和風凌辱エロゲーの主人公兼ヒロインの兄に転生したんですが何か違う 作:ビシオ
ネタを入れまくると楽しいですね。
尚、サブタイトルは読者様の感想で面白いのがあったのと、いいサブタイが思いつかなかったので勝手に使わせてもらいました。感謝です
「う~~ちょっと冷えてきたなぁ」
今、一等宿屋に向かって小走りしている僕は、ごく普通の少年。
強いて違うところを上げるとすれば、何の因果かゲーム世界に転生してしまった上に北方守護ってちょっと偉いところの当主代行ってとこかナ──。
名前は綾絶頼。
そんな僕は小走りしてる最中に、視界の端に青い髪の毛を肩甲骨まで伸ばした男の子を見た。
うおっ、いい男…………。
男の僕から見てもイケメンである。
遠目からでもスッキリした顔立ちに片眼鏡をかけている。キリっとした目つきも相俟って、インテリイケメンというのがよくわかる。更には流れるようなサラサラした青い長髪が目立ち、風に流れているのを見るだけでもサラサラヘアーなのが見てわかり手触りが非常によさそうだ。だが、身長は目測で僕と同じくらいの165㎝と低めだから、年齢は僕と同じくらいかもしれない。単にこの世界の男性の平均身長がこれくらいなので、もしかしたら年上なのかもしれないが。というか、この世界の女性がデカすぎんだろ‥‥ってくらいの巨女巨乳巨尻巨腿ばかりだってのもあるが。
いやまぁ、僕もエロゲー世界に転生してしまった今では前世の平凡童貞顔に比べて整った顔立ちになったと鏡を見て思うがそれでもやはり隣の芝生は青く見えると言う奴か、自分以外の男性の方がかっこよく思ってしまうのだ。単に日本人特有の自己評価が低いだけかもしれない。妹達も桃代姉さんも僕のことをかっこいいとか可愛いとか言ってくれるのは嬉しいが、前世の価値観を持ってるせいでおべっかかな? と少しだけ不安に思ってしまうのだ。女性歴が童貞=年齢で全く経験なかったからそういう評価を素直に受け取るのも怖いというのも原因だが……。
話が逸れた、自分の事などどうでもいい。
その青髪少年はスタスタと手に持つ本の束を大事に抱えながら歩いていたところ、破落戸に絡まれた。破落戸は山賊のような襤褸を纏った女性達だ、筋肉はそこそこあるしおっぱいが大きくてダブついたぼろい服からは巨乳だけでなく乳首までもが見えてしまう。ちょっとエッチだった。顔はモブといった特徴のない顔だが、その顔は青髪イケメンさんを前にして下卑た笑みを浮かべていた。
その女性達に絡まれ話しかけられた青髪少年は、見てわかるような嫌がる顔と素振りをする。その反応を更に面白がって囃し立てて絡まる破落戸。少年は耐えられなくなったのか、来た道を反転して逃げる。すると、破落戸達もそれをゆっくりと追いかける。
その追いかけっこを周りの住人達は心配そうに見ていた、かくいう僕もその一人だ。その追いかけっこの中、どこからか建物の角から仲間と思われる破落戸が現れ道を塞ぎ、そこから青髪少年はあろうことか路地裏に逃げ込んでしまった。破落戸達もゆっくりと追いかけていたのを路地裏に入り込んだのを確認した瞬間走って追いかけた。
周りの住人達はそれを遠巻きに見るだけだ。当然だ、破落戸は強そうな女性達だったし柄が悪い。積極的に関わろうとする人間はいないだろう。
それに、周りを見渡すと男性もいるにはいるがきちんと傍には女性が一人乃至複数人で囲っている。後、中には歩き方がやや硬い女性がいるが、その人は今の僕みたいに変装してる男性だった。僕と同じく変装してる男性は一人だが、こちらは変装が効いてるのか周りも女性だと思っているようで意識を向けない。周りの女性は、たまにいるわかりやすい男性を目で追う。
貞操逆転してる世界だというのがわかると、男性を目で追うというのも、僕の前世で男性が美人を目で追うのと同じことなのだろう。同様に、周りの女性達も青髪少年の姿を視線で追いかけるも、その後ろから破落戸がやって来てるのがわかると目を逸らす。そして、誰もがあの青髪少年のその後の展開を予想しているようで、やや悲観的な表情をするも関わりあいたくないのが強いのか衛兵に通報しようという行動もしない。
これは集団心理の「傍観者効果」が働いているのもある。
とても恐ろしい心理効果だ。近場で悲劇が起きた時、誰も衛兵に通報しないのだ。理由は簡単で「自分以外の誰かが通報するだろう」「自分以外の誰かが助けに行くだろう」「自分以外の誰かがどうにかするだろう」皆が皆そう思って、誰も! 行動しないのである!!
