※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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ラビット・ハント Ⅷ

 

 

 

 ゲームが始まった。

 

 夢にまで見たISに乗り、誰も彼もが優越感に浸りながら《うさぎ》を狩りに扉の向こう側に広がる巨大迷路へと繰り出して行く。

 

 彼女、咲花もまた《狩人》の1人だった。搭乗しているのは『打鉄』である。

 

 個人的にはラファールが良かったのだが、降りられない以上は仕方がない。何人か希望とは食い違う者もいた為に其処は我慢してやろう。ISに乗れる事其の物が現実問題、困難な事実に常に直面していた、それらに比べれば些細な事だった。

 

 

 咲花は俗に言う女尊男卑の家庭で生まれ育った。父親は母親に頭が上がらない光景をずっと見ていた。女である事事態に優越感を抱いて育った。

 『IS』が登場してから母親は女尊男卑気質を強め、遂には事態に堪えかねた父親と離婚した。男は女に勝てない、ISが使える女性こそが尊く使えない男性は卑しいと言う思念を確固たるモノとした。

そして時が流れて『IS』に携わる為に高倍率の狭き門を潜り抜け『IS学園』へと入学した。自分も華々しい活躍をするIS操縦者となる為に……だが、その時に現実を知った。

 

 想定外の男性操縦者の存在。IS学園では、既に専用機を持つ者が色々な意味で優遇されていた。

 一般生徒は実務訓練の非常に限られた時間以外では、アリーナの時間予約と量産機の予約をしなければ触る事すら出来ず、更には最短でも半年待ちかつ2年、3年生が優先され1年生はほぼ乗る機会は実務訓練やトーナメント等しか無い。対して専用機持ちはアリーナの使用申請さえすれば簡単に乗れるのだ。

 

——どうして⁉︎ 狡い‼︎ 狡過ぎる‼︎ IS学園に来ればISに乗れるんじゃないの⁉︎

 

 咲花もまた、唯の一般生徒の1人に過ぎず、実務訓練以外でら触る事すら出来ない。その実務訓練も数十人かつ複数クラス合同の為、乗り回す為に数十分程しか乗れないのだ。

 専用機持ち達を見て自分も専用機が欲しいと何度も心の中で願っていた。しかし、お眼鏡に適う事は無い。

 

——私だって専用機が欲しい‼︎ ソレされあれば、男なんて余裕で跪かせられるのに‼︎ ISさえあれば、何でも上手く行く‼︎ 誰でも良いからISをちょうだいよ‼︎

 

 IS学園での自分の役回りは専らモブAみたいな存在だった。何か起これば専用機持ち達が活躍する……その周りにいる群衆の1人に過ぎなかった。

 

——専用機があれば……専用機さえあれば、簡単に解決出来るのに‼︎ どうして、私の手元にISが無いの⁉︎ 不公平よ‼︎ 如何して、あんな連中ばかりが日の光を浴びれるの⁉︎

 

 成績も平凡、いや下から数えた方が早いか。勉強はして来たつもりだが、それでも足りない部分も出て来てしまっている。

 

——ISが無いのに分かる訳、無いじゃない‼︎ コレが本当に世界最高峰のIS学園のやり方なの⁉︎

 

 他にも気に食わない事に3組の生徒達は自分達と同じ一般生徒であるにも関わらず、活躍していた。危険を顧みずクラス代表を救援し、『セスルーム』の時は唯一、クラス代表が合格した。

 

——私と、私達と3組は何が違うのよ⁉︎ 同じ一般生徒でしょう⁉︎ なのに、どうしてそんな専用機持ちや代表候補生みたいな活躍が出来るの⁉︎

 

 更に言ってしまえば、あの時の3組代表の返答だった。誰もが羨む専用機を手にするチャンスを捨てたのだ。とても信じられなかった。

 

——何なのよ、アイツ‼︎ お高く止まっているわ‼︎ 気に入らない、本当に気に入らない‼︎ 女性しか使えないのに誰の許可を取って乗っているのか分からない男性操縦者も‼︎ 何から何まで優遇されている専用機持ちも‼︎ 3組代表の衣笠も‼︎ 何もかもが気に入らない‼︎

