アレから暫くしてリデアとフィウの2人が目覚めた。本音を言えば2人其々の拡張領域に放り込まれている自分の右脚と左脚を返して欲しい所なのだが……この流れのまま、両腕も持って行かれてしまいそうな気がする為に、その話題は切り出せなかった。やはり、暫くは大人しく休む以外に道は無いのだろうか。
——さて、この状況。どうしたモノか……。
右側からリデア、左側からはフィウが腕にがっしりとしがみついて来ている。言うまでもなく2人揃って腕力が強い方なので力比べとなると中々、分が悪い。恐らく、本人達は逃さないつもりなのだろう。
「あのさ……勝手に仕事をしようとは考えてないから」
——このまま腕を圧し千切られそうだから。何なら今もミチミチと言った明らかにヤバい音が聞こえて来るんだが……?
既に万力みたいに締められていた。行動する前に先手を打って手札を潰す精神。うん、流石は五稜の囚徒、その辺は常套手段だ。
「……マスター、日頃の行動を鑑みてください。そう言う意味ではDr.よりも信用出来ませんから」
「俺は
フィウから信じられない事実を告げられた。更に置き紙にも『アンタの事だから勝手に抜け出そうと考えるから変な事をやる前に腕折らせるわ dyユリエ』を見せられた。だから、何で会話が成立するのか。
「和奏君。最低でも今日は仕事の事は忘れて」
「分かった分かった、今日は仕事はしないって‼︎ で、一般的には休みの日には何するんだ?」
「「…………」」
和奏の疑問にリデアはばら撒かれて置かれている置き紙を漁る。いや待って、何でこの流れで置き紙による会話が続行されるのか。
「あった……」
——どんだけシチュエーション予想していたんだよ、アイツらは⁉︎
『和奏さんは外に出るとトラブルが寄って来るっスからね〜。そんな訳で、ゲームでもして時間を潰すと良いっスよ dyフィーリリア』
「じゃーん」
とか言いながらフィーリリアの書き置きを見せて来るリデア。見やれば壁際に大型の液晶テレビがあり、複数のゲーム機が置かれていた。
そもそも脚を斬り落とされ(移動出来ないとは言ってはいない)ている為に部屋で過ごす事となるからの暇潰し用として用意したのだろう。……恐らく、フィーリリアの私物だろうか。
「ゲームねぇ……」
据え置き型や携帯型問わずゲーム業界も女尊男卑の影響で大打撃を受けてしまっていた。
『女性向けの内容以外は違法だ!』と言う女尊男卑主義のクレームが量産され女尊男卑主義が跋扈する東日本ではIS関連のゲーム以外は全て廃絶、所持していた場合は罰金や懲役とか言う巫山戯た条例が制定されている。
対して西日本ではそんな光景は見受けられないが、それでも売上的な意味では打撃だろう。
——電脳空間絡みとは違って此方は楽で良いからなぁ。
「他まぁ、にやる事、無ぇし……やって見るかね」
ベッドから降りて腕の腕力で這って移動して本体近くに積まれているソフトのパッケージを見る。
「マスター、既に入っているみたいですよ?」
「どれがどれだか分からんし、適当にそれで良いだろ」
正直、ゲーム業界云々の事は余り詳しいとは言い難い。まぁ、時間を潰すならば適当に既にセットされている奴でも良いだろう。
テレビから離れてベッドの縁を背凭れ代わりにしてからテレビの出力をビデオに変えた。内容からして何でも1人用のゲームらしく、モンスターを捕まえたり戦わせたりするRPG系のゲームのようだ。
「マスター、フィーリリアさんの書き置きがまだありました」
リデアとフィウは和奏の左右に腰を降ろす、完全に包囲する形だった。
「まだって言うか、大量にあるじゃねぇか。どんだけ用意したんだよ、アイツは⁉︎」
人によって紙の色が違う為に区別はつき易い。フィーリリアの場合は水色だった。……何か彼方此方に水色の紙が散乱しているようだ。
「内容の説明みたい……」
「遊び方云々って奴か? あんまり細かくやるつもりは無いから適当にやってみるか、その内勝手に理解出来るだろ」
取り敢えず始めてみる。
勿論、フィーリリアのデータをロード。まぁ、内容はさっぱり分かっていない為に其処の点は適当だった。
「ほー、見た感じオープンワールドっぽいな。しかも端っこに操作説明っぽいのが出るのが有難いな」
ゲームの中の世界なら突拍子も無い風景でも普通に受け入れられる。常夏の隣に雪山があろうと不思議では無い、そう言うゲームだからだ。
「マスター、彼方此方回ってみませんか?」
「動かないと話にならないからな……しかし、アテも無く彷徨うのもなぁ〜」
「和奏君、フィーリリアの書き置きに色違い証持ちは珍しいんだって。遭遇した時、光るエフェクトが出るみたい」