「都の検非違使は優秀じゃ……。帝のお膝元ということで治安には一層力を入れており、人や物の物流を維持して金の巡りを良くするためにも、治安は必要不可欠。故に、衛兵に通報すれば半刻以内には現場に駆け付けるじゃろう。退魔師も衛兵に混じっているから尚優秀且つ速度も速いんじゃ。その衛兵が全く来ない……何かがあったに違いないのう……」
「一体何が……」
どこからともなく現れたお婆さんのやたら詳しい説明に、付き添いの女性が困惑した声を出しているが、その二人さえも! 衛兵に通報しないのである!!
その心理効果が働いた結果、哀れな少年が路地裏で強姦にあい、心に傷を負ったまま生きるか、絶望して死ぬか、果ては放たれた種が実を結ぶ結果となるか、それらのいずれかになりまた世界は廻っていくのだろう。変わらない世界のよくある光景の一つだ。その光景が増えることは、誰もその少年を助けようとしないから必然的と言えよう。
その青髪少年の姿が気になった、僕を除いて。
本屋で前から注文していた本がようやく届いたとの連絡が入り、女装せず幼馴染の子も連れて行かずに買いに行ったことを少年は今後悔してる。嬉しさのあまりそのままの格好で行った結果が、慣れた道だしすぐに行ってすぐに帰るだけだから安全だろうと思った結果がこれだ、後悔先に立たずとはよく言ったものだ。彼は逃げるために走って路地裏に逃げ込んだことを失敗だと悟るのは目の前に立ちふさがる女郎を見て理解した。
「へっへっへ、こんな暗いところに坊ちゃんが一人でやってきたら危ないぞぉ?」
ニヤニヤとした笑みを浮かべながら道を塞いでいる。そして、後ろから先ほど声を掛けてきた破落戸達が追い付いてきた。どうやら、目の前の大柄な女が後ろの破落戸達の女郎頭らしい。
「男は一人で出歩くものじゃないぜぇ? じゃないと、危ない連中が襲うんだからよぉ?」
「もしかしたら、坊ちゃんは襲われるかもしれないから、あたしらが家まで送ってやろうかぁ?」
女郎頭の声に合わせて、後ろの破落戸達も下卑た笑い声を上げる。危ない連中が襲うなど自分達が宣うことが実に白々しい、その家まで送るという言葉が文面通りではないことは連中の態度で嫌でも理解できる。どこかに連れ込んで少年を強姦するつもりだろう。
もし、少年が目の前の道を塞ぐ一人の女郎頭に対して、手に持っている本の束を投げつけて駆け抜ければ脱出の機会はあった。だが、ようやく来た本ということで少年はそのような行動がとれなかった。その結果がこれである。現実は非情だ、怯えてしまう彼に対し女郎頭が手を伸ばそうとしたその時──―
「待てぃッッッ!!!!!」
女性のような男のような中世的な声、それの怒鳴るような声が辺りに響き、少年に手を伸ばそうとした女郎達は思わず周りを見渡す。すると、女郎の一人が驚いたような上擦った声を上げた。
「あ、あそこにいます!!」
夕暮れ時が過ぎて夜の帳が降りかかり、月が顔を出し始めた。その美しく月光を浴びて家屋の屋根の上に立つ人影が一人。女郎達がその存在を確認し一斉に目を向け、嫐られそうになった少年もその存在に目を向けた。
謎の人物は静かに口を開く。
「嫌がる相手を弄び、同意無しに性交に奔る者……人其れを……強姦と言う…………」
「だ、誰だっ?!」
女郎頭の叫びに対し──
「貴様らに名乗る名前はないッッッ!!!」
──其の謎の人物はきっぱりと拒絶し、屋根から飛び上がる。
