※この作品はR-18です。

和風凌辱エロゲーの主人公兼ヒロインの兄に転生したんですが何か違う   作:ビシオ

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今月分です。

今日で僕の作品が一周年を迎えました、それの記念もあるので頑張って書きました。今まで書いてこれたのも、感想評価誤字報告してくださる皆様のおかげです。
素人処女エロ小説に過分な評価とお気に入りに感謝します、これからも鬱病と戦いながらも頑張りますのでよろしくお願いいたします。



二十七話 怪しいジジイと男色少年の下に一人で行くだって?鴨葱ではとボブは訝しんだ

「むさ苦しいあばら家ですが、どうぞ」

「失礼します」

 

 

 あの後、頼は薫の手引きによって平民の居住区画にある一軒家へとたどり着いた。その家は、外観からするとこじんまりとした家であり、どこにでもある家だ。事実、同じような家が複数あることから、大工からしても作りやすい二階建ての家なのが良く分かる。

 

 

「おお……中は広いですね」

「はい、御爺様の術のおかげです」

「それに大量の本……圧巻ですよ。これだけあると読むのも大変ですが、大量にあるというだけでも面白いですね。沢山暇が潰せそうだ」

「フフフ、そう言っていただけると嬉しいです。本を収集する傍らで貸本業も営んでいるんですよ」

 

 

 頼は扉を開けた薫に続いて中に入ると、思わず感嘆の声を漏らした。

 

 本棚が所狭しと並んでおり、棚には隙間がないほどに本が埋まっている。二階にも本棚があるほどだ。更には本棚から溢れてると言わんばかりに机や床に小さな小山のような、それでいて塔のように本が積み重なっている。まさしく本の山と称するに足るだろう。先ほど薫が言ったように貸本屋としての側面もあるせいか、入ってすぐにショップカウンターが頼の目に入った。そこを中心にぐるっと本が囲む形となっており、それぞれの本棚には童話やら学術やらと札を書かれたもの、作者別に仕切りを入れられてるものなどがあって非常にわかりやすい。ただ、見るからにヤバそうな雰囲気の本も頼は見つけてしまった。そこだけはスロープで隔離されたように少し離れた場所に置いてあり、注意書きの看板すらおいてあるほどだ。本に鎖をつけているほどだから、誰が見ても重要なのがわかる。

 

 外観はごく普通の民家なのに、店の中は大商人が住まい経営するような二階建ての広々とした中身になっており、外観と内装がアンバランスである。だが、このちぐはぐさが何なのかは頼は原作ゲームとこの世界の術式で理解していた。

 

 これは、空間術を用いたものだ。

 頼が万太から貰った桐箱のように、外装とは裏腹に中身がたくさん入るような代物。それと大体同じ術を家全体にかけた結果がこうなるわけだ。

 

 こういう空間術は退魔師の家では狭い領地を広くするための工夫の一つとして知られている。領地の範囲は狭くとも、家の中は領地に匹敵する広さを持つことで、領地の少なさによる負担を減らす方法の一つである。事実、倉庫など場所を取る物件に、一軒で中身は二軒分、上位貴族だと中身が三軒分の広さの倉庫を建てて物品管理と圧迫解消などの工夫をしており、それは頼の住まう北方守護たる綾絶家も例外ではない。

 

 これは、北方によく出現する「迷い家」という妖魔を参考に、解体研究して人類が使えるようにしたのだ。その長い研究結果の末に生み出された空間術は、家のみならず袋や牛車などに使えるようになり、人類の輸送効率を大幅に上げることになった。

 

 こういう居住空間にも使われており、簡単な物では間取りを広げる物だが、貴族や公家といった高名な退魔師の屋敷では、侵入者撃退のための迷路を編み込んだりしている。許可なく侵入すると、永遠に続くような迷路をぐるぐる回る羽目になるほか、所々で捕獲し調伏乃至洗脳した小妖や中妖を襲わせ体力を消耗させる、といった厭らしい迷路を作るところもあるほどだ。

 

