お風呂から上がるとなにやら神妙な面持ちで携帯と自分の指を交互に眺める奈緒ちゃんがいた
「ふふ、何してるの?」
テレビからは漫才の音が流れていて、真剣な表情の奈緒ちゃんとの対比に思わず笑みがこぼれる
『わあぁ!プロデューサーさん、戻ってきとったんですね!』
急に声をかけられて変な指のポーズのまま答える奈緒ちゃん
「ダンスの振り練習?ふふっ、真面目だね」
『そ、そんなところです〜』見られたのが余程恥ずかしかったのか視線を思いっきり外された
「練習熱心なのはいい事だけど、髪乾かさないと風邪引いちゃうよ?おいで、乾かしてあげる」
『あ、ありがとうございます…』
奈緒ちゃんは、私が自分の髪を乾かしている最中も、携帯画面に釘付けで、真摯な姿に愛おしさを感じた
「今日はお仕事の事は忘れてゆっくり休んでいいんだよ」
奈緒ちゃんの隣に腰を下ろす
『いえ、全然そんなんじゃないんです〜』
パタリ、と液晶画面を下にをし、携帯を床に置いた奈緒ちゃんはどこかそわそわしていて落ち着きがなかった
『プロデューサーさん、』
「んー?」
横からぎゅっと抱きしめられた
「どうしたの?甘えたい気分?」
頭をなでなでしながら抱きしめ返す
『そんな感じです...』
私の服を掴む手がさらに強くなった
しばらく抱きしめ合っていると奈緒ちゃんの体温が心地よくて眠気がやってくる
「そろそろ寝ようか、」
欠伸をしながら話しかける
『え〜私、まだ寝たくないです〜』時計は午後11時を指していた
「横になりながらお話しよう。そしたら眠気くるよ」
『それ、プロデューサーさんだけやないですか?』なんていいながらベッドに入ってきてくれる
『…なぁ、プロデューサーさん』
「んー?どうしたの?」
体を奈緒ちゃんの方に向ける
『今日は私、甘えてもええ日なんですよね?』
天井を見ながら話す奈緒ちゃん。視線は合わない
「そうだよ、私にできることなら全部叶えてあげる」
『せやったら、』急に起き上がり私の上に跨る奈緒ちゃん
言葉は軽々しく口にしてはならないな、と後悔するには既に遅かった
『プロデューサーさんの事抱かせてください』
目が合った奈緒ちゃんはどこか泣きそうで、でも強く決意した表情で私を見ていた
ゆっくり私の方に体を近付ける奈緒ちゃんの姿にまるでドラマの追体験をしている感覚で、どうも自分が今されていることだと理解出来なかった。
そればかりか奈緒ちゃんの背景にあるカーテンの隙間から覗く月、今日は綺麗な満月なんだぁ…と冷静に考える余裕すらあった