その後、地面に落ちる前に一回転し、右拳と右膝を同時に叩きつけるような着地をした結果、轟音を立てて地面が少々陥没した。それだけで力があると言うのを見せつけたことにより、破落戸達も謎の人物が只者ではないと理解し少々怯える。
謎の人物は、その後ゆっくりと立ち上がり、その姿を破落戸と少年に見せる。服装はありふれた町民の服だが、顔を頭巾で覆い隠し、首元には藍色の襟巻が巻かれてあり月光に照らされた幾何学模様が美しい。胸元は慎ましやかに膨らんでいるから女性だろうことは誰の目にも明らかだ。
ありふれた町民服で頭巾と襟巻を巻いて顔を隠す変人が、危機的状況にやって来た状況は可笑しさがあるが、足元は陥没した地面なので唯の町民ではないことは先ほどの着地劇で思い知らされている。
その覆面女性は大仰に拳闘のような構えをした。まるで、歌舞伎役者の見え切りのようだ。その構えは、仏閣に飾ってあった金剛力士像のような構えだなと知識のある少年は思い出し、その存在の格好良さに思わず心が震えてしまった。
恐らくその覆面女性は胸元が膨らんでいるから女性であろうと言うのに、この危機的状況にやって来て、歌舞伎のような見え切りを見せたことで、少年は生理的な女嫌いなはずなのに、女性に憧れを抱いてしまいそうだった。
「なんだぁ? 格好つけやがってよぉ、お前も女だろ? ならこの坊ちゃんが美味しい存在ってのはわかるはずだろぉ? あたいらのこれからの事にケチつけず一緒に楽しもうぜぇ? 今なら仲間に入れてやるぞぉ?」
相手も自分達と同じ女だと思った破落戸達の一人が大きく声を出しながら誘う。当然だ、男がこのような状況で助けに来ることはない。男が出来るのは衛兵に通報することが精々だ。嬲られそうになっている少年は退魔師であった。なので、術を使って危険を切り開けばいいだろうと思うが、都での安易な術の使用は御法度である。危機的状況且つならば、ある程度の情状酌量の余地はあるが、それでも裁きは受けるのだ。もし許されるような存在がいるとするなら、四方守護の各筆頭家の者たちや、朝廷の公家などの貴族だろう。
少年は退魔師ではあるが身分は平民である。否、元を正せば貴族の血筋ではあるが没落貴族故に身分も平民に落とされてしまっているのだ。故に、少年は術を使うと後に拙いことになりそうだと思い、中々攻撃的な術は使えなかった。仮に使って、死人が出なくても怪我人を出し、破落戸達が衛兵に泣きつけば没落貴族である自分はどうなることか…………。他の貴族のように守ってくれないだろうし、術を使えば御爺様に迷惑がかかる、少年はそう思ってなるべく使わないようにしていた。
その結果がこのように囲まれてることで後悔しているわけだが、少年はこの覆面女性が女性ならば、この誘いに乗るかもしれない。そういう恐怖があった。
護衛をしていない男が女に襲われるのは普通だ、都では戸籍謄本を作っているので出生率低下と比率低下に伴い、出産奨励もしており男一人に複数の女がつくのが当たり前となっている。大事な男は囲んで守るようにし、貴重な子種を分け合い出産するように。そういう御触書が出されているが、それを破落戸達が悪用した結果一人の男を複数で襲い強姦する事件が多発した。無論、捕縛されたりしたが、破落戸達は悪びれもせずその男の妻だと言う。
