IS学園を発った簪と神楽を乗せたリムジンはIS学園島と日本国本土を繋ぐ大橋を通過していた。
「……」
——お、落ち着かない。
「簪さん? 落ち着かない様子ですね?」
「う、うん。リムジンなんて初めてだから……」
リムジンの後部座席は映画とかでよく見る構造となっていた。ただ、運転席とは隔離されており通話機を用いて連絡をする形になっている様である為に、運転手には此方の声は聞こえないようになっている。
「それは初耳ですわね。更識家ともなればそれくらいは普通かと思っていましたわ」
「……そう言う、家じゃないから」
四十院家ともなれば更識家の本性くらいは把握している。最もその辺を突くと簪が凹む事情に陥るのでこの辺に留めておく。
「さて、夕飯はまだ食べていませんわね?」
「う、うん」
変なタイミングで食事を取ってしまうと調教中に吐いてしまったり、出してしまう恐れがある。その為、極力ある程度空腹時に行うのがマナーであると考えております、実際に施設でもその案内板があった。
「そ、それで2泊3日って言っていたけど……夜の時間に?」
「その時間はほぼ電脳空間フロアでのユーザー登録及びデータ構築の申請ですわ。電脳空間に意識体ダイブとは口では簡単に言いますが、相応に時間が掛かります。
例えばスマホにアプリをダウンロードする際、初回のデータインストールには時間が掛かるでしょう? それと同じ様に考えて下さい。そうなると明日から始めた場合その時間は無駄になってしまいますわ」
「成程……時間は有効に、と言う訳、なんだ」
「それから、簪さんの専用機に関しての相談もしますわ」
「!」
此処で、簪の専用機の問題にも触れられた。簪や神楽だけでは如何にも出来ぬ問題。故に第三者に協力を仰ごうと言う魂胆だった。
「この前も、聞いたけど……大丈夫、なの?」
「ご心配無く、実は『ストラトス・デザイア』と四十院家は繋がりがありますので問題ありませんわ。人はそれを人脈と呼びます」
「……」
絶句した。よもや、そう言う繋がりがあったとは思わなかった。
「それに相談するに手っ取り早い方達は
神楽はそう告げる。まだ1回しか利用していないので『ストラトス・デザイア』の営業形態は把握していないが恐らく夜間もやっているのだろう。
「あ、夜型人間なんだ……」
「ええ、昼間は寝ているか調教しているかですからね」
「ドSなんだ……」
「職員の方々は大半が真性の被虐体質のドMですけど、極小数の方はドSですわ。ただ、
「そんなに⁉︎」
「……人生終了レベルの実験体にされるのがオチですので」
「…………」
絶句した。簪と雖も流石に其処までは求めていない。と言うか研究者体質でこの手の企業の場合はほぼ陸な連中じゃない事は予想出来た。
「さてと、その辺の話の続きは取り継げた時にしましょう。さて夜間利用に当たって宿泊施設に関して如何しましょうか」
2泊3日の予定。つまり何処かで宿泊する必要があるのだが……。
「数日間に渡る調教利用者の為にストラトス・デザイアの施設内に宿泊機能が揃ったフロア『隔離フロア』がありますわ」
「表現が可笑しいと思うのは私だけかな……?」
「拘束や緊縛、機械姦があるのですから表現としては間違いではありませんわ。ちゃんとしたホテル内装の個室がある宿泊施設です」
ストラトス・デザイア内に利用者が日を跨いで利用出来る宿泊施設も備わっているとの事。そう考えると相当に大きな施設だと実感が湧く。
「……ふふ、普通の宿泊施設だけじゃありません。簪さん、貴方は牢獄と言う物に興味はありませんか?」
「ろ、牢獄? 牢屋の事……?」
——アニメで捕まったヒロインが入れられる鉄格子の部屋? 確かIS学園にも素行問題のある生徒が懲罰独房に入れられるって話を聞いた事がある……。
「はい。囚人のように収監され寝泊まり出来る宿泊施設もありますわ。寝る時も管理される……利用者の殆どの方が被虐願望ですので其方を選ぶ方が多いですわ」
——牢屋……うん、良いかも♡ 牢屋の中で助けを求めてもヒーローは来ない。ただただ身も心も調教されるしか無い……。
「ふふっ、簪さん。顔が蕩けていますわ」
「あ……」
「問題ありませんわ。私も其方を利用……いいえ、収監される予定ですわ。囚人服か拘束衣……収監時にも色々と設定を盛り込めますので雰囲気を楽しめるかと思いますわ」
「……う、うん。可能な設定でやろう、と思う」
「ふふ、なら決まりですわ」
夜の予定を決めた頃、リムジンはストラトス・デザイアの敷地内地下にある駐車場に無事到着し後部座席の扉が開かれた。
最新鋭の技術を無駄遣いするこの施設は地下駐車場も何かと可笑しい。青白い床や壁、柱ら天井。駐車スペースを明記する区分けラインも仄かに白く発光しており、駐車場のイメージでは無い。
