午前中、未使用状態の収監棟で代表候補生と囚徒達がデザートと戦闘を繰り広げていたその頃……。
校舎棟の教室の一角にて、簪は授業を受けていた。今日は授業を受けようかと言う気分だったからだ。特にインターバルを決めている訳では無いのだが、一先ずは学業は修めておいた方が身の為だとは感じている。
午前の授業を終えて参加料のCPを振り込まれたのを確認した後、教室を出ようとした時、1人のメイド服を纏った囚徒、五十嵐ユリエが簪の前に現れた。
校舎棟に豪奢で重厚そうなメイド服を纏った囚徒……。当然、かなり目立つ事は請負なのだが、五稜監獄学院ではメイド服は有りふれた服装の一種なので誰も見向きしない。
「あ、どうも……」
「何その、『何故此処に?』みたいな顔は……私だって授業くらいは受けるわよ」
——その格好で?
ジト目を向けてくるユリエに対してそんな疑問をぶつけるのは止めておこうと思った簪であった。
「さて、雑談も程々にして本題に入りたいのだけど場所を変えましょう」
「人に聞かれるとマズい話ですか?」
「まぁ、そうね。特にIS学園側の生徒に聞かれるのはちょっとね」
そう言われたので場所を変えた。
商業棟へ向かい、そのまま昨夜のSM用品店へ通り抜けて娯楽棟へと到着した。此処なら、IS学園側の生徒達は意図せず入っては来ないだろう。周囲の目の心配が無くなった事を日切に歩きながらユリエは口を開いた。
「実は貴方の元姉であるIS学園の生徒会長が不法侵入しようとしているのよ」
——あー、あの人ならやりそうな事……。
元家族と言える人物がこの五稜監獄学院へ不法侵入を試みていると言われたのだ。
「まぁ、姫姉が1枚噛んでいるだろうから何かしら意図的に仕組んだ事でしょうけどね」
「裏があるのですか?」
「私も良く知らないけれど、面白い事でも起きるんじゃない? それでアンタには御題目の理由として連帯責任と言う形でその生徒会長を追い詰める人質役をやって欲しいのよ」
「やります」
即答だった。
『ストラトス・デザイア』での生活や『娯楽棟』の意味を加味すれば断る理由は無かった。
「そうね、アンタはそう言う奴隷だったわね。侵攻中の生徒会長サンに時折、アンタの機械姦風景を見せようと思ってね。構わないでしょう?」
「はい。……あの人の事はもうどうでも良いですから。全部、貴方に委ねます。好きに調教してください。私も不安を煽る様にしますから」
「ええ、私としちゃ身体を楽にして流れに任せてくれるだけでも良かったけど……その気ならやって貰おうかしら?
この件を頼んだのもその生徒会長がアンタの姉である事と昨日、娯楽棟での門前払いをしちゃった事の詫びも含まれているわ」
「あ、気にしてくれていたんですか?」
「まぁね。後、アンタ1人だけじゃ不安を煽るには足りないと思うから他の囚徒も同じ様にしてその生徒会長に見せるし、レーキュのバカがやらかして来た事も纏めてやるわ」
——レーキュさんも噛んでいるの?
「……レーキュの案件はアンタには直接的な関係は無いわね。見る事も無いでしょうね」
——うーん……気になるけれど、見れないなら仕方ないかな。
「それって、今から?」
「ええ。もう既に表層の区画に侵入しているわ。だから、早めに準備を進めないといけないのよ」
心の準備をする暇は無かったらしい。
同時刻。収監棟。
囚徒達の時間の過ごし方は各人、各々に委ねられている。その為、午前中に校舎棟へ赴かずに商業棟や収監棟で休日の様に過ごす事も認められている。
その収監棟の一角にて、数十人単位の囚徒達が屯していた。
IS学園1年1組。
世界初の男性操縦者が在籍するクラスであり尚且つ、1番専用機持ちが多いクラス。そう言う特異的な構成の為か、他のクラスと比べて男性が居るという奇妙な優位性から人任せ体質でクラス代表でもある一夏に何事も丸投げ同然と言う有様であった。その為、企業評価では8組に次いで成績が悪かった。
「あ、そう言えば今日はアレがあるじゃん‼︎」
「そうだった‼︎ IS操縦者にとって必要な性感帯調教の授業が‼︎」
「急いで着替えなきゃ‼︎」
「あ、皆〜待って〜」
その時、何かを思い出したかの様に1組の囚徒達は足早と移動を始めた。校舎棟とは反対側の方向へと向かっていく。
収監棟の隅の方、壁や遮蔽物に隠されて非常に分かり難い場所にある何の変哲も無い壁に囚徒の1人が手を翳すと一部の壁が凹んで上へスライド、中には埋め込み型の端末が貌を覗かせ慣れた手付きでパスコードを入力。
近くの壁が同様にスライドして通路が現れ、その中へと入っていく。全員が通過すると、壁が戻って何の変哲も無い場所へと戻った。
通路を歩き、ロッカールームへと入っていく。そのロッカールームは広めに取られており40人位の人数が同時に入っても余裕が持てる広さがあった。
「皆、急がないと連帯責任で調教だけで終わっちゃうよ〜‼︎」
囚徒達は慣れた手付きで囚人服を脱いで行く。少女ばかりなので人目を気にせず生まれた姿を晒している。首輪だけは自力では外せない為に其の儘だ。
ロッカーの中に収められていた全身を覆うボディスーツを取り出してその身に纏って行く。
だが、それは形状としては異常なモノであり胸の部分と秘所の部分が完全に切り取られた構図と言うかなり攻めたデザイン。それらが一様として並んでいるのは異様としか言えない。
そして、小道具としてフェイスクラッチギャグを取り出し口にギャグを嵌めて言葉を封印した。授業に私語は必要ない、囚徒達に言葉を発する権利は無い。
「んっんんっ‼︎」
「んむぅ〜」
しっかり嵌っている事を確認した後、変態的な姿となった1組の囚徒一同はロッカールームを出て授業が行われる区画へと向かうのだった。