 北方守護を担う綾絶家の領域では、迷い家が沢山生息? してる。なので、これを利用した研究は一番捕獲し研究した綾絶家が進んでいるはずだったのだが、この空間の間取りを見るとその認識を改めなければならないようだと頼は心中で感心し反省した。なぜ、北方に迷い家が沢山いるのかは、後で追々説明することにする。

 

 

「我が家でも空間術を用いて屋敷の中身を広げてますが、此方の方がやはり質が良いですね」

「ほほう、わかりますか」

「ええ、僕も端くれですので」

「フフフ、御爺様がやったこととはいえ、我が事のように嬉しく思いますよ」

 

 

 頼の言葉に薫は気を良くして、案内を続ける。身内が褒められたのが非常にうれしかったのだろう。

 

 

「それにしても、沢山本がありますねぇ」

「ええ、私の家は御爺様の趣味と研究で本屋のようになっておりましてね。こうして、私自身も最新の本を買いに行ったり取り寄せ依頼をしたりした結果、こちらの区画で貸本屋の真似事をすることが出来るくらいにまで蔵書が溜まったんですよ」

「それは凄い、気になった本を見つけたら僕も読んでよろしいでしょうか?」

「もちろんですとも、尤も本を読ませる程度で貴方への助けてくれた返礼にはなりませんが」

「いえいえ、見た所禁書などもあるのではないでしょうか? ほら、あそこの本棚とか」

「ほほう、お目が高い。ちょっと読んでみますか?」

 

 

 本棚の中には通常のように置かれてる中で、スロープで区切られた場所があった。そこに向かって、薫は禁書の中の一つを取り、手で開いて頼に見せる。その姿は、生来の親友のように二人は親しく禁書を読みあっているようだった。だが、頼が言ったようにそれは朝廷で厳重に保管されてる禁書の写しであった。どこから入手したのか不明だが、読めるんなら読んでおこうという頼の貧乏性な考えにより読みたいと言い、相手が目敏く禁書を見つけて読みたいのであれば、それに応えてもっとお近づきになろうという薫の思惑が合致することになる。

 

 そして、頼が手にしたその本は真っ白であった。

 

 そう、スロープで区切り、鎖を付けているほど重要そうな本なのに真っ白である。だがしかし、頼は霊力を目に送って目を凝らして見た。この凝視により、本の内容を読めることが出来る。

 

 平民区画においておけるのも、一定以上の霊力を持たない者には見ても何も書いてない本にしか見えないように工夫をしてある。だからこそ、こんな風に堂々と置いておけるのだ。ある意味、頼がやったような霊力凝視が出来るかどうかで読む人間を選別してるといってもいい。衛兵が見たとしても、何も書いてない白紙にしか見えないだろう。仮に退魔師が読んだとしても、一定以上の高い霊力を持たないと文字すら見えないほどに高度な隠蔽をかけている。並大抵の木っ端退魔師では読むことも出来ないだろう。

 

 そして、それが出来る頼は読むに値する退魔師ということに他ならない。だからこうして読むことが出来るのだ。

 

「ふむう…………やはりこれは噂で聞いたことにあるあの本ですね?」

「ええ、御爺様が朝廷で教授を勤めていた際に編纂に関わっていたのもあり、その内容を覚えていたので御爺様が書き写したのですよ」

「なんと?! それはちょっとばかし危ないのでは?」

「ええ、ですが貴方にとってもこの本は価値ある物でしょう。貸しますのでどうか内密に」

「おやおや、それと同時に僕を仲間に引き入れるつもりですね? 中々に綾小路さんは遣り手ですな、これは一本取られました」

「フフフ、失敬失敬。恩人に対して仇で返す真似をしてしまいましたね」

「なんのなんの、こちらも利益があることですし黙っておきますよ」

 

 

 出会って一日も経っていないのに、本という共通の趣味で盛り上がる二人、男性同性愛(やおい)が好きな女性がこの光景を見たら鼻から血を噴出してるだろう。美男子同士がやり取りをしてるだけでも絵になっていた。

 

 

「それにしても、綾小路さんはよくここまで本を集めましたね」

 

 

