「お邪魔しますわね、簪さん」
「ッ⁉︎」
その言葉が漏れた瞬間、後方から声が掛けられた。整備室の入り口には制服姿の神楽が立っていた。
「ふふ、そんな顔なさらないで下さいまし」
「ど、如何して此処が分かったの?」
「人伝に聞きまして、簪さんは夜中は此方に出向いている、と」
神楽は4組の生徒辺りに簪は何処に居るのか尋ねたのだろう。簪よりも神楽は社交的に映る為に違和感は特に無い。
「コレが貴方の専用機、ですのね」
「…………まだ、未完成」
機体自体、半分も出来上がって居ないし武装も手付かず、稼働データは言わずもがな。
「ええ、理由の諸々に関しては存じておりますので改めてのご説明はお構いなく。しかし、独力でシステム面、武装の締結云々を熟すとはお見事ですわ。私、そう言う方面には疎くて研究開発科に丸投げ状態でしたので」
「そ、そう? 余り上手く行って居ないけど……」
神楽としては簪の努力は否定せず見事だと称賛する。IS操縦者としてISへの理解は必要不可欠ではあるが、内部OS等の理解までとなれば神楽よりも簪の方が軍配が上がるだろう。
「ですが正直に申し上げて1人では流石に限界があるかと」
「…………」
神楽にバッサリそう言い切られてしまう。確かにそうかも知れない。でも、簪自身に譲れない思いがあるのだ。
「姉さんは、独りでISを、組み上げた。だから、私も、独りで、やり遂げないと……」
「……お姉さん? ああ、更織 楯無さんの事ですね。そんな話、初耳ですわね」
「………でも……何かをやり遂げても、あの人の妹だから当然、失敗すれば、あの人の妹の癖に……って言われる。誰も彼もが姉さんを基準にする」
姉妹同士のすれ違い。なまじ同じ世界に居るが故に起こる軋轢であった。コレが違う世界ならばこの様な鬱屈とした感情にはならなかっただろうに。
「成程、姉が優秀だから妹にもその様な実績を求める様な状態ですのね」
「…………」
「仮に、完成させたとして『妹だから当然』と言われるのがオチでは無くて?」
「そ、それは……‼︎」
図星であった。そして、それは予想出来た事でもあった。姉である楯無は組み上げる事に成功しており、その後ろを簪が辿っても当然の帰路として認識されるのが席の山であった。
「な、なら……どうすれば、良いの?」
「貴方だから使えるカードがあるじゃないですか? そのカードは貴方のお姉さんにはありませんわ」
「え……?」
姉妹だから同じ道を辿る必要はない。そんなルール、誰が設けたのだろうか? お互い別々の道を歩いても良いではないか。見える世界、視界は違うのだから。
「私と言う同じ性癖思考の同志が居るじゃありませんか。それに『ストラトス・デザイア』は利用者のメンタルケアも行なって居ますのよ。性癖だけでなく悩みも相談に乗ってくれますわ」
「そ、そんなサービスまで?」
「だからこそ、ですわ。被虐思考なんて今時の世論では到底、口にできぬ思想。そんな悩みだからこそ、あの場所を利用した筈では?」
「…………」
「貴方の専用機の問題も無視は出来ませんが、今此処であれこれ考えても頭打ちでしょう。
今日はこの程度にして、私達の性癖のお話に参りましょうか」
「う、うん……‼︎」
神楽の言葉は否定出来ない。確かに今迄は何とか1人でやって来たが、徐々に限界を感じ始めてもいた。それに何故か、素直に信じられた。
そして、2人の密かで背徳的な趣味に興じる事にした。
簪は神楽に連れられて神楽の寮部屋に招かれていた。相部屋の相手はまだ寮部屋に戻って来て居ないらしい。
「お、お邪魔します……」
「楽にして構いませんわよ。特段、何かある訳ではありませんし」
内装は他の寮部屋共通。IS学園らしく機能美を追求したデザインであった。
「さてと、彼処は基本的に予約制ですからね。簪さんも既に予約入れました?」
「う、ううん。まだ……」
——……あ、あの時は時間になる前にイキ過ぎて気を失って居たんだっけ。出来れば最後までやりたかったなぁ。
