※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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注文の多い城 Ⅱ

 

 

 

 

——……通信回線のクラック対策も万能では無い。のは分かっているんだがな、わざわざ暗号化させてまでやっているのに、それでも飽き足らない様だ。

 

 某刻、某所。

 和奏は『ストラトス・デザイア』に拾った簪を送迎した後、事務処理途中である連絡を受けた。それは如何なる用事よりも最優先される。

 故に『ストラトス・デザイア』での仕事を中断、放棄してでも要請を受けねばなら無い為、要件の居る場所に出向いた……いや、帰ってきたと言うべきか。

 

——しっかし、IS学園の連中……この光景を見たらどんな反応を返す事やら……まぁ、大体の予想は出来るがな。

 

 自分達は見慣れている光景ではあるのだが……その実態を知らない者達から見れば異様の光景に映るだろう。

 幾つかの通路や昇降機を抜けてある部屋に辿り着く。普段は何重にもセキュリティにより閉ざされた扉のセキュリティを解除してその扉を開く。

 

——……毎度毎度思うが此処まで厳重にする理由はあるのかね。来る奴なんて限られているってのに。

 

 その扉の先に広がっていたのは植物園を彷彿させる緑の数々と各地に張り巡らされた水路と言う温室の様な空間だ。傍に水路が張り巡らされた舗装された道を進んだ先、リビングの様な空間が広がっていた。長ソファに、ティーセットが置かれたテーブル。他にも調度品がある小棚と言ったモノが置かれており、その奥に1人の小柄な少女がソファに座ってティータイムに勤しんでいた。

 

「おかえり、フォール」

 

 ソファに腰掛けていた少女は黄金の髪を揺らし、手に持っていたカップをテーブルの上にある皿に置いて、その白い双眸を持って彼をそう呼んだ。

 

「何時もは秘匿通信で完結すると言うのに態々、学院にまで呼び戻してまで何があったと言うんですか? 学院長(ガイア)様」

 

 少女は和奏をフォールと呼び、和奏はガイアと呼ぶ。

 

「…………。用件が無ければ呼び出しちゃダメなの?」

 

「そう言う訳ではありませんが……普段の対応と異なると流石に何事かと身構えます」

 

「……分かった。じゃあ、次からは積極的に呼ぶ事にする」

 

——藪蛇だったか……。まぁ、それもまた一興か。

 

「アルギエバがプライドオブスリランカを仕入れて来たんだよ。頑張って紅茶の淹れ方を覚えたから、一緒に飲もう?」

 

 学院長はそう言う。その様子を思い浮かべるとウィキリピア並の小柄な体躯なので大変、微笑ましく見える。

 

「……確か、茶葉の種類の一種でしたね」

 

 それに此処に来る前から見えていたが既にティーポットもテーブルの上に準備されている。

 呼び出した理由も早い話が新しい茶葉を見付けたからお茶会に誘いたかったと言うのが真相の様だ。

 

「分かりました、一杯頂きましょう」

 

 

 

 

 

 

◯

 

 

 

 

 

 

 

 エントランスホールに戻った簪一行。

 

「うーん、何処から行くべきかしら?」

 

 左右に見える両開きの扉の先か、或いは階段の脇に見える通路を行くべきか。

 

「……お姉ちゃん。悩んだら直感で決めた方が良いかも。右側の階段の脇の通路とか」

 

 悩んでも仕方ない。オニールは直感でその通路を選択した。

 

「それもそうね。ドロシーさんもそれで良い?」

 

「うん。構わない……」

 

 簪も同意した事で意見が一致。其の儘、正面階段の脇を通って廊下の先と進む。

 

「クローゼットが幾つかあるわね。此処が更衣室かも知れないわ」

 

 部屋の中にはクローゼットが幾つか見受けられる。仮想現実とは言え流石に実在する城の内装とは相違があるだろう……。まぁ、其処まで気にするのは野暮と言うモノだ。

 

「取り敢えず、調べてみよう……」

 

 クローゼットを開けて収納されているモノを物色する。中にはクラシカルスタイルのメイド服一式が収納されていた。

 

「あ、お姉ちゃん‼︎ あったよ‼︎」

 

「こっちにも入っていたわ。コレでこの先に進めそうね‼︎」

 

 他のクローゼットにもメイド服は収納されていた様である。

 

「でも、仮想現実空間だとゲームみたいにパッと切り替えられるの?」

 

「ううん、普通に現実と同じように着替える形式になっている。罠とかで服装とかの強制変更される場合だと量子変換で変更されるみたい」

 

 過去に神楽から2択の変更方法があると説明された。1つ目は現実と同じ様に普通に着替える形式。エントランスフロアにはその為の更衣室区画が用意されている。

 2つ目はISを展開するのと同じ様に量子変換で瞬時に切り替える形式。此方は取得物を各人のユーザーデータのインベントリに格納して変更する形式。最も殆どのユーザーは自分で着替える方法を選択している。また、装備の強制変更トラップに引っ掛かった時もこの形式でトラップに登録された装備群に量子変換で装着される。

 

「……着替え方が分からない時は量子変換で変更。って使い方も出来るわね」

 

 多分、其方の形式はその理由が強そうである。

 

「じゃあ、早速着替えようよ‼︎ メイド服なんて初めてだもん‼︎」

 

 そう言うや否やオニールは簡易スーツ等の身に着けていた衣類を脱ぎ始める。更衣室とは言え視界を遮るモノは何も無いし、そもそも変態なので急に全裸になる事に抵抗は無い。ファニールも簪も同じ様に簡易スーツを脱いで量子変換で光の粒と化させ収納してクローゼットの中にあるメイド服に手を掛ける。

