『ふふん、気になる?気になるでしょ? 『ラビット・ハント』を行った理由‼︎ ならば応えてあげましょう‼︎』
ハイテンションな彼女、御巫 姫舞は嬉々として告げる。
『IS学園の生徒に向けた定期考査、だよっ』
「「「は?」」」
あっけからんと告げられた内容。当人達にとっては予想外過ぎる内容であった。
「て、定期考査って……筆記試験とか、実技試験とかのアレやろ……⁉︎」
「……‼︎」
名刀達もその言葉には絶句した。仮想現実空間とは言え、試合や模擬戦では無く殺し合いをさせていたのだ。到底納得出来る話では無い。
「て、定期考査って……嘘でしょ……⁉︎」
「あ、あんなのテストも何でも無いよ……‼︎」
『可笑しい所は何処にも無いよ? 定期的に生徒達の実力を確認するのは教育機関としては当然の事だよ』
物議を示す生徒達。その態度に対して姫舞はさも当然と言った態度で受け流し、続ける。
『IS学園は教育機関としては特殊も特殊。だから、凡ゆる基準が他とは異なるんだよ。定期考査とも言ったけど、IS学園で実力把握の為に行われる模擬戦とかイベント関連との兼任でもあるんだよ〜』
直近で言えばクラス代表対抗トーナメントと同じ扱いと言えば分かりやすいだろうか。それらと定期考査を合算したのが今回の『ラビットさんハント』である。
「ちょ、ちょっと待って‼︎ ISが無くて逃げ回るしか無かったのに、そんなの不公平じゃ」
「あ、あんなので何が分かるって言うのよ‼︎」
「そうよ、あんなのタダの暴力でしか無いじゃない‼︎」
堰を切ったように不平不満が飛び出してくる。その態度に姫舞は分かってないなぁと言う表情を浮かべ出来の悪い子供を諭す様に続ける。
『分かるよ〜。《うさぎ》と《狩人》。分かりやすい様にそんな配役表現がされていたけれど、実際は将来の状況を想定された試験でもあるんだよ〜』
「将来の状況を想定、だと?」
『《うさぎ》役は言わば手元にISが無い、或いは起動出来ない中で敵対組織に対応出来るかどうかを問う。逆に《狩人》は私情に流されずまた確実に目標を遂行出来るかの精神性を問う。と言う形式なんだよ』
更に追加で情に絆されたりしないかと言う点もチェックされている。IS操縦者が戦闘する際、相手が必ずしもISとは限らない。場合によっては生身の人間を排除しなければならない時もある。逆に生身でISと相対しなければならない時もあるかも知れない。
「何よ、それ……‼︎ 意味が、分からないわ……‼︎」
『何を言っているのかな? ISを扱うと言う事はそう言う世界に踏み込むと言う意味なんだよ。
そもそもISは兵器として見做されて各国の軍にも配備されているし、代表候補生のみならずIS操縦者は有事の際は戦力として扱われるんだよ。紛争地域でもISは投入されて戦禍が酷くなっているしね〜』
「「「……」」」
ISをファッションの一種だと捉えている生徒達にとっては寝耳に水であった。ISは世界最強の
姫舞が言いたいのはIS操縦者と言う者は行く行くは無慈悲な戦場に派遣される可能性があると言う事。
国家代表候補生は何かとモデル業とかを兼任している事からファッション関連だと誤認しがちではあるがそれらはある種のプロパガンダとも言える事実を知る者は少ない。
『後、弟君に手を出そうホザいた奴。次は無いよ?』
その時、一瞬底冷えするような声音で姫舞は
『最後に、各人の『ラビット・ハント』の結果は忌憚なく採点するからその点は心配ご無用〜。採点結果はIS学園に送るからね〜。出口は彼方の扉から〜、校舎棟に繋がっているからね。それじゃあ、ばいば〜い』
姫舞はそう告げた後、ホログラムが掻き消されて地球儀のホログラムへと戻された。その直後に、姫舞が示した両開きの扉が開かれた。
暫く生徒達は沈黙したままだったが、1人が動き出すと前に倣えと言う形で次々と退室して行く。
「……全く、反応が追いつかんかったな」
「せやな……。ただ、詳しくは言わんかったが……言わんとしている事は概ね理解したわ。こりゃあ、人生のとんでもない貧乏籤を引かされたのかもせぇへんな」
