだろう。そんなことは考えたくもない。

 

(とにかく耐え抜くことが、今の私に出来る唯一のこと。たとえ娼婦を演じようと、身体をどれだけ汚されようと、心の奥底で私は己を保ち続ける……! ゆきかぜ、お前のためにも私はまだ自分を失うわけにはいかない。お前もこれからつらくなるだろうが、どうか、私を見守っていてくれ……!)

 

 そのためには少しでも消耗を抑えるのが重要だ。身体が乱れれば同調して心も乱れる。それが重なれば、いかにリーアルも厄介視する対魔忍の心の根幹であろうと、固く信じたゆきかぜへの思いであろうと揺れ動き、いつかは屈服してしまうかもしれない。すなわち、今はまず目の前のことから、直後に行われるアリーナでの戦いに勝利して凌辱ショーを回避するところから目標を定めていくべきであろう。

 

(とはいえ……。リーアルめ、悪趣味な……)

 

 考えをまとめ終え、この後のことに思考をめぐらせたときに真っ先に凜子が思ったことはそれだった。今彼女が身につけている衣装は昨日の対魔忍スーツのレプリカではない。白と黒を基調とした、肩や太股が大胆に露出したコスチューム。自らを「スカイエッジ」と名乗り、「空装武神」の異名でも呼ばれていた、米連に潜入していた時とそっくりの衣装であった。

 この衣装を手渡してきた際、リーアルは「今日来るVIPの強い要望」と言っていた。同時に衣装の情報もそこから仕入れたらしい。おそらく米連の関係者、場合によっては自分達を罠に嵌めた張本人かもしれない。キメラ微生体の制限さえなければ、そんな輩が姿を見せれば即座に空遁の術で間合いへと跳んで首を刎ねてやったのに、と凜子は歯噛みした。

 

 昨日同様、スタッフに促されてアリーナの入り口へと行き、昨日と同じサイズの刀が一振り手渡される。やはり細工はない。昨日のキシリアとの張り詰めた一戦で今度は刀の間合いを正確に掴んでいる。よって今日は相手の隙あらば最初から仕掛けると、強い気持ちで刀の確認を終えて鞘へと戻した。

 

『さあ、本日のメインイベント! 昨日に引き続いての登場、秋山凜子だ! しかし今日の格好は昨日とは違うとお気づきであろう! これは米連に潜入していた時に着用していた衣装を模した物ということだ! 今日VIP席にいらしている、米連の司令官のリクエストである!』

 

 その言葉に、歩いていた凜子は思わず足を止めてVIP席と思しき場所へと目を移していた。

 

「なっ……!?」

 

 VIP席にいたのは、凜子が最後に配属になった基地の司令官と、そこに常に付き添っていた軍帽を被った金髪の女だった。やはりあの男に自分達は売られたのだと思うと怒りがこみ上げてくる。

 

「何立ち止まってんだ、さっさとステージに上がりやがれ!」

「今日のエロエロ衣装で犯されるお前を早く見たいんだ、もたもたすんな!」

 

 客席から飛ぶ野次に、気持ちを押し殺して凜子は舞台へと上がる。次いで心を落ち着けるよう努めた。

 

(……動揺するな。平静を保て。確かにあの男は許せぬ存在だが、今は手を出せない……。ならば、この後のことに集中すべきだ。……確か今日の相手は……ノマドから来た面白い逸材、とかリーアルが言っていたか? ノマド……アサギ先生の宿敵、あのエドウィン・ブラックの組織か。厄介そうだな……)

 

 吸血鬼の始祖とも言われるエドウィン・ブラックのことは、凜子も当然知っている。姿を見たことはないが、あのアサギの宿敵というだけでどれほどの力の持ち主かなど想像もつかなかった。その男が取りまとめる組織から来た逸材、果たしてどのような存在なのかと心に引っかかっていた。

 

『続いてこのヨミハラ地下アリーナ初登場! あのノマドから、このアリーナのことを聞いて興味を持ち、リーアル殿に参加を打診してきたリトル・プリンセス! 『蜘蛛姫』・アネモネ!』

 

 紹介が終わって姿を現した凜子の対戦相手の姿に、会場中がどよめいた。

 

「あ、あれが……対戦相手だと……!?」

 

