同刻、大食堂。
「ふ〜ん、舞台は大詰めって感じかな〜?」
「その様だな」
各地を映し出す空間投影型ウィンドウを見ながら姫舞はそう評し、和奏もまた同意見であった。大半の参加者が脱落する中、想定よりも早い展開だ。その点は別に構わななかった。
大部屋にいた《うさぎ》は到達された《狩人》に蹂躙され辛うじて逃げ延びた《うさぎ》もまた、巨大迷宮を彷徨う《狩人》に見つかれば殺される。
「それよりも3組の子達は中々、やるよね〜? 被害は無視出来ないけど、過半数は生存しているし」
物資のある部屋の一部を占拠した3組の《うさぎ》達。《狩人》も加わるも争う様子は見られない。どうやらお互い現状維持し、此方では局面が動く事は無さそうだ。リーダー格が負傷している為、恐らく時間切れまで耐久する腹つもりだろう。
「しかし、『企業』側からすれば、マイナス評価は否めないだろうな。《狩人》は同士討ちをした……。採用する側から見れば敵同士と仲良くされては困るし、情報漏洩のリスクが生まれる」
敵対者が知人である場合、絆されたり離反する可能性がある。
IS学園には世界各地から生徒が集まる。場合によっては国際的な交友関係が生まれるだろう……だが、将来的に考えると所属する企業、組織、政府と言った様々な事情により敵対する可能性も視野に入る。その時に
その場合、殺す必要が出てくるかも知れない。その時、確実に遂行出来なければならない。知人だから友人だからと言う理由は理由にならない。其処で躊躇われては困るのだ。
敵対するならば排除しなければならない。
「はい。この状況の場合、《狩人》は《うさぎ》が知人、友人、恋人であろうとも殺害が目標である以上、殺さなければなりません」
非情ではあるが、企業や政府が求めるIS操縦者はそう言う存在だ。強大な力を有する者は制御する意志を持たねばならない。そして、それは権力によって支配されなければ、ただの暴力と化すだろう。その実例を各国は知っている。
「……ご主人様、随分と盛り上がっているみたいね。ほら、軽食のスコーンを持って来たわよ」
と、其処へ摘みなのかスコーン入りの皿を乗せたトレーを持ったユリエメイド長が和奏達のテーブルへと歩いて来た。
「ユリエか。ああ、ありがとう。『ラビット・ハント』に関してはもう最終盤だな。残す見所は」
空間投影ウィンドウの1つは《狩人》側の大部屋に状況は理解しても動けずに居る織斑 一夏が映し出されていた。『皆を守る』と公言している一夏は明確に殺害と言う行為に踏み出せないのだろう。
そしてもう1つは、その一夏が気に入らないと言う恐らくは世界に蔓延している女尊男卑者の生徒。その生徒は逃げ惑う《うさぎ》を多数、殺しそして一夏を殺そうと向かっている最中であった。此の儘だと、《狩人》同士の殺し合いになり、状況的にもそれが最後の山場となるか。
「……どーでも良い事だけど、アンタにも喧嘩を売っているわよ、アイツ」
「そりゃ、1人や2人、気に入らんと言う奴が現れても不思議じゃねぇだろよ」
女尊男卑連中からすれば男性は目の敵にされる。その点に関しては半ば諦め気味だ。
「ま、代わりにリデア辺りが暴走するんじゃない? ちゃんと手綱を握っておきなさいよ。或いは全身拘束させるくらいに」
「頭が痛くなるからその話題は止めてください……」
「マスター、私はいつでも大丈夫です」
「便乗しないでくれ……。歯止めが効かなくなるから」
——姫姉もユリエも乗り気になりそうだから、いや手遅れだったか……今は考えないでおこう。
「ところで弟君、専用機の子達はどうしてるの? 見ないから」
「ソイツらか? いや、知らんなぁ……。ワンサイドゲームになりかねないから、ゲームから外したは良いがその後の事は蔡歌が何かするって言って彼女に任せちまったからさ」
「と言う事は、ウィキリピアの玩具にされているわね……ご愁傷様って奴ね。で、『ラビット・ハント』で1番、
「ああ、IS学園だと月末に総合成績が1番低い奴は退学になるからな。集計まで時間が掛かるだろうから、それまで待ってくれ」
「そ、分かったわ。じゃあ、後はごゆっくり」
ユリエはそう言いメイド服を翻して厨房の方へと戻って行った。