一方……その頃。
虚が調べた情報を頼りに楯無はある場所に到着した。
「やっと着いたわ……。此処、ね。こんな所にあるとはねぇ」
しかし、距離だ。夜に行動を開始したとしてもそんな直ぐに辿り着ける距離には無かった。ISを使えばマッハ単位で移動出来るのだが……アラスカ条約の存在故に、国内での移動にISの飛行は使えないのだ。夜中に飛べば騒音なり、飛行物体なり目撃された後、翌日以降に山の様な抗議文の対応を迫られる事になる。
「……木を隠すなら森の中とは言うけれど、こんな隠し方ってあるかしら?」
地図に示された場所。もはや笑うしか無い程の山の中だった。
「ふぅ、此処まで来るのに結構な時間を使っちゃったわね。こんなど田舎に等しいからバスもタクシーも無いしね……」
女尊男卑による社会影響は様々な業界に甚大な影響を与えており、良くも悪くも影響を及ぼしている。その内の1つが交通の便が相対的に悪化したと言う事だ。
都心部に行く程、女尊男卑の影響が強くなるのは言うまでもない。となれば職種に偏りが生じる事となる。
女性の活躍が難しい職種となると尚更、女尊男卑の影響で廃絶に追い遣られる事となった。
バスやタクシー業界も女尊男卑により男性職員が追放同然に失職においやられ、深刻な人手不足に陥り急速に事業縮小を余儀無くされてしまった。つまり……交通の便が全国的に悪くなっていた事を意味している。
楯無は此処に来るまでに電車を乗り継ぎ、バスに乗ろうとするも、利用しようとしたバスの会社が経営破綻して先月で倒産していた。ならば代わりのタクシーを拾おうとするも、タクシー業界も縮小傾向にあって拾えなかった。
つまり最寄りの駅からほぼ徒歩で向かう事となった。1日では辿り着けず途中でビジネスホテル等を利用して数日を掛けて漸くこの場所に辿り着いた。
山の中は舗装されてもいない。そもそも地元からは自殺の名所などと揶揄されるくらい鬱蒼な樹海が広がっている場所だからだ。
森の外には『行方不明多数‼︎』だの『引き返せ‼︎』だの『命を捨てるな‼︎』と言った今の時代では皮肉であろう警告文が書かれ、風雨に晒されて彼方此方が錆び付いた看板が乱立していた。
しかし、それは何も対策手段が無い一般人に対しての言葉だろう。楯無は一般人では無く暗部の長でIS操縦者だ。ISのハイパーセンサーの存在があり、現在地の特定は容易い。
そして、その気になればこの森林地帯を焼き払う事だって出来る。……タダでさえ女尊男卑により自然破壊が促進されている為に、進んでの環境破壊は気が進まないが。
「……まさか地下に存在する学院だなんてね」
地図が示した場所には小さな祠と思わしき和風の建物が立っていた。此処が学院とは到底思えず、詳しく調べてみると床の一部が外れ、地下へと続く梯子を発見した。
——建物を建てるより地下を掘る方が安上がりって聞くしね……。
地下区画を有する学校は珍しいだろう。IS学園にも生徒達には公表していないが地下区画が存在している。だが、校舎全体が地下に存在する学校は尚、珍しいと言える。
「……」
——いよいよ、きな臭い臭いが強くなって来たわね。
梯子に脚を掛けてゆっくりと降りていく。秒か分か将又、時間かと思うくらいの時が流れるかのような錯覚を覚えるくらい深い梯子を降りていく。深さは何mか考えるのがバカらしく思えてくるくらい深さを降りていく。
そして、途中で梯子を降り切った先に広がっていたのは。
「コレは……」
天井には配管が走っており、無機質な金属製の建物の廊下を思わせる空間が広がっていた。廊下の幅は広くISを使って暴れても多少余裕が持てそうな広さだ。
照明は行き届いている為、視界不良と言う訳では無さそうだ。そして、肌で感じ取れるのは学園とも思えない異様な空気。
「……とても学校とは思えない内装ね。コレは完全にクロかしら?」
『グgぎィiィィィi……ッ‼︎!』
その時、不協和音とも取れる不気味な咆哮が聞こえて来た。とても人間の声とは思えない声音であった。
「…………悲鳴と言うには余りにも不気味に聞こえた来ちゃうわね」
楯無の判断は早く、速やかに自身のIS『霧纏いの淑女』を展開する。学年別トーナメントの時、拘束衣の女性に粉砕されたが本国にて修理を完了させた。
——……あの時の拘束衣の女性クラスの時が現れた時、通常のやり方ではどうしようもない……でも、立ち向かわなければならない。
自身の常識を超える存在が現れる。それは世の常、此方も相応な『力』を備えなければ打ち勝つのは難しい事を意味する。
「……やってやろうじゃない。何度もコケにされては生徒会長として立つ瀬が無くなるわ」
照明に照らされた大廊下。しかし、照明は行き届いていたとしても一寸先は油断ならない闇。虚が調べた情報は確かに此処を示していた……ならば考えられる事は……防衛装置。
IS技術を活用すれば無人機をもしかしたら開発出来るかも知れない。世界では其処までには至っていないが、可能性としてはあり得る話であった。
——化けの皮を剥がしてやるわ……‼︎ でも、学園長は何故、認めたのかしら……?