 それは凜子も同様であった。信じられないと目を見開く。

 そんな会場中の視線など気にした様子も無しに、何食わぬ顔で対戦相手はスポットライトを浴びながらステージへと歩み寄ってくる。舞台へと上がり、自分の目の前に立った相手の姿に、やはり凜子は我が目を疑っていた。

 相手は年端もいかない少女だった。いや、幼女と言った方が正しいかもしれない。白い髪と褐色の肌。昨日のキシリアを思わせる容姿の雰囲気でありながら、燃えるような紅い目に尖った耳と口元から覗く鋭い犬歯、そして額にまるで蜘蛛の目の如く浮かび上がる黒い痣(あざ)のような何かが、ただの人間ではなく魔族であることを証明していた。マントを纏い、ワンピースのような白い衣装を着た優雅ともいえる姿は、まさに実況が述べた「リトル・プリンセス」という名に相応しくさえ思えてくる。

 

「馬鹿な……! リーアル、いくら魔族とはいえ、私にこのような幼い少女と戦えというのか!? 私が勝てばこの少女が犯されることになるんだぞ!」

 

 VIP席のリーアルへ向けて凜子は叫んだ。だがそれに対する返答はこのショーの責任者からではなく、向かいの相手から、それも嘲笑混じりに返ってきていた。

 

「クックック。我を幼いというか、青二才? 定命(じょうみょう)の者はすぐに見た目で判断する。それに自分より先に相手の心配とは、全く愚かだな」

「何……?」

 

 言葉尻から感じる風格に、相手は見た目ほど幼くはないのではないか、と凜子は気づいた。魔族の中には一見幼く見えながら人間よりも長い期間生きている者も多くいる。それにしては幼すぎるが、目の前の相手はそういう存在なのだということを理解していた。

 

「遠慮は無用だ。いや、本気を出したところで貴様は私に勝つことはおろか、傷ひとつつけられはしない。我の養分となり、この衆目の中屈辱を晒すのが貴様の末路よ」

「……いいだろう。そこまで言うからには遠慮はしないぞ。覚悟してもらう」

 

 硬い言葉を投げかけられても、アネモネは全く堪えた様子はなかった。むしろ愉快そうに笑いをこぼしている。

 

「クックック……。つくづく人間とは愚かな生き物よ」

 

 羽織ったマントをなびかせる。その動作が気に障り、いつでも戦闘態勢を取れるよう、凜子は刀を抜いて鞘を放り投げた。

 

『ルールはどちらかが戦闘不能になるか降参で負けだ! 例によって敗者には恥辱のステージを体験してもらう! それではレディー……ファイッ!』

 

 ゴングが鳴らされると同時、凜子は一気に駆けた。もはや相手を幼女と侮ってはいない。故に一分の隙もなく、初撃で決めるつもりでいた。

 しかし相手は全く動かない。何か策があるのかと警戒しつつも、反撃の様子は一切なく、凜子は横から相手の首元へと刃を振り下ろした。

 

「……どうした? なぜ刀を止める?」

 

 だが振り下ろされた刃はアネモネの髪に触れる直前で止まっていた。あと数ミリでもずれれば髪が切れたであろうという見事な寸止め。凜子の卓越した技術だからこそ成し得る、相手をまったく傷つけることなく降参させる技法だった。

 

「私の刀はお前の首を完全に捉えていた。私が止めなければ首と胴体が分かれていただろう。……降参しろ」

 

 鋭い視線を投げかけながら提示された降参通告に、しかし相手の魔族は失笑をこぼしていた。

 

「降参? ……まったく、救いようのないほどに定命の者とは阿呆ばかりだな。その刃、確かに止めたのは貴様の意思だ。技術は認めよう。だが、仮に止めずに振り下ろしたとして、本当に我に届いたと思っているのか?」

 

 首元に死神の鎌を突きつけられながらも、アネモネの態度は変わらなかった。こけおどしと高を括られ見くびられている。そう考えて頭に僅かに血を上らせた凜子は、最後通告をかけるべく、髪数本を巻き込んで首筋へと刀を密着させようと腕を動かした。

 

「……え?」

 

 しかし、それは叶わなかった。刀は先ほどの位置からピクリとも動かず、どれだけ力を入れようと押し進めることが出来ない。

 いや、それだけではない。異常を感じて刀を引こうとしても不可能であった。さらには間合いを取り直そうとしてもそれが出来ない。

 

(ば、馬鹿な……! まさか……身体が……!)

