※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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耽溺 Ⅴ

 

 

 

「ッ‼︎」

 

 曲射弾道の要領で飛ばされたウィキリピアは無理な体勢に加えて急加速や急激な気温低下による影響で耳障りな悲鳴をあげる奇剣オリムラを片手にホールケーキへと向けて飛んで行く。

 ウィキリピアはかなり小柄で体重もかなり軽い、暴風に晒されれば其の儘すっ飛ばされて宙を舞うくらいに軽い。

 その軽さ故に、高い位置にある場所に行く時は腕力最強クラスの蔡歌にモーニングスターで殴り飛ばして貰う事が良くあるのだ。

 

「うぉあぁぁああ‼︎⁉︎」

 

 相変わらず叫ぶ事が多い奇剣オリムラを尻目にウィキリピアは天井スレスレを飛びながら前方に聳え立っているホールケーキへと見やる。

 

『みわくのあじをごちそうしてあげます』

 

 絶対的な冷たさが支配する世界と化した収監棟にてバキバキと言う音が鳴り響く、飴細工の腕を無理矢理動かして叩き付けようと振りかぶる。凍りつき爪先も凍結して尚更、鋭利な刃物と化している。

 速度に任せたこの吶喊だ。現在、ウィキリピアにこの進路方向を変える術は無い。

 

「んっ‼︎」

 

「え?」

 

 ウィキリピアは飛びながら錐揉み状態で姿勢を変え奇剣オリムラを前方に構えて衝撃に備えた。奇しくも一夏を括り付けたノコギリの腹を前方にして、だ。

 

「ッ‼︎」

 

「グガァァァァァァァァァァああ‼︎⁉︎」

 

 ゴォンと言う音が響き、ウィキリピアは飴細工の腕で薙ぎ払われ上階にある独房の1つの鉄格子をグシャグシャに破壊して突っ込んだ。

 

「むぅ……。流石に、簡単にはいかない」

 

「ぐあぁぁぁぁぁ‼︎⁉︎ あ、足がぁぁぁぁぁあぁあぁ‼︎‼︎」

 

 腕で薙ぎ払われ独房の鉄格子に当たる直前、身体を回転させ奇剣オリムラを盾にする形で衝撃を分散させた為、ウィキリピア本人に対するダメージは最小限に抑えられた。

 

 代わりに一夏が劈くような悲鳴をあげている。何故なら、下半身は見る酷い状態と化していたからだ。

 ホールケーキに殴られた際、凍結した爪先で右脚が膝から斬り落とされ、鉄格子に直撃した際には左足が人間の構造上、あり得ない方向に折れ曲がってしまったからだ。

 右脚からは白いモコモコが溢れ出した瞬間に止血されている。左脚は滅茶苦茶に折れ曲がっているが、出血はしておらずプラーンと言った体で変な形で垂れていた。

 だが、『防腐処理』で腕や脚が斬り落とされようが簡単に修復出来るとは言え、痛みがある事に変わりは無い。

 一夏はおよそ普通に生活していたらまず早々にお目にかかれない大怪我を負って激痛に苛まれていた。

 

「うっさい」

 

「あ、がァァァァァァァァあああ‼︎⁉︎」

 

 その悲鳴が煩しかったのか、ウィキリピアは一夏の折れた左脚、折れた箇所の根本を捻り、力任せに強引に引き千切ったのだ。引き千切られた箇所から白いモコモコが溢れ出して急速に止血されるが、それでも引き千切られた際に発せられた激痛により一夏は一際強い絶叫をあげる。その折れ曲がった足は適当に捨てた。

 

 蔡歌のインパクトに隠れがちだが、ウィキリピアも幼い身体付きではあるが、ノコギリを普通に振り回している事から相応に力が強い(と言うかこんな学院で生活していたら普通に戦闘力が上がっていく)。

 大怪我により弱っていた靭帯や肉付きの状態ならば引き千切る事も不可能では無い。

 

「……どーしよ?」

 

 壊れた鉄格子を乗り越えて戦場と化している収監棟の大廊下の様子を確認する。

 