 頼はそう言いながら辺りをぐるりと見まわした。まさしく書店というにふさわしい量の本があり、カウンター周りにはまだ整理されてないのか、本棚に収まらず塔のように高く積まれている本の山があるほどだ。平民相手に貸本屋としているというのもうなずけるほどの量である。二階にもある本棚を見上げながら言う頼の様子を可愛いと思い苦笑しながら薫は口を開く。

 

 

「薫で結構ですよ、その代わりこちらも頼さんと呼んでもよろしいでしょうか?」

「ええ、構いません」

 

 

 平民と貴族とでは天と地の差がある。没落貴族とはいえ平民である薫が頼をさん付けで呼ぶなど無礼討ちされても文句は言えない。薫はそれを理解しているが、数回の会話で頼が親しみやすい人物であること、自身の身分を明かしても尚敬語をやめぬ姿を見て、彼はこちらが下手に且つ丁寧に接すれば、そして平民と言えど敬意を持てる相手には敬意を表する人物だと見抜いた。勿論、全てがそうではないし、薫の背後にいる道玄と繋がりを持ちたいから丁寧に接しているのだろうとも思う。だが、今まで高圧的に出れる場面はあったのに、そのようなことをしない姿を見て好感が持てたし、さりげなくさん付けで呼ばせる許可を頂いてお近づきになれればという下心が薫にはあった。そしてそれは見事的中し、心中でほくそ笑む。

 

 

「お恥ずかしながら、本が大好きでしてね。生活は苦しくないですが貧乏生活ですよ」

「ですが、ここまで本を集めるにはそれなりに金がかかってる筈です。それはどこから?」

 

 

 平民でも貸本屋は普通にやれる、だが当然ながらそれなりの数の本がないと成り立たない。良くて、大商人が集めた本を平民に貸本屋としての仕事を与えて、与えられた平民は顧客の所に背負い籠を担ぎ出向いて本を貸し代金を頂き、大商人はそれの上前を頂く、といったやり方が基本的だ。このようなスタイルの貸本屋もないわけではないが、ある場所は上級区画である。理由は当然ながら本の借りパクを防ぐためだ。上級区画に住む人間は、身分も資金も保証が出来るので、仮に借りた本が戻ってこなかったら賠償を求めることが出来る。そしてそれをされた家は名誉が傷つく。だから上級区画では現代風の図書館、つまり大店の貸本屋が成り立つのだ。

 

 没落した綾小路家が信頼の低い平民区画で貸本屋を営むのは偏に追放されたからである。だがそれ以上に、綾小路道玄の術により借りパクを防いでいるから貸本屋が出来ているとも言える。しかし、大商人から渡されたわけでもない大量の本を平民が集めるのは難しい。没落貴族だったころの縁かな? と頼は当たりをつけて言ってみた所、正解との返答が来た。

 

 

「朝廷からの取り立ての際、文字通り根こそぎでした。屋敷は当然の事ながら、服や本に至るまでの差し押さえです。最低限の金子しか残らず文字通りのほぼ素寒貧でしたが、御爺様はこう言いました『わしらには重荷にならぬ価値のある物があるじゃろう』と」

 

 

 流石に服まで差し押さえられたのは痛かったですがね、と自嘲気味に苦笑しながら自身の安物の服の襟を掴んで示す。最も、人間慣れればどうとでもなるものであり、数年経てばそれが普通になってしまうものだ。上等な服だと汚れなどを気にしていたものだが、今の平民が着る服は多少汚れても問題ないのである。最も、貴族時代の綺麗好きがあるためそこらの平民より綺麗且つ清潔に保つよう心掛けているが。そのおかげで、顔立ちがいいのもあり、服も綺麗に整えていることもあり、薫は周囲の女性から狙われているのだが本人は気づいていなかったのが悲劇である。

 

 綾小路家は没落貴族ではあるが、退魔師としての腕や術師としての力量が失われたわけではない。平民に落ちた後でも、貴族や公家とは一部繋がっているし、祖父である道玄は理究衆筆頭教授を務めた経験のある名の知れた退魔師だ。