 

 身体が動かない。どれだけ力をこめようと、まるで金縛りにあったかのように身動きが取れない。上っていた血は途端に引き、代わりに冷や汗が一筋、凜子の額に流れる。

 

「どうした? 我にもう少々の脅しをかけようとしたのではないか? その刀の位置では先ほどと変わらん、我は怯えんぞ?」

「私に……何をした……?」

「クックック……。我の容姿から力量を見誤ったな、痴れ者よ。貴様は我の張り巡らせた罠に、何も知らぬ胡蝶の如く自らむざむざと飛び込んできたのだ。……貴様らの目にも映るようにしてやろう。これが我がアラクネ族の絶対の力、『死神の呼び糸(アヌビス・コール)』よ!」

 

 不意に、凜子の身体に絡みつく、「蜘蛛姫」とアナウンスされた異名のごとき糸のようなものが現れた。いや、アネモネの言葉からするなら、元々あったものを見えるようにした、というのが正しいのだろう。

 

「こ、これは……!」

 

 自分の影から伸びた、全身をがんじがらめにする糸に凜子は目を見開いた。腕に、足に、そして身体に。幾重にも絡みつき、自由を完全に奪っている。一見すれば簡単に切れそうな細い糸。だがそれは見た目にそぐわない強度を秘めていることは、先ほどから動くことが出来ない凜子自身がよく気づいていた。

 

「どうだ、動けまい?」

「くっ……! この程度……!」

 

 凜子は糸を引きちぎるべく力をこめる。いかに高い強度といえど、見た目が細い糸であるのは事実。対魔忍の身体能力を持ってすれば、力尽くで引き千切れると考えていたが――。

 

「くうっ……! このっ……このおっ……!」

「無駄じゃ。人間ごときの力では、我が糸をちぎることはできん」

「そんなこと……!」

「ないと申すか? ……やれやれ、本当に物分りの悪い愚か者であるな。よかろう、少し戯れてやるとしよう」

 

 僅かにアネモネの指が動く。その瞬間、凜子を戒めていた糸が生き物のように蠢き、四方から全身を締め上げた。

 

「あ……がっ……!? あっ……か……はっ……!」

 

 想像を越える力で圧迫され、凜子は苦痛の声を上げ、手に持つ刀を落とした。首に巻きつく糸が頚動脈を締めたために、呼吸もままならない。

 

「あ……ぐっ……あ……」

「苦しかろう? 苦痛に歪むその表情、実にいいぞ。……だが我の糸の真の力は、この程度ではない」

 

 意味ありげな言葉と共に笑みを浮かべる蜘蛛姫。直後、全身の力が抜けるような、言葉にしがたい感覚が凜子を襲う。

 

(な……なんだ……今の……?)

 

 糸で締められての感覚とはまた違う。肉体の表面的なものではなく、もっと身体の芯から脱力するような、暗い水の底に身体が沈んでいくような感覚。未知の恐怖に、無意識のうちに凜子の顔が青ざめていた。

 

「影から伸びる我がアラクネ族の糸は、獲物を捕らえてその生気を吸い取るのだ。さあ、蜘蛛の巣にかかった憐れな胡蝶よ、我の糧となり干からびるがよい!」

 

 先ほどを越える勢いで生気が吸われていく。心の奥底を抉り取られていくような脱力感に対して耐え方がわからず、ただ苦しむことしか出来ない。

 

「あ、あああーッ! う、うああ……あああああーッ!」

「クックック……。まったくいい声で鳴く。それに実に心地よい生気だ、美味であるぞ」

 

 身動きさえとれずに泣き叫ぶことしか出来ない凜子と対照的、アネモネは愉快そうな残忍な笑みをこぼしていた。

 しかし客席からは野次が飛ぶ。凜子が捕縛されて期待が高まったはいいが、一向に始まらない痴態に痺れを切らしているのだ。

 

「なんじゃ、人が楽しんでいるのに無粋な。……ああ、そういえばここは敗者を貶めて見世物にする場であったか。下衆な聴衆共は敗者の屈辱を待っている、というわけだな。よかろう。リーアルからもこいつは殺すな、と釘を刺されておるしな」