 

 そして、『学年留学』。

 イカレていた。その一言に尽きる。

 監獄みたいな学院。平然と銃撃戦をかま殺し合い同然の戦争を起こす囚徒達。独房を部屋だと吐かす環境。そして、2人目と呼べる男性。

 更には囚徒達は全員がIS……専用機持ちだと言う事実。『首輪』により展開は出来ないとは言うが、専用機を持っている事実に変わりは無い。

 

——狡い、狡い‼︎ 何から何までズル過ぎる‼︎ アンタ達が何をしたって言うのよ⁉︎ 専用機を与えられる程の成果を出しているって言うの⁉︎ 私だって専用機があればアンタ達よりも成果は出せるっての‼︎

 

 IS学園に入学してから何処に居ても鬱屈とした気分が拭えない。自分が思い描いていた光景は砂状の如く風に吹かれて影も形も無くなった。残るのは乾燥とした現実の日々を過ごしていた。そして、『ラビット・ハント』のゲームが始まる……。

 

 

——IS……‼︎ 夢にまで見たISに、私は乗っている‼︎ 実務訓練の時は1人、5分って言う制限が無い……‼︎

 

 高揚と優越感に彼女は浸っていた。実務訓練の時は授業時間の兼ね合いから搭乗出来る時間が非常に短かった。

 

——……《うさぎ》を殺せば良い。最低でも5人、殺せば私の勝ち……‼︎ 何て簡単なルールなのかしら? そんなの、ISに乗っている私達なら余裕でクリア出来るわッ‼︎

 

 『ラビット・ハント』のルールは理解した。逃げ惑うしか能が無い《うさぎ》を5人以上、殺せば勝者となる。

 

——それよりも……何で『男性操縦者』が此処に居るのかしらね? ああ言う奴こそ、《うさぎ》として私に狩られるべき存在だと言うのに‼︎

 

 気に食わない事に《狩人》に目障りな男性操縦者である織斑 一夏が居る。奴が《うさぎ》に居たのならば真っ先に殺していた。男性が女性にしか使えない神聖なISに搭乗する事は、万死に値するからだ。きっと誰が見ても男性操縦者を殺しても正当性があると認めるだろう。

 

「まぁ、良いわ。あんな奴……後で何時でも殺せる……‼︎」

 

 高々、ISを知って半年程の素人。そんな奴、中学生の時から学習している自分が負ける筈が無い。取り敢えず、今は先に《うさぎ》を殺しておこう。期間が明言されていない以上、他の《狩人》に先を越される訳には行かない。

 そう、頭に言い聞かせて自分も巨大迷路へと繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

◯

 

 

 

 

 

 

 

 槐と芹那の2人もまた、生き残る為に《うさぎ》を殺す為に巨大迷路の探索を進めていた。

 人の生死を厭わないデスゲーム……誰がが死ななければ終わらない。倫理、道徳、尊法精神、常識がゴミと化す中、抗えばルールに則って殺される。生きたければ殺すしか道は無い。

 

「銃声が聞こえます……。《狩人》の誰かが《うさぎ》と遭遇したのかも知れません」

 

「悲鳴も聞こえるね。……誰かが殺されたのかも」

 

 既に狩りが始まっている。《うさぎ》の正体は恐らく人間。5名と表現された事から《うさぎ》の役を背負わされた人間と言う事だ。

 ただ、此処で問題なのは《うさぎ》が何人居るのか、である。

 《狩人》は24人である事に対し、《うさぎ》が120人未満である場合、必ず《狩人》の中で脱落者としてルールに則った死者が出る事になる。

 

「……このゲームの期間も分かりません」

 

「……1時間? それとも……数日、か。うん……何時終わってしまうか分からないと言うのも精神的にキツいよね」

 

 そう考えると悠長に構えている余裕は無さそうだ。一刻も早く、《うさぎ》を殺さなければ……‼︎

 

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