※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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五稜監獄学院 Ⅶ

 

 

「銃声⁉︎」

 

 銃声が収監棟に響き渡った事をセシリア達は気付いた。既に大食堂の一件から五稜監獄学院側は銃撃戦程度は止めない事を宣言している。

 

「こんな所でもやるのか⁉︎」

 

「……収監棟でも銃撃戦をやられてしまうと素直に寝る事も出来ませんわッ⁉︎」

 

 更にもう1発、銃声が鳴り響きIS学園側の囚徒達はその銃声を聞いて悲鳴をあげてその場から逃げようと右往左往し始める。IS学園の生徒とは言えISと言う存在が無ければ一般人程度の存在でしか無い。

 女尊男卑で自尊心が高まろうが強くなろうが……銃弾1発で死ぬ。その事実に変わりが無い事を彼女達は自らの行動で示していた。

 

「ちょっと待って……今、2階から銃声が聞こえたわよね⁉︎ さっき一夏は2階に向かった気がするんだけど⁉︎」

 

「何ッ⁉︎」

 

「そ、それはいけませんわッ‼︎」

 

 鈴音の言葉に箒とセシリアは別々の意味で驚愕した。箒は幼馴染が故に、セシリアは代表候補生かつ専用機持ちと言う立場故の驚愕であった。

 千冬から専用機持ちに対して『有事の際は織斑 一夏の護衛をしろ』と指示されていた。余程の事が無ければ……と思われていたのだが、大前提としてISが使えない状況下では話が変わってくる。今の一夏を守るモノは何も無い。それこそ銃弾1発で致命傷に至りかねない。

 もし、死亡した場合は軍法会議モノに発展するのは確実だった。

 

「ええい、一夏ッ‼︎」

 

「お、お待ちになって箒さん‼︎」

 

 箒は居ても立っても居られず中階へと続く階段へと走り出し、セシリアと鈴音もその後を追って階段へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

◯

 

 

 

 

 

 

 絶対的な嫌悪を持って用途とは異なる器機が眼前に迫り来る。

 

「う、うわぁぁ⁉︎」

 

 一瞬で凍り付いた頭。

 一夏は半ば反射でその場から後方へと跳んで躱した。だが、着地に失敗して尻餅を付いた。

 心無しか心臓がバクバク動いているのを感じる、ドクンドクンと言う音が耳の鼓膜を叩いている感触、ああ……生きていると言う感覚がした。

 

「へぇ、躱せたんだ。意外だな」

 

 床に食い込んだノコギリの鋒を引き抜いて頭上から見下ろすシャルロットの顔は、およそ一夏が今までで見た事のある表情では無かった。

 IS学園では1度も見た事が無い、そんな表情を浮かべて居た。

 

「しゃ、シャル……何で……?」

 

「何で? 馬鹿じゃねぇの。殺したくなる奴が1人や2人、現れるのは当たり前じゃないか」

 

 嘲りを含んだ声音でシャルロットは吐き捨てる。

 

 

「誰も殺せない(・・・・・・)。誰も殺す事が出来ない奴が、誰かを守る(・・・・・)なんて世迷言、吐くんじゃねぇよ……マセガキ」

 

 

 シャルロットは今度は銃口を向け、3度目の発砲を敢行し、放たれた銃弾は一夏の右脚に命中した。焼ける様な熱量と痛みが全身へ瞬時に駆け巡った。

 

「ッが、ああッ⁉︎」

 

 生まれて初めて銃で撃たれた。シールドバリアも絶対防御も存在しない中で。

 中学生の頃に誘拐されこそはしたが、こんな形で撃たれた経験は無かった。

 

「「「一夏(さん)ッ‼︎」」」

 

 その時、一夏の後方から3人の囚徒が駆け足で迫って来るのが見えた。シャルロットは思わず舌打ちをした。当然、来ているかと言わんばかりに口元が歪んだ。

 

「アイツって、確か……シャルル・デュノア……⁉︎」

 

「フランスに帰国したと聞いて居ましたけど、何故……?」

 