いけしゃあしゃあと宣うも、襲ったのは事実だし男の被害の証言と嬲られた痕により罰が下され労役が課せられたのだが、その子種で年内に出産し、出産したことを鑑みて労役が減軽されたりした。中には男子を産んだ破落戸もおり、その者は貴重な男子を出産したことによる特例として釈放された。
当然ながら、男子出産による朝廷からの報奨は健全な平民に適用される。このような強姦した破落戸に適用すべきかどうか朝廷で激論が起きたが、結局は男子という実を取ることにした。後日、その男子を産んだ破落戸は行方不明となり、破落戸が産んだ男子は朝廷が運営を任せている孤児院に送られたと聞くが真相は定かではない。
なので、少年は破落戸の誘いに覆面女性が乗ってしまったらどうしよう……、そういう不安があったのだが──
「俺らと一緒にこの坊ちゃんをなぶ────ぶべらっ!!」
──破落戸が下卑た声で誘ったその瞬間、特徴的な悲鳴を声を上げながら破落戸が吹っ飛んだ。覆面女性が一瞬で懐に入り込み、掌底で顔を殴りつけたのだ。
「外道ども、貴様ら悪党共に御仏の慈悲は無用! 成敗してくれるっ!!」
「こいつぅ! やっちまぇええ!!」
そして、覆面女性による蹂躙が始まった。
彼女の動きは素早く、破落戸共では目で追うのがやっとだ。更には、素手で破落戸の棍棒を払い、いなし、態勢を崩したところに腹部や首元に一撃を見舞い昏倒させる。更には、錆びた刀すらも素手で弾いた。少年は退魔師である故にわかる、あれは体を霊力で纏うことで堅くしているのだと。御爺様から聞いた退魔師の基本的な防御術の一つだ。錆びているとはいえ、破落戸の刀を弾くほどであるから、覆面女性の霊力が高いというのはわかる。低かったら鋼のように硬くできないからだ。
そして、どんどん数を減らしていったところ、女郎頭が少年の背中に回り腕を掴む。そして、首に刀を向けた。
「う、動くんじゃねえ! こいつがどうなってもいいのか?!」
少年はその動きに見惚れて逃げているのを忘れてしまったことを後悔した。このままでは、自分が人質に取られたことで覆面女性の動きが封じられるだろう。少年は同性愛者であるし、女性に生理的嫌悪を持つほど嫌っている。だが、それでも世話になる幼馴染や、目の前の助けてくれた覆面女性に対して嫌悪を抱くほどではなく例外と心の戸棚くらいは作っている。そんな覆面女性に対して、足手纏いになってしまって申し訳ないと思ってしまった。すると、覆面女性は最後の破落戸を倒すと、素早く印を結んで手をこちらに向けた。手を開いて握ってそれで恰好をつける形となる。
「なんだぁ? 格好つけか? この坊ちゃんが傷ついても──」
「やってみろ」
「は?」
「やってみろと言ったんだ」
女郎頭の脅しに屈さず寧ろやってみろと促す。その言葉を聞いて少年は本来ならば絶望し、再度女性に対して嫌悪を抱く、筈であった。
だがしかし、先ほどの印と手の動きで、彼女が何をしたのかを理解したから絶望を抱かず希望を抱くほどだった。そしてその格好が、女郎頭の言うような格好つけではないことも理解した。何故ならば見えているから。
「そんなに言うならやってやらぁ!!」
そう言って、刀を動かし少年の首を切ろうとした。本来ならば貴重な男子を傷つけるのは重罪だ、殺したのなら極刑が待っているだろう。それくらい女郎頭も理解してるし、少し傷つけるだけだった。だが、同じ女として相手より自分が劣っているという屈辱が、脅しているのに相手は屈さない姿を見せた雄姿が、ここまで虚仮にされたことによる激怒が女郎頭に冷静さを失わせ、少年の首を斬るところまで行ってしまった。だが──