 

 没落した理由は道玄の自身の研究作が失敗した結果、それの責任を受け解任されたからである。

 

 重大計画の失敗の責を取られ、その際の予算超過をしたことに対して監査を入れられた。すると、いくつかは間違いなく計画に関わるものの個人的趣味が高じた物品が多数見つかったため、それらの点を政敵から攻められた。無論、道玄は釈明したしその通りに計画に関わる物品ではあった。だが、計画失敗したという汚辱がある人物に対して寛容な目を向けるほど朝廷の役人たちは優しくなく、その個人的趣味に関するものは全て本人からの支出という沙汰が出た。その結果、朝廷から根こそぎ取り立てられたわけである。

 

 その中には政敵がこっそりと入れ込んだりした関係のない奴も混じったりしてるし、それについての反論もしたが、やはり計画失敗という責が重く信用も失ったのが痛かった。その際の負担も全て自分持ちとされた上に、財産を全て売り払ってもなお足りぬため、債務を朝廷が肩代わりする代わりに身分剥奪を受けた。貴族に置いて、没落したら死にも等しい恥辱である。だがしかし、偏屈老人としても知られている道玄からすれば生きていれば儲けものという考えだった。そこが分かれ目となり、他の貴族のように屈辱に耐えきれず自死を選ぶことはせず、生きて別の方法を見つけることにした。

 

 

 最低限の金子しか残らぬ極貧生活になる…………と、思いきや。素寒貧になったとしても培った知識まで無くなったわけではないのだ。

 

 知識は力である。かの福沢諭吉はこう言った

 

 ──「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えよう

 

 よくこの一節を用いて、福沢諭吉は人類平等を唱えている! と言う人がいるが実は全く違う。この文には続きがあるのだ。

 

 ──だけれど世の中は貧乏な人と裕福な人がいる、賢い人愚かな人、身分の高い人低い人、それらの差は何故あるか? それは知識の差だ。愚かなままなら裕福にならない、だが賢くなれば裕福になる。だから、不平等を埋めたかったら勉強しなさい。

 

 このように福沢諭吉は言っている。そして、この世界では中興の祖にして人と妖魔との支配権をめぐる争いの決着をつけた天正帝が仰った言葉だ。それ故に、全国各地に寺子屋があり、農民と言えども読み書きができるほどになった。

 

 それで術関係の仕事をして金を貰っているが、これが実は割がいい。何より、道玄自身が元理究衆筆頭教授を務めたという肩書を持っている。これにより、貴族や公家から術式展開の依頼や個人教師の依頼などの仕事が舞い込んだ。知識を教えることに関しては教授を務めたのは伊達ではなく、教え子となった貴族の子息はメキメキと成長していき、それが評価と更なる依頼へと繋がり、極貧生活から脱出出来た。

 

 当初は、平民に落ちた道玄を見縊る貴族が大多数であったものの、やはり百数十以上生きた怪物老人であり教授まで勤めたのは伊達や誇張ではない。その術式展開や講義をすると見縊った貴族の目を洗い流すことになる。結果、平民になったものの家庭教師として、時には講義をしてその報酬を手に入れ、貴族時代には劣るが苦しくない生活が出来るほどにまで金を儲けることが出来たのだ。その儲けた金を本の収集につぎ込んでいるので、このように大量の本を集めることが出来たわけである。金がない場合は本を代わりに頂くということもしているので、貧乏貴族でも良質な本があればそれを対価に家庭教師をしてもらうという寸法だ。

 

 実は、朝廷からもいくらか依頼を貰ってるほどである。

 確かに失敗したという汚辱はある。だがしかし、その件は身分剥奪という重い沙汰によって既に罪を雪いだ。それに、教授を務めたという肩書も働いているし、たまに帝に進講する依頼が来るほどだ。単に朝廷が使える人材を無碍に放置せず、無駄なくこき使っているとも言えるが。

 

 要は現代風に言うならフリーランスになったわけである。その結果貴族の時のような堅苦しさが無くなって、いちいち会計監査などが来ず、失敗した研究を再度続けることが出来たと道玄は孫に良く言っている。

