※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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風塵神楽・上

 

 

 織斑 一夏とセシリア・オルコットの模擬戦。試合結果は何とも言えない終わり方だった。

 余裕をかましたセシリアは一次以降を終わったばかりの素人同然の一夏に追い詰められると言う代表候補生として明らかにヤバい絵面だった。最後は一夏の自滅で終わった。

 

——何と言いますか……お遊戯会みたいですわね。コレが学院(・・)ならば、出血多量の状況ですわ。

 

 何はともあれ、試合は終わった事に変わりは無い。

 

「さて、次は四十院」

 

「……今からでも不戦敗で辞退しても宜しいですか? そもそも、私は誰からも推薦もされていませんし自薦もしていませんわ」

 

——施設の次の予約を入れたいのですよ。簪さんと言う替えの効かない同志が居るのですから……。『電脳空間フロア』は2人以上じゃないと利用出来ない施設があるのですから。

 

 神楽の脳内は既に表の世界よりもピンク色全開の裏の世界に染まりつつあった。本音を言えば今からでも辞退したい。そして、簪と一緒にピンク色の被虐談義に勤しみたい。

 

「ダメだ。私が参加させただろうに、腹を括れ。で、次は織斑と四十院。その次にオルコットと四十院。勝ち点が同率の場合はまた考えるとしよう」

 

 神楽の了承を得るよりも前に千冬は話を進める。完全に此方の話に聞く耳を持つ気は無い様である。

 

——余程、手の内を晒させたいのですのね。仕方ありませんわ……皆皆、彼女に憧れを抱くでしょうが織斑先生は強引で傲慢……故に理解はされない。一先ず、今は折れておきましょう。

 

 千冬は管制塔に指示を送りアリーナ内放送で次の予定を公布、次の試合の準備を進める旨が広まって行く。セシリアはピット内から出て控え室に移り、神楽と一夏は別々のピットにて控える形となった。

 

「……織斑先生。弟さんの下に行かなくて宜しいのですか?」

 

「向こうには山田先生が居る。だから問題は無い」

 

——つまり、私自身には問題があると仰る訳ですね。何とも皮肉な事で。

 

「……四十院」

 

「獅子は、欺く事を知りませんわ。私が言えるのはそれだけです」

 

 千冬が言う前に神楽はそう告げて二の句をシャットアウトした。

 

「無理に付け加えるならば、個人的に言えば織斑さんは……学園では無く秘匿された研究施設の方が安全かと存じますわ。では」

 

 これ以上、話を長引かせる理由は無い。神楽はそう判断してカタパルトを使わず自分の脚でアリーナの部隊へと歩いて行く。確かにカタパルトを使うのが普通だが、義務では無い。

 

 光が差し込んで来る。ピットの出口から観客席が一望出来るアリーナ内、その上空には先に出ていた白式を纏った一夏が見下ろしていた。

 観客席の生徒達は何事かと別の意味で騒ぎ始めるが神楽は意に貸す事は無い。

 

——参りましょう。赫映(・・)。

 

「…………?ッ⁉︎」

 

 その刹那、否、厘(・)。

 白式を纏い上空で待っていた一夏は背後から強烈な一撃を受けて前のめりになり頭からアリーナの地表へ落下し衝撃と共に大きなクレーターを作った。

 

 ISにはシールドバリアが標準搭載されている。それは外部からの衝撃に反応してエネルギー状のバリアを形成し搭乗者を守る機構。万が一の場合、ISを駆動させる全エネルギーをバリアに回す『絶対防御』と呼ばれる搭乗者の生命を守る機構の二段替え。故にISを身に纏って居る限り死ぬ事は無い。その為、ISは『世界最強の兵器』でありそれが扱える女性は強いと言う女尊男卑の象徴にして権威と敬われる事となった。

 IS同士の試合ではその特徴から相手のシールドエネルギーを枯渇した方が負けとなる。シールドバリアがある限り、先程の様な上空から頭から地面に直撃してもシールドバリアにより守られる。

 

「な、何が起きたんだ⁉︎」

 

 振動で眩む頭を揺りながら一夏はクレーターから這い出る。何が起きた?何が起こった。それは観戦して居る観客席の生徒達も同様であった。一夏は反対側のピットからアリーナへ出てくる神楽の姿を確かに捉えていた。ISでは無く制服姿のままである事に疑問を抱いた瞬間、自分は地面に叩き落とされていたのだ。

 そして、半ば反射的に上空を見上げた時、その異変に気付いた。

 

「…………」

 

 一陣の風が靡いて居る。その中央に彼女、四十院 神楽が浮いて居た。

 その身は先程までのIS学園の制服では無く、ISスーツを身に纏っている。ただ、従来の形状では無く、特徴的な形状であった。ISスーツは胴体の部分とニーソと言う構造が主流だが、彼女のISスーツは一体型、そして1番特異に映るのはロンググローブを纏った袖の部分。両袖の部分は鼯の様な膜が風に靡いて居たのだ。そして——。

 

「何なんだよ、それは……⁉︎」

 

 神楽の纏うIS……。それは脚部(・・)のブーツ部分しか展開されて居ないと言う事。それ以外は、他のISで言うべき装甲もガントレットもスラスターも何もかも存在しない。そして、ブーツの踵からは燦爛と煌めく光が放たれていた。

 

『四十院、部分展開とは巫山戯ているのか?』

 

 管制塔に移った千冬が非難沁みた放送を投げ付ける。対する神楽は公開通信(オープン・チャンネル)で一夏や管制室、そして観客席に伝わる形で返答した。

 

『いえいえ、巫山戯てなど居ませんわ。私の専用機は……コレで完全展開ですわ。私にとって、鎧(・)も、アーマー(・・・・)も、スラスター(・・・・・)も、アーム(・・・)も、不粋な拘束具に過ぎませんわ(そう言うのは拘束プレイで楽しみたい性分ですので)』

 

『……正気か⁉︎』

 

『四十院家に血迷っていない者は1人とて居ませんわ。痛みなき戦いに……価値は無いのですから』

 

——怪我して痛みを感じて興奮し夥しい流血を繰り返し淫靡で恍惚、そして狂気を育んで初めて強くなれます。正気の沙汰な方は来るべきではありませんわ。

 

「さて、それ以上の問答は無用。時間の無駄ですわ、そうでしょう? 織斑 一夏さん?」

 

 其処で公開通信を切り浮上して来た一夏に視線を向ける。その手には何も握られていない、完全な徒手。

 

「…………あ、ああ‼︎」

 

『……四十院、文句は後で言わせて貰う。それでは試合、開始‼︎』

 

 管制室から試合開始のアナウンスの後にブザー音が鳴り響いた。試合が始まる。

 

『その前に付かぬ事をお尋ねしますが』

 

 一夏が先手を取ろうとその手に持つ刀剣、雪平弐型を構えて突っ込もうとした時、再び公開通信が開かれ神楽の声が脳内に響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『織斑さん。貴方……まだ童貞(・・)ですか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、はぁ⁉︎ ぐわぁ⁉︎」

 

 神楽からの突然のセクハラ発言を投げ付けられ一夏は思わず吹き出した瞬間に、強烈な衝撃が襲いかかった。

 

 

 

 

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