和風凌辱エロゲーの主人公兼ヒロインの兄に転生したんですが何か違う 作:ビシオ
誤字報告真にありがとうございます。報告してくださった方、この場を借りてお礼申し上げます。
年始に投稿したいなと思ってたらキリのいいところまで書き進めてたらまたまた長くなってしまいました。
今年もよろしくお願いします。作者からのお年玉や!喰らえっ!
看取って欲しい。
そう言われて、一瞬何を言われたのかわからなかった。
いや、言葉の意味は理解しているが脳が言葉の内容を拒絶してしまった。時間を掛けてゆっくりと嚙み砕いて漸く受け入れた。
つまり、あの子達はもうそろそろ死ぬのだと。
「看取れとはどういう意味ですか?」
それでも、その頼み事の理由を聞かなければならない。僕が看取らないといけない理由を。すると、伊予さんは話し始める。
「私達半妖は、人間の男との関わり合いを持たないの。当然よね、被支配者であり被差別対象者なのだから。そして、男の数が大昔から比べて大分減っている現状だと男と出会えることがないのよ。山奥に住んでる妖魔なら猶更ね」
孤児院の子は被差別者であるので、外で遊ばせたら誘拐や暴力に晒されることは想像に難くない、だから安全のために孤児院の外にほとんど出さずにいる。そのおかげで孤児達の安全は確保できているが、逆に出会いがないという。
妖魔も同様だ。半妖は半分だけ人権があるが妖魔は基本的にない。それこそ、妖魔の数を増やさないためにも人間の男はがっちり守られている。唯一の例外が、朝廷が黙認してる妖魔の町くらいだ。だが、あそこは人間側に利益を齎し、攻め入ると他の妖魔が共同して出張るという厄介さから表向きは討伐対象としつつ裏では流通を黙認しているといったくらいだ。そして、流通がある以上人の出入りがあり、そして人間の男も売られてきたりする。人間側から見ても役立たずになった男は使い道があるのか、思いのほか高値で買ってくれるそうだ。
要は、半妖も妖魔も異性との出会いが極端に限られてしまっているのだ。それもこれも、男子の出生率が年々下がって来ていることもあるし、妖魔も種の存続のため男を狙うも出会いがない慢性的な男日照りになってるからという二重の苦で喘いでいる。
異性との出会いがないまま死ぬのは余りにも無情無慈悲すぎる。だが、このような頼み事を聞いてくれる人なんてまずいない。そんなところに、僕がやって来た。そして、上手いこと脅迫材料を使って頼み込むことが出来た。無理やりだが、こうまでしないともうそろそろ命運尽きる子達の願いを叶えることが出来ない。だから外道と言われようがこのような手段を取り、僕に頼むことにした。
脅迫材料まで使って頼むにしては急すぎると思ったが、最後の願いを叶えるために急いでいたというならば納得できる部分はあるにはある。尤も、手際が良すぎるような気もするが。
「だから、僕に頼むと?」
「貴方にしか出来ないことなのよ」
簡単に言ってくれる。
「あの子達が、もうすぐ死ぬとわかって、尚僕にあの子達を看取れと?」
お前は何を言っているのかわかっているのか? 目の前で死ぬのを看取れというのがどういう意味かわかっているのか? 言外にそう言う意味を込めて強めに言った。伊予さんも、それをわかっている上で頷き、その場で丁寧な土下座をした。
「どうか……どうか……伏してお願いします……」
たった一言。だが、その声は震えていた。
これが、この世界に住む住人ならば聞くわけがないだろう。半妖の頼み事を、被差別且つ被支配者の頼みなど聞く価値もないと切り捨てるし場合によっては無礼だと打ち首されても文句は言えないほどの無茶な頼みだ。
だが、僕は別世界に住んでいた転生者でこの世界をゲームとして知っているし、成り立ちも完全ではないがある程度知っている。そして、転生者であるがゆえにこの世界の住人のような蟠りがない。だから、この世界の住人ならば激怒して立ち上がり罵詈雑言を吐きながら去るような頼み事であっても、僕はそこまで行くことがなかった。
はっきり言って死ぬ子を看取れとかふざけるな! と怒鳴りたくなる気持ちがないわけではない。目の前で子供が死ぬのを黙って見ているだけなんて、いくら何でも辛すぎるからだ。だがしかし、こうして土下座してまで頼む親としての心もわかる。最後の晩餐のように、最後にいい思いをさせたいという親の気持ちが。
何より、妹達を可愛がっている僕からしたら小さい子が死にかかっているというのを知って無碍に出来るほど冷徹になれなかった。ただのお人好しな甘ちゃんなのかもしれないが。
命の炎が尽きそうになってる子を看取るのだから正直言って物凄く放り投げたい。でも、震える声で土下座してまで頼まれたしまったら、僕にはもう怒鳴る気持ちも断る気持ちも消え失せた。
だが、彼女の覚悟を聞くために僕は尋ねた。
「貴方は僕を抱きたい上に子を看取れという、余りにも欲張りすぎです。どちらか片方を選べと言われたらどちらを取るんですか?」
「看取る方を選ぶわ。貴方を抱けなくてもいいから、どうかあの子達の願いを叶えて欲しいの。最後に男の人の腕に抱かれながら死ぬという願いを」
意地悪な質問に対してまさかの即答だった。