楯無は低空飛行で大廊下を飛びながら、唯一接点を持っていたIS学園の学園長は今回の件を認めたのか、疑問を巡らすも途中で打ち切り前方へ意識を向ける。
『……ガガ…グ…g……‼︎』
暫く直進した後、楯無の視界の先には異形の姿をした物体が現れた。
「何……アレ?」
よく分からない機械に黒い影か靄らしき物が溢れており、其処にはギロリと確かに楯無を見詰める眼球が浮かんでいると言う……現実では考えられない存在が其処にいた。
『ディストーション』
怪の災害類がⅢ。
機械物体に黒いモヤに目玉が浮かんだ何処ぞの傲慢の人造人間を思い出させる姿をしている。この形態では金属音みたいな音しか聞こえず、何を言っているのかさっぱり分からない。
覚醒すると、ゴーグルを頭に掛けた機械式の外骨格を装備したイケメンかつカジュアルな男性に変化。
台詞の文字は日本語に英文字混じりだが、英文字はローマ字読みの為、言っている事の読解は簡単な方である。
進化適応すると、かなりグロテスクな姿と化す。白い大剣の体に肋骨の様なモノを纏い其処から血管らしきモノが伸び、肋骨の中に眼球が浮かびその周期にも多数の目玉らしき物が浮遊している。そして、頭上に赤いヘイローが浮かび外骨格は大型化し多数の砲門を備えている事から、ビジュアル的には歪な天使を思わせる禍々しくも痛々しい姿となった。
台詞自体も絶叫に等しく、一方的に叫んでいる様にしか見えない。
一言で言えば主人公とか熱血漢みたいな性格。
力があり強いからこそ世界や友を守る事が出来ると主張しており、言っている内容こそは独善的な性格が多い災害類の中では割と正当。言っている内容こそは。
バックストーリーからその正義を実現する為に世界を犠牲にしても構わないと言う本末転倒な事になっている。やっぱダメだった。
クエストはディザスター級と超ディザスター級の2種。
基本的なギミックはダメージとお邪魔、あとオマケのウイルス。と言うかクエストの構造自体はほぼ一緒なので同じ攻略法で問題は無かったりする。
のだがこのクエストを一言で言えばダルい。
超ディザスター級になれば、もっとダルい‼︎
超ディザスター級の最大の鬼門はボスの3ゲージ目。
ボスが常にダメージ軽減100%の状況で固定ダメージや吸収攻撃に加えてカウンター、そしてダメ押しと言わんばかりにカラーゲインを押し付けて来る耐久戦となっている。
毎ターン自傷し残HPが30%以下になれば4ゲージ目に移行する。最短でも9ターンは掛かり、カラーゲインで回復されるとその分伸びる。仮にも正義を掲げている奴がこんなやり方で良いのかよ。
種族はデーモンとヒューマン。まぁ、進化適応後の姿を見ればさもありなんと言った所。
因みに進化適応バクマへの道は過酷を通り越して時間的な意味で苦行レベル。クエスト自体、長過ぎてダルい為にバグポンを使いたくなる。
因みにディザスター級で無事、撃破すると『俺達本当は仲間』と言う台詞があり、色んな意味で物騒な面子揃いの災害類の中で和解出来そうな数少ない存在。
更に余談。
進化適応前のディストーションのCパネルの台詞の中に『俺に任せろ』と言う何とも頼もしい台詞がある。
実際にディストーション(進化適応問わず)を編成すると自分以外のユニットの攻撃はほぼ無効になり常に自分が攻撃参加すると言う攻撃面全振りと言う極端な性能。ついで言うなら回復力はたったの1しか無い。
火力は彼に任せて他の仲間はサポートに回ると言う王道のストーリーみたいな展開になる。