「う、動かねえ……?! う、腕が……何故だ?!」
女郎頭の腕は一切動かない。当然だ、なぜならば、先ほど覆面女性がやった動きは霊糸を投げつけたからだ。そして、覆面女性が腕を動かすとゆっくりと拘束していた腕が徐々に開き、少年は脱出できたので急いで離れて覆面女性の下に駆け寄った。
霊糸は可視と不可視の二種類に大別できる。前者はほぼ全ての退魔師が使えると言っていいだろう、何故ならば妖魔を補殺するための基本のきという奴だからだ。モグリの術者すら使えるほどだし、これを使って動きを止めるというのは大事な事なので、真っ先にこれが出来るか否か、捕縛が上手いか否かで術者の力量を見極められると言っていい。そして、可視である故に色んな色に発光して縛り付ける。その発光色は術者の力量並びに得意属性によって色が変わるという。例えば、赤土焔のような火属性特化ならば赤色に発光などという風になる。そして、可視化してる故に霊力のない平民ですら見れるほどだ。
対して、不可視の霊糸は不意打ちなどに使われる。文字通りの不可視化なので、霊力で凝視しなければ見れない。そして術者の力量が高ければ高いほど隠蔽率が高くなる。
少年は退魔師であるがゆえに、凝視してその霊糸を見ることが出来た。白く輝く発光する様はとても美しく、それでいて女郎頭の腕をがっちりと縛って固めている。先ほどの印と動き、そしてポーズは女郎頭の腕に向けて不可視の霊糸を投げつけ、絡ませ、縛り付ける形にしたからあのような動きになったのだ。それを少年は見て理解したため、覆面女性が脅しに屈さなかったことに絶望しなかった。
「邪ッッ!! チェリァァァアアアッッ!!」
「うわぁあああ!! ──がはっ!!」
その霊糸を覆面女性は大きく上に向かって振りかぶり、女郎頭を空中へと送る。そこから、地面に向けて思い切り叩きつけた。肺の中の空気が無くなり、背中から叩きつけられた衝撃が強かったのか、そのまま女郎頭は痛みに耐えきれなくなり気絶した。
大柄な女性を軽々と持ち上げて叩きつけるなど、上位の退魔師でないと出来ないだろう。その動きで、覆面女性がやはり只者ではないと改めて少年は認識した。
辺りの破落戸共が倒れ、静寂が訪れる。覆面女性は残心を解くと、少年に振り向いた。
「もう大丈夫ですよ、怪我はありませんか?」
男のように聞こえる中性的な声、耳障りが非常に良く心地よい。彼女が自分を助けてくれたのだから猶更だ。
だが──
「あの、助けてくださってありがとうございます。ですが、女性相手にお礼は何もできません。体を売ることはできません、ごめんなさい」
──助けてくれた女性に対して、非常に無礼な言葉を言う、言ってしまう。
本来ならば言いたくない、それはそうだ、彼女は自身の恩人だ。だが、少年は女性が嫌いである。男を性の道具としか見ておらず、種を貰ってとっとと孕むことしか考えてない野獣たちを幾人も見てきた。そして、そいつらはこぞって手助けをする見返りに体を求めようとする。
だから、恩人に対して無礼なことは承知の上で体を売ることはできないときっぱりと言い張った。幾ら自身が女性嫌いの同性愛者としても、恩人に対して恩を仇で返すようなことはしたくはないが、それでも出来ないことは出来ないと言わないと体に触れられる。だから最初に言った。