 

 独り言を呟き、力の吸収をやめたアネモネの指が再び動く。糸が揺らめき、完全に抵抗できなくなった凜子の両腕が横に開いて固定された。さらに動かされた糸が米連スーツのレプリカの胸部分を切り裂く。隠すことも叶わず、乳首まで露わになった巨大な胸がこぼれ落ちたことで、卑猥な見世物を待ち侘びた観客達は一気に沸いた。

 

『秋山凜子を戦闘不能と判断する! 勝者アネモネ!』

 

 加えて凜子の敗北を確定するアナウンスが響き渡ったことで、ギャラリーの盛り上がりは今日最高潮を迎えた。その歓声が響き渡る中、アネモネは満足そうな笑みを見せて呟く。

 

「なるほど。下賎な連中はこうやって敗者が嬲られる様を見るのがお好みか。いいだろう、貴様達の欲望を満たす手伝いをしてやろう」

 

 アネモネの右手が振るわれる。影から伸びた糸が四方八方から豊満な胸へと絡み付いてボンレスハムのように絞り上げ、原形を保たないほどに形を変形させた。

 

「あっ、あがあああああああッ!」

 

 指で力任せに揉まれる感覚とはまた別な痛みに、凜子の口から苦悶の絶叫がこぼれる。しかしそんな戦う女の苦しむ表情さえ、観客にとっては嗜虐心をそそられるスパイスでしかない。

 

「待ってましたー!」

「斬鬼のクソ対魔忍め、もっと苦しみやがれ!」

「そのまま胸を引きちぎるぐらい虐めてやれ!」

 

 観客からとぶ声に応じるべく、アネモネは糸を操作し胸を苦しめ続ける。体力を吸収されなくなった代わりに執拗に胸へと続く暴力的な刺激に、凜子はただ悶え続けることしか出来なかった。

 

「あ、あぐっ……! う、うああぁッ……!」

「客共が随分と盛り上がっているな。貴様、随分と恨みを買っていたようじゃの?」

「はぁ……はぁ……。さ、さっきから胸ばかりだな。自分のものが貧相だからと、そんなにこの胸が珍しいのか……?」

 

 挑発を返され、それまで余裕を漂わせていたアネモネの顔から色が消えた。無表情のまま凜子の胸の根元へと糸を巻きつけ、形がひしゃげるほどに絞り上げる。

 

「があぁッ……! あ、あ、あああああああッ!」

「口を慎め、低俗な痴れ者が。その醜い脂肪の塊を切り落としてやってもいいんだぞ。それともこっちを摘み取ってやろうか?」

 

 糸は今度は胸の頂点へ。凜子が何かを口走るより早く、先端にある敏感な器官に糸がくくりつけられ、鋭い暴虐に晒された。

 

「ひ、ひぎいあああああああああッ!」

「そうやって貴様は我と客共を満足させる声だけ上げていればよい。くだらぬ戯言を言う余裕があるなら、声の続く限りただただ喚いていろ」

 

 冷たく言い放ち、責める手を休めることなく動かし続けるアネモネ。完全に拘束されてまともに身動きすら取れない凜子は、アネモネに言われたとおり喚き続けることしかできなかった。

 

「……おや?」

 

 しばらく続いた乳辱の手を休め、何かに気づいたように楽しげに小さき姫は呟く。

 

「……貴様、胸を我の糸に締め上げられて感じているのか? 股間の布が濡れておるぞ?」

「なっ……!? ば、馬鹿な! そんなはず……!」

「そんなはずあるであろう」

 

 操られた糸が股間を隠す黒い布越しに秘唇に沿ってあてがわれ、擦るように動かされる。瞬間、凜子の身体に電撃が走り、これまでとは異なる嬌声が口を衝いて出た。

 

「あ、ふああああああぁぁあんッ!」

「クックック。随分と甘い声を出したものじゃな。……そうか。貴様、あんないびられ方であっても胸を弄りまわされると感じてしまうから、わざと我を挑発して気を逸らそうとしたわけか?」

「ちが……! あっ、ああぁんッ……!」

 

 否定の声は甘さの混じった声で続けられなかった。ますます気を良くしたアネモネは胸に加えて股間への摩擦責めも追加する。

 

