【霧纏の淑女】を奪還したのは良いが、そのタイミングで落とし穴に嵌ると言う古典的な罠に引っ掛かり更に下層へと転落して行く楯無。生身のままであれば、落下死の危険性があった。
——くっ……穴が予想以上に狭い‼︎ でも、落下先ギリギリで展開するしか無いわね‼︎
落下して行く縦穴は予想よりも狭く此処では展開出来ない。となれば落下先で展開する事に賭けるしか無い。落下先も狭ければそれまでと言う分の悪い賭けでもあった。
「ッ‼︎」
見えた床、その周辺は明るい。故に部屋であると即座に判断し楯無は緊急展開、スラスターを蒸さず機体の脚部で勢いが着いたまま強引な形で着地した。
——変な所でシールドバリアを使ってしまったけれど、スク水姿で落下死するよりは遥かにマシね。それよりも、この学院……かなり地下区画は広い上に深いのねって、熱源反応⁉︎ この反応は……‼︎
自身が墜落し床に激突した際に発生した衝撃で床が割れて舞った土埃が晴れた時、楯無の眼前にいたのは。
「お前が、お前が、皆を可笑しくした元凶かッ‼︎」
「え⁉︎ 一夏君ッ⁉︎」
眼前に居たのは『白式』を纏った織斑 一夏その人であった。ただ、機体の所々から余剰放出された赫いエネルギーが漂っており夏休み頃に稽古を付けていた時と明らかに違う。二次以降の結果なのだろうか。いや、考える前に様子が可笑しい気がする。
「待って‼︎ 私よ、更識 楯無よ‼︎」
「何て奴だ……‼︎ こんな変態な奴が皆を洗脳したって言うのかよ⁉︎」
「え……? な、何よコレ……⁉︎」
一夏の反応を見て楯無は思わず自分の身体を見てみる。其処には想定された姿では無かった事に驚きを隠せなかった。
スクール水着は量子変換されISスーツへと改変される筈が、黒革のボディーハーネス状に置き換わっており、胸が完全に露出している。
その上に首には黒革の首輪であり、レッグホルスターも装備し其処には多数のピンクローターの本体が収められていると言う変態と言っても過言では無い姿であった。
——き、機体の構成が丸ごと改変されている⁉︎ い、いつの間に⁉︎ それに、機体のカラーリングも水色からピンク色に変わっているし水もピンク色……って、これってまさかあの媚薬の液体⁉︎
自身のIS自体も予期せぬ改造がされており、嫌な予感しか感じられない状態となっていた。この短時間で機体を改造するとは常軌を逸しているとしか思えなかった。
「い、一夏君‼︎ 違うの、コレは‼︎」
「クソっ、こんな奴に皆が可笑しくされたって言うのかよ⁉︎ お前を絶対にぶっ飛ばして皆を元に戻してみせる‼︎ うぉおおおおおお‼︎‼︎」
一夏は聞く耳を持たずに赫と白の光の粒子を纏った雪片弍型を構えて吶喊して来る。一夏の『白式』の単一仕様能力は把握している。あの一撃は受けてはならないと言う事を。
「くっ、まさか一夏君も洗脳されているとでも言うの⁉︎」
——知らぬ間に改造されてしまっているから不安だけどやるしか無い‼︎
突撃して来る一夏を避けて、楯無は主力武装であるガトリング内蔵の螺旋槍を展開するも、聞き覚えの無い駆動音と共に自身の状態が一変した。
「っな⁉︎」
纏っていた機体の装甲が量子変換され両手両脚に纏い装甲の代わりに大型の機械拘束具に量子展開され大の字に四肢拘束される形となった。
——ど、どうなっているの⁉︎ 武装を展開しようとしたら自分のISに拘束されるだなんて⁉︎
解除しようにも自分の専用機はその動作を受け付けない。まさかの自縛機能が備え付けられているとは思ってもいなかった。
『今だ、織斑 一夏。相手は、君を、雑魚だと、思って、油断している』
「トコトン巫山戯た奴だ‼︎ この余裕ごとぶっ倒してやる‼︎」
一夏は余裕を見せられた事に憤りを感じ、もう一度、雪片弍型を振り被り楯無へと肉薄した。
「おい、
一連の様子を生映像で見せられた和奏が最初にコメントした感想はそれだった。もう色々と言いたいが一言に集約すればそんな感想だった。
「プロの、役者、でも、俳優、でも、あるまいし、お粗末な、出来映え、なのは、当然」
高々、高校生程度のガキを使っている時点でお察しの通りではある。
「和奏君。ああ言うの、好き? 洗脳とか悪堕ちとか……」
「マスター。従順さなら、私も負けません」
——無気力、無表情ならば同等だと思うんだがなぁ……。
「君ら2人は何と張り合っているんだ……。つーか、クソヤロー。こんなモンを見せて何になるんだ……」
「大方の、予定、していた、実験、は、完了した。別に、IS学園の、生徒会長と、男性操縦者、の戦闘とか、は需要無い、から、遠隔操作、で、機体、プログラム、改変して、即効で、終わらすのが、吉。尺、勿体無い」
「コレ見ている『客』連中からしたら、IS同士の戦闘なんて興味無ぇだろうしな。構成バランス考えると邪魔でしか無いな。しかも生中継だから編集も効かねぇしよ」
「まぁ、アレは、一種の、確認作業。じゃあ、仕上げ、と行く」
「何処までが
そう言いながらレーキュは部屋を出る為に歩き始める。その背中に和奏は声を投げた。
「勿論。持つべきは、友人、だ」
「腐れ縁の間違いだろ」