※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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Astral Call Ⅲ

 

 

 宵咲 和奏と織斑 一夏との戦争と言う名の試合(五稜監獄学院での戦闘行為は試合とか模擬戦と言う呼び名ではなく、内乱や戦争と呼ばれている)が始まる。

 簪と神楽の2人も、その様子を拝見する為に決闘場所となる大浴場に訪れていた。

 

「世界広しと言えど、大浴場で殴り合うのは此処くらいでしょうね」

 

「……そして大浴場で屋台を開いているのも、此処だけだろうね」

 

 簪と神楽が大浴場に訪れる頃には既に大浴場は別の意味で混雑していた。多数の囚徒達が詰め掛けており、今か今かと待ち侘びている。

 視線を動かせばメイド服を纏った囚徒達が屋台を開いて軽食等を販売している光景が見える。今回の件を受けてメイド達は全員、こっちに来たらしく、その所為で大食堂は臨時休業となっていた。

 

「賭けや賭けやで〜‼︎ CP使ってのギャンブルや〜‼︎ 賭けるんやったら早めにせんと締め切っで〜‼︎」

 

 更には堂々と勝敗に関する賭博まで行われる始末。もう何でもアリな気がして来た。

 

「何と言うか……皆、騒ぎたいのかな」

 

 IS学園の生徒(特に危機感の無い1年生)もお気楽で騒ぎたい連中が多いのだが、此方も此方で中々である。

 

「否定は出来ませんわね……。タガが外れた方達と言うのは、何を仕出かすか分かりませんもの」

 

 そして、激突の刻が来た。最初に和奏が浴槽の水面を歩いてほぼ中央にて止まる。その様子を見て学園側の囚徒達は驚いている様子が見えた。

 

「……アレ、多分だけどシールドバリアの応用だよね?」

 

「おや、簪さん。良くお分かりで」

 

「うん……」

 

——何となく……レーキュさんのやり方を見た事があるから……そんな気がしただけ。……ただ、どうやっているのかまでは分からないけど。

 

 簪はかつて自身の専用機を組み立てる際にレーキュを頼った。その結果、信じ難い光景を目の当たりにした。だからこそ、直感でその線が強いのかなと言う印象を抱いた。

 

 両者共に煽り合い、その挑発を受けて激昂した一夏が和奏に斬り掛かるも指2本で受け止められた。

 

「同等以上の速度域に身を置かねば出来ぬ所業でしょうね……」

 

「……うん」

 

——簡単に受け止めると言う事は目で追えると言う事……あの人、銃弾も簡単に躱せるんじゃないかな?

 

 そして放り投げられてそそくさと取りに行く光景を晒す一夏。普通ならばその隙を逃さずに追撃されても文句は言えない醜態を晒している。

 

 

「ほら……隙を見せてやる。遠慮せずに掛かって来るが良い……‼︎」

 

 態勢を立て直した一夏に向けて和奏は悠々と煽っている。何も言わずに斬り掛かって来いと言わんばかりの態度だ。正に見え見えの挑発。

 

「う、五月蝿ェェェェェェェェェェェェ‼︎‼︎ そんなに人を煽って楽しいかァァァァァァァァァァァァ‼︎‼︎」

 

 咆哮を上げ、眩い光に包まれた雪片弐型を振り上げながら突撃する一夏。

 

「喰らえェェェェェェェェ‼︎‼︎」

 

 咆哮と共に振り下ろされた零落白夜の一撃は受け止めようとした和奏の右腕を肘から先を切断(・・)する。

 

「おッ……とっ‼︎」

 

 その瞬間、和奏は後方へと跳び退いて距離を取って水面を僅かに滑りながら距離を取った。

 衝撃で切断された右腕は『防腐処理』故に切断面から白いモコモコとした綿を蠢かせながら放物線を描いて飛んで行き、学園側の囚徒達が居る浴槽の縁近くに落下し、水没した。

 

「な……ッ⁉︎」

 

 

「「「き、キャァァァぁアアアアアア‼︎⁉︎」」」

 

 その様子を見て人間の腕が斬られた事実を前に学園側の囚徒達の悲鳴が上がった。目の前で人体切断されては悲鳴を上げるのも無理は無いだろう。

 

「あの人、絶対にワザと斬らせた……」

 

「……ですわね」

 

 簪も『防腐処理』と言う肉体改造を受けているし、神楽も知っている。腕が斬られようが腹が裂かれようが余程の事が無い限り修復出来る。腕を斬り落とされても直ぐにくっ付ける事が出来る。だから、和奏は平然と『駒』に使ったのだ。

 男性操縦者とは言うが元は一般人同然。故にハリボテの覚悟を破壊し一夏の動揺に揺さぶりを掛ける為に。

 

 そして、流れる様に和奏は一夏の精神に言葉の刃を次々と突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

◯

 

 

 

 

 

 

「止めろォォ‼︎‼︎」

 

 

 和奏の言葉に一夏は否定の叫びを上げた。その顔は興奮故か紅潮していた。

 

「何故、否定する? 後にも先にもそう言う単一仕様能力である事に変わりは無いだろう?」

 