「や、やめっ……! ああっ……!」

「良さそうだな。どれ、こういうのはどうかな?」

 

 糸を絡みつかせながら、一旦休んでいたエナジードレインが再開された。快感の最中に訪れた心を吸い出されるような感覚に、甘い気持ちが途端に吹き飛んだ凜子は再び責め苦に喘いだ。

 

「ひぃやあああああぁッ!」

「ほう、身体が発情してしまったか? 生気を吸われても愛液を漏らし始めているな。いいだろう、このまま生気を吸い取りながら果てさせてやろう。大勢に見られ、我の糸で無様に達するがよい!」

 

 秘所を隠していた布が取り払われた。溜まっていた愛液が垂れ、濡れそぼっていたその箇所がステージ上に大きく投影される。盛り上がる聴衆の声が耳に飛び込んで来るが、そこに羞恥を感じるより早く力を蒐集(しゅうしゅう)されてそれどころではなくなってしまっていた。

 

「あ、あ、あああああああッ! やめ……やめろおおォッ! ち、力……抜けて……」

「いいぞ。実に美味だ。……おやおや、陰核が小指ほどに勃起しているではないか。そこも締め上げてやろう」

「な……何言って……! あっ、あぎゃああああああああぁぁぁぁあッ!」

 

 細い糸によってクリトリスが器用に締め上げられる。元々敏感である部位の、さらに開発され切った性感帯への鋭すぎる刺激に絶叫がほとばしる。だがそれすら次には甘い疼きとなって身体を駆け巡り、腰が跳ね始めていた。

 

「浅ましいな。刺激を求めて腰を跳ねつかせて。それに耳障りな声だ。我慢など不要、さっさと果てよ」

 

 冷たく吐き捨てるように言い放ち、なおもアネモネは手を休めるどころか激しく凜子の身体をいたぶる。敏感な部位を責められての嬌声と力を吸い取られての悲鳴が入り混じり、混乱したまま次第に絶頂への階段を昇っていく。

 

「あっ、ああ……。お、おおッ!? ち、力吸われ……! んおおおおおおおおおぉッ!!」

「果てるか? いいぞ、我が許そう。さあ、無様な姿を晒してしまえ!」

 

 とどめとばかりに蹂躙されて生気を奪い取られる。命の危機さえ感じる状況に反して身体は限界を迎えようとしていた、

 

「だ……ダメェ……! か、身体に力入らないのに……。力吸われながらイク……イッくぅ……! あ、あ、あああああああああああッ!」

 

 緊縛された身体を不規則に痙攣させて絶頂を迎えてしまう凜子。本来望んでいない、鋭い快感が全身を駆け抜けた、直後。

 

「が、がああああぁッ!? や、やめっ……! あひゃああああぁうううううあああああああぁッ!」

 

 脱力仕掛けた身体を再び強張らせ、たがが外れたような咆哮が響き渡った。凜子の絶頂後、アネモネが急激な生気の吸収を行ったのだ。そのせいで意味を成さぬ言葉を叫んで苦しみ、一瞬前の絶頂を再び呼び起こされたような錯覚に陥っていた。

 

(死……ぬ……。私……死ん……じゃう……)

 

 連続絶頂を思わせるほど激しく身体を痙攣させ、瞳の焦点が虚ろになって泡を吹き、力なく凜子の身体は絡みついた糸へともたれかかった。

 

「気を失ったか。しかしこれだけ生気を吸ってまだ生きているとはな。なかなか面白い。……客にもう少しサービスしてやるとしよう」

 

 不気味に笑いを浮かべアネモネは気絶した凜子の元へと近づく。それから生気を吸収されながら迎えてしまった絶頂によって愛液で濡れていた太股をしげしげと眺める。侮蔑するように鼻を鳴らしてから、不意にその脚の付け根付近へと噛み付いた。

 

「……うぅ」

 

 身体に感じた痛みで凜子は目を覚ました。しかし身体に力が入らず、大腿部に魔族の犬歯を突き立てられてもまともに反応することが出来ない。

 

「何……を……」

「案ずるな。もう吸わん。いや、むしろ返してやったのだ」

「返す……?」

 