 どうやら自分が男装して居た情報のまま、帰国させられたと表社会では公表されていた様だ。……もう知った事では無いのだが。

 

「……箒⁉︎ だ、ダメだ‼︎ 来るんじゃない‼︎」

 

「と言うかこの状況は何⁉︎ 何でデュノアが此処に居て、アンタは襲われてんのよ⁉︎ と言うか、期待はしてなかったけど、他の連中は物見の様に眺めているし‼︎」

 

 収監棟にはIS学園の生徒達以外の五稜監獄学院側の囚徒達も居るが、シャルロットと一夏の対立を止める事はせず、静観や見物をしていた。

 

「……何って、ボクが彼を半殺しにしようとしているだけだけど? 君達には興味が無いから、すっこんでな。余計な肉が着くと落としにくいからさ」

 

 シャルロットは隠す気は無く目的を普通に答えた。最も誰がどう見てもそうとしか見えないのだが。

 

「そんな物騒なモノを持っていて信じられますかッ‼︎」

 

「……何か話に聞いて居た人物像と全然違うんだけど、それがアンタの本性って奴?」

 

「い、一夏……撃たれたのか⁉︎ だが、何だ?この白い綿みたいなのは……?」

 

「わ、分からねぇよ……‼︎ セシリア、鈴音‼︎ シャルはあんな人格じゃねぇよ‼︎」

 

「だったら目の前のアイツは誰なのって話になるんだけど⁉︎」

 

 セシリアと鈴音は一夏を庇うように前へ出る。その距離、凡そ30m程。銃弾を知覚して躱す距離としてはまるで足りない。ISのハイパーセンサーを持ってしても躱し切れない。相手は拳銃とノコギリと言うアンバランスな組み合わせの武器。しかし、現時点において殺傷能力としては極上だ。

 

 箒は尻餅を付いている一夏に駆け寄り、一夏が脚を撃たれた事に気付く。だが、その撃たれた箇所には赤い血では無く白いモコモコした様な綿が溢れて来ているのを見て疑問符を浮かべている。

 

「……代表候補生は大変だな。時間切れ(・・・・)まで、彼を守らないと行けないなんて……」

 

「アンタ、それはどう言う意味よ?」

 

 シャルロットは自嘲気味に言う。

 

「……織斑はボクと一緒の状況(・・・・・)になっているなんて後から聞いた時、滑稽だったよ。道化か、傷の舐め合いかって、馬鹿にされた気分だ」

 

「……は?」

 

 その言葉に一夏は理解出来なかった。一緒の状況……それはどう言う意味なのか。

 

「分からないか。ま、そうだろうねぇ、君は何も知らないままの方が幸せ(・・)で、好都合だからさ」

 

 シャルロットはノコギリを持った左腕を上げてその鋒を一夏へと向ける。

 

「2人も彼を後生大事に抱えても無意味だ。だから退きなよ。別に殺しはしないよ、変態への折檻だか」

 

 その時、シャルロットの腕が飛んだ(・・・)。

 

「「「ッ⁉︎」」」

 

 シャルロットと一夏達を遮る形で壁が落ちて(・・・)来たのだ。壁と言うには鉄骨や鉄筋が剥き出して、壁の一部をひっぺ剥がして持って来たかの様な形だった。

 その壁によってノコギリを持って居た左腕が肘から先が切断され、落下の勢いと風圧によってノコギリ事、セシリアと鈴音の眼前に放物線を描いて飛んで来て床に突き刺さる。

 ノコギリを持って居た肘から先の左腕もその近くに落ちた。

 

「何、コレ……どうなってんのよ?」

 

「……綿、みたいですわね」

 

 歪な形で抉り斬られた左腕の断面図。その断面図からは真っ赤な血が溢れ出てはいなかった。代わりに白いモコモコの綿みたいなモノが溢れていた。まるで、ぬいぐるみを切り裂いて中身の綿が露出したかの様に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お遊びは其処までだ。ガキンチョ共」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、男性の声が頭上から降りて来た。

 

 

 

 

逃げたデザートは?(同票以下略)

  • インドゥルジェンス
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