いきなりトンデモ超展開から始まった『学年留学』初日。
大半の生徒達の既存の認識をかなぐり捨てた様な環境であり、ある意味1からのスタートと言えた。
「いきなりの超展開ねぇ……」
「自己啓発を促す教育方針と言う訳か……監獄と聞いた時はどうなるかと思ったが、かなり特異的なようだな」
「囚人服なんてまっぴら……と言いたいのですが、コレばかりは仕方ありませんわね」
スクイの説明を聞いてからの解散後。1組の一夏を始めとした専用機持ち達は自然と固まって行動していた。なんだかんだでこのメンバーで行動する事が多い為に今回もその方針になっていた。
「……1番痛いのはこの学院では専用機の使用が大きく制限されている事なのよねぇ。学院側の言いたい事は分かるけどねぇ……」
「ええ……。学力もそうですが、専用機の実戦データのサンプリング収集も必要になります。それを疎かにすると、本国から何を言われるか……」
鈴音は自身の首に嵌められている首輪を指で小突く。代表候補生を始めとした専用機持ちは国や企業より専用機を与えられている。
だが、その実はデータ取りの為の実験機や試験機と言った傾向にある。
このメンバーの中ではセシリアの機体が1番、実験機と言う側面が強い傾向を持つ。IS学園ならば模擬訓練等で実戦データを取りやすいと言う理由があり尚且つBT適性が1番高いのがセシリアだからだ。
「首輪を外す方法とか無いのか?」
「一夏、変に弄らない方が良いわよ。この手の類は変に外そうとすると爆発するってオチが相場だから」
「鈴よ……。それは流石に映画の見過ぎだろ……。しかし、繋ぎ目や鍵穴が見当たらない以上、鍵の類は無いようだ」
鈴音の言葉に箒は呆れつつ、各自に着けられている首輪を観察する。鍵穴も無ければ繋ぎ目も見当たらない。強いて言えば鎖が胸元付近の胸ベルトと連結されている事くらいか。
「……学力と言った授業もそうですが、私達に宛てがわられた部屋……と言うか独房ですわね……その、かなり見窄らしい光景ですわね」
収監棟の独房の1つを見てセシリアは嘆息する。IS学園の寮部屋は一流ホテルかと思う程に豪勢な部屋であり、セシリアの場合は更に私物を持ち込んでいた。その環境から一転して殺風景極まりない光景の部屋へと様変わりだ。
「学院内での行動は完全に私達の自由って言われているけど……それだけ自分で考えて動かないと後で痛い目を見る事になるわ。遊び呆けちゃ期末考査がボロボロになるわね」
その言葉を聞いて一夏は引き攣った顔になった。何せIS学園の授業スピードはISの訓練の兼ね合いからかなり速い。一夏の1学期の期末考査の結果も結構ギリギリだったのだ。
「期末考査の件に関しては進み具合を見て範囲は調整すると言っている。其方にばかり気を向けても仕方ないだろう」
「ええ、そうですわね。授業に関しての時間配分はIS学園でのやり方に合わせ余程サボるような事が無ければ問題ありませんわ」
「そうね。変に考えてやるよりも、其方の方が私達にとっては動き易いわね。後は状況に合わせて変えていきましょう」
流石は首席だったセシリア。
自由とは言え1日の時間配分をIS学園での時間配分に合わせる形を提案。代表候補生ともなれば何処に時間を割いて調整するべきか分かっている。
「差し当たって当面の問題は専用機の使用許可ですわ。仮にも監獄と雖もIS関連のある学院です。一切使用不可と言う訳では無い筈ですわ」
「……そうだな。そう言えば最初の説明の時、学院長と議長の許可が無ければ使えないと言っていた気がするな」
「学院長、ねぇ……。そう簡単に会える者かしら?」
五稜監獄学院の学院長。普通、学園等の長にはそう簡単には会えないだろう。かと言って此処は監獄と言う側面もある。ほぼ自由とは言えど、其処まで許されているのかは分からない。
「……となれば『議長』と言う方になりますわね」
議長とはどう言う役職なのか? 会議での長と言うイメージが浮かぶ事から生徒会と言った組織体の1人かも知れない。
「誰なのかは知らないけど、取り敢えず動かなきゃ話にならないわ。当面の目標はその『議長』って奴を探しましょう。
説明された限り、この五稜監獄学院は生徒達が自らの手で運営維持しているんでしょ? だったらその議長って奴も生徒かも知れないわ」
専用機持ち達の方針は決まった。当面は専用機の使用許可。出来れば使用可能な場所も知りたい所だ。流石に校舎内で使う訳には行かないだろうからだ。
「……でも、この囚人服ってさ。あの『臨島学校』の時に見たアイツらの服とほぼ一緒だよな?」
「あ、あー……。言われてみれば確かにそうだったわね。超展開の連続で忘れていたわ」
「彼女達もこの五稜監獄学院の生徒達だったんですのね」
「となれば、何人か見知った顔が居るな。確か……リィエルだったか? 彼女を探して情報を聞き出そう」
囚人服の構造が『臨島学校』の時に見た囚人服を纏った者達とほぼ同じ。となれば元を辿れば此処の関係者と考えるのが自然。他にこんな服装をしている組織体があるとは思えないからだ。
「…………」
「一夏。どうした?」
沈黙して考える一夏を見て箒は気になって声を掛ける。一夏の脳裏には1人、かなり核心に近い人物の姿が浮かんでいた。
「……あの時に男性が1人居たよな? 見た感じ、中心人物だと思うんだけどよ」
「む? 確かに居たのは覚えているが……私は話をした事は無いぞ?」
「一夏さん。知己の間柄ですの?」
親しいと言うにはかなり微妙な関係だ。しかし、全くの初対面と言う訳では無い。その、状況が悪かっただけと言う意味で。
「あー、うん。何と言うか、話はした事はある程度の関係だな……。多分、何か知っている筈だ」
「他に私達が知ってそうな奴はあの精神年齢低そうなリィエルしか居ないしね……。取り敢えず、ソイツを探しましょうか」
「ええ……アテが外れたのならばその時にまた考えましょう」
一夏達は学院内の情報を集める為、そして専用機の使用許可を得る為にその男性を探す事から始めた。