『ラビット・ハント』とほぼ同時刻。校舎棟。
今日も今日とて箒達一行はCPを獲得する為に、校舎棟にある刑務作業受注所に訪れていた。学業関連は計画的に進めている為、残るはIS技能の向上と、CP関連、後は学院で生活する上での情報だ。
「今日は、人が少ないですわね」
「そう言う日もあるんじゃない? 何にせよラッキーよ。待つ時間も省けるじゃない」
「……逆に実入りの良い刑務作業は締め切られてぬか喜びってオチかも知れんぞ」
「ちょっと、箒。変なフラグを立てないでよ」
受付前は閑古鳥が鳴いていた。何時もならば囚徒や生徒達でごった返している程の盛況ぶりだと言うのに、逆にこの光景は新鮮であった。
「どもどもっス〜」
受付嬢はやはり目つきの悪い寝不足娘であった。待ち時間が無い為、遠くからでも見えたのか手を振っている。
「良さげな刑務作業とか残って居ないかしら?」
「やる気充分っスね〜。それともアレを既に知っているんすかね〜?」
フィーリリアはそう告げる。先見があると言いたげな顔だ。
「アレ、とは?」
しかし、アレとは心当たりが無い為にセシリアは問い返す。
「アレ〜? ご存知じゃないんスか。五稜監獄学院じゃ10月は全員、仮装するんスよ。和奏さんも含めて」
「仮装……。あー、ハロウィンみたいな?」
鈴音が思い浮かべたのは10月末のハロウィンと言う行事。思い思いの仮装をして『トリックオアトリート』と言う事でお菓子を貰うと言う日本ではお馴染みとなっている光景だ(実際は宗教関連の行事なのだが)。
「そそ。五稜監獄学院だとそのノリが10月丸々続くんスよ。だから9月後半になると皆、その為に準備を始めるんスよ」
「10月丸々……か。この手の行事は1日か2日で終わるんだがな……」
「まーそうすね。でも此処だとみーんな、ガチで気合を入れるっスからね。商業棟には衣裳関連の商品が売られ始めるっスし、個人で手縫いで用意する人も居るっス。裁縫が得意な人に発注して作って貰うってパターンもあるっスね。まぁ、後半は個人依頼となるっスから高額になるっスけど」
「……本格的、なのですね」
「そうっス。それに踏まえて大食堂やら商業棟ではお菓子も作られるっスね」
「……もう完全に学園祭とか往来のハロウィンイベントの規模を超えているじゃない」
「仮装案件も学院長の趣味っスからね。10月期間中は囚人服は禁止なんスよ。だから、貴方達も仮装衣装を用意しておくんスよ」
どうやら10月期間中は仮装用の衣装を用意しなくてはならない様だ。その為にもCPの出費が必要だ。
「……一応、聞くが用意出来なかった場合のペナルティーとかはあるのか?」
「精神年齢が幼い子達によるソウリングでイタズラされるっスよ。仮装して居ない人はお菓子をあげてもイタズラされるんスよ」
精神年齢が幼いと言えば真っ先に大人顔負けボディのリィエルや、ガチの幼女と言えるウィキリピアが思い浮かぶ。
「まぁ、イタズラと言っても」
「人によるっスけど、半殺しかCP全額強奪っスね」
「ちっとも可愛げのないイタズラね‼︎」
幼いからこそ歯止めが効かないと言う事か。もはやイタズラの範疇を超えて強盗殺人とかのレベルである。将来が甚だ不安と言える。
「……成程、私達も仮装しなければ無事では済まないと言う事か」
条件付きの戦争が1ヶ月も続くと言うIS学園の生徒からすれば堪ったモノではない。しかし、ハロウィンらしく仮装していれば回避は出来る様である。
「楽しそうっちゃ楽しそうなんだけど、アンタ達は物騒な展開をいれなきゃ気が済まない病気にでも罹患してんの?」
「そう言うもんスよ。そんな訳で、どんな刑務作業をお求めなんスか?」
話が大きく逸れてしまったが、目下の目的は刑務作業でCPを稼ぐ為に来た。
「取り敢えず高額な奴とか無いかしら?」
「あるっスよ。蔡歌さんからの依頼で、蔡歌さんが所用で手が外せないから普段、面倒を見ているウィキリピアちゃんを見ていて欲しいと言う内容っス」
「あ、あの小さい子ね」
以前の刑務作業でデザートと戦闘時に共闘した囚徒達の名前だった。異様に身長が高い女性と幼い幼女の2人組であった。
「遊び相手になって欲しいと言う事でしょうか?」
感性は中々、ぶっ飛んでいたが対応を間違えなければ問題無いだろう。……多分。
「まー、そんな所っスね。ウィキリピアちゃんは目を離すと何を仕出かすか分からないから、議長や和奏さんが普段から誰かが見ておく様にって決めたんスよ」
「あー、歳上が歳下の子の面倒を見るってアレね」
歳の差があると自然とそう言う関係も生まれてくる。
「……因みに報酬は1人当たり6万CPになっているっスね」
「「「6万⁉︎」」」
幼い子供の面倒を見るだけで各人、6万ものCPが報酬として支払われる。破格も破格の内容と言えた。……正直、他の刑務作業よりも何倍も楽かつ高額報酬と言える。
「へぇ……良いじゃない。セシリア、箒、これにしましょ」
「……高額なの、逆に怪しくないか?」
「いや、そうとも言えないっスよ。ウィキリピアちゃんはああ見えて結構なイタズラ好きなんで、目を離すとトンデモ事件を引き起こしかねないんスよ。
実際に彼女の起こしたイタズラで和奏さんは後始末に何週間も徹夜する羽目になったスからね……。そう言う意味で彼女も彼女で問題児っス」
「……そ、其処までなのですか」
被害額を考えると6万程度、安いウチなのだろう。
「つまり変な事をしないように見ておけば問題無いと言う訳ですね?」
「ま〜、そう言う事っス。適当にお菓子をあげて餌付けしたり、昼寝させたりすれば大人しくなるっスよ。……目を離したらエラい事になるっスけど」
「……何と言うか猛獣みたいな扱いだな。まぁ、取り敢えずその点に気を付ければ問題は無いだろう。他に高額な報酬だと難しいのが多かろう」
「ですわね。何事にも多少のリスクがありますわ。……コレは少々、毛色が異なるリスクですが全体的に見て簡単な部類と言えるでしょう」
「じゃあ、決まりね。コレを受けるわ」
「了解っス。じゃあ、3人とも指定した場所に向かって欲しいっス」
箒一行は刑務作業を受けて、依頼人である蔡歌の居る場所へ向かうのだった。
刑務作業名:子守依頼
目標:ウィキリピアの子守
依頼者:ドゥーべ
報酬CP:60,000
依頼本文:私が諸事情で手が離せない為、その間ウィキちゃんの面倒を見ていて欲しいの。お菓子をあげたりお昼寝させてくれれば大丈夫。報酬は戻ってきたらその場で支払うわ。