 

 

 これが貴族時代の、朝廷の役人としての立場だったならば失敗した研究をもう一度やるなど無理だろうし、貴族位を剥奪されてなくても窓際冷や飯食いだったのは間違いないだろう。貴族時代より動きやすくなった結果失敗した研究も再度続けることが出来たというのは、皮肉なものである。

 

 齢百数十を超える彼の研究、それは──

 

「おお、薫よ、帰ってきたんじゃな」

 

 店内の奥の襖を開けて入ってきたのは小柄な老人であった。

 

 頭髪はすでにほとんどない、だが横側には白髪が生えているし、頭頂部の天辺には所謂アホ毛というものが生えている。まるで、どこぞのアニメで海の幸の家の主人みたいな髪型だなと頼は思った。そして、孫が青い髪をしているからか、その白髪もうっすらと青みがかかっている。そこは遺伝が関係しているだろう。

 

 身長は頼と薫より低く、百四十か百三十センチしかないまさしく小柄な老人と言うほかない。好々爺の顔をしており、見た第一印象は人柄が良さそうだなと頼は思った。だが、その本性がとんでもない人物であることは頼は転生知識で知っていた。

 

 

「ふむ、中々の霊力を持っておるな…………、それにその襟巻の家紋。綾絶家に連なるものですかな?」

「はい、ご明察の通りです。僕の名前は綾絶頼、当主代行をしております」

「ほほう、これは失礼仕った。わしは綾小路道玄、そこの薫の祖父でございます。あばら家ではありますが、ようこそおいでくださった」

 

 

 お互い礼を持って挨拶をした。貴族の中ではかなり高い位置にいた綾小路道玄ではあるが今は平民の身、故に年の功があったとしても相手が貴族であるならば下手にでる。そして頼は年功序列なこと、初対面には誰であろうと丁寧に接すること、そして相手が原作ゲームでも有用な霊術ユニット且つ、高名な退魔師であり教授でもある故に下手に出て頭を下げる。これにより、お互いの身分関係の挨拶は終わった。

 

 

「して、北方守護総代とも言えるお方が、このような平民の貸本屋に何用ですかな?」

「御爺様、それについては私が説明します。実は──」

 

 

 かくかくしかじかのほにゃららでまるまるうまうま、とこれまでの経緯を薫が説明する。

 

 説明を全て聞いた道玄は、その場に膝をつき、綺麗な土下座をした。

 

 

「我が孫が犯されそうになったところを救っていただき、感謝の言葉もありませぬ」

 

 

 本心からの言葉なのはわかる、だが土下座までしたのには驚いた。頼は慌てて片膝をつき

 

 

「頭を上げてください、同じ男として見過ごせなかっただけです。それに、僕自身かの高名な退魔師であり教授でもある道玄さんと知己を得たいと思っておりました。薫さんと出会い、彼を救えたこと、そして貴方とこうして出会えたことはまさに運命と言えるでしょう」

「そこまで言われましては敵いませんな、では失敬」

 

 

 相手が上げていいと言うならば、それに従うのも礼儀だ。一言言った上で頭を上げ立ち上がる。尚、頼が言った運命とは薫と道玄という二人の有能キャラに出会えたことで、どちらかというと比重は道玄の方が重い意味で言った。だが、傍で聞いていた薫は自身と出会えたことだと解釈し心臓が早く波打ち興奮し勃起しかかった。

 

 

「して、薫よ。何をもって礼をするのじゃ?」

「とりあえずまぁ、蓬莱亭に行くには距離があり過ぎたのでこちらで一泊して頂こうかと。あと、一泊だけでは流石に恩を返すのに足りないので御爺様の持つ禁書を貸したいのですが」

「わしの禁書か。本来なら初見お断りじゃしそのようなことを言う者がおれば即刻店から叩きだすわい」

 

 

 じゃが、と一泊置き。

 

 

「名門綾絶家に連なるもの且つ、わしの孫の恩人であるならば、わしからも礼をせねばならぬ。故に頼殿、貴方に禁書を御貸ししましょう」

「ありがとうございます」

 