 言われているそばから、はっきりしていなかった意識が覚醒していくような感覚。これまで呼吸もか細く、心臓の鼓動も消え入りそうだったのに、それらが活力を帯び出して失われた体力が戻ってきたように感じていた。

 

「顔色がよくなってきたようじゃの。楽になったであろう? 奪ったお前の生気を返したのだからな。ただ……」

 

 ニヤリ、とアネモネが妖艶に微笑んだ。それを合図としたかのように、活力が戻ってきていた身体が正常状態を通り過ぎ、それどころか全身に熱を帯びて心臓が早鐘を打ち出す。

 

「あ……ああっ……!? こ、これっ……これえっ……!」

「戻す貴様の生気に、我がアラクネ族の毒……人間にとって強力な媚薬を混ぜておいた」

 

 アネモネの言葉ももう耳に入ってこない。先ほど締め上げられ、今もまだ糸にくくりつけられたままの3つの突起が見る見る勃起していく。身体は震え、汗腺から汗が噴き出し、荒々しい吐息がこぼれ、完全な発情状態へと陥ってしまった。

 

「あ、あ、あっ……ああっ……! はぁ……はぁ……!」

「つらそうじゃな? 慰めたくとも手は動かんか? かわいそうにのう」

 

 邪悪な微笑と共に乳首とクリトリスに巻きついた糸が絞り上げられる。

 

「がっ……あがああああああぁッ!」

 

 再度訪れた鋭い刺激に、凜子の咆哮が響き渡った。しかも今度は身体が完全に出来上がってしまっている状態。それだけで小さいながらも突き刺すような絶頂が走り抜ける。

 

「やれやれ。全く惨めなものじゃな。どれ、もっと無様な姿を晒させてやろう。……リーアルよ! 続きは生殖猿共にやらせるがよい! 我はもう満足したからな!」

 

 無慈悲な宣告に凜子の顔に怖れの色が浮かんだ。どうにか動かせる首を弱々しく横に振り、消え入りそうな声で懇願する。

 

「まっ……待ってくれ……! こんな状態でオークになど犯されたら……く、狂ってしまう……!」

「そうしろ。狂うがいい。淫らな色狂いとなり、浅ましく性交のことしか考えられないケダモノに成り下がれ。リーアルはそれを望んでいたぞ。貴様の理性も自尊心も、さらには自我でさえもズタズタに引き裂いて奴隷娼婦に貶めなければ、貴様は屈服しないとな」

 

 ゾクッ、と背中に冷たい物が走った。

 

(壊される……。私が……壊されてしまう……。この悪魔共は……私を人間以下の……ただの奴隷にする気なんだ……)

 

 凜子はそう直感し、恐怖した。捕縛されたあの時の、思考が完全に麻痺してただただ犯され続けた時のことを思い出してしまう。あの後リーアルやゾクトによってさらに淫らに開発された上に、今さらなる媚薬の投与を受けたこの身体がそれほどの快楽に晒されてしまったら――。

 

「やっ、やめろぉ! やめてくれぇ!」

 

 恥も外聞も捨て、涙さえ浮かべて凜子は叫んだ。だが舞台に昇ってきた下劣なオーク共は、当然のようにそんな泣き言を聞く耳など持たない。

 

「やっと俺達の出番か。せっかく乳でか対魔忍が昨日と違う衣装だってのに出番無いかと思ったぜ」

「あとは好きにしろ。我は適当に見物させてもらうとしよう」

 

 自分の影から糸を紡ぎ出し、器用に椅子を作り上げてアネモネはそこに腰掛けた。そうしながらも凜子の身体を拘束する糸を操り、両足を持ち上げさせてM字開脚を強要させる。高い強度の糸は全く切れる様子もなく、あられもない姿で宙吊りにされた様子が投影されて、会場は再び盛り上がった。

 

「これでやりやすかろう? さあ、好きに犯すがよい」

「おっと、こいつは助かるぜ。へへ……」

 

 凶悪なほどに股間をそり立たせたオークが迫る。壊れてしまうかもしれないという恐怖と、しかし一方でどれほどの快感が待っているのだろうかという期待が入り混じってしまう。

 

「やめっ……! あっ、あんっ、んああああああああああああああッ!」

 

