※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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耽溺 Ⅳ

 

 

 

「議長。侵入者用区画にIS学園の生徒会長が侵入しました」

 

「あ〜? やっと〜?」

 

 複数の空間投影ウィンドウを展開しては消滅を繰り返す中で姫舞は別の即席で設けられた席にて同様に作業を進める囚徒からその様な報告が飛んできた。

 

「う〜ん、予想よりも遅かったなぁ〜。随分とのんびりだね〜」

 

 ケラケラと笑ってはいるがその指は一切止まらずに投影型キーボードを叩き続け、複数の空間投影型のウィンドウを展開させては消滅させ次々と処理を続けている。

 

「……女尊男卑となって特に東日本の社会情勢は失速の一途を辿っていますからね。特に東日本は……西日本は四十院グループの恩恵もあり、女尊男卑黎明期以前の水準を維持していますけど……」

 

「そっかそっか〜、でもまぁ……結局は身から出た錆だよね〜。それじゃあ、ウィキちゃんのアレを全部出しちゃって〜」

 

「良いのですか?」

 

「大丈夫大丈夫〜。後でウィキちゃんが好きなスコーンをあげて餌付けすれば納得してくれるから〜」

 

「……姫姉。中々、エゲツない真似するわね。そもそも侵入者用区画ってレーキュとウィキリピアが気紛れに造った良いけど『制御不能』になったISの楽園でしょ?」

 

 ウィキリピアとレーキュ。その2人は創造主、篠ノ之 束を除いてIS(コア込み)を製造出来る存在であった。

 しかしながら、その方向性は双方共に従来の考え方とは大きく隔てておりもはや別物と化しているのが現実だ。無論、その事実は公表されていない。公表する理由は無いし、『計画』の為の障害を増やす必要も無いからだ。

 

「自由にさせるってのが五稜監獄学院のモットーだもんっ‼︎」

 

 ドンッ‼︎ と言う擬音がバックに控えた気がした。多分、気の所為。

 

「はぁ……。と、姫姉。そのレーキュの馬鹿から申請が届いているわよ。ご主人様は無理矢理休ませているから決済は姫姉に投げるわ」

 

「はいは〜い。う〜んと、うん。ユリエちゃ〜ん、任せて良い?」

 

「……何それ、私に関係する事なの?」

 

「うん〜。ちょっと、悪の女幹部になってくれないかな〜?」

 

「既に私達、色んな意味で普通に悪の組織やってると思うのだけど……。まぁ、良いわ……何すれば良いのよ?」

 

「うん〜、この申請内容を考慮してユリエちゃんの判断を元に実行をしてくれれば大丈夫〜、多分‼︎」

 

「相変わらずアバウトね〜。やるにしても準備が必要ね。直ぐには無理だから」

 

「大丈夫だよ〜。1日で突破出来るような場所じゃ無いし〜」

 

「それもそうね。で、その結果に文句は言わせないわよ」

 

 

 

 

 

 

◯

 

 

 

——姿が変わったとは言え、此方にも増援が来た‼︎ なら、押し切れるかも知れない‼︎

 

 飛来する槍の様なポッキーを躱しながら鈴音は巨大なホールケーキと化した存在へと接近を試みる。

 

『あまいはすきですか?』

 

 接近すればそれだけ攻撃が激しくなるのは分かり切っているがこの短い間の攻防で遠距離で仕留め切るのは難しい。無理を承知で接近するしかない。幸い、先程の槍の射出速度よりも此方の機動力の方が上だ。

 

「うにっ‼︎ うににっ‼︎」

 

「うぉおああぁあ⁉︎ 危ねぇぇ⁉︎」

 

——あの娘、本当に生身なの⁉︎ どんな身体能力をしているのよ⁉︎

 

 ISはハイパーセンサーにより360度視界を確認出来るのだが少し後ろで上空では、ウィキリピアと言う幼女が奇剣オリムラを片手に射出されたポッキーの上を跳び移って行く光景が見えた。

 高速で飛来するポッキーを視認して跳び伝うのもそうだが、何処に飛んでくるのか判断しているのも凄い。更にはノコギリ+男性の重さを持った状態だと言うのにブレない姿勢制御も加わるととても生身で熟しているとは思えない挙動だった。