男の腕に抱かれながら死ぬ…………、僕の前世の価値観ならば、愛する女の腕に抱かれながら死ぬ男は幸せだ。みたいな話を聞いたことがあるがそれが逆転したならこういうことなのだろうと呑気に考えてしまった。
だが、エロゲー世界なのにエロを差し置いて命運尽きかかる子の願いを優先する伊予さんに覚悟を見た僕は──
「はぁ~~……、看取る前にあの子達にもう一度会わせてください」
──溜息一つ吐き、そう彼女にお願いをした。
改めて再度隔離部屋に入る。
先ほどは急に入ったが、今回は手ぬぐいを口に巻いて簡易マスク代わりにする。そして、部屋は閉め切っていて暗かったからわからなかったので、灯りの術式を結んで札に流し込み、それを六枚浮かせて六角形の形にして照明代わりにする。さながら、六角形の形をした
「灯りをつけてくれてありがとうね」
「これくらいならお安い御用ですよ」
退魔師である僕からすれば札は普通に持ってるものだ。だが消耗品だし退魔師が使うやつなのでタダではない。補充に金がかかるが、そこは交易品で稼いでいるから大したことではない。
だが、孤児院を経営している伊予さんからは高価なものになる。朝廷からの支援はあるが潤沢ではないし札など術式関係のものは基本的に送られない。当然だ、それを使って反乱されたら困るからだ。攻撃に転用できるものは支援せず、食料など換金出来ないものしか送られない。一応反物も送られるが、こちらは換金できるような上等なやつではなく低品質で下等なものだ。反物は特に孤児達の服やらに仕立てたり、裁断して治療患者の包帯に転用したりするので換金する余裕がないとも言えるが。
時間経過で効果が無くなるが一時的な照明手段として有用だ。空中に灯り玉を浮かす術もあるが高度だし霊力消費も高いので僕はこうして道具を使って体力霊力消費を抑えてケチってる。妹達みたいに強くないからね、仕方ないね。
明るくなった部屋には、暗くて人数がわからなかったが四人の少女達がいた。四人の子にはそれぞれ特徴があり、頭に狐耳や角が生えてる子、背中から黒い片翼が生えてる子、下半身が蛇のような子がいた。だが、個別に認識できる場所はそれくらいで、残りは包帯でぐるぐる巻きにされている。肌が見える場所がほとんどないし、顔すらも包帯で巻かれてるほどだ。
伊予さんと翠さんが飲ませた薬が効いていたのかそれぞれ布団で寝ていたが、狐耳の子がその大きな狐耳をピクンと動かし
「うぅん……どちらさまでしょうか?」
と声を上げてもそもそと動く。すると、他の三人の子も起きた。包帯の輪郭でしかわからないが、整った顔立ちなのはわかる。だが、それすらも包帯で顔が見えない状態になってるので慰めにもならない。
「こんにちは、伊予さんのお願いで来ました。綾絶頼と言います。短い間だけど宜しくね」
丁寧にあいさつをする。僕の方が立場も身分も上だが、元が平民精神な僕は余程の場面じゃない限り少し下手且つ丁寧なあいさつをするようにしている。これが波羅や双子に焔だったならば、敬語すら使わず威圧的な挨拶をするだろう。まぁ、それが当然なのだが平民からの精神が引き継がれてる僕はそういうのが苦手なのだ。更には、命運尽きかけてる子に対して威圧的なことをしたくないし、した結果文字通りショックで命運尽きてしまった…………なんてことが起きたら後味悪すぎるからだ。
僕の声を聴いて、狐耳の子は先ほどより激しく耳を動かす。そして驚きの声を出した。
「お、お、お、お…………、男の人……ですか? 痛たた…………」
激しく狐耳を動かしたせいか、痛がりながらもその子がそう声を上げると、残りの三人の少女達も驚いた声を出した。
「男……?! げほっ」
「うう……嘘じゃないよね? ケホケホ」
「夢なら……覚めないでくれ……うう……」
本当に男がやって来たことがそんなに驚くほどの事なのかと僕は一瞬思ったが、先ほどの伊予さんの説明と、この世界が原作ゲームと違って貞操男女逆転してるから、価値観も違うからこんなに驚くんだなと納得する。…………納得はするが未だに慣れない、それに、まだまだ確認しなければならないことがたくさんあることだし……。
「無理しなくていいよ、そのまま寝てて結構。挨拶も不要だよ」
起き上がって挨拶をしようとしたので、それを無理やり制する。ただでさえ病人で酷いことになってるのに鞭うつ真似なんて出来るはずもない。僕がそういうと、それに従い布団に戻る少女達。
そのそばに座って更に話しかける。
「伊予さんから君達の体について聞きました。呪いでこんな事になってるんだね」
「は、はいそうです…………。妖魔にかかる呪いで、私達はこうして病気や怪我に悩まされています……」
狐耳の子が一番手元にいたので受け答えする。
「でも、私達は苦しいですが、悲しいとは思いません。何故なら、私達が呪いを受けたおかげで同胞が助かるのですから……」
「えっ? それはどういうこと?」
初めて聞く情報に、尋ねるも彼女はゴホゴホと咳き込みながらも話そうとするのを慌ててやめさせる。そして、傍にいた伊予さんに視線を送ると彼女は神妙な顔をしながらも答えてくれた。
「私達妖魔は呪いを受けてるのは知ってるわね? その呪いは無限に続く物じゃない。呪いを沢山受けた者は同胞の呪いを軽減させることがわかったの。それだけじゃなく、力も得ることも出来るわ。そして沢山呪いを受けた子は祝福の子と呼ばれるようになった」