「お嬢様方、ご到着致しました」
「有り難うございます。此処からは私達で行きますのでエスコートは問題ありませんわ」
神楽が社交辞令を告げた後、駐車場を抜けてエレベーターホールがある自動ドアを抜ける。
「えっと、更に下の地下?」
「はい。と言うよりも施設にとって此処が最上階ですので地下行きしかありませんわ」
「そ、そうなんだ……」
エレベーターの呼び出しボタンを押して乗り込んで地下へと向かう。階層を見てみると意外にも複数階がある事に気付く。地下一階だけで広い構造かと思っていたが案外、そうでは無いらしい。
ピンポーンと言う高い音が響いた後、エレベーターの扉が開かれ冷たい空気が身体に当たる。この冷たさ、また来たと言う実感が浮かぶ。
「ふふ、それじゃあ参りましょうか」
「う、うん……」
白い空間、長い廊下を歩きエントランスホールへと到達する。静かで何も聞こえない透き通った空間……。その受付席で受付の女性(相変わらず全身を覆うボディースーツ姿だ)が此方の視線に気付いたのかお辞儀をした。
「お待ちしておりました、カグヤ様とドロシー様」
顔を見るや否やこの施設内での名前を言われる。神楽が言うには受付の職員は利用者の顔を全て把握しているとの事。何気に凄い記憶力である。受付で会員カードを見せた後、金庫扉へと向かう。
「……ねぇ、複数人だけどその場合は?」
「目的地が同じならば案内係の人は同じ様に案内してくれますわ。別々の場合は途中までで分岐する時、別の職員の方が案内してくれますわ」
金庫扉を1人ずつ抜けた後、更衣室にてIS学園の制服や下着を脱ぎ、ロッカーの中に入れ代わりにロッカー内に用意されていた綺麗に洗浄され清潔な状態の簡易スーツに着替える。
「ふふ、如何やら早くお仕置きが欲しくて乳首が勃って居ますわね。お可愛いこと」
「うう……言わないで……」
身に纏うは白い簡易スーツのみ。その為、身体のラインは丸分かりだ。
——神楽もスタイル良い……。スレンダーで羨ましい……。
「後、この施設内では私の事はカグヤと呼んでくださいね、ドロシーさん」
「う、うん。分かった……」
簪と神楽のロッカーの位置は離れていた。と言っても現時刻では利用者はほぼ居ないのか2人だけである。誰も居ない空間に1人居ると言う光景はそれはそれで非現実的な気分になる。
更衣室を出ると目の前に1人の女性が待って居た。黒い髪を肩付近で纏めた髪型の闊達そうな雰囲気。案の定、クラシカルなタイプのメイド服を身に付けたメイドだ。
「やっほー、ドMなカグヤは知っていると思うけど其方のドMっ娘は初めましてかな? 私は総合案内係のヨウカク。宜しく‼︎」
ミソラとはまた違ったタイプの職員だった。瀟洒な印象を与えるが此方は元気で親しみ易い印象を与える。
「あら珍しいですわね。この時間帯にヨウカクさんが居られるのは……」
「カグヤ〜? それって私が子供っぽいから寝落ちするとかって意味〜? そう言う意味ならスク水着せてアームバインダーとM字開脚からの媚薬風呂に漬け込んでオナ禁マッサージでお仕置きするよ?」
息をするかの様にエゲツないお仕置きを提示する。口調は軽いが内容は怖い。
「普段ならば是非ともお願いしたい所なのですが……。今回は先約ありまして……またの機会にお願いしますわ」
「ちぇ〜、折角動画で撮って全部の管制室に流してやろうと思ったのに」
——この人、考えている事がヤバい。
「あ、其方のドロシーで合ってるかな?放置してごめんね」
「い、いえ、大丈夫……‼︎」
「そっか。質問があったら遠慮なく聞いてよね。麻縄の自縛とか緊縛とか亀甲縛りとかなら教えても良いよ〜? 麻縄で縛られるって支配される感が凄く伝わるしね」
ヨウカクはそう言いながらエプロンドレスのスカートを捲り上げる。メイド服の下はレースの下着の上に麻縄が走っており股間部にはコブが設けられている。動けばクリトリス付近を刺激しそうである。見た感じ彼女は自分の身体に亀甲縛りを施している様だ。通りで胸部付近が強調されて見えた訳だ。
「……流石に此処で見せるのはどうかと思いますわ」
「変態調教大好きなカグヤに言われたくありませ〜ん。で、何処に要件があるの? 2人一緒って聞いたけど」
「え、えっと『電脳空間フロア』に用があるの……」
「『電脳空間フロア』? ああ、成程。ヒナタの所ね。分かったわ、案内するから逸れずに着いて来て。道が分かって居ても総合案内係の先導の元で移動するのが規則だから」
少し脱線しかけたが要件を伝えると理解したヨウカクが案内する為に歩き出した、その後を神楽と簪は着いて行くのであった。