和奏が何時も通りのワーカーホリック状況に陥り掛けていたその頃……とある収監棟。
「簪さん。此処の独房だったのですね」
時間帯は既に夜の時間帯で既に時刻は夜の10時頃を指している頃合だ。
日中型の囚徒達は夕食も入浴を済ませて収監棟へと戻って来ていおり、既に何人かは就眠し逆に夜型の囚徒達は寝坊気味に起き始めて活動を始める事となる中、簪に割り当てられた独房の前に客人が訪れていた。
「うん? 神楽……? どうしたの、こんな時間帯に」
「こんな時間帯、だからですわ。私達にとってIS学園のスケジュールは然程、意味はありませんわよ」
——そう言えば神楽は『そろそろIS学園に在籍するのも無用な頃合ですわ』と言っていた気がする……。私とは別の理由で中退か転校するつもりかも知れない。
当人の進退に関しては首は突っ込まない。本人の自由意志に委ねられるからだ。神楽がどう言う思惑を抱いているのかは分からないが、本人が決めている以上、野暮だろう。
「……それで、どうしたの?」
「その前に簪さんは商業棟や流浪商人の囚徒の1人である乙音さんをご利用した事はありますか?」
格子の外で神楽はその様な質問を投げてきた。乙音と言う囚徒には会った事があった。
「あーうん、一応……乙音って人には会った事はあるかな」
「商業棟は日中と夜間では様変わりするのですよ。折角ですので、一度見に行きませんか?」
簪は少し考えた。
明日の日中は日中で特にやりたい事は思いつかない。強いて言えばIS学園の同じクラスの囚徒に絡まれないかの不安点くらいか。それに、五稜監獄学院では時間の使い方は完全に囚徒に委ねられている。寝坊しようが何だろうが咎められる事は無い。
「……うん。行こう」
簪は神楽の誘いに同意し、2人で夜中の商業棟へと繰り出すのだった。
商業棟。
大食堂の下に位置している。昼間は昼間で盛況と化すがその昼間とら違い人が少ない為か静かな空気に包まれている。それでも数人の囚徒達とすれ違う程の人通りは存在していた。
「夜になると夜型の流浪商人の囚徒が現れて商売するらしいのですわ。他にも夜間しか開店しない店も存在するそうですわね」
「……例えば?」
神楽が何処でそんな情報を得て来たのかは知らないが、恐らくは学院の纏め役から個人的に聞いたのだろうと考えて続きを促した。
「昼間は家財道具が販売されていますが……夜間では、SM関係の道具が売られていますわ」
「どストレートにハッキリ言うんだね……」
「隠しても仕方ありませんので」
——まぁ『ストラトス・デザイア』の大元が
戦闘狂で変態と来たらいよいよ末期だ。
全ての概念には裏側があるとは言うが……此処までストレートに言われると別の意味で引く。
「取り敢えず、論より証拠と言う事で行きましょうか」
商業棟の大廊下を進み、細い横道へと入っていく。暗い為かアングラで違法な場所の様な雰囲気が漂っている気がする。
「フフ、心配なさらず。流石に夜間とは言え表には陳列するのはマズいとは考えますわ」
「……そ、そうかも知れないけれど」
変な所で律儀だ。
もう、五稜監獄学院が見事な裏社会の世界であると言うのは気付いている。やはり、性癖思考がノーマルなIS学園の囚徒達が居る為に気を遣っているのかも知れない。
横道を進むと照明がある場所が見えて来た。路地裏にポツンと佇む知る人ぞ知る店……みたいな雰囲気があった。
「此処ですわ。フェイスクラッチやボディーハーネスも置いてあるSM関係のお店ですわ」
「良く見つけるよね……」
教えられなければ分からない場所にあった。そう言う意味では有り難かったかも知れない。
早速、店内に入ると神楽の言う通り、ゴムに近いに匂いが鼻腔を擽り多種多様のSMや拘束に使う道具が所狭しと並べられていた。