「…………。まるで人殺しを肯定しているような態度だった」
「……兵器と言う側面がある以上は、そうなのだろう。……私達はまだまだ知らない事が多過ぎる。こと、IS適性が高いと言う理由で来たのだからな」
IS適性が高い者はその価値から、狙われる可能性がある。その為、政府は適性が高い学生を保護やあわよくばIS業界への有望な若手と言う名目で半ば強引にIS学園へ進学させる。
3組は一般生徒が中心ではあるが大半がその類で入学した流れであった。中学時代ではそんな事、つゆも知らずに過ごし、IS学園に来てからは来た以上は周りとは遅れている為、努力して今日に至っている。
「……或いは『此の儘だと後悔するぞ』と暗に言っているのやも知れへんな」
「…………」
IS操縦者として勉学をしているし、皆も協力して目の前の事態に当たっている。……だが、此の儘ではどうしようも無い事態に直面するのかも知れない。やはり、如何しても情報が必要だ。
「ちょっと前に、宵咲さんからも言われたもんね。スポーツの皮を被った殺し合いと同然だって」
「ああ。どの道、将来に関わる事だ……。他に道が無いか探るしか無いな……幸い、CPと引き換えに情報を売るアンダーグラウンドな奴がこの学院に居る。何かしら知っていても不思議では無いだろう」
「黎芽、何か知っているの?」
「ああ、胡散臭いが……虚構は混ぜん奴、と言う印象だったな。一先ず、聞いてみる価値はあるだろう」
「成程……今年の1年生は覚悟が足りなさそうですね」
某刻。IS学園の学園長室にて、学園長である轡木 十蔵は五稜監獄学院から送られてきた『評価』を見て、そう言葉を溢した。
内容が内容故に合格者は少ないと思っていたが、結果はそれなりに合格者が現れた。
「ただただ殺されるだけでは、使い物にはなりませんね……」
状況が状況。しかし、咄嗟の対応力は必須技能の1つだ。民間人の様に逃げ惑うだけでは話にならない。整備科志望と言えど、其方にも当然の技能は要求される。整備する者にも安全圏は無いからだ。
「この結果を見て、各企業及び政府共々、現在の1年生の採用枠を減らす方針との事です」
壁際に立っている真耶がそう告げる。
今回の『ラビット・ハント』の結果を見て採用担当者は『今年度入学者はハズレ枠』と見做して採用人数を減らす方向で調整を進めているとの事。
「ふむ、5月までの状況を見て不安要素がありましたが、やはりそうなりますか」
「はい。これまで現1年生の採用を見送ると表明した企業は10社。其処へ新たに5社が検討しています。
これで約9割の生徒がIS学園卒業と同時に路頭に迷う事になります。無事に内定を勝ち取れるのは20人居るかどうか、ですね」
「その内、IS操縦者の内定枠となると……2、3人程でしょうか」
余りにも厳しい現実である。
IS学園卒業生は大学を無事卒業しても基本的にIS関連以外の就職先が無い(女尊男卑関連の悪影響がモロに反映されてしまっている為)。
その就職先が減らされた今、非常に少ない内定枠を巡っての争奪戦が始まる事になる。代表候補生や企業代表や、既に諸事情で進路が決まっている者以外は無職確定となる。アルバイトですらも雇って貰えない。
「……優秀であろうIS操縦者はもう既に代表候補生として活動していますからね」
本気でIS操縦者になろうと思うならば代表候補生候補として蠱毒の争いに飛び込んだ方が早い。……無論、生半可な覚悟ではやっていけないのが代表候補生の世界でもある。実力が伴わなければ速やかに淘汰されるからだ。
「それから、今月の放学者は五稜監獄学院が引き取るそうです」
「ええ、その位ならば問題ありません。常々、協力して頂いています。先方の要望通りに進めてください」
「分かりました。その通りにします」
真耶はそう返答して学園長室から退室し、その姿を見送った学園長は評価表の続きを一瞥する。
「このままですと、年末には織斑君は売却が濃厚となりますね。……残念ではありますが、最も彼が選んだ以上、部外者は口出しが出来ませんね」