その女性は目を見開いた。そして、納得したように頷く。
目を見開いたことで少年は彼女が驚いたことは理解できる、だが納得したように頷いたのはわからなかった。
すると、覆面女性は覆面を剥いだ、端正な顔立ちが現れる。だが、その顔に違和感を抱いた。少年からしたら、その覆面女性の素顔は男のように見えた、いや、見えすぎるからだ。
そう疑問に思っている少年を差し置いて、覆面女性は胸元に手を入れる。その胸を曝け出すのか?! と少年は嫌そうな顔をして身構えたが、彼女の手に握られていたのは男が変装で使う詰め物だった。
まさか、そんな…………覆面女性と思っていた人はもしかして
「大丈夫ですよ、僕は男ですから」
彼女もとい彼の性別告白に、女性だと思ってた人が男性だったことに、その男性が少年の好みの美形であったことに、少年は不覚にも勃起してしまい、思わず体ごと後ろを向いてしまった。
青髪美少年を助けたら、体ごと背けられた。まぁ、いきなり自分の胸辺りを出すなんてこと痴女だろうししょうがないだろう。
にしても、本当に危機一髪だった。あのまま放置してたら犯されていたかもしれない。同じ男として見過ごせないし、この世界が貞操逆転で男が性欲が強い女性に忌避感を抱いてる価値観ならば、逆レイプされたら立ち直れないだろう。
伊予さんの鍛冶場を出た時、僕の服はあそこに置いて行った。洗うためと乾かすためというのもあるが、彼女達から替えの服を貰ったしそれが上等な奴なのと、町民のよくある小袖服なので動きやすいのだ。僕が着ていた服は売っていいとも言った、あれで食費などの足しになるといいだろう。一応上等な布だから結構な金子になるはずだ。
そして、着替える際には女装したので、少年を助ける時も助けた後も全部女性として見られていたことだろう。実際破落戸共が僕を女と見て誘ったわけだし、少年も僕のことを女と見ていたわけだし。女装が上手くいったのか、万太のくれたグッズが便利なのか、多分両方かな。
ただ、女性として見られていたせいか、助けた相手に礼を言われたが体で払うのを真っ先に拒否された事に、最初は失礼だと思ったがすぐに納得した。
価値観が逆転してるし性欲強いし複数の女性が男を囲っているために、こういうことにかこつけて体で要求するということが多発しているのだろう。青髪少年も、僕が見惚れるくらいの美形だからそのようなことなど良く起こっているのだろう。だから、失礼ながらも助けた相手に真っ先に礼と拒絶の言葉を放ったのだと理解した。
…………いやぁ、こんな美少年が真っ先にそういうことをいうくらいだから相当ひどいことになってるんだろうなって思いました。セクハラなんて当たり前に起こっているのだと思わせるほどだ、だから先ほど周辺の町民の中にいた男を複数の女性が囲っているのも、そういう輩から防ぐためというのもあるのだろう。そうなると、この美少年が一人で女装もせずに移動してたのはまさに鴨葱だったわけだ。本当に危機一髪だったところを僕は救ったということだ。同じ男として、なんだかちょっぴりいい気分である。
良いことをして気分がいいのもあるが、後は僕の好きな漫画やアニメなどのカッコイイ漢達の真似をして気分がノリに乗ってしまった。些か調子に乗り過ぎた所もあったかもしれないが、破落戸共は成敗したし、少年の貞操も守れたし言うことなしである。