 

 互いに礼をする。

 本来ならば道玄の言うように店から叩きだすが、ここまで恩があるのならば話は別だ。何より、身元がはっきりしており北方守護総代という名門四家の一角と知己を得ることは道玄からしても利益がある。そして、それほどの名門の家ならば、本を貸してもそのまま返されないことはないだろうという信頼もある。

 

 家紋や名家というのは、こういう信頼で成り立っているのだ。故に、禁書に限らず物品の貸し借りは名門同士でやるのはよくあることである。普段の平民相手ならば術をかけ必ず返すようにするが、流石に名家相手にそのようなことは出来ないし、信頼があるためする必要もない。

 

 そこで、思い出したように道玄は言う。

 

 

「そう言えば薫よ、蒲公英(たんぽぽ)が心配しておったぞ。いつものように挨拶に来たら薫が本を買いに西区に行ったと言ったら泣きそうな顔をしておったわい」

「ああ、彼女ですか。今回は彼女を連れていけばよかったと思ってますよ」

 

 

 ややぶっきらぼうに言う薫。幼馴染である蒲公英は平民で貧民区画に住んでる者だ。薫が幼少期に襲われそうになった時に助けてくれた以来親しくしていた。だが、それ以降は今に至るまで女から狙われるようになり、親しい蒲公英に護衛を頼むのだが、彼女も彼女で薫にやや激しいスキンシップをしてくるのである。

 

 これが、蒲公英が性欲を我慢できる知能があるならいいが、寺子屋で最低限の読み書きができるとはいえ平民且つ貧民であるので、我慢できず押し倒したことがあるのだ。それ以来、薫は童貞を捨てたが女に対して忌避感を持つ決定的な原因となった。

 

 確かに快楽はあった、それは間違いなく認める。だが、こちらのことを考えず一方的な腰振りで、天上の染みを数えるだけで後は子種を吐き出すだけの作業感となってしまったのだ。薫も男故に性欲はあるが、自分から発散するほど高まることはない。それどころか、幼馴染に押し倒されたということで、女は所詮ケダモノと思ってしまい、男のほうがいいのではないかと思い始めた。

 

 蒲公英は強引に押し倒したことについて謝罪しただけでもマシと言えよう。これが、謝罪なしだったならば縁を切っていた。

 

 それ以降、蒲公英と付き合いはあるが幼馴染以上恋人未満の関係に収まっている。そして薫はこき使っているのが現状だ、相手が逆レイプしてきたのを理由にあれこれ利用している。対する蒲公英はというと、薫に対して強姦したことの負い目と、彼と縁を切られたくないという思いがあるので、喜んでこき使われている。

 

 そんな関係ではあるが、もし結婚も視野に入れるなら薫は蒲公英を妻にする予定だ。理由は幼馴染以上恋人未満ではあるが、力持ちで平民区画での相撲大会で上位に食い込んでる彼女なので護衛としてピッタリであるし、何かと家事洗濯もそつなくこなすし、こちらが良い様にこき使っても喜んで使われてるからだ。まぁ、最低限の情はあるというのも理由だが。

 

 欲を言えば薫個人的には退魔師として名を馳せるために没落した家を復興させ、その上で貴族の子女と婚姻を結びたいが、道玄の研究が完成しないとそれは無理だろう。その完成のための最後のピースが簡単なようで非常に難しいからだ。

 

 そのピースは、この世界に生きる男として非常につらい物と言えるものだ、薫は愚か性欲の強い道玄ですら無理と言うほどである。運命的な出会いで頼と知己を得たが、その頼でも無理だろうと薫は思っている。

 

 突如、店の引き戸が開かれる。そこから、背丈の高い少女が入ってきた。

 

 

「薫ちゃん! おら心配してたんだべ!」

 

 

 言うや否や、その少女は薫に抱き着き、豊満な胸で薫の頭を埋める。

 背丈はこの場に入ってきた少女含めて四人の中で彼女が一番大きく百七十センチはあるだろう、波羅より低いが年の若い平民の少女ならばこのくらいが平均なのだ。

 

