「クソがッ‼︎ なんちゅう真似をしてくれてんねん‼︎」
3組の面々は物資のある部屋に陣取る事に決めた。この部屋を拠点とすれば暫くは食糧や排泄、シャワーと言った生活基盤の心配は無くなる。部屋の入り口に見た目は酷いが《うさぎ》の死体(『防腐処理』の効能で死臭はしない)やISに搭乗したまま《狩人》を使っての文字通り、肉盾のバリケード擬きを築いた。
「……完全にこのゲームを仕組んだ側が、状況を動かす為の策だね」
——私達以外の殆どが最初の大部屋に留まっていた。コレでは《狩人》が乗り込んできたら一瞬でこのデスゲームが終わる……
「……せやな。早い話がある程度、ウチらの行動は読まれてんやろーな」
先程の放送は《うさぎ》達も《狩人》達も聞いた筈だ。そうなれば《狩人》は《うさぎ》を殺す為に我先にと進行する筈だ。巨大迷路とは言え、何れは突破は出来る。
自分達に依存し矢面に立たそうとしたのだ、丸腰の状態で自分から立ち向かえる技量は持ち合わせて居ないだろう。
「……《うさぎ》を殺した人数に応じて、賞金を出すとか……神経が完全に娯楽目的やな」
大部屋内の《うさぎ》が狩り尽くされた時、自分達に矛先が向く。3人程、殺し返したがそれでもまだ20人は居る。幸いな事に武器もあるし、狭い通路……上手くやれば返り討ちには出来そうか。
「そろそろ、日も暮れてくるね」
空が暗くなり始めて来た。巨大迷路内には照明がある為にまだ視野は確保出来るが……夜の時間帯となっていても油断は出来ない。
怖いのが夜襲だ。数日間に及ぶであろう『ラビット・ハント』。寝ているであろう時間帯はお互いは動かない……なんてルールは無い。寝込みを襲われたらひとたまりも無いのだ。
「代わり番で見ていよう」
「せやな……夜間中も突撃してくるような奴もおるやろうしな」
中には真夜中に襲ってくる《狩人》も居るかも知れない……戦闘と言うのは昼間にしか行われないと言う発想はナンセンスだ。戦闘と言うモノは何処でも発生する。
簡易的なバリケードの後ろにライフルを持った3人が警戒に当たる中、彼方此方で悲鳴や困惑の叫び声、更には嘲笑混じりの咆哮が巨大迷路中に響き渡る。
「大広間にゃ、留まれないって分かって巨大迷路に入ったはええが、《狩人》に見つかっての乱闘やなぁ」
《うさぎ》の方が人数が多い。数の差を活かして《狩人》を返り討ちにする事は充分可能……。しかし、相手が『IS』……世界最強の兵器を前に立ち向かう意志は彼女達には無かった。
「……ッ‼︎ 代表‼︎ 《狩人》……ISが来た‼︎」
バリケードに張り付いていた《うさぎ》がそう叫ぶと全員が臨戦態勢に移った。通路の壁際に照明が灯っているとは言え、暗い事に変わりは無い。
「頭を狙える⁉︎」
腕や脚、胴体を狙っても仕方ない。狙うならば即死の可能性を見込めるヘッドショット。ライフルの弾は補給は出来ない。だからこそ、確実に仕留められるヘッドショットを狙うべきだ。
「気付いた‼︎」
「突っ込まれたら、ヤバいわ‼︎ 来る前に撃て‼︎」
発砲音が響き渡る。殺される前に殺す、それは至極自然な行動だった。
「当たった……?」
ドサリと倒れる音が聞こえた。確かに命中した。だから倒れた。
「良っしゃ、仕留めたわ」
また1人《狩人》が減った。コレで《うさぎ》の生存数が拡張される見込みが生まれる。
「せやけど、飛び出したら思う壺や。他にも《狩人》が後ろに控えておるかもせぇへんからな」
武器は確保して置きたい。しかし、此処で飛び出せば《狩人》が死角に潜んでいるかも知れない。漁夫の利だ。もし、自分達が《狩人》ならば別の《狩人》の取りこぼしを狙う可能性も充分、考えられる。だからこそ、此処は様子を見るべきだった。
その時、突然投げ込まれた手榴弾が起爆。爆発は爆発、しかしばら撒かれたのは熱風でも破片でも無い、白い煙だった。周囲一体に白い煙が立ち込めた。
「煙幕⁉︎ 皆、気を付けて‼︎」
やはり他にも《狩人》がいた。日が暮れた時間帯の中、白い煙幕に視界が覆われた。この状況では大変、危険である事は誰もが理解した。
《狩人》が、来る。
人はどう言う時、残酷な行為をするのだろうか?それは自分が『正しい』と考えた時だ。其処に善悪の境界は存在していない。
《うさぎ》側のゲーム開始地点。其処では地獄絵図が広がって居た。多数の《うさぎ》が死体となって転がっている。身体の彼方此方から白いモコモコを噴出させ部屋全体に散乱している様を地獄絵図以外何と表現すれば良いか……。
それでも全員ではなく、何人かは巨大迷路に飛び込んで生存する為に今も逃げ回っている事だろう。
「……アッハハハ‼︎‼︎ そうよ、コレよ……私が求めて居たのはコレなのよ‼︎ ISが、ISがあれば……私は誰にも負けない‼︎」
手に持っているノコギリを振るい《狩人》の少女は恍惚な笑みを浮かべながら足元で死体となっている《うさぎ》を見下ろした。
ISと言う存在が手元にある限り、自分は肯定される。女尊男卑の象徴、コレが存在する限り誰も歯向かって来る事は無い。《狩人》として分けられた者はやはり選ばれし存在である事を『ラビット・ハント』を企画した人物は良く理解している。
「……私は優秀なのよ……‼︎ だから他の有象無象と違ってISを与えられるのよ‼︎」
だからこそ、許せない。何故、《狩人》に女性の象徴であるISを穢す忌々しい男性操縦者が存在しているのか。
「男性操縦者はこの世に必要ないのよ……‼︎ あの、宵咲って奴も気に入らない……後で殺してやる……‼︎」
1人のみならず五稜監獄学院に2人目も存在していた事にも虫唾が走る。然も、専用機持ちと言う事から更に苛立ちが募る。織斑 一夏が瞬殺されたが、それはあの男が絶望的に弱過ぎるからだ。事実、殆どの試合では負けており量産機にすら負けている。試合数で見れば見事な負け越しだ。
この『ラビット・ハント』が終われば殺しに行ってやる。少なくとも自分はあの織斑より強いと言う自負がある。あんな素人よりも数年、学習した自分の方が上なのは誰が見ても明白だからだ。
「……手始めにあの世界初の男性操縦者を先に殺しておかないとね。これ以上、私達の世界を汚すのは耐え切れないのだから‼︎ その後で宵咲とか言う奴を殺してやる……‼︎ ISは……女性にのみ許された特権なのよ‼︎」
既に《うさぎ》は5人のみならず数十人単位で殺した。何が何でも自分は勝者だ。此処で《狩人》の1人や2人、いいやそれこそ自分以外、全員を殺しても問題無いだろう。何故なら、自分はISの才能がある。誰もがそう認めるのだから。
姫舞「あちゃー……リデアちゃん怒りそう」
フィウ「身の程知らずですね」
和奏「……コレ、止めるべきだろうなぁ」
ユリエ「既に準備終わってるわよ」
和奏「え?マジで?」