強いて言うならば一つだけ注意点があるくらいだが、それは問題ないだろう。落ち着いたのか、少年がこちらに体を向けた。そして、先ほどの無礼について頭を下げ謝罪しながら話し始めた。
「貴方は男性だったのですね、失礼しました。見事な女装でした。ですが、急いでこの場から離れましょう。音で住人や衛兵が寄って来るでしょうし、何より先ほど貴方は霊糸を使いました。そのことを破落戸共が衛兵に言うと拙いことになりかねません」
そう、不可視化を施したが霊糸を使ったので、そのことで破落戸共が騒ぐと厄介なことになるのが注意点だ。町や村では基本的に術の行使が治安維持のために禁止されている。例外が認められた退魔師や衛兵などだ。大きな町ですら、貴族が不用意に使うとお叱りを受けるほど。それが都ならば言わずもがなである。だが、僕はその点は大丈夫だと言える。
「大丈夫ですよ、私は綾絶家の者ですので。これをご覧ください」
「えっ?! こ、これは──間違いなく本物ですね‥‥‥」
そう言って、首に巻いていた襟巻と、家紋の入った銭入れを見せる。それを見た少年は目を見開き絶句する。
襟巻は桃代姉さんが作ってくれたものだ。幾何学模様は術が織り込まれているのか、首に巻くだけで全身がポッカポカである。更には、両端から少し離れた場所に我が家の家紋が入っている。そして、僕の出した小銭入れにも家紋が入っている。少年は文学少年みたいだし、僕の家は北方守護総代って有名どころだから知ってるかな~と思ってだしたがどうやら絶句したところを見る限り知っていたようだ。よかった、これで何これ知らんとか言われたらどうしようかと思った。
「ですので、多少の術は行使しましたが火急の事にて使用したと言い訳します。相手も我が家に対してそうそう強気な態度は取れないと思います」
「な、成程…………」
驚きながらもうんうんと頷き理解したようだ。
「では、これにて失礼します。道中気を付けて──」
「お、お待ちください! 貴方はこれからどうするのですか?」
「え? いや、蓬莱亭に向かおうと思いまして、宿を借りてるわけですし」
「で、でしたら我が家に泊っていきませんか?! もう暗くなってますし、ここからだと大分時間がかかりますよ?」
少年の言う通り、ここから蓬莱亭まで距離はある。遅くなっても貸し切りだから文句は言われないだろうが、それでも風呂や飯の時間が遅くなるのは確実だし、そうすると宿屋の従業員に迷惑かけるかもしれない。自分が貸し切って偉い家だからそういうことを考えないでいい筈なのだが、前世が平凡サラリーマンだからか、従業員に迷惑かけるってことを余りしたくないとついつい考えてしまうのだ。
だが、見ず知らずの少年の家に泊ると言うのも──
「申し遅れました。私は、綾小路薫と申します。先ほど助けていただいたこと、そして無礼なことを言ってしまった事のお詫びに、是非とも我が家でお礼をしたいのです」
──そう言って遅れた自己紹介をしてきたのだが、爆弾発言だった。綾小路薫と言えば、原作ゲームでも主人公に関わりのある人間だ。念のために確認のため、ある人物の名前を出してみる。
「綾小路…………? もしかして、貴方には祖父がいませんか? 確か、道玄というお方だったような……」
「おや、御爺様をご存知でしたか」
当たりだ!
