※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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Dr.レーキュ

 

 

 

 

「……ウィキリピアさんかDr.レーキュは今、施設内に居られますか?」

 

 

 

 

 

 ヒナタに対して神楽はそう切り出した。切り出し方から恐らくその2人が簪の今、抱えている問題の解決の糸口となる人物なのだろう。

 

「ウィキちゃんとレーキュ? うーん、ウィキちゃんは今日は来ていないかなぁ。レーキュは何時も通り、開発フロアにある研究室に居ると思うよ。でも、如何して?」

 

「其処の点は簪さん本人にご説明頂きますわ」

 

「う、うん……」

 

 神楽は簪に話の主導権を渡し、その理由を説明した。その過程で神楽が紹介した旨も伝えた。

 

「……成程〜。そう言う事情かぁ〜。コレはまた稀な事情だね。倉持技研の事情は分からなくは無いけどやはり『信用』を軽視する姿勢は個人的にちょっと見過ごせないかな」

 

 理解したヒナタは一瞬だけ指を口元に当てて少し考え込む。何かしら心当たりがある様だ。

 

「付かぬ事を聞きますがやはり、とは?」

 

「うん、実はその倉持技研から『ストラトス・デザイア』に対して業務提携と言うか技術提携の打診があったんだよね。その時は興味無かったから適当に聞き流していたけど。そんな良い加減な姿勢なら締結する価値は無いかなぁ」

 

「ね、ねぇ、カグヤ。この人ってそんな権限が……?」

 

「ヒナタさんは、ストラトス・デザイアの方針の決定権を持つ議長でもありますわ。その手の交渉権は彼女にあります。最も、問題児だらけで胃が蜂の巣になりそうなこの企業で彼女くらいしかこんな役職に就けないでしょう」

 

「そ、そんなに……?」

 

「…………世の中には知らない方が幸せな事がありますわ」

 

 詰まる所、この施設の職員の纏め役と言う事である。何となくミソラやユリエもリーダーっぽい雰囲気はあったがそれよりもヒナタの方が上の人間の様である。……普通に下剋上されている気もするが。

 

「……それに」

 

——ヒッ……‼︎

 

 思わずゾッとする様な声音が聞こえた。絶対零度と言う表現があるのならば、今此処にある。

 

「……自分で受けた仕事を陸に熟せないんじゃ、話にならない。早々にこの世から退場して貰わないと……弟君の目の毒だよね」

 

 声音は冷静だが、内容は理不尽其の物であった。

 

「じゃあ連絡は入れて見るね〜‼︎ 研究中で眼中に無かったら申し訳ないけど出直しになるかな、取り敢えずちょっと待ってて〜」

 

 一瞬で先程の声音は姿を消してハイテンションな口調に戻したヒナタは小型の通話用の空間ウィンドウを展開して施設内内線通話を開通、要件人間に連絡を入れる。暫くすると、開通した。

 

「あ、もしもしレーキュ? 実は製作関連の……え? あー、またそう言うトンチキ武装を造っていたの? ふーん、まぁ本人がどうするか分からないけど、うん、じゃあ後は宜しく」

 

 時間にして数十秒程で通話は終了した。

 

「レーキュは君の話を聞いてくれるみたいだよ。タイミングが良かったのもあるけどね」

 

「……どう言う、意味?」

 

「レーキュって結構、人の選り好みするんだ。気に入った相手じゃないと話すら成り立たない程の性格に難がある偏屈屋。

 昔、何処かの国家代表の機体製作の依頼が来たんだけど『気に入らない』と言う理由で突っ撥ねて食い下がったら赫映姫みたく五つの難題染みた無茶振りを吹っ掛けたり、何処かの企業のスカウトに対しても殆ど『気に入らなかった』から、間接的に倒産に追い込んだりしてたよ」

 

 要するに面倒臭い性格だと言う事である。ぶっちゃけ話するだけでも危険行為じゃないのか?と思いたくなる。

 

「……ウィキリピアさんとどっこいどっこいな気がしますがね。お互いに」

 