伊予さんが言うには、呪いはデメリットばかりを感じるように思うが受けた者は命の炎が消えるのが速まる代わりに力を得ることが出来る。基本的に妖魔は生まれた時から各地の種族が住まう故郷にある龍脈を通じて呪われる。長年の研究により、呪いは少しずつではあるが段々と減っているのが判明している。その呪いをわざと一身に受け、多大な力を得てその力で同胞に貢献するものは祝福の子と呼ばれるようになった。
妖魔は人の畏れによって存在する。そこから人と同じように食事をして生きるのだが、その食事は生の食事で原始的でありそして人を食うのも食事であった。そこから、人を知り人の文化を知り人を学ぶにつれて人の作るモノを吸収し始め独自の集落を築き上げそれぞれの種族の文化を作り上げていった。
そこまではよかったのだが、妖魔は捕食者であるのと自分達の存在の維持の為に人を支配しようとしたが、敗北し立場が逆転したのが人妖大戦である。そこからは急落の一途をたどってここまできた。
弱体化の結果人を食べることがしにくくなったので、人と同じように食文化を発展させる必要がある。そのためにも自給自足体制を整えなければならない。整えたいが、嘗ては山を砕き川を作るほどの力は呪いにより発揮出来なくなった。
だからこそ、一族の中から祝福の子として捧げられた子を使う。祝福の子は呪われながらも多大な力で故郷を開発し、治水をし、土地の実りを豊かにし、呪いで苦しみ生きる糧を得にくくなった同胞たちが人間と同様に狩猟農耕で自給自足が出来生きられるようにしてきた。更には一族の呪いを沢山受けるので同胞が浴びる呪いが減り生き残れる、そして祝福の子は皆から感謝されながら死ぬ。それを長年繰り返したおかげで、あの人妖大戦から今日まで生き延びることができた。
と、伊予さんから説明を受けた。
…………こんなの原作ゲームにあったっけ? いや、なかったはずだ。
原作ゲームだと呪いは単に妖魔の弱体化と子孫を残すのに影響があったという舞台設定みたいなものだった。なので、このような話は初耳である。呪いが段々と目減りしていっているというのもだ。そうなると、妖魔側は完璧とは言い難いが呪いを克服していっているということでは? そのことを伊予さんに言うと、彼女は頷き
「ええ、妖魔側も座して死を待つわけには行かないから、色々と考えたのよ。まだ呪いは残ったままだけど、大昔の時代に比べたら凡そ四分の一は減らすことが出来たみたいよ」
それでも完璧に消すことは出来ないし、人妖大戦から千年で四分の一なら呪いを消すまであと三千年である。母を訪ねて三千里どころか、呪いを消すまで三千年だ。それまでに妖魔は一匹残らず滅び人間のみが住まう世界になるだろうことは想像に難くない。
「そのための祝福の子ですか…………」
自分たちが生き残るために、生まれた子に呪いを押し付け同胞が受ける呪いの負担を減らし、そしてその力で同胞の礎にする。その犠牲が無駄にならぬように、呪われた子と呼んで忌み嫌うことを絶対にせず祝福の子と呼んで感謝を捧げる。実際にその命を捧げて奉仕してもらうから感謝するわけだが、自分たちは感謝をしているというポーズをすることで命尽きる前に反乱を起こさないようにするためだろう。こうして狐耳の子の口から悲しくないという言葉が出てるだけでも、そこら辺の教育が行き届いているのがわかるほどだ。
誠に以てカミソリ一枚の隙が無いほどに無駄がない、それこそ吐き気を催すほどに。
だがしかし、吐き気を催すと思ったものの、彼女たちは妖魔だ。そして、天正帝の妻をNTRした結果修羅が生まれて呪われたのだからある意味自業自得である。
……そう、自業自得なのだ。同情する必要はない。このまま突き放してみなかったことにしてもいいし、放っておいてもいい。見捨てた場合は僕が抱かれることになるだろうが、呪いで苦しむ少女達の最後を看取るという心的外傷を負うよりマシだろう。
だが、苦しみながらもその身を同胞に捧げんとする姿を見て、見捨てることなんてできなかった。例え、妖魔に手を貸すという人類を裏切ることになろうとも、命尽きるこの子達に最後の温情として優しくしてあげてもいいかもしれないと思ったほどに少女達の献身に打たれた。教育によって教え込まれたという点もあるだろうが、それでも命を捧げようとする忠の心に突き動かされたと言ってもいい。
僕は静かに一番近くにいた狐耳の子に近づき、その包帯に巻かれた手を取る。いきなり触られたことにビクッとして怯えたが、僕が優しく握っているのがわかるとおずおずと握り返す。
「温かい……」
「こんなことしか出来なくてごめんね」
僕の手を握る少女にそう言うことしか出来ない。だが、それで満足しているのか少女は小さく首を振る。
「いいえ、とても嬉しいです…………。死ぬ前に男性に看取られるなんて……、貴方のお顔を見れないのが残念ですが…………」
呪いで四人の少女達は、肌が荒地のように罅割れ血が流れ、目も見えないのが大体共通している。そこから、片腕が無かったり足が無かったり片翼しかなかったりと片端の状態になっている。耳は聞こえるのが幸いだろうか、僕の声は聞こえるようだ。
「あの、私の手も握ってください……」