 

『あまさはいとおしいです』

 

 ホールケーキは両腕を仰ぎ胴体から更に追加のポッキーの先端部を覗かせたかと思うと一斉射出。接近を試みる面々へと本格的な迎撃を開始する。

 

——本っ当にどんな構造をしてんのよ、アイツ‼︎

 

 あの状況下では迂闊に接近は難しいと判断して鈴音は一旦、接近を中断し、自身に迫るポッキーの迎撃姿勢に映る。あれ程の量を捌き切るのは困難だが、撃ち続けるのも困難な筈……途切れた瞬間を狙うのがベストだ。

 

 

 

 

「ちょっと、お痛が過ぎるわね……」

 

 

 

 

 

 刹那、体感温度が急激に低下した。まだ9月であり残暑が残る(学院内では暑さは感じない程に冷涼な気温に保たれているが)。しかし、一瞬で真冬の気温になったかの様に吐く息が真っ白になった。

 ISのシールドバリアは耐衝撃に対しては無類で強固な防御能力を誇る。しかし、温度(・・)に関してはその限りでは無くシールドバリアも絶対防御を貫通して肌で感じ取れてしまう。つまり、今現在……鈴音とセシリアは猛烈な寒さに曝された事を意味していた。

 

『何ですか……アレは……⁉︎』

 

 後方からセシリアの公開通信を介した声が鈴音の脳に響き渡る。鈴音の内心の感想もまさしく、ほぼ同じだった。

 

 蔡歌はモーニングスターをまるで杖を突くように正面に突き、立っている。ただ、それだけだ。

 だが、『世界』は大きく変貌を遂げていた。

 収監棟の壁や床、柱は瞬く間に白銀に氷に覆い尽くされ、飛来して来たポッキー群は壁や床、天井から滴る氷柱に囚われ凍りつき動きが止まっていた。

 

——何が起きたって言うのよ……⁉︎

 

『つめたいはいらないです』

 

 巨体とは言え地面に接していたホールケーキは3段目のケーキ部分が完全に凍結していた。見やればクリームが滴る指先も凍り始めているのが見え、寒さ故に動きが鈍っているのが分かる。

 

「ウィキちゃん‼︎」

 

「うにっ‼︎」

 

 蔡歌の声に従って中空で凍りついたポッキー群を跳び移って来てウィキリピアが蔡歌の下へ戻って来た。

 

「2人とも、惚けない‼︎ 凍らせたとは言え、直ぐに動くわ‼︎」

 

 その言葉に鈴音とセシリアは我に返った。目の前で突如、発生した光景を目の当たりにして意識が完全にその現象に持っていかれていた。

 仮にも敵の目の前で棒立ちだなんて真似は愚者のやる事だった。

 

『ッ、鈴さん‼︎ 凍った箇所ならば強い衝撃で破砕出来るかも知れません‼︎』

 

 セシリアの声。あのホールケーキのクリームはダイラタンシー現象を引き起こしているが、凍らせてしまえばその現象は発生しない。

 

「ウィキちゃん‼︎ 行くわよ‼︎」

 

「んっ‼︎」

 

 そのやり取りの中、蔡歌はモーニングスターを構え直し、ウィキリピアがその場で跳ねて落下するタイミングで大きく振りかぶってフルスイングで叩き付けて前方へと叩き飛ばした。

 

「はぁ⁉︎」

 

——味方を普通に殴り飛ばす⁉︎ 幾ら何でも正気じゃないでしょ⁉︎

 

 幾らなんて幼い子供に対してやる事じゃない。そして、蔡歌もウィキリピアを殴り飛ばした後に凍り付いた床が破砕しようかと思う反動を伴って前方へと瞬時に加速して飛び出す。

 

「色々、無茶苦茶じゃない‼︎」

 

 此の儘では獲物を完全に2人に取られてしまう。ただただ茫然と眺めていただけでは報酬は貰えないと言うのは嫌でも分かる。

 

——ええい、此処の学院の生徒は少しは常識を持っていて欲しいわッ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

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