 形だけの抵抗は、挿入と同時にもろくも崩れ去った。男根が膣へと割って入ってきた瞬間、出来上がった身体は軽い絶頂を極めていた。同時にそのオスを逃すまいと膣壁がうねるように包み込み、子種をねだって締め上げていく。

 

「う、うおっ! 入れた瞬間すげえ締まりだ! どうやらチンポほしくてたまらなかったみたいだな!」

「ち……ちが……。そんなこと……」

 

 媚薬によって発情し切った身体に反抗するように、懸命に凜子は耐えようとする。歯を食いしばって荒く息を漏らしながら、相手を悦ばせるような反応はしないよう必死だった。

 

「何が違うんだ? オラァ!」

 

 だがオークの逞しすぎるペニスを打ちつけられた途端、口からは奴隷の刻印が浮かぶ舌と嬌声がこぼれていた。彼女自身、誰よりもよくわかっている。もうオスを受け入れてしまったが最後、身体はいとも簡単に、そして淫らに屈服してしまうのだと。

 

「あっ、あんっ……!」

 

 拒絶の声は、あっさりと甘い声へと変わった。そのことに気をよくしたオークはますます勢いを増して怒張を抽送していく。

 

「んッ……うううッ! ……あぁ……あっ、あっ、あああっ!」

「なんだ、もうイッてるのか? チンポが弱点の対魔忍ちゃんは大変だな」

「いっ……イッてなんか……ないぃ……! あ、ああッ!」

「何がだよ、言ってる傍からイッてるじゃねえか!」

 

 ヒクつく膣内が荒々しく抉られる。その衝撃は身体が堕ちてしまっている凜子の心までも揺さぶり、瓦解させようとしてくる。

 

(身体がどんなに乱れようと……何度惨めな絶頂を迎えようと……心は……心だけは……!)

 

 そう固く誓ったはずの心は、だが次の一突きで揺れ動き、快楽を求めてしまう。身体の準備が整ってしまっている相手に対してオークが手加減などするはずもなく、初めからギアを最高に入れてのハードピストンに凜子はよがり狂った。

 

「あっ、あっ、あんっ! あ、あああッ……! い、イッ……!」

「イッていいぜ。……って、ずっとイきっぱなしかもしれねえがな。俺も出すぜ! オラァ!」

 

 渇望する子宮に精液が流し込まれる。異種族の子種汁を受けて、発情した上に媚薬の影響も受けた子宮がエクスタシーに打ち震えた。

 

「あ、あ、あ、ああああああああああああッ!」

 

 ここまで数度連続で続いていた絶頂を越える深い絶頂。死守しようとする心を飲み込むかのように迫る悦波に、凜子はひたすら悶えた。

 

「やっぱ中に出されるのはいいか。すげえイきっぷりだ」

「あ、あぁ……。う……くっ……。はぁ、はぁ……」

 

 否定の言葉すら上げられず、だがそれでも精神を削り取られまいと懸命に押しとどまろうとする被虐の対魔忍。深い絶頂の余韻で身体を震わせつつも、どうにか巨大な波をやり過ごしたと思った、その時。

 

「あ、あぁっ……!?」

 

 不意に、先ほどアネモネに噛み付かれた時のような疼きが身体を駆け抜けた。いや、その比ではない。次に心臓が鼓動した時、身体中の血液が沸騰するほどの感覚を覚え、同時に目の前がホワイトアウトして思考が完全に麻痺していた。

 

「あ、があああぁあッ!? な、なんだこれえええええぇ!? いやあああああああッ!」

「ああ、言い忘れていた。さっき貴様に打ち込んだ我がアラクネ族の毒を受けた後でオスの精液を胎内に浴びると……。毒素が一気に活性化して身体を蝕み、異常なほどに感度が上昇して全身を性感帯へと作り変える。これからしばらく、貴様は快楽地獄を味わい続けることになるのだ」

 

 アネモネの説明も聞こえぬほどに、凜子は全身を強張らせて快楽の喘ぎ声とは到底思えない絶叫を上げ続けた。鋭敏化されすぎた肌の感覚に知覚が追いつかず、情報が処理し切れない。あまりの壮絶な様子に、今しがた凜子を犯していたオークも数歩後ずさり、客席も歓声よりどよめきが多いほどであった。

 

