新型ISを装備した男性の砲撃が鳴り響く。此方の対話には応じるつもりは無いようだ。
——遮蔽物が無い大廊下だと相手の高火力砲撃は撃ちたい放題ね……‼︎
『せカいヴぉ救ヴのハ、オれダケdEいィだぉオ……⁉︎』
再び高出力砲撃が鳴り響く。着弾と同時に地震染みた振動が地下区画内に鳴り響く。此処まで大きな騒ぎを引き起こしてしまえば、完全に相手側に気付かれていても可笑しくは無い。
——対話以前に会話が成立していないと言うのも大問題ね……。此処までコミュニケーションが図れない相手は初めてだわ。
楯無は男性の砲撃を躱し続けて会話の糸口を探ろうとしていたがもはや会話出来る見込みが無いと判断して意識を切り替える。
『おレがセかいヴぉ救ってYAるョお゛ッ‼︎‼︎』
「悪いけど、貴方の言っている事は理解出来ないわッ‼︎」
幸い、砲撃は連続で撃てない。幾許かのインターバルが発生している。幾ら高出力でも撃った後の隙を突かれては元も子も無いだろう。
砲撃を躱してランスを構えて急接近し肉薄。遠距離戦が主体ならば接近戦に持ち込むのは常套手段だ。
——貰ったわッ‼︎ 至近距離で『清き熱情』を喰らわせる‼︎
ランスの槍を外骨格に向けて突き立てる。砲撃をすれば暴発して巻き込まれる事だろう。
同時に男性の周囲に霧を散布、その直後に霧を構成するナノマシンにISから伝達されたエネルギーを熱に転換し、水蒸気爆発を喰らわせた。
至近距離故に自身は水のヴェールを張って衝撃を軽減させるが、相手はそうは行かない筈だ。
『ヤばRe、モのWAかリがワる゛ィな……‼︎』
——え?ゔッ⁉︎
その声が聞こえた直後、強い衝撃を受けて吹き飛ばされた。霧が晴れた時、見えたのは一切の負傷も損傷も受けていない男性の姿だった。
「嘘でしょ……⁉︎」
——全くのノーダメージだなんて……‼︎ 至近距離で水蒸気爆発を喰らえば只では済まないと言うのに、彼方のISのシールドバリアも完全上位互換だとでも言うのかしら……?
『清き熱情』による水蒸気爆発はシールドバリアを大きく削る爆破技。至近距離で喰らえばそれこそ絶対防御にまで持っていく程の威力を誇る。なのだが、目の前の男性は全く効いている様には見えなかった。
『オれの゛『正義』ッTeやッwO見せテやるヴょOぉぉ‼︎‼︎』
砲門が
——シールドバリアを全く削れない以上、相手していられないわ……。何か、絡繰があると思って差し支えないと思うのだけど、此処で時間を浪費する訳には行かない。
男性のISの異次元のシールドバリア強度を前に楯無はこの場から離脱を選択。目の前の男性は此方の話を聞いておらず会話も成立もしなかった。
学院側とは如何言う関係かまでは分からないが、此処までやった以上、気付かれているのは明白だ。
——見た感じ、簡単に騙されてくれそうね。
楯無は水を使って自身の姿形を投影させ、その場に置いて速やかに離脱した。遠く後方では砲撃音が鳴り響いているのが聞こえてくる。あの男性は攻撃している相手が水で出来た偽物だと気付いていないようだ。
「……あんな形式のISが跋扈しているとは考えたくは無いわね」
——シールドバリアに関しては現時点では間違いなく私が知る現行ISの完全上位互換と見て良いでしょうね。
大廊下を行くのは避けて横道に隠れながら移動する楯無。先の一件でもう隠れるのは無駄だと理解しつつも戦闘は避けたかった。
この学院の構造は校舎内と言うよりも入り組んだ商業施設の様な構造。故に細い通路も存在していた。
「なにより問題は部分展開だけであの火力にシールドバリアの耐久性を両立していると言う点ね……」
——まだ本気では無さそうだし……他にも特殊な武装を持っていても不思議じゃ無いわね……。
IS学園と異なるIS養成機関。外の業界とは全く持って違う光景……良く此処まで隠し通せたモノであった。
『……グル……‼︎』
「……ッ‼︎」
獣の嘶きの様な物が聞こえた。咄嗟に曲がり角の陰に隠れて大廊下の方の様子を窺う。大通りの方では天使を思わせる白く有翼的な翼が生えた巨大な鳥籠、その中から白骨化した腕が人魂の様なモノを掴んでいる。そんな存在がたった今、視界を横切った。
——なに、今の……?
