※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

107 / 196
不穏な口

 

 

 

「たっちゃん‼︎ 本当にお願いっ‼︎」

 

 その頃、IS学園。

 今日から夏休みと言う事で生徒は各々の予定の為に慌ただしく動いている。そんな中、生徒会は恙無く生徒会室で溜まっていた事務処理等の仕事を捌いていた。

 更識家としてもIS学園の生徒会長としてもIS学園に残らざるを得ないからだ。

 

 そんな矢先、生徒会室に訪問者が現れた。新聞部と言う腕章を付けた2年生の彼女は楯無の前に来るや否や、そう懇願して来たのだ。

 

「……幾ら何でも越権が過ぎると思うわ、薫子」

 

 彼女、黛 薫子は新聞部として日夜ネタを探して学園中を駆け回る好奇心と行動力の塊と言える人物。

 

「其処を何とか出来ない⁉︎ 格好の取材対象が『学年留学』で3ヶ月以上、IS学園に居ないんでしょ⁉︎ 彼が居ないんじゃネタが尽きちゃうし、それにお相手先の『五稜学院』も気になる事で一杯一杯だし……」

 

「だからと言って学年留学の対象は1年生のみなのよ。2年生が其処に割り込むのはどうかと……」

 

 嘆息しながら楯無は薫子の無茶な頼みを退けようと諭す。楯無は親友であるが故に薫子の性格は分かっている。マスコミ特有の過剰表現や誇張表現、更には偏向報道。

 学園内ならばまだ許せるが完全他校でそんな真似をされると具合が悪くなる。IS学園としても初の試み……何事も第一印象が大事であり、その最中にそんな不祥事を起こされると最悪、関係が大きく拗れかねないし……考えたくは無いが学園同士の抗争に発展してはとても笑えなくなる。

 

「其処を何とか‼︎ 生徒会長権限で如何にかならない⁉︎ ほら、1年生ばかりで整備科が1人も居ないってのはどうかって言うじゃない‼︎」

 

 手を合わせて拝み倒しに来た。

 

「交渉の余地があると思っているの? 取り決めは学園長や向こうの学院長同士で決められた内容なの」

 

「う゛……。でも、たっちゃん、学園長と個人的に話もしているじゃない……。何とか捩じ込んでくれないかな?」

 

「……そもそも何で其処まで頼み込みに来るのよ?」

 

 楯無は1年生全員が学年留学で2学期の間、学園を留守にするのは異常と捉えているのだが……其処に薫子が割り込もうとするのは不審点がある。

 

「留学先の織斑君とか専用機持ちとか……もしかしたら学院側にも専用機持ちとか居るかも知れないから……」

 

「そんな理由だと思ったわ……。だからと言って、その理由が五稜学院側に通じるかしらね?」

 

「やって見なければ分からないわッ‼︎ 今の今まで誰も知らなかった未知の学院‼︎ その全貌に迫る‼︎ うん、見出しはこれで決まりね‼︎」

 

 薫子は自分の論が通る事前提で記事の内容の妄想をし始めた。その様子を見て楯無は再び嘆息する。

 

「……あー、薫子。期待が膨らむのは結構だけど、私は学院の連絡先を知らないのよ? どうやって交渉をしろって言うのよ」

 

「え? 知らないの⁉︎ たっちゃんが⁉︎ 貴方、暗部の長で情報収集が得意じゃない‼︎」

 

「何処を探しても出て来ないのよ、学園長も向こうから非通知設定でしか連絡を受け取れなかったって言うのよ。情報統制や秘密主義体質が徹底されているわ」

 

「う……其処まで徹底しているの……」

 

「下手に記事にしたら……IS学園でも情報の遮断は無理。……秘密主義とか情報統制している以上、消されるかも知れないわよ?」

 

 コレは本気で言っている。

 知られたくないからしているのであって有る事無い事の情報をばら撒く者は邪魔でしか無い。戦場カメラマンだって命懸けなのだから、この学年留学の件もかなりキナ臭い所がある。

 

「……さ、流石に命懸けは勘弁願いたいわ……‼︎」

 

 流石にこの可能性に関しては怯んだ。薫子も自分の命は惜しい。此処で押し切って諦めて欲しい所。

 

「更識さん。少し宜しいですか? おや、黛さんも居るんですね」

 

 と、其処へ真耶が生徒会室に入って来た。教師とて夏休みの期間中は普通に仕事があるのだ。

 

「あ、やまぴー‼︎」

 

「……とうとう2年生にまでその呼び名が広まっているのですね……。教師としての威厳が……」

 

 1年生で広まっている自分の渾名を2年生の薫子からも言われて心の中で泣きたい真耶。しかし、そんな事に気を使っている時では無い。

 

「山田先生。何かご用ですか?」

 

「あ、はい。夏休みの期間中、織斑君のIS訓練の指導をお願いしたいんです。本来なら織斑先生がする予定が……『学年留学』の件で手が回らないのです」

 

 『学年留学』の件で教師陣は多忙の状況であった。先のクラス代表対抗トーナメントの件で、戦闘教員が多数、殉職した。今も教員募集を掛けてはいるが条件に似合う者は中々揃わない。その為、今居る教員で何とか回している状態だった。

 

「……『学年留学』の期間中はIS学園等の護衛が無くなってしまいます。誰も五稜学院の所在地を知りませんから……となれば専用機持ちに担って貰う他ありませんがそれでも不安が残ります。

 やはり織斑君本人の地力を向上させるしかありません」

 

 IS学園内であれば生徒会長、教員がフォローに入れる。しかし、学年留学期間中はそれすらも難しくなる。

 

「分かりました。夏休み期間中に出来るだけ向上させましょう」

 

「はい。お願いしますね」

 

「……出来れば私が同行出来ればある程度は対処出来るのですが」

 

 其処で楯無は思わせぶりな口調で話題に切り込む。やはり男性操縦者を行かせるのは不安が残る。

 

「それは難しいと思われます。今回の学年留学の対象者は1年生のみとなっています」

 

「ですが、今後の事も考えて生徒会長同士の対談は必要かと思われます。仮にも1人や2人ではなく大勢との交流にも等しい内容です」

 

 前々から考えていたが学年留学と言う大規模な内容。流石に生徒達の代表者が除け者にされるのは少々、不自然と思えた。

 

「……成程、更識さんの言に一理ありますね。今度、また定期会議があるそうなのでその時までに学園長に進言しておきますね」

 

「いえ、私から直接、学園長に口頭で言います。教師の中で学園長や織斑先生に近い山田先生にも伝えておきたくて……」

 

 その後、他に連絡事項が無かった為に真耶は速やかに生徒会室から立ち去った。

 

「ぶー、良いな〜。たっちゃんはズルい‼︎ 夏休み期間中も織斑君とデートだなんて〜」

 

「山田先生の言葉も最もだからね」

 

「それに五稜学院に行けるかも知れないのもズルい‼︎ だったら私もセットで行かせて欲しいかな〜」

 

「今回ばかりは諦めて頂戴」

 

 薫子の嘆願を退け、楯無は思いに馳せる。

 

——……明らかに嫌な予感がするわ。なんか……大きな悪意が背後にある気がする……‼︎

 

 今年は男性操縦者が居る……だけでは済まない程に異常な事が多い。クラス代表対抗トーナメント、臨島学校……そして学年留学。

 もはや静観出来る状況を超過してしまっている。多少、無理してでも介入する必要があると楯無は決断する。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。