「色違い? 良く分からんが……ソレをやって見るか?」
内容もイマイチ分かっていない状態でゲームを進める。
「お? コイツ、他のと色が違うな? コイツが色違いって奴か?」
開始20分、銀色の鉄球みたいなモンスターと遭遇。光るエフェクトが出た事から書き置きの言う色違いの個体のようだ。
「で……どうやって捕まえるんだ?」
「ボールで捕まえるみたいです、マスター」
「成程、じゃあ……このコンペボールを使って見るか」
しかし、ボールから出てしまった。
「弱らせないとダメみたいだよ」
「『商品』も調教して弱らせないといけませんからね」
「ふむ、その辺は現実と同じみたいだな。しかし、弱らせるにしても強い技だと倒しちまうよなぁ……」
その後、色々と試行錯誤(と言う名の書き置きを見て)をしてゲームを進めていく。
「ご主人様……あ」
暫くゲームを続けていると廻空が扉を開けて入って来た。
「廻空?何かあったのか?」
「ええ、ご主人様じゃないとダメな案件もあったから持って来たわ。しかも火急の内容」
「マジかよ……。リデア、ちょっと」
「あ、うん」
コントローラーをリデアに渡して廻空が持って来た書類に目を通す。内容としては確かに、自分じゃないとマズい内容だった。一通り目を通した和奏は廻空に書類を返した。
「内容は理解した。決済済みに回してくれ」
「仰せのままに。それで、随分と暇そうね」
ゲームの画面を見て廻空はクスリと笑う。画面ではモンスター同士の戦闘が繰り広げられていた。
「仕方ないだろ。仕事すると2人に腕を折られるし……」
「そんな事を言えるのは貴方だけじゃないかしら? お休みの所を邪魔するのも悪いから、私は失礼するわ……後、Dr.がまた何か企んでいるみたいよ」
「あのバカが企む事なんて9割以上、ロクな内容じゃねぇよな……。まぁ、今は忘れておく」
『……ガガ…グ…g……‼︎』
暫く直進した後、楯無の視界の先には異形の姿をした物体が現れた。
「何……アレ?」
よく分からない機械に黒い影か靄らしき物が溢れており、其処にはギロリと確かに楯無を見詰める眼球が浮かんでいると言う……現実では考えられない存在が其処にいた。
『グギギギギィィイ‼︎』
「ッ‼︎」
楯無を認知した直後、砲塔らしき箇所から赤い光弾を乱射して襲い掛かって来る。
「いきなりね‼︎」
楯無は周囲に纏わせている水のヴェールを前方に展開し光弾を防ぐ。
——防衛装置の一種、かしら? 余り派手にやると先方に気付かれちゃうわね……。かと言って放置するのもまた危険ね。
『ガガガ……ギg……』
攻撃が止まった隙を逃さず、楯無は肉薄し手に構えていたランスを砲塔の中へと突っ込んだ。ランスの中には銃口が備わっており、この状態で発砲すれば機構内部で跳弾によりズタズタになるだろう。
「砕けなさいッ‼︎」
楯無は躊躇わず実行し、至近距離による衝撃で火薬が爆ぜる。生じた爆発と爆風の反動で楯無は後方に跳躍し距離を取った。
『オまェがセかいヴォ救ヴ……?』
聞こえた。
濁音交じりだが、確かに聞き取れる声が先程、至近距離で爆破した防衛装置から聞こえた。
——嘘でしょ……⁉︎ 声の高さからして
五稜学院には男性操縦者が居た。その事実は再び世界を揺るがす事になる重大な事実だった。今の今まで発覚しなかった事も含めて驚愕に値する事実だった。
『COのせカいヴぉ救ヴのハ、オれダケdEいィだぉオ?』
爆ぜた際に発生した粉塵が晴れると其処にはゴーグルを掛けカジュアルな服装の成人男性が立っていた。色白な肌で肩にはISの外骨格らしきモノを纏っている。四肢を包み込むのでは無く外部に展開する形式の外骨格だ。
「あ、IS……⁉︎ しかも見た事の無い形式ね……‼︎」
——青白い肌……まだ部分展開みたいだけど、肩に展開するタイプは初めて見るわね。
如何言う原理かは分からないけど、やはり五稜学院はIS学園やIS企業や政府とはまた違った技術を持っているのは確実ね‼︎
「……貴方、一旦、矛を納めてはどうかしら⁉︎ 私は争うつもりは」
『モのWAかリがワる゛ィな……‼︎』
楯無の対話を求める声は彼?には通じず、代わりに腕に随行する砲門がその言葉に対する返答だった。砲門からは瞬時に光が収束され光線となって放たれる。
「話が通じない⁉︎」
楯無は瞬時に危険と判断して回避を選択。狙いが外れた光線は壁に着弾すると同時に爆轟を伴い壁を崩落させた。
「…………」
その様子を見た楯無は思わず冷や汗を流した。
——ちょっと洒落にならないわね。あの一撃を喰らったらシールドバリアを根刮ぎ砕かれちゃいそう。躱して正解だったわ……‼︎