簪は既に思考が切り替わっており、裏の本性である被虐思考になっていた。先程までの現実の『IS云々』の事は一旦、忘れていた。嫌な事は極力忘れたいと言う一種の防衛反応は精神の維持に役立つ。
「……ふふ、あの施設はまだまだこんなモノではありませんわ。それで間近で何かしら予定とかありますか?」
「う、ううん。特に」
「なら、同じ日付にご一緒しません? 其方の方が手間が幾つか省けますので」
「良いの?」
「はい。調教時は基本的に衛生面の観点から同室で受ける事は出来ませんが同日予約は問題ありませんわ。と言うよりも簪さんは誰かに見られるのはお控えしたいでしょう?」
流石に展示スペース入りはまだ勇気が欲しい。と言うか、遠慮したいのが本音。
「う、うん……♡」
——知らない、人に、見られるのは、ちょっと、怖い。ネームを使って、でも、怖い。
「……それと、次の調教は何か決まっています?」
「ま、まだ1回しか行っていないから……何があるか、まだ分からないよ……」
そう答えた時、神楽は含み笑いをした。何か妙案があるのだろう。
「ならば『電脳空間フロア』へご一緒しませんか? 何でもアップデートが行われた様なのです」
——『電脳空間フロア』……。
ストレートに言ってしまえば拘束系ゲーム空間を体験すると言うIS技術を無駄に活用した変態共の巣窟。
仮想現実空間とも呼べ、構造を変更して全く違うシチュエーションを行う事も可能となっている。基本的に拘束フロアや機械姦フロアでは物理的に出来ない内容が中心だが、有名所のエロゲームの様に電脳空間をエロトラップ満載ダンジョン構造にして拘束等のエロトラップを潜り抜けたり、襲い掛かる敵役モンスターに捕獲されたり虜囚にされたりと言った現実ではあり得ないシチュエーションをリアルに行える……。
——……『機械姦フロア』と並んで、物理的に出来ない未知の世界。確かに、興味が出て来た……‼︎
「う、うん。良いかも……‼︎」
その時、簪の脳内に様々な妄想が浮かんだ。丸呑みにされて肉壁に囚われ触手に弄ばれたり、エロトラップの魔法陣に淫紋を施されたり、エッチな衣装を身に纏ってモンスターにくっころみたいな形で捕縛されたり……想像力は無限大とは良く言ったモノである。
「フフ、ご興味を抱いてくれた様ですわね。電脳空間フロアは一種の娯楽、ゲーム空間。
コンテンツによっては複数人で挑戦する内容もありますので、より楽しめるかと。して、ゲームはお得意ですか?」
「う、うん。大丈夫……」
「では、日付は何時頃に致しましょう? 場合によっては日を跨ぐ必要もありますわね」
「そんなに時間が経つの?」
「いえ、場合によっては其の儘『拘束フロア』や『機械姦フロア』にハシゴするかも知れません。その場合のその辺の辻褄合わせは向こう側が全てやってくれますのでご心配なく。学業の方も疎かには出来ませんが、土日を挟む形が1番良いかも知れませんわね」
「じゃ、じゃあ、そうしよう。金曜日の夕方から土日……で、どうかな?」
「ええ、私も異論はありませんわ。ふふふ、今からでも楽しみですわね。簪さんの痴態や私のあられもない姿を見せ合うのは……その時、お互いに遠慮なく喘ぎましょうね?」
「う……」
蟲惑的な笑みを浮かべる神楽。大和撫子で淑やかな印象だが、時折爆弾発言をかまして来る。普段は清楚なので余計にインパクトが出て来る。
こうして2人の裏面の予定は決まるのであった……。
エロトラップ系ってやっぱりマイナーなのかねぇ。余り見かけないし。
気になる服装と言えば?
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エプロンドレス
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レオタードに網タイツ
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白衣に緋袴