巨大迷路を進む。近くや遠くから銃声や悲鳴が聞こえる。《うさぎ》が死んだか、或いは《狩人》が返り討ちにあったかまでは分からない。
「……槐ちゃん、コレを見て」
「これは……」
巨大迷路の一角。
それはシャワーやトイレ。他にも食糧や水と言った物資が集められている部屋であった。デスゲーム沁みた展開の最中、区域内にこんなモノが存在しているとは思ってもいなかった。
「食糧の数からして、数十人分あるわ。……30人でも数日は賄えるでしょうね……」
「となると、このゲームの制限時間は数日間に及ぶ、と考えるのが自然でしょうか?」
保存食に加えて水入りのペットボトル。コレらが用意されている事からゲームは最低でも1日以上続くと予想される。
「うん。そうだと思う……だけど」
《狩人》はISに搭乗しており
「……《狩人》はほぼ使えない、と言う事ですね」
食糧は保存の効く乾パンだが、小さい為にISの腕部装甲の指でも砕いてしまい粉々になる……。ペットボトルも握る圧力に耐え切れず破裂してしまい飲めたモノでは無い。
そもそも、ISには『シールドバリア』の存在があり、外部からの接触物に対して人体を保護する機能がある……つまり……。
『IS』に搭乗している間は、水も食物を口にする事が出来ないと言う意味である。
《狩人》の殆どが《狩人》側が有利な条件だと思い込んでいるが、細かい点を見れば不利な条件が隠れていた。コレが生死を厭わないデスゲーム……。
「……芹那さん。嫌な予想が出て来ました」
「槐ちゃん。私も……残酷な予想が浮かんできたよ」
コレらの情報から2人はある意味、嫌な仮説を立てた。それは——。
「……この『ラビット・ハント』の規定時間って、私達《狩人》が
《うさぎ》役がどんな状態かは分からないが、少なくとも使用不可能なモノを用意するのは無意味だ(嫌がらせ目的かも知れないが)。
いずれにせよ、《狩人》は常にISに搭乗している為に、排泄もシャワーを浴びる事も果てや食事を摂る事が出来ない。《うさぎ》が殺されない様に逃げ回るだけに対して、《狩人》は《うさぎ》を殺さなければならない。
「私もその予想を立てています。だとするならば……長く見積もっても3日間が限界です……‼︎ 人間が水を飲まずに生活出来る限界は3日だと言われていますから」
仮に5人以上、殺したとしてもゲームはまだ続く。規定時間=《狩人》の全滅だとするならば、他にもゲーム終了の条件がある筈だ。例えるなら《うさぎ》の全滅……とか。
「……でも実際は1、2日と見た方が良いよね」
「……はい。急いだ方が良いでしょう」
部屋を出て《うさぎ》を探す。
この迷路は巨大。他にも同じ様な部屋があると考えるのが自然だろう。だからと言って自分達は使えないのでほぼ無意味ではあるのだが。
「……コレは」
《うさぎ》が居た。
白いモコモコに覆われていた。恐らくノコギリで乱雑に斬られたのだろう損壊具合だった。
損壊具合から判断するまで時間を有したが、うさぎを模したヘアバンド、ハイレグのスーツ……剥き身の脚……俗に言うバニーガールの格好だった。そして、その殺された《うさぎ》は見覚えのある者、3組の生徒の1人だった。
「……ッ‼︎ コレって……」
「3組の生徒、ですね。バニーガールの格好をさせられているから《うさぎ》、と言う訳ですか……」
「……まさか《うさぎ》ってのは、IS学園の生徒達……⁉︎」
「《狩人》側に1組の人が居ましたから、その線は充分ありえます。……IS学園の生徒達同士で殺し合わせているのでしょう」
暫く進むと、今度は《狩人》が倒れていた。動く気配が無く、頭を撃ち抜かれているのが分かった。『シールドバリア』を貫通する方法は幾つかある、殆どの者はその事実に見て見ぬフリをしているだけだ。
「仮に名刀さんを始めとした3組の人達が《うさぎ》側に居ると仮定すると……」
「多分、《狩人》を排除出来ないか考えるよね、やっぱり」
出来る事なら3組同士の潰し合いは避けたい所だ。どう言う結果になろうともお互い気不味い状態に陥りかねない。
「……ですが、どの道、私達は5人以上の《うさぎ》を殺さなければ生還の道はありません」
「殺るなら、出来れば3組以外の人達を狙うべきだよね……」
恨みとかは無いが自分達も後が無いのだ。罪悪感はあるにはあるが、引き返す為の退路は無い。
その時、巨大迷路全体に響き渡る様な放送が鳴り響いた。
『『ラビット・ハント』の生存者の皆様。追加ルールの説明を始めます』
「追加ルール……?」
最初の時点で相当エグい内容だったのだが、此処に来てまだエグい内容を追加するとでも言うのだろうか?
『《狩人》の皆様は《うさぎ》を6名以上、殺害した場合は超過人数に応じて賞金を進呈致します。1名に付き5万程を追加致します。
尚、大半の《うさぎ》は《狩人》から見て、開始地点、巨大迷路を挟んでの反対側、《うさぎ》陣営開始地点に屯しています』
そんな簡潔な内容を放送した後、すぐに静寂が訪れた。
「えっと、それって……?」
「当初は5名で済ませれば、と言う事になりますが……あんな条件、それに
《狩人》が《うさぎ》を殺戮する理由が増えた。いいや、油を注ぎ《うさぎ》を狩り尽くす勢いを加えて来たのだ。此の儘だと、他の《狩人》に《うさぎ》を殺し尽くされて溢れる《狩人》も出て来る事になる。
「急がないと……《うさぎ》が全員、殺される可能性があります‼︎」
「そうなってしまえば、ノルマを達成できなかった《狩人》は全員、ルールに則って殺される……‼︎」
この放送は《狩人》も《うさぎ》も全員、聞いているだろう。更に殆どの《うさぎ》がゲームの開始地点、《狩人》で言う目覚めた場所に留まっている……場所的に考えるならば巨大迷路を抜けた先という事になる。
「……殺される側からすれば、いきなり自分達の場所をバラされてパニックになるよね。逃げようとして巨大迷路に飛び込むかも」
《狩人》が一斉に《うさぎ》側の開始地点に殺到する。そうなれば全滅も時間の問題だ。
「《うさぎ》達も死にたくないでしょうから蜘蛛の子を散らす様にバラバラに逃げる状況を作り出したと言う訳ですか……。このゲームを仕組んだ『運営』からすれば、コレが理想的状況なのでしょう」
逆を言えば事態が硬直していたのだろう。《うさぎ》もIS学園の生徒達ならば、その線はあり得る。何せ、専用機持ちの存在故に如何しても他人任せになりがちだからだ。
「それから《狩人》も率先として《うさぎ》を殺しに行く筈です」
「そうだね。5人殺せば、大丈夫……」
そうこう言っている間に、通路の先で生きている《うさぎ》が横道から飛び出して来た。バニーガール姿であり、先程の放送を聞いたのか焦燥した様子……だが、自分達も悠長にしている余裕がない。躊躇いは胸の奥に潜め、武装を突き付け、《うさぎ》を殺しに掛かった。
あらすじの内容、ちょっと変えました。
書き始めた時よりも路線変更と言うか、混沌として来ましたので。