 その少女は顔は芋臭さが残ってる田舎少女といった感じで、エロゲー世界にしては特段別嬪ではない。だが落ち着いた雰囲気のある顔をしてるので飽きは来ない。不自然に歪んでるわけではないので、そこらのモブといった顔だ。

 

 だが、モブな顔に対して胸と尻と太腿は大きく、田舎少女なのも相俟って元気な子を産んでくれるのが約束されている体付きをしていた。

 

 その少女は、薫がバシバシと腕を叩いたので、それに気づいてようやく引き離す。

 

 

「どこいってたんだべか、薫ちゃん。外に行くなら、おらと一緒だって言ったべ」

「どうしても欲しい本がようやく入荷してね、我慢が出来なかったんだよ」

 

 

 そう言って、手に持っていた数冊の本を見せる。それを見た道玄は

 

 

「それはもしや、アレか?」

「ええ、アレです」

「はぁ…………、我が孫がそっちの道に進むとは、我が家はお前で断絶じゃのう」

「いざとなれば蒲公英を使いますよ」

「えへへ、嬉しいべ。おら頑張るよ」

 

 

 薫が欲しい本とは衆道向けであり、上級区画でこっそり売られている物であった。我が孫がそっちの道を進むようになってしまった事に嘆く道玄だが、薫本人は蒲公英に産んでもらうと物のように扱う。だが、当の本人は物のように扱う発言をされても喜んでいた。

 

 やや混沌とした空間に、蚊帳の外となる頼。少し呆然とした様子でそれを見ていたのに気付いた薫が彼女を紹介する。

 

 

「頼さん、紹介しましょう。私の幼馴染であり将来妻として使う予定の蒲公英です」

「初めまして、おら蒲公英ともうすだ。はえ~、薫ちゃんに負けず劣らずの色男さんだべ」

「これ蒲公英よ、此方の方は貴族じゃぞ。平身低頭せい」

 

 

 紹介された蒲公英は、薫とは違った美形の少年に顔を赤らめて自己紹介するものの、道玄から言われて顔を青ざめてその場で土下座した。

 

 

「お、お貴族様にご無礼仕っただ! 許してくんろ!!」

 

 

 平民からすれば貴族など雲の上の存在だ、その相手に対して無礼を働いたらどうなるかなど学がない彼女でも理解している。恐れ戦くも、対する相手は穏やかな口調で語り掛ける。

 

 

「初めまして、僕は綾絶頼と言います。確かに貴族だけど、礼儀作法は求めないし気にしないから普段通りにしてください。立ち上がって結構、話がしづらいからね」

「は、はぁ、わかりましただ」

 

 

 その彼女に頭を上げていいと言う頼。戸惑いながらも相手がいいというならば頭を上げる。その様子を二人の男はそれぞれの思惑で見ていた。挨拶が終わった二人を見て、道玄が口を開く。

 

 

「そういえば、頼殿。わしと知己を得たいと言っておりましたが、朝廷から身分剝奪を受けても尚へばりつきながら生き恥を晒す老骨に何用ですかな?」

 

 

 やや皮肉めいた口調で自嘲しながら言う、その言葉をしっかりと聞きながらも頼は答える。

 

 

「生き恥を晒すなど、御戯れを。貴方は貴族や公家相手に家庭教師が出来るほど活躍しているではありませんか。更には未だに理究衆でも講義をするほどの見識を持っている。恥を晒すと言うならば、そのようなことはしないはずでしょう」

「ほほほ、知っておりましたか。失敬失敬」

 

 

 自罰的に言うのは、これで相手を見極めているからである。それを頼はゲームで知っていた。これの選択肢で調子に乗って高圧的になって命令するか、先ほど挙げた例を言いながら下手に出るかの二択があり、どちらもメリットデメリットが存在する。前者の場合は、身分の差を利用してあれこれ命令出来る上に、講義授業もいくつかは無料で出来る。だがしかし、裏切り天秤が敵側に傾く上に一部の術や孫との合体技などが出来なくなるデメリットがある。後者はその逆で、金を高めに払わなければならないが、後半で有用なユニットになる。RTA走者なら前者で、じっくり攻略なら後者という風に別れている感じだ。もっとも、RTA走者でも後者を選んでタイム更新出来るし、じっくり攻略でも前者を選んで妖魔に裏切らせずに活用できるほどだからどちらを選んでもそれぞれ利点がある。