思わぬ人物との巡り合わせに宝くじが当たったような感覚を覚えてしまう。彼と彼のお爺さんは、原作ゲームでも有能な退魔師として使えるユニットで結構強い。特にお爺さんのほうは、ある研究のことで有名且つエロゲー故のエロシーンの為に役立つ部分もある。だが、どちらも有能ではあるが主人公である波羅をバチクソに犯すシーンもあるので、ある意味では要注意人物であった。
そんな人物との巡り合わせに、ある種の運命を感じてしまう。だが、それ以上に彼らがどれほどの者か見極めなければならない。何故ならば、貞操が逆転したからと言って、それが全ての人物に適用されるわけではないからだ。特に、爺さんの道玄の方は滅茶苦茶性欲強くて波羅を修行という名目で犯しまくる人物でもある。エッチな修行でひたすら犯すシーンが沢山あるから多くのプレイヤーがお世話になったほどだ。だが、犯されはするものの道玄は一流の術師であるので、そこから師事を受けるのはステータスや新らしい術を覚えるのに非常に役に立つ。特に術回り関係を一通り彼から学ぶことが出来ると言うのはとても大きいメリットだ。
そして、道玄の孫にあたる薫。彼もゲーム中に出てきた人物である。青髪なんてエロゲー世界だからか、そこらの平民でも多種多様な髪色をしているので、名前を言われて漸く思い出した。道玄に比べて影が薄いが、彼も結構強い部類のキャラだったはず。だが、彼はルートによっては男色家だったような……。確か、祖父である道玄がひたすら女を抱くのでそれを見て反面教師した結果、お淑やかな女性がいいと言う風になり、それで最初主人公である波羅に目を向けるが波羅はエロゲー故にひたすら犯される。だが、道玄に師事する際一切抱かれないルートが存在し、その場合低速だがちゃんと技術はアップすると同時に、薫の嗜好も変化するようになっている。抱かれない場合は薫は道玄の誘いを断る貞淑な女性と見做し、波羅に惚れて結婚ルートすら用意されてるほどだ。だがしかし、術技能を一気に高めるべく抱かれまくると技能は急激に上昇するが、それを見た薫は貞淑な女性などいないと思い、発想を逆転して男がいいんじゃね? という風になってしまうのだ。
尚、その後は男色故に波羅と関わり合いは中立より下となり、協力関係も結べなくなるデメリットがある。ある程度は協力してくれるが、味方ユニットとしては使えなくなってしまう。敵対勢力と対峙するとき有能な退魔師が減るので地味に痛いが、そこは祖父の道玄を骨の髄までしゃぶりつくして馬車馬のように働かせましょうとはRTA走者の話だ。実際問題道玄のほうが上位互換だし抱かれて孕ませられるデメリットがあるが、それを補うほどに有用なユニットだ。だが、結果的には両方使えるようなルートを通ると、孫と祖父の専用合体技などがあり、最終的には楽になるという攻略情報がある。RTAを目指すか、最終的に楽になる王道プレイを目指すかはプレイヤーの判断に委ねられる形だ。
なので、目の前の少年が本当に綾小路薫と言うのならば、普通か男色かを調べなければならない。男色ならば、僕が適当に仲良くなって協力関係を結んでもらうようにしてもらえばいいかなと思うし、普通ならばうちの妹達の旦那候補に入るからだ。三姉妹でもいいし、焔でもいい。綾小路家は平民だが祖父である道玄のやらかしで没落してしまった。だが、血筋という意味では由緒ある貴族なので問題ない。もし薫が男色で仲良くなった場合は…………、まぁ掘られないように気をつければいいだけか。立場上僕の方が貴族なわけだから、下手に言い寄って来たなら無礼だと突き放すことも可能だし。余りそういうことはしたくないが、自身の貞操を守るためなら強気に出ることも重要だろう。
ならば、二人の人物を見極めるためにも、彼の提案に乗った方がいいだろう。僕の妹を守るためにも、薫さんは兎も角エロジジイとプレイヤー達から渾名で呼ばれる道玄についてはしっかり見極めなければならない。虎穴に入らずんば虎子を得ずというし、二人の為人を調べるためにもここは彼の好意に甘えておこう。
「わかりました、では綾小路さんのご厚意に甘えさせていただきます」
「ありがとうございます! ではこちらです!」
そう言って、目に見えて喜ぶのに不思議に思ったが、とりあえず彼についていくことにし、彼の家で一泊泊まることにした。途中、式神で妹達に連絡を入れたから大丈夫だろう。
尚、その後破落戸共は衛兵に捕縛され、相手の覆面女性が術を使ったと言い訳したものの、証拠不十分且つ目撃者も誰もいないのでそのまま裁かれて労役につくことになる。
ホモ君が登場してしまいました、多分掘られることはないはず、きっと…………多分…………。
色んなアニメや漫画ネタぶっこみました、書いてて楽しかったです。感想でも元ネタ言ってくれると嬉しいです。
鬱病ゆえに低速更新ですがこれからもよろしくお願いします。