楯無は信じられないと言った体で、たった今大廊下を移動していた存在に意識を割いた。
鳥籠から翼が生えてその中から白骨化した腕が人魂らしきモノを掴んでいると言う姿……アレは一体、何だったのか? とても、無人機だとか防衛装置だとは思えなかった。
——……やはり、この学院には恐るべき何かがある……‼︎
いよいよ、キナ臭さが否めなくなってきた。『学年留学』の一件で訪れたIS学園の生徒達が深刻なレベルで心配になってきた、いや、確信を持って言える。何が起こっていても不思議では無いと。
『別にそんなコソコソと泥棒みたいに隠れなくても良いじゃない』
「ッ‼︎」
その時、楯無の眼前に真っ黒な空間投影ウィンドウが展開されていた。先程の音声はそのウィンドウを介して発せられていた様である。
声の高さから女性、そして同年代かそれに近い年齢だと思われる。
「貴方……五稜学院の人ね……‼︎」
——横道に潜んでいても無駄って事ね……‼︎
『ええ、でも、そんな悠長にしていて良いのかしら?』
嘲笑うかの様な声。その声と同時にもう1つの空間投影ウィンドウが展開され、其処に映っていたのは……。
「か、簪ちゃん⁉︎」
そのウィンドウに映し出されていたのは裸の状態で四肢を機械で拘束された簪の姿であった。目元が機械式のゴーグルで覆われていたが、姉である楯無から見れば一目瞭然で直ぐに分かった。その隣には小柄な体格の少女(体躯に見合わず胸が大きい)も同様に拘束されている映像が映し出されていた。
『アドモニション』
怪の災害類がXXXII。
鳥籠に白骨化した腕が伸びて人魂を捕らえ、白い有翼的な翼が生えた姿をしており、周囲にも人魂が漂っているのが見える。
小さく呻く事しか出来ない。
進化適応すると、三つ首の白骨化したドラゴンの様な姿へと変化。翼だけ白い有翼的となるとかなり違和感がある。
鳥籠を持っており、その中には複数の人魂を入れており、本体の胸部にも多数の人魂、その周囲にも人魂が漂っており、死神を彷彿させる。咆哮を上げる事しか出来ず、マトモに会話が成立しない。
クエストは超ディザスター級のみ。
ギミックはダメージとハッキングと有っても無い様なプロテクトや暗闇。
道中含めて全てアドモニッションが登場すると言う事でゲージ分を考えると実質的に開幕から即ボス戦となっている。
基本的に殆どが連続攻撃で防御力を上げれば大幅にダメージを減らせる。
2フロアからお供が登場し、全体攻撃の自爆特攻を仕掛けてくる。倒してもすぐに復活する為、此方の防御力が高ければ放置でも問題無い。
難所は3フロア目。
常時、9割ダメージ軽減で毎ターン張り直すと言う手の入れよう。
此の儘ではロクに削れないので先制行動で設置されるチャージパネルを利用する。起動すればダメージ軽減が解除されるが解除されたターンに撃破しないと張り直される。またチャージパネルは先制行動でしか設置されない為、フィーバーするとダメージ軽減する方法が無くなり突破が非常に困難になる為、注意が必要。
後、8回目の行動で即死攻撃が来る。
ラストフロアはかなり珍しく1ゲージのみ。即死行動まで猶予は無いが此処までくれば後は余裕だろう。因みに1フロア目が最もHPが高いと言う謎の設定(1フロア目は6000万に対してラストフロアのボスはたったの4500万しか無い)
種族は見ての通り、ドラゴン。やはりどんな作品でもドラゴンは希少種族。