——……安い物だと1,000CPからみたい。
「ふふ、貞操帯もありますわよ。簪さん」
早速、物色する神楽は簪の目の前にステンレス製の貞操帯を見せて来た。
「排泄管理されるのも悪くありませんわ。……そうなるとご主人様役を誰かに担って貰う必要がありますわね」
「……あ、あはは」
貞操帯を戻すと別の方へと視線を向ける。其処にはボディーハーネスとされるベルト状の下着が陳列されている。様々な種類が用意されているらしい。
「秘所もベルトで隠すタイプの方が興奮しますわ。食い込み具合で、常に刺激を与えられる……ボディーハーネスならば囚人服の下に着れますわね」
「う、うん。確かに……」
——身体中、ベルト巻きだらけ……圧迫感としては悪くないかも。でも、値段が……。
安い物でも8,000CPを超えている。手持ちだと少し厳しいか。
「こっちはギャグ関係みたい……ボールからペニスギャグ、他にも棒を噛ませるタイプもあるし、リング系や蓋付きの奴もある……」
「長時間、嵌められる事になりますから負担が少ない形状を選びたいですわね」
口枷関係を見て回り次の陳列棚に視線を向ける。其処にはフェイスクラッチと呼ばれるまた別の拘束具が並べられていた。
「此方はフェイスクラッチですわね。ボールギャグよりも拘束感が強いモノです」
「……目隠しと合わせると効果的、だったよね」
「……コレはマスク?」
「全頭マスクと呼ばれるモノですわ。口と鼻以外を覆い尽くし個性を奪う拘束道具ですわ。髪色も顔も隠してしまうので、被虐感を感じますわね」
——戦闘員にされたら、大概が全頭マスクで無個性化される……と言う設定が多いよね
更に隣は小道具関係が並んでいた。目隠しや電気シートやローター、バイブや電マと言ったSM関係ではお馴染みの小道具達が並んでいる。
「神楽、コレは?」
簪は陳列棚に並べれられた数字が書かれた小さなプラスチック板を手に取って訊ねる。
「コレは標記番号ですわね。耳に付ける番号札で、名前ではなく番号で呼び分ける為の標記ですわ。豚や牛と言った家畜扱いされる為の道具ですよ」
——家畜……。乳牛みたいに搾乳機の他にコレも付けられたら本当に搾乳家畜にされるんだ……♡
「成程……」
一頻り見て回って会計の場所近くに行くと、息を呑む様な光景が見えた。
「あら?」
「……っ」
1人の囚徒が今、正に会計を済ませた瞬間だった。長い銀髪で横顔でもかなり整った顔立ちで、簪が見ても綺麗や可愛いと言っても良い顔立ちの人物だった。灰色のローブを羽織り黒革ベルトだらけの囚人服姿でも絵になる程、着こなしているのが分かってしまう。
「リデアちゃん。見る目あるぅ〜。それなら少年のハートもガチって行けるよ〜、うんうん、きっと行ける‼︎」
「……みやびさん。揶揄わないで」
店員の人にジト目を向けるリデア。まぁ、彼女の言っている事は間違ってはないが……。
「ワーカーホリック気味で干涸びているからねぇ。あ〜そうそう、少年が
「……和奏、何やらかしたの?」
「さ〜にゃ〜? だから、チャンスだと思うよ〜ん?」
「ん、ありがと。すぐにやる」
「だっはっはっ。別に良いよ〜、さっさと観念して据え膳平らげてハーレムしろって話だよ。ボケェ〜って言っといて」
店員とそのリデアと言う人はそんな会話をした後、リデアは小走り気味で店から去っていった。
「……アレ、誰? 凄く目立ちそうな人」
髪色は兎も角(五稜監獄学院の囚徒は白系統の髪色の人が多い気がするから)、その身に纏っているオーラと言うか雰囲気が目立ってて群衆に紛れても目立ちそうな人だった。
「あんれ〜? 他にもお客さんが居たんだって、なーんだ、神楽ちゃんじゃ〜ん。いらっしゃ〜い」
代わりに店員と思わしき灰色の髪の囚徒が闊達な態度で簪達の方に視線を向けて声を掛けて来た。