「違う‼︎ 零落白夜はそんな……そんな、モノじゃない‼︎ コレは……皆を守る能力(チカラ)だ‼︎ 」

 

 一夏は捲し立てる様に否定する。人を殺す能力では無く皆を守る能力だと主張した。

 

——まぁ、相手を殺した方が結果的に守れるっちゃ守れるがな。否定はしない。

 

「君の姉君はその能力で世界の頂点に立った女だ。つまる所、敵対者を軒並み斬り捨てたと言う事だ。その能力の都合上、相手のIS操縦者生命を断ち切ったんじゃないのか?」

 

「黙れッ‼︎ 千冬姉はそんな人じゃねぇよ‼︎ 勝手な事を吐かすんじゃねぇ‼︎」

 

 更には自身の姉に関しても言及され一夏は更に烈火の如く吼える。一夏は『白式』を雪片弐型を零落白夜を得て、自分も皆を守れると確信した。だが……目の前の男はその根幹を打ち崩しに掛かっている。

 今の一夏から見て目の前の和奏は、全く違う存在に見えていた。憎しみ? 嫌悪? 或いは……恐怖?

 

「……勝手な事。ああ、客観的な意見に過ぎないだろう。当人の居ない所での評価としては失礼だったな。いや、すまないね」

 

 肩を竦めて謝罪する和奏。しかし、一夏から見れば心にも無い謝罪にしか見えない。

 虚言、戯言、妄言の数々……。もはや、彼の言葉には何処に真実が含まれているのか分からなくなった。何なら全ての発言が嘘として聞こえて来る。

 

「お前の言葉はもう、ウンザリだ……‼︎ やっぱり、お前の所為でシャルが可笑しくなったんだ‼︎ 俺は……お前を絶対に許さねぇ‼︎‼︎‼︎」

 

 一夏の宣戦布告。

 絶対に相容れないと言う意思表示。初対面、最初こそは友人になれると思っていた……しかし、蓋を開ければとんでもない外道だと知った以上、もはや仲良くなれる気はしなかった。

 

「そうか。まぁ、それも良いだろう。誰かを憎む事なんて生きていれば大なり小なりある事だからな……それよりも」

 

「あぁ⁉︎」

 

「もう直ぐ、3分が経過する。そろそろ、俺も反撃と行こうじゃないか……‼︎」

 

 和奏が宣言した3分がまもなく経過する。和奏はそれまでに倒して見せろと言った。しかし、3分が経過しようと言うのに倒せていない。

 

——流石にながら作業になると、失敗る可能性があったしな。余計な傷を作る訳には行かない。

 

「やっと、やる気になったって言うのかよ⁉︎ 右腕が無くなっているのに、まだやる気かッ⁉︎」

 

 煽られ過ぎた所為かアドレナリンが過剰に出ている所為か、腕を斬ったと言う事実が抜け落ちている。

 

「なんなら口先だけで倒せそうな気がして来たよ。男性操縦者」

 

「あぁ⁉︎」

 

「一夏ァァァァ‼︎ 宵咲の口車に乗るなァ‼︎ どう言う理屈かは知らんがあの腕は完治する‼︎ 気に病むな‼︎」

 

 その時、浴槽の縁近くに前方で観戦している箒の声が聞こえて来る。先程から一夏は和奏の言動に振り回されている気がしたのだろう。

 

「箒⁉︎ あ、ああ……そ、そうだな……‼︎」

 

 箒の声援を受けて一夏は我に返り冷静になった。確かに和奏の挑発や煽りに乗せられていた気がする。

 

「……仲間の声援ね。いやぁ、まるで主人公だな。コレがお決まりの展開ならば此処でパワーアップなり覚醒でもして、敵に打ち勝つって流れかい?」

 

——主人公のピンチに仲間の救援……。この手の場合、ひょっこり助けが入るもんだしな。

 

「……もう、テメェの口車には乗らねぇ」

 

 一夏は雪片弐型を両手で握り締めて構え直す。腕が斬れて飛んだ時、一瞬頭が真っ白になった。もし間違えれば相手を殺してしまっていたかも知れないと言う事実が脳裏に過ぎった。

 しかし、箒が言うには理屈は知らないが腕は切り落とされても完治するらしい。箒の言葉だから信じられる。だから、正気に戻れた。

 

「……まだまだネタはあるが、お前さんがそう言うならばお蔵入りとしよう」

 

——お前さんが『わざわざ守る意味』、とかな。

 

 和奏は右腕をヒラヒラと動かして煽るネタはもう仕舞うと言った。しかし、一夏はもう相手の言葉に耳を貸さないと決めていた。その発言、更には行動自体が自分を欺く虚構の内容だと思わざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「顕現せよ、『フォーマルハウト』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その刹那。一夏は自身の背後、非固定スラスターユニットが爆ぜ其の儘、前のめりに浴槽へと叩き付けられた。

 

 

 

 

 

賭けるなら?【茶番】

  • 両腕
  • 両脚
  • 両手両脚
  • 髪の毛
  • 全部
  • 損壊無し
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