「私も……」
「お願いします……」
「いいよ、いくらでも握ってあげるよ」
他の三人の少女達が言ってきたので、それぞれ手を握る。僕の手は彼女達の血で汚れに汚れる。だが、それを不愉快とは思わなかった。怒りもしなかった。怒りが沸くのは寧ろ、目の前で命尽きる少女達に何もできない己の無力さだ。せめて何か出来ることはないかと思う位には同情してしまった。
狐耳の少女はおずおずと申し訳なさそうに言う。
「すいません、私達の血で貴方の手を汚したかもしれません。人間の男性に不愉快な思いをさせて、姉妹を代表して謝罪します……コホッ」
目は見えないが、己の体が包帯でぐるぐる巻きにされるほど血と膿で汚れているのは理解している。そんな彼女たちの手をそれぞれ握ったのだから汚れたというのは想像に難くなく、そう思ったからこそ申し訳なさそうに少女は謝罪した。妖魔という共通点意外全く違う種族の四人なのに、姉妹と言うところを見ると同じ祝福の子として苦しみを分かち合う間柄なのか、彼女達の繋がりを理解できてしまう。
「気にしないでいいよ。汚れたのは確かだけど、君たちのことを考えたらこの程度、汚れた内に入らないよ。それに、洗えばいいだけさ」
彼女達のことを考えると、強く言うことなんて出来ないので努めて優しく言う。実際洗えばいいだけなのも事実だ。これが他の人間ならば呪われた者の血を触れたら呪われる! と悍ましく思うだろうし、その危険もないわけじゃない。だが、この呪いは妖魔に効く物なので人間の僕は大丈夫だろうと緩く考えていたのでそう返答した。天正帝の呪いは妖魔に効き弱体化は即効性とゲーム内説明や資料集でも書いてあった、もし僕にも効果があるのなら最初に部屋に入った時点でアウトである。にもかかわらずこうして血に直接触れても何も問題がないので、多少は怖かったがやはり大丈夫だと認識できると、こうやって触れることが出来る。
その返答を聞いて、ほうと一息付き体をゆっくりと弛緩させて布団に横たわる少女達。狐耳の子だけでなく、他の子達も僕を不愉快にさせたのではないかと心配していたようだった。
「嬉しいです……そこまで言ってくれる優しい男性がいるなんて……死ぬ前の願いが叶います……ゲホゲホっ」
苦しみながらも心底嬉しそうに言う彼女達、口元も笑顔を示す緩やかな弧を描いているが、僕は逆向きの弧を描いていた。まだ時間があるとはいえ、死を看取るのがこんなにもつらい物なのかと。
「お礼なら僕だけじゃなく伊予さんに言ってね。伊予さんが土下座するほどにお願いしたから、その心意気を汲んだだけだよ」
「はい、伊予おば様にも厚く礼を言いますね……ゴホッ」
これ以上話すことはないので、傍にいる伊予さんに視線をやる。伊予さんも意図が伝わったのか短くうなずくと立ち上がり襖に掛けた結界を解除し開ける。結界は間違って孤児達が入らないように、伊予さんか翠さんじゃないと解除できないようになっているので、襖の開け閉めも僕は出来ず彼女にやってもらうしかない。
そのまま退出する前に、天井に浮かせた
部屋から退出し、もうここでの用件は全部終わらせたので、伊予さんにお暇することを言って孤児院の玄関へと案内してもらう。僕は歩きながら伊予さんに尋ねる。
「あの子達はいつまで?」
「あと三週間か四週間…………凡そ長くて一月ほどね」
「そうですか……」
提示された少女達の命日は、奇しくも僕ら一行が都に滞在する期間である一月とほぼ同様だった。僕が都から我が家に戻る間際辺りに看取ることになるかもしれない。まだ帝や公家との謁見や会見など諸々の公務が終わってないのに余計な仕事を抱え込んでしまった感が否めないが、僕が彼女に抱かれて脅されたのだから仕方ない。妹達がいたのなら防げたのかもしれないが、そうすると万太の条件が達成できず桃代姉さんの治療薬が貰えなくなるから連れてくる手段はとれなかった。
…………今更ながらどうも裏があると感じ始めた。ちゃんと商売事なら金を要求するのが行商人万太だ。そんな彼が、僕の依頼した『建木の雫』というLRアイテムを指定された人物に単身で会うという条件で引き受けた。原作ゲームでも、そして万太が出てくる他作品でも確かこういうのは一度もなかったはずだ。どのような物品でも取り寄せ依頼は必ず金を払う。ゲームの都合といえばそれまでだが、それを彼はしなかった。
桃代姉さんへの治療薬でLRアイテムの取り寄せ依頼を受けてくれたってことで舞い上がったが、あの場面を色々思い返すとゲーム中であんな脅す場面はなかった。最初、『建木の雫』という激レアアイテムの名前を出したから警戒したのかと思ったが、ゲームプレイで『建木の雫』と同等かそれ以上のレアを依頼しても金銭のやり取りだけだった。あの強烈な威圧を喰らったからNGワードなのかと怯えてしまったが、良く考えたらあの威圧も何のためにやったのかの疑問が出てくる。
それに、万太は基本的に利益が出ることじゃないと動かない。商人モードは当然だが神モードでもだ。
彼が取り寄せ依頼を受ける条件として、僕にメモ紙に書かれた人物に単身で会いに行くことだとあったが、そうなると万太にとっての利益とはなんだ? 金も受け取らず人物に会って交流を深めるだけで万太にとって何が利益になるんだろうか?