 

 頼はその選択肢で後者を選んだというわけだ。最も、見極めているのは道玄だけではなく頼もだ。この偏屈老人の厄介さが、この原作ゲームと世界観が違った状態だとどうなるかを見極めなければならない。

 

 そんな中、腹の虫が薫と頼の両方から出た。お互い顔を見合わせ、赤らめる。その様子を見て道玄は笑い、蒲公英は美形少年二人が羞恥で顔を赤らめる絵姿を見て少し発情した。

 

 

「ほほほ、二人とも腹が減った様子。話は夕餉の後にしませんかな? 蒲公英よ、何時もの様に頼むぞ」

「はい! おらに任せるべ!」

「あ、それでしたら僕も手伝いますよ」

「えっ?! 頼さんは貴族なのに料理をするのですか?」

 

 純粋に驚く薫。

 当然だ、貴族は料理などしない。それは料理人の仕事であるからだ。没落した綾小路家も同じであり、身分剝奪を受ける前までは料理すらしたことがなかった。だが、平民に落ちてからは自分たちの手で拙いながらも手料理を作り、時には周りに頭を下げて教えてもらい作った。

 

 今では、通い妻として蒲公英が料理を作りに来るのでその必要性が無くなったので助かっているが、それでもあの料理の大変さを忘れたわけではない。なんど塩の量を間違えて不味い料理を作ったことか…………。

 

 そんな苦い過去がある故に、ちゃんとした名家である綾絶家の当主代行ともいえる存在が料理をすると言ったので驚いたのである。驚愕する薫に対して

 

 

「料理を作るのが好きなんですよ、僕は代行ですがあくまで代行なので、当主は妹が継ぐんです。その後、仮に政争が起きて妹から追い出されても一人でやっていけるように自炊できるように努力したんですよ。後はまぁ、妹達が可愛いから作ってあげてたりもしますが」

 

 

 頬をかきながら恥ずかし気に言う頼。本人からしたら原作ゲームで美味い料理を食べればキャラが強く成長するから、前世と比べて調味料が不足し物足りない料理ばかりで改善したいから、そして政争により追放されても一人でやれるようにという理由がある。後は、前世も独身で自炊してたのでその経験もあるし、可愛い妹達が美味しい美味しいと言ってくれるだけで嬉しいのでそのために作ってあげてるという理由もあるが、流石に全部の理由を言うのは恥ずかしいし秘密でもあるので少しだけ打ち明けた。だが、その台詞はこの世界の住人からしたらまさに女を支える男その者であり薫は愚か道玄と蒲公英からしても理想の男として映っていた。

 

 

「後、僕の手元に市場で売る予定の砂糖があるんですよ、それを少し使おうかなと思いまして」

「ほほう、北土の砂糖ですかな?わし、甘い物が好きでしてのう」

「それだけでなく、お酒も用意してありますよ。我が家で作った清酒です」

「ほっ! それはまたまた楽しみですじゃ! いつかは飲みたいと思っておりましたがまさか飲める日がこようとは、感謝しますぞ。さささ、どうぞ上がってくだされぃ」

 

 

持参した手土産に目に見えて喜色をあらわにする道玄。どうぞどうぞと家にいそいそと上げようとするのを見て、苦笑しつつも頼は言葉通りに上がる。そして、一宿一飯をネームドキャラの家で過ごすのであった。

 

 

 




たんぽぽちゃんの顔は某艦をこれくしょんする芋っぽい子をイメージしていただければ

道玄さんは某海の幸の国民アニメの主人の眼鏡を外して背を小さくした感じです。


亀のような速度ですが、今後もお付き合いして拙作を応援してくださると嬉しいです。よろしくお願いします。
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