 

「うわ、ドロシーさん。意外に胸がある……‼︎」

 

「良いな〜……胸が大っきいって……。私もいつかは膨らむのかなぁ……」

 

「『学院』の人達って胸が大っきい人多いし……やっぱり胸とか弄られたら膨らむものなのかしら?」

 

「えへへ、じゃあ私達も巨乳のナイスバディになれるかも」

 

 まだまだ子供な体型のファニールとオニールは全裸となり顕となった簪の胸を見てそう呟く。

 

「コレばかりは本人に依るとしか言えない……」

 

 流石に其処は体質や遺伝も関係してくるだろう為に簪としても何とも言えない。かつての姉や幼馴染も相応に膨らみがあるのは知っている。流石に、ヒナタやレイカ、ウィキリピアの保護役の長身の女性クラスの人達はもはや別格と言えるのだが。

 

「……うーん」

 

「どうしたの?」

 

「いや、こう言うのって普通、ピンク色の小さな機械。ローターだっけ? そう言うのがあっても可笑しくないのに、無いなぁって思って」

 

「メイドさんって鬼畜なご主人様に調教とかされているイメージあるもん」

 

「……」

 

 この2人は何処でどんな本を読んできたのか、少し心配になる簪であった。

 

「……そ、そう言う安直なモノは使わないんじゃないかな? どうせなら仮想現実空間ならでは大掛かりなモノとか……」

 

——ローターで秘所を刺激ってのは現実でも簡単に出来る責めだし……。

 

 特殊性癖の集合体みたいなユーザーがそんな単純なモノで納得するとは思えない。その為、それは無いだろうと簪は返しつつ、メイドのエプロンドレスや白タイツ、ロンググローブ、フリルチョーカーと言った構成品を身に着けて行く。

 特に特徴があると言うモノは無く裏地も至って普通に見える。

 

——……虚さんも本音も一応、更識家の分家で従者の家系だけど、メイド服とかそう言うのは着ないよね。

 

 純和風の家風の為にそんなイメージは無いが、姉の虚は出来るメイド長のイメージで本音はダメメイドのイメージが付き纏うのは本人の雰囲気故か。

 

「……メイド服、初めて着替えたけど……結構、可愛いじゃない。この姿で縛られたりするの、ゾクゾクするわね……‼︎」

 

「ご奉仕とか……後はお仕置きとか……」

 

 数分後、クローゼットに納められていたメイド服に袖を通して着替え終える。頭に付けるホワイトブリムも付ければ見てくれはメイドの完成と言えた。

 オニールとファニールの2人はメイド服は初めて(かく言う簪も見た事はあるが身に纏うのは初めて)なのかそんな妄想を膨らませている。

 

「……見た目よりも動き易いって所かしら?

 

「うん。メイド服ってのは元々、作業着と言う意味合いが強かったから……」

 

 それが今となってはSMやコスプレのジャンルになっているのだから人間の欲の業は深い……。

 

「メイドさんになったし、コレで2階の扉の奥へと進めるね‼︎」

 

 メイド服に着替えた所で、2階の例の張り紙があった場所にまで戻って来た。最初は簡易スーツ姿であった為に開かなかった扉だが、メイド服に着替えた事ですんなりと扉が開いた。

 

「……何かしら?アレ」

 

「うーん、お城にとっては場違いなモノがある……」

 

 扉を抜けた先には、広間がありその中央に青い光を放つ空間投影型の丸いサークルが設置されていた。西洋風の中で異彩を放つ近未来的な物体は違和感がある。

 

「……『セーブポイント』?」

 

 近付くと目の前に小型の空間投影ウィンドウが展開されてシステムメッセージが表示された。

 

『コレは各種ダンジョン内に設置されているセーブポイントです。ユーザーの各自の進行状況を自動セーブします。退室した後、次回入場する時にセーブされたポイントから再開出来ます』

 

 早い話がゲームにおけるセーブ&ロードである。ダンジョンの攻略を一時切り上げて、オンラインフロアに戻ったりログアウトして翌日以降にログインしてセーブポイントから再開出来る機能なのだろう。

 

「中間地点って訳かしら? 時間も遅い時に中断出来るのは嬉しいわね」

 

 ファニールがそう言うとまた別のシステムメッセージのウィンドウが展開された。

 

『日頃よりダンジョンフロアを御愛顧頂きありがとうございます。

 まもなくダンジョンフロアのシステムメンテナンスが開始されます。メンテナンス状況によって終了時刻は前後する場合があるのでご了承ください。

 

 メンテナンス中はダンジョンフロアに入場出来ませんのでご注意下さい。

 ダンジョンフロアに挑戦中の方はセーブポイントにてセーブされていないデータは失われますのでご注意下さい。

 メンテナンス開始5分前にはダンジョンフロア挑戦中の方は強制ログアウトされます。また、監禁状態の場合このメッセージ表示の3分後に強制ログアウトされます。

 進行状況のエラーが発生する恐れがあるので、挑戦中の方はお早めにログアウトするようお願いします』

 

 それはダンジョンフロアのメンテナンスのお知らせであった。

 

「……メンテナンスが始まるみたい」

 

「でも、セーブポイントに到達したから次やる時は此処から出来るんだよね?」

 

「うん、多分……。でも、メンテナンス開始直前の強制ログアウトだとデータ破損の恐れがあるから早めにログアウトした方が良いかも」

 

「それもそうね。じゃあ、ログアウトしましょ」

 

 目の前にメニュー画面の空間投影型のウィンドウを開き、ログアウトの項目に指を添える。

 その直後、3人の姿は光の粒子と化して消滅した。

 

 

 

 

 

 

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