そして、あのメモ紙に書かれたのは場所とそこにいる人物と書いてあって名前は書いてなかった。刑部の鍛冶場という場所にいる人物と仲良くなれ、という風にメモ紙には複数の場所とその人物という風に書かれてある。名前は書かれてない。そして、僕は刑部の鍛冶場ということで雄太郎がいるのだろうと原作ゲーム知識で思い込んでいた。
だが、実際は似ているが別人物且つ女性であった。そして、貞操男女逆転しているからか彼女に抱かれてしまった。抱かれた結果、こちらの依頼を受けてくれるし孤児院の子も送ってくれるようになったのはいいが、こうして繋がりが出来ることが万太にとっての利益なのだろうか? そして、刑部の鍛冶場を筆頭にメモ紙に書かれてある場所は、僕がこの世界と原作ゲームがどれほど共通しているかを確認する場所とほぼ一緒である。そう考えると…………、万太はこちらの考えを見透かしている? メモ紙にも僕がこの世界と価値観が違うってことを知った上で注意書きと変装道具が一緒に入っていたくらいだし。
一応こちらとしても、今から行く場所で確認すると同時に、万太の条件をクリアできるわけだから問題はない。……ないのだが、どうも上手く乗せられてるような気がしなくもない。実際商人モードもそうだが神モードでも色々条件出してプレイヤーを言いくるめたりNPCと取引する際も上手い具合に乗せたりと商人ならではの強かさと神モードでの神視点が嚙み合ってて会社随一の強キャラだからしょうがない面もあるのだが。
仮に、上手く乗せられたとしてもその通りに動くしかない現状がもどかしい。事実一つ目の交流するという条件はクリアした…………はずだし。抱かれてしまうのは予想外だったが……。
そうこう考えているうちに孤児院の玄関へと着いた。翠さんが既にいる、僕を見送るためだろうか。
「頼の旦那、祝福の子を看取る条件を受け入れてくれてまず礼を言わせて欲しいでヤンス」
そう言うと、彼女は深々と頭を下げる。それと同時に、どたぷんという擬音が聞こえそうなくらいの巨乳がたわわに動き、そこから見事な巨大I字の谷間が見えて股間に血流が集中してくる。慌てて霊力を送って鎮めるも、疑問が出た。翠さんは傍に居なかったのに、なぜ話の内容を知っているのか? もしかして──
「念話……ですか?」
「ええ、退魔師だから知っているでしょうけど、短い距離なら会話出来るのよ」
条件があるけどね、と僕の出した答えに伊予さんは付け加える。
退魔師を含めた術師は基本的には式神を通じて連絡を行う。式神通信は現代社会で言うスマホなどの通信機代わりのようなものだ。持ち運びが簡単だし式神を鳥などの小動物にすれば手元にない人に飛ばせて通信も行える。
だが、式神を使わない通信もある、それが念話だ。式神のようなわかりやすいものは、破壊されると通信不能になるのは言うまでもない。念話は文字通り頭で念じて送るので式神が無くても通話できるメリットがある。
しかし、極端に距離が短いという欠点がある。長距離になると念が薄れて会話が聞き取れなくなるのだ。更には、念は盗聴されやすい。精神系に特化した妖魔や退魔師などは、相手の精神を支配するのだが、念話などの念も拾うことが出来るので注意が必要だ。なので、長距離通信は式神、短距離通信は念話という風に術師は分けて使っている。
伊予さんが使えるのも凶妖という強い妖魔だからだろう。呪いで弱体化してるとはいえ、近距離ならば、孤児院の範囲ならば、そして翠さんという娘ならばそれなりの強さもあるので使えるから通信ができると見た方がいいだろう。
…………となると、僕が客間で祝福の子についての説明諸々や、隔離部屋でのやり取りも伊予さんを通して知らされたということだろうか? 筒抜けになってると考えるとそれはそれで少し恥ずかしい気がする。確認のために聞いてみた所。
「あの……もしかして全部聞いてました?」
「はい、母ちゃんから念話で全部聞かされたでヤンス」
そう言うと、彼女の横に伊予さんが並び立ち、二人揃って背筋を伸ばす。そして二人が口を開く。
「あっしらの妹達を看取ってもらう約束、女として妹達も最上級の冥途の土産になるでござんす。貴方様に深くお礼を申すでヤンス」
「ですが貴き身分である貴方様に、賤しき身分の子を看取らせるという約束を押し付けたこと、私めが貴方様を抱き脅迫したこと、全ての罪は私と翠が負います。貴方様が子を看取った後、私達の首を差し出す所存です。ですが孤児達に罪はありません、どうか私達の首だけでお許しください」
二人揃ってお礼と反省の言葉を述べその場で深々と頭を下げる。それと同時に、どたぷんという擬音が聞こえそうなくらいの巨乳がたわわに動き、そこから見事な巨大I字の谷間が見えて股間に血流が集中してくる。今度は二つの爆乳が、大きさに差があれど凄まじく柔らかそうなので、翠さんの時より倍の霊力を送って鎮める。その二つの内片方の爆乳は揉んだり吸ったりしたんだよな……って余計なことを考えてしまったため再度勃起しかかる。莫迦たれ、何やっとるねん自分と己を内心で叱咤しながら平静を装う。
お礼を言うのはまだいいが、まさか二人揃って首を出すとは思わなかった。だが、言ってる内容はわかる。貴族の男を無理やり抱いたんだから死罪間違いなしだろう。そして、翠さんまで負うのは一族連座ということだ。翠さんは伊予さんの娘だから、親子揃って首を出すということは、高名な狸の一族の中でも名を馳せた刑部狸族が族滅することに他ならない。そこまでしてでも反省し、そして自分たちの首だけで孤児達は守りたいという子を守る親を見た。血は繋がらず妖魔と半妖という薄い繋がりであったとしても守ろうとするその意思は尊く見える。
彼女達は本当にそう心に決めて言っているし首を差し出す覚悟も感じ取れた。だが、看取る約束をしながら首を斬るみたいなRTA走者のような真似は僕には出来ない。何より、孤児達から恨まれるようなことはしたくないし、あの子達にはまだまだ親が、保護者が必要だ。