「凍ってても硬いんですけど⁉︎」

 

「一夏さんの悲鳴が聞こえましたけど、大丈夫でしょうか⁉︎」

 

 鈴音とセシリアは武装を振るい其々、ホールケーキの3段目と1段目を狙って攻撃を加えているが、凍って余計に硬くなった1段目。3段目はクリームに阻まれ思った以上にダメージを与える事が出来ていないようだ。

 

「コレ(・・)は破壊しても無駄みたいね……」

 

 蔡歌も別方面から攻め、凍結した部位を物理的な衝撃で破壊したが、ホールケーキ自体にダメージを与えたと言う効果らしい効果は無いようだ。

 

——……ケーキの部分は本体じゃない……?

 

 うー、と考えながら3人の挙動及びホールケーキの動きを観察する。

 

『あまくてとろとろです』

 

 ズズッと軋む音が響くと同時にホールケーキは全身から今度は赤黒いチョコクリームが溢れ出して来る。凍った世界に甘ったるい匂いが立ち込め始めた。

 

「何よ、この胃もたれしそうな甘ったるい匂いは……‼︎」

 

「頭が痛くなりそうな程に甘い匂いね……‼︎」

 

『おくちあけるといいです』

 

 大量のチョコクリームが全方位に放出され彼方此方に大量のチョコクリームがぶちまけられ、凍りつく白銀の世界をチョコレートが侵食して行く。直撃は避けた方が良さそうだ……。

 

「んっ‼︎」

 

「あだだだだだだッあぁぁぁぁ‼︎ 頭が、頭が擦れるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼︎⁉︎ 熱ッ、熱ァァァァァァァァ‼︎⁉︎」

 

 上階の方にもチョコクリームの塊が飛んで来た。吹き抜けの連結橋を伝って反対側へと走る、その際に奇剣オリムラの鋒を引き摺る形では知っている為、一夏の頭皮が冷たく鋭利な霜が張っている床を擦り続ける事となる。それは頭皮の摩擦で火花を散らしながら走り抜ける事となり何度目かの苦痛を訴える叫び声をあげていた。

 

『あまさがほしいですか?』

 

 ホールケーキは完全にウィキリピアの方へと視線を向けているようだ。他の面々の攻撃は然程気にならないらしく、連結橋を破壊しようと腕を振り下ろしてきた。

 凍結した爪先でケーキカットの如く連結橋を引き裂き崩落させて行く。

 

「うんにゃ‼︎」

 

 バラバラに解体され、崩落する連結橋を跳び跳ねて伝い反対側へと跳び移る。

 

「熱ッ‼︎ 熱っぁぁあい‼︎⁉︎ あぁだぁぁあ⁉︎」

 

 飛び移った頃には奇剣オリムラは一夏の頭……と言うか頭髪が摩擦熱により燃えるわ、焼け千切れるわと言う有様となり一夏の頭は大変、涼しげな状態となっていた。その際の摩擦により髪の毛のみならず皮膚も焼け爛れ、寒さによる突き刺すような痛みと相まって絶叫が止まらない。

 両脚を捥がれ、髪の毛も殆どが摩擦により焼け千切れて喪失し意図せず一夏のイケメンなルックスが半分以上、崩壊したと言える。髪の毛を失ってしまえば一夏だと気付く者は何人いようか?

 

——此方に注意を惹きつけている間に蔡姉達が攻撃すれば……崩せる、かも。

 

 ウィキリピアは奇剣オリムラを構え直して上階であってもまだ見下ろす姿勢であるホールケーキの3段目を見据える。3段目は既に大量のチョコクリームに覆われており生半可な攻撃は通じないだろう。此処は一旦、様子を見て下階にいる蔡歌達の攻撃する機会を作るべきと判断した。

 

「うおぉぉぉ‼︎⁉︎ 俺が何でこんな目に遭うんだァァァァァァァァ‼︎⁉︎」

 

——……うっさい。

 

 





 両脚と髪の毛が破損。残るは腕のみ……。
 腕とか脚とか髪の毛が無くなろうが後で元通りになりますので問題はありません。
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