「それにしても癇に障る声だ。我の説明を無視するとは、直接身体に教えてやるとしよう」

 

 それでも蜘蛛姫は特に驚いた様子も同情する様子も無しに、指を動かして糸を操った。まだ巻きついたままだった乳首とクリトリスが締め上げられ、強制的に絶頂させられてしまう。

 

「お、おおおおおおぉぉおッ! ちっ、乳首とクリトリスううううぅ!」

 

 股間から今しがた吐き出された精液と共に潮が吹き出る。それがなければ絶頂したかもわからないほどに凜子の身体は断続的に痙攣していた。だがアネモネは糸で作った椅子から立ち上がるとそれを影へと消し去り、さらに凜子を戒めていた糸も解くと、背を向けて興味なさげに告げた。

 

「飽きた。これ以上そいつの耳障りな声を聞いていては苦痛になりかねん。もう抵抗もできないであろう。あとは勝手にやるがよい」

 

 まるで子供が遊び飽きた玩具に対するようにそう言い、アネモネは舞台から降りていく。ようやく拘束から解放された凜子だが、ステージ場に投げ出された身体がまるで言うことを聞いてくれない。

 

「よくわかんねえが、こいつは今全身性感帯の淫乱メス豚になっちまってるってことだろ? なら犯すしかねえじゃねえか!」

「ちがいねえ。俺はケツをもらうぜ!」

 

 動かない身体がオークに無理矢理抱きかかえられ、双穴が貫かれた。

 

「おおっ、おおっ、んほおおおおおおおおおおおおおおぉぉッ!」

 

 美少女のものとは思えない声が上がり、舞台上のディスプレイに2匹の生殖猿に犯される姿が映し出される。それを待ち侘びていたかのように、会場は今日最高の盛り上がりを見せた。

 

「あ、や、やめッ……あああああああッ! もう、さっきからずっとイッて……!」

「だからなんだよ。俺達はまだ出してねえんだ」

「まだ口が利けるんだ、大丈夫だろ」

 

 まったく気にかけた様子もなしに、オーク達の二穴陵辱が続けられる。破られた米連スーツのレプリカからこぼれた爆乳が揺れ、既に幾度となく迎えてしまった絶頂の影響による汗や体液を飛び散らせながら、ステージ上の対魔忍は快楽の悲鳴を上げた。

 

「もっ、もう死んじゃううううぅぅぅ! イッてるのにまたイッて……イきすぎて壊れるううううぅぅ! あ、ああああああああああぁぁあッ!」

 

 

 

◇

 

 

 しばらくの間衆人環視の中オークに犯され続け、凜子は意識も虚ろなまま、全身を汚され使い捨てられたゴミのようにステージ上に横たわっていた。どれだけの数の絶頂を極めてしまったか、胎内に精を吐き出されたかも思い出せない。生きているのが不思議だと思いつつも、頭はまともに思考してくれなかった。

 

「ゆき……かぜ……」

 

 かろうじて、心の支えとしている相棒の名前を呟く。まだ囚われの大切な相棒のことを思い出せると僅かに安堵すると同時、もう対魔忍の誇りや自尊心などより、ゆきかぜを思う気持ちだけで己を奮い立たせていると気づいていた。

 

『リーアルだ。観客の皆様、今日は楽しんでいただけたかな?』

 

 と、不意に響いた責任者のアナウンスに、観客が歓声で答えた。

 

『満足していただけたようで嬉しい限りだ。ここで皆様にお知らせある。今しがたステージ上で犯され続けた秋山凜子だが、この度我が娼館・アンダーエデンで娼婦として客を取ることが決定した。ついては明日、ヨミハラの広場で披露会を行う! 凜子の痴態を見たい方々は、是非足を運んでいただきたい!』

 

 予期していなかったリーアルからの告知に、客席が沸いた。舞台上で乱れ続けた女を抱ける機会がとうとう訪れたとあって、期待している者も少なくない。

 

「マジかよ、ついにあのでか乳女が娼婦になるのか!」

「これは行くしかねえだろ!」

 

 そんな降り注ぐ声も、今の凜子の耳には入ってこない。娼婦となることを発表された対魔忍は、激しすぎる疲労によって精神もすり減らされ、まともに動くことも出来ないまま、意識が闇へと沈んでいった。

 

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