「謝罪は受け取ります、その上で許しましょう。但し、今後二度とあのような真似はしないでください」
こちらは無理やり抱かれたが、その結果彼女へ武具作成の依頼を通しやすくなったのだ。わざわざその利点を潰すかのような処刑など出来ようはずもない。考えた結果、こう言うことで仕舞いとする。我ながら甘いと思うが、これ以外の選択肢が思いつかない。抱かれたことで情が沸いてしまったのもあるが。
「寛大なお心に心の底から」
「感謝するでヤンス」
いい連携で二人が礼を言う。若干コントみたいだが突っ込むのは野暮だろう。草履を履いて、玄関を出たら、再度二人がこちらに向かって頭を下げる。それに対して会釈をしつつも
「では伊予さん、孤児院の子は僕らが都を出る時までに送る子を決めてください」
「わかりました」
そう言って、孤児院を後にした。
自分達の夫となる少年の背中を見送りつつ、声が聞こえないあたりになると二人は話し始める。
「母ちゃんの言った通りでヤンス。あの旦那はとても甘いって」
「ええ、そうね。まさか私達妖魔に対して嫌悪感を抱かないのは驚いたわ」
自分達妖魔に抱かれるなんて、この世界の男ならその場で舌を噛み切って死ぬくらいの恥辱だ。何故ならば、天正帝の教育典範によりそのように教え込まれたからだ。内容は至って当たり前で、男が種を出すと沢山の女を孕ませる。人間ならばいいが、妖魔の数を増やすことは人類に敵対することに他ならぬ。故に、男が人間の女に無理やり抱かれるのは百歩譲って良いが妖魔に抱かれるのは最大級の恥と心得よ。
公家や平民だけでなく、農民までにすらお触れを出して徹底し、妖魔の数を漸減してきた天正帝。己の命を捧げた呪いも相俟って、今では妖魔の数を数えるのが早いほどにまで減ってしまった。
「本来ならば、私に無理やり抱かれた時点で舌を噛み切っててもおかしくなかったわ」
「でも、母ちゃんに抱かれて嫌がるどころか腰を自ら振るなんて…………信じられないでヤンス」
「ええ、彼こそが私達の求めた漢ね」
「一族復興の……、いや、妖魔全体のでヤンスね」
娘の相槌に母は頷く。
無論、この場合の妖魔全体とは大妖以上の物を指す。伊予や翠のような知識ある存在は最低でも中妖以上だ。孤児院の半妖の子達が中妖程度であり、そこから大人になれば大妖になるとみていい。知識とは力であり、彼女らが振るう妖力は一部を除いて莫迦が振るっても大したことにならないからだ。
その成長した大妖…………所謂大人たちがどんどん減り、下である子供達も生まれなくなれば後は滅びるだけだ。残る妖魔は小妖程度となり、そうなるともはや人間の脅威ではなくなる。霊力を持たぬ農民ならば小妖一匹に農具を持った農民が五人で漸く対抗できる。こうなると、未だ脅威が残る様に見えてしまう。
だが、天正帝は己の持つ知識を一部を除いて積極的に公開し、技術力の底上げをしたのだ。そうして、火縄銃すら官給品として大量生産され兵士で長筒、上級武士で短筒を持つほどに普及し、更には裕福な村では農民すら猟師として長筒を持ち狩りをしているほどだ。そして、狩りは獣が中心だったが今では小妖すら積極的に狩っていき、剥いで素材にして生活に役立てたり役所に持っていき報奨金を頂くほどになっている。
このまま進めば、もはや妖魔は熊などの害獣程度にまでなってしまう。それを防ぐために、人間に媚びるように協力して妖魔の町を作り上げ、有用な物品を売り出してなんとか公家や有力者との繋がりを持ち、そこから数百年以上かけて妖魔への認識を少しずつ亀の歩みではあるが変えていった。
人間の妖魔への認識だけでなく、その逆もまた然りである。
見下していた人間がいなければ自分たちが存在できないというのは天正帝によって骨の髄まで教え込まされた。奴隷市場で買った人間の雄を調べつくし、行動を勉強したものの、やはり教育の力というのは強い。千年もひたすら同じことを繰り返せば三つ子の魂百までのように染みつくものである。それをどうにかこうにか少しずつ引き剥がしているし、妖魔の呪いも減らす努力をしているが、知識衆の計算でもってしてもやはり我等が滅ぶのが追い付くという無情なる結果が出た。
もはや、見下していた存在に浅ましく足を舐めても良いほどまでに追い詰められている。これは、各有力な種族で集まった会議でも決まったほどだ。一部の高慢ちきで最盛期は人間の踊り食いすらした凶妖ですら、性転換し人間の雄に土下座して種乞いして種族を維持しなければならぬほどである。
そんな中、伊予の下へ手紙が来た。他ならぬ朝廷にいる友からである。
途中政敵に捕まり見られても問題ない様に、その手紙にはたった一言。「日の出」とのみ記されていた。
たった一言、だが数百年以上生きた自分にはよくわかる。男が見つかったのだと。だが、やはり数百年以上もの長い時を待ったというのもあり、半信半疑に近かった。
その疑問を無くしたのが、行商人万太という男である。少年がやって来る少し前にやって来て、商談だと言ってきた。
彼の存在を見た時、その肉体美は惚れてしまうほどだがそれ以上に一目で只ならぬ存在だと伊予は看破した。そして、商談があるとのことで客間で人払いをし、わざわざ結界まで張った上で彼は自身の正体を明かし、その場で恐れ戦きながら土下座する。自分達を始末しに来たのかと思い、自分の命はいいから孤児達は見逃してくれと伊予は命乞いした。
万太は手を振りそれが目的ではなく寧ろ手助けしに来たと言う。そして、各種盗撮道具を渡し、これから来る少年に対してあれこれ理由をつけて抱けとまで言った。
怪しさ満点である。しかも商売人なのに、その少年の情報に対する報酬どころか道具代すら要らぬとまで言ったほどだ。伊予も鍛冶場と孤児院を経営する身なので、商人が金を要らないとまでいうのはあり得ないと思っている。
それに関して、天上の存在に言うのが憚られるも凶妖としての矜持を発揮し堂々と尋ねた。すると、少年と関係を持つことが自身に対する報酬と言った、更には朝廷にいる友人の名前を、潜伏してる名ではなく真名を出してきた。その名は限られた者しか知らないので、それを出されると信じる以外の道がなかった。
その結果、彼の言う通りに少年が来た。女装したのは別に珍しくもない。堂々と男だと言うのは周りに護衛が守ってることが多い。単身の場合男は襲われないために女装するのが普通だ。
客間にあげて話を聞けば、ただの少年かと思いきや四方守護の一角であるというから驚きである。その少年を万太は抱けと言ったが、これほどまでの高貴な身分を抱くなんて本当に出来るのかどうか不安だった、下手すると自分と娘の首だけで済まず孤児院を取り潰しすらあり得るほどだ。
だが、少年は万太の情報通り非常に色事に弱く、あっさりと快楽堕ちした。これには驚いたが、何より驚いたのが少年が自ら腰を振るほどに積極的だったことだ。
万太の情報通り、そして指示された通り盗撮道具で脅し、更には祝福の子の男の腕で死ぬという最後の願いを聞き届けてくれた。正直言って、ここまで上手く話しが進むことに未だに信じられぬ思いである。まるで御伽噺のような無駄のない進み方だ。
何より驚いたのは、彼は自分の真名を知っていた。だから、万太の情報を信じることが出来た。
そう、嘗て自身が男だった時の名前を。
これは、娘である翠には言ってないことだ。
彼女は、紛れもない自分の娘ではあるが自身が生んだわけではない。呪いによって種無しになった後、自身は凶妖故の頑強さのため病に罹らずそのまま過ごしていたが、息子達はそうではなく全て呪いからの病で死んでしまった。
自身の子がいなくなってしまったので、決まりに則って天正帝に土下座して懇願した。自身の族滅を避けるために、一時的に呪いを解除してくれと。当初天正帝は「子がいなくなったらと言ったが、血が薄いが親戚や縁戚がいるだろう」と言って拒否したが、貴族など周囲が説得したのが功を奏した。他ならぬ鍛冶師としての腕前でひたすら腕を奮い道具を作り公家や武家達に貢献したからこそ、周囲も族滅は勿体ない、まだまだ利用するべきだと声を上げて説得してくれた。
無論、その説得は自身を最大限に有効活用するためである。だがしかし、族滅を避けられるならばいくらでも道具になってやる。そう思ってひたすら毎日土下座しお百度参りの真似事すらした。最終的には、自身の取り決めたことだからか、天正帝も渋々と認めてくれたので、漸く子を作れた。
子を作れたのは良いが、天正帝の呪いの為に男は作れなかった。当然だ、男を産んでも種無しが決まっているからである。息子達は呪いからの病で死んだのだが、「病は気から」という言葉がある様に自身の男としての機能が働かなくなり、それを気に病んで病に罹り死んでしまった。雄太郎自身は数百年以上生きてきた精神性によって耐えられたが、子供達はそうではなかったのだ。
そして、妖術を使って性別を女に固定し妻に産ませたのが翠である。そしてその後、天正帝の呪いを再度かけられたのだが、二度目はないと言われたのだ。更には妻が産後の肥立ちが悪く死んでしまった。
それまで、自分自身は人間側に下ったのもあり安寧とした生活を過ごしていたが、種の存続は他の妖魔と同じく喫緊の課題であるとは思ってもみなかった。沢山息子がいたから大丈夫だろうと思っていたが、息子達は雄太郎のように男の機能が、子孫を作ることができないということに耐えられるほどの精神が強くなかったのだ。
翠まで死んでしまったら、もう自身の血族が遠い縁戚しかいなくなる。それを防ぐためにはどうするか…………? そう考えた結果、雄太郎は他の妖魔と同じく性転換したのである。そして、愛娘の翠が生まれて直ぐに女になり、翠が物心つく頃には既に女としての生活が板についた。
後は、男としての生活も名も捨て、女として再走したが思いのほか女の体というのは男とは違っていた。何より、男の放精と違う快楽に伊予はすっかりハマってしまった。
雄太郎の時は、放精すれば疲れて再起動に時間がかかる。沢山子供を作った刑部狸の長であるが、やはり無限にあるわけではない。
だが、伊予と生まれ変わった姿だと、放精のような疲労はあるものの回数制限が一切ない。更には、天正帝の呪いで男としての性欲が薄れてしまっていたのが、女になって復活したのである。それはもう、失われた性欲を取り戻すかのようにひたすら自慰にふけった。結界を張って三日に一回、酷いと毎日は張型でふけっているほどである。
こんなにハマるほどだから、男が欲しくなった。既に数百年も経ったら忌々しくも頭の上がらない恐ろしい天正帝は既に死んでいるし、当時の大臣らや貴族も代替わりしている。更には友人の働きかけのおかげで雄太郎から伊予へと性転換した際、刑部の鍛冶場の主人の雄太郎は死んだ、今いるのは全くの別人の半妖の伊予である。と情報操作をしてくれたおかげで彼女は雄太郎という過去を完全に捨て去ることに成功した。
そして、朝廷にいる友人と連絡を取り、種の存続について話し合いをした。友人も同じ危機感を抱いており、既に他の種族と連絡を取り合っているという。自分も参加したかったが、自分は人間に下った裏切り者。ここからどうすれば同胞に許してもらえるか、それについて友人に相談したら、鍛冶場を孤児院と併用して経営すればいいとの助言を受けた。すぐさま行動に移し、朝廷に伺ったところあっさり許可が出た。
朝廷側からしても、昔と比べて大分増えた半妖の扱いに苦労していた。そんなところに、半妖の鍛冶師として朝廷に貢献してきた伊予が孤児院を経営するという。半妖の扱いは半妖がしやすかろう、そう役人たちに言われてすんなり決まったのだ。
そして、孤児院として受け入れる孤児の中に、他種族の妖魔の子をこっそり引き受ける。そして、その子を孤児院で育てる。育った後にまた里に戻して繋がりを作る。これを何度か繰り返し、妖魔の駆け込み寺兼内通者としての働きをした結果裏切り者の烙印を消すことができ、凶妖会議に出席できた。
ある程度孤児院の経営も軌道に乗り裏切り者の烙印も消え順風満帆になったために、色町で男を探しに行ったが、結果は無残なものだった。それと同時に、天正帝の教育がここまで広まり、妖魔もそれに連なる半妖も嫌われていると知り、女になったからといって大丈夫ではないということに気づいたのだ。天正帝の頃と違って、女の妖魔が当たり前になり男を攫うようになった。それを人間は防ぎ、教育で教え込み、男は妖魔に近づいてはならぬというのが常識となった。だから色町でもあんなに嫌われたのかと納得した。雄太郎の頃もあまり好かれなかったがあの時以上の嫌われっぷりである。
人間の男からすれば、男娼からすれば当然だろう。半妖が客として来ているとしても、半妖を孕ませてしまっては問題だ。防ぐ方法はあるにはあるが、その避妊術を半妖が解除しない保証がない。更には、天正帝の呪いから数百年以上経って男女比率が段々と変わり、女の性欲が右肩上がりで強くなるのに反比例するように男は性欲が弱くなっていった。これは致し方無いだろう、当初は女性の数が増えて一人の男に複数の女性が群がり、男は喜んだ。だがその喜びも、複数の女性からの求めに耐え切れなくなり最終的には不能になってしまう。それを何回も、何年も、果ては何百年も続いてしまった結果、男は本能的に自身の身を守るために性欲が薄く、そして女性に対して恐怖感を抱いていくようになったのだ。もし、雄太郎が伊予になったのがあと百年早かったのなら妊娠する機会はあったが時すでに遅し。伊予が色町に繰り出す頃には、男は女に対して忌避感を持つのが常識になってしまったのである。
だが、男娼である以上自身が忌避感を抱いても仕事の為に抱かねばならない。そのために、張型や
なので、ひたすら男日照りで悶々と過ごしていたのだ。翠からも苦言を呈されるほどに自慰に耽るほどに男が欲しかった。雄太郎という、男だった記憶はほとんど薄れ、ほぼ完全に伊予という女になっていた。
そう過ごしている中で、万太という行商人がやって来て、その情報通りに綾絶頼がやって来て、そして伊予として初めての交尾であった。色町で
しかも、護謨を使った避妊具である「
そして、今まで自慰で我慢し、色町でやる気のない
そんなところにやって来た美少年、こちらに対して嫌悪感も抱かず、自身の体に欲情し、複数回射精できる上に生膣内射精までしてもらった。挙句の果てには、彼から腰を振って来る始末。あの腰振りに、自身の嘗ての男だった姿をみた。そして、それを受けた自分は漸く女として生きているという実感が湧いた。あの後、本能的にこの少年が自身の夫になる男だと認識してしまった。
「んっ、ふう…………♡」
思い出したら、それだけで達してしまった。翠がそれに気づいたが顔を顰めるどころか羨ましい表情をする。
「母ちゃん、ずるいでヤンス。あっしも旦那を抱きたいでヤンスよぉ……でも…………」
母に言い募る途中で尻すぼみになる。
理由は、抱くのと看取るのとどちらか選べと言われた時に前者ではなく後者を選んだからだろう。無論、翠としても死に行く妹達が男の腕に抱かれるという最上級の死に様を選べるならそちらがいい。だがしかし、本能として男を抱きたい子を産みたいという気持ちが強く、理解はしても納得してない状態であった。
そんな娘のことを理解し、伊予は口を開く。
「大丈夫よ、彼は優しいし押しに弱いから。私とあなたのこの無駄に大きい胸で挟めば一気に落ちるわよ」
「うっほぉ♡そいつぁ楽しみでヤンス♪ まさか無駄にでかくて邪魔だったこの胸が役に立つ時が来るなんて思いもしなかったでヤンス♡」
翠にはまだ話さないが、友人からの情報によれば彼は催眠に弱いかもしれないという不確定情報がある。もしその辺もはっきりしたのなら、確実に彼を抱けるし子を孕めるだろう。そう考えると、再度股間が濡れてきた。
実に楽しみという風に二人は話しながらも、孤児院に戻る。その背中は半妖として差別され悲しい気分にいるものではなく、これからの未来に思いを馳せる女としての姿があった。
「うっ?! なんか悪寒が…………もう冬になったのかな…………」
頼は悪寒を感じながらも、すっかり日が落ちて暗くなりかけているので宿屋である蓬莱亭に向かって歩みを少し早めていく。彼に女難がまだまだ降り注ぐのを知るのは天のみであることを彼は知らない。そう、今宿屋に帰っている状態でまた問題に巻き込まれることなど彼は知らない。
「や、やめて下さい!!」
「うっへっへ、いいじゃねえか兄ちゃん、あたいらと一緒に楽しいことしようぜぇ?」
「待てい!!」
今まさに、複数の女性に襲われそうになっている少年を助けようと、頼は首を突っ込んでいた。
・祝福の子
天正帝の呪いにより妖魔は弱体化した。だが、祝福の子として呪いを濃く受け継ぐ者は多大な力を発揮できるようになった。
その命の火は、他の妖魔より燃え尽きるのが早い。
だがしかし、祝福の子は後悔も悲嘆もしていない。何故ならば、自身の献身で同胞が助かるのだから。
ちょっとフロム風説明。要はもののけ姫のアシタカみたいなもんです。
真面目に考えたつもりですがちょっとガバってるかもしれませんがガバってたら見逃してちょんまげ。
まさか18000字超えるとは思わなかったけど、話すすめたいなーキリのいいところで終わりたいなーといつもの発作でこうなりました。長くて申し訳ありません。
皆様の評価閲覧感想のおかげで、今の僕と小説があります。感謝感激です、今年もよろしくお願いします。