「あはは、それは言えているかも。ウィキちゃんもウィキちゃんで結構、面倒臭い性格だもんね。性格の悪さでは2人とも甲乙付け難いかな? あ、本人にはこの事は内緒だよ? 鮫の大群を嗾けられちゃうから‼︎ あの子は口より暴力が先に出ちゃう子だから」

 

「さ、鮫ッ⁉︎」

 

 何故、其処で鮫が出て来るのか理解出来ない。本当に唐突にそんな単語が出てくるのやら……。

 

「さてと、連絡は入れたから総合案内係の職員にその旨を伝えてね。開発フロアは基本的に関係者以外立ち入り禁止の舞台裏のフロアだけど、許可は出したから案内はしてくれるよ。あ、でも変に彷徨いちゃダメだぞ?」

 

「う、うん、分かった……」

 

——基本的にそれ以外の場所に立ち入っちゃ行けないのは分かっている……。

 

 電脳空間フロアを後にして連絡を受けたヨウカクが金庫扉前で待っていた。

 

「やほやほ、さっきぶりだね〜。案の定、時間が掛かるみたいだったね。で、あの偏屈屋にも要件があったんだ」

 

「……迷惑、でしたか?」

 

「いや、それは別に良いけどさ。許可は出ているから案内してあげるけど、口外禁止だよ?」

 

「は、はい……」

 

「あ、先方からアンタのISの進捗具合を見たいと言っているからロッカールームに寄るわ。本来なら、持ち込み禁止だけど今回は特例中の特例だから」

 

 ロッカールームにて簪の待機形態のIS『打鉄弐式』を持ち出して廊下に戻る。その後、ヨウカクの案内の下、『拘束フロア』の奥にある『関係者以外立ち入り禁止』の扉を潜り抜けて無機質な廊下を歩いて行く。夜間である為か、すれ違う人は居ない。

 幾つかの区間分けの扉を抜けると研究施設の様なフロアに出た。広いフロアであり各所に大型の装置が多数置かれているのが見てとれた。

 

「ウチで使われる調教する為の機械や器具は全部、自前で製造開発整備しているわ。IS技術の根幹が此処にある」

 

——……並のIS企業とは段違いの設備……。倉持技研よりも大型で細かい……。

 

「……簪さん、余りキョロキョロするものではありませんわ。そんなに淫具で遊びたいのですか?」

 

「う、ううん⁉︎ 違うよ⁉︎」

 

——やっぱり⁉︎

 

 広い開発フロアを抜けた先に伸びる廊下。其処は先程の雰囲気と打って変わって怪しい雰囲気に包まれている。暗い空間に壁際の端にブルーライトが点灯している。壁際の窓ガラスの向こう側には多数の培養槽が陳列されており一際、異様な雰囲気が漂う。

 

「……培養槽に興味があるの?」

 

「え?」

 

「培養槽に放り込まれての調教なんて、早々無いからね。興味を持つのも無理は無いわね。私も時偶にやるから、その気持ちは分かるけど……また今度にして頂戴」

 

「う、うん……」

 

——培養槽と言えば手足を固定して無防備な乳首や股間に機械の触手で弄られたり、媚薬漬けで改造……あ、でも日常生活に支障が出るかも……。

 

 そんな妄想を抱きながら培養槽が連なる部屋を抜けた先に両開きの扉が見えて来た。

 

「Dr.入るわよ」

 

 ヨウカクはそう言いながら扉を躊躇いなく開け放った。

 

「私はもう戻るわ。部外者が居ては邪魔でしょうからね」

 

「言い出したのは私ですが、代表候補生と言う立場上、同席するのは憚れます。特に相手がDr.だと邪険にされる可能性がありますので……手伝える事がありましたら連絡を下さいまし」

 

「う、うん。仲介してくれたし……」

 

 此処でヨウカクと神楽は離脱。簪、1人で研究室に入る事となった。

 

——広っ。

 

 部屋の内装は如何にも研究室と言った薬品棚と整備室の様な工具類やISを架ける為のハンガー設備等が合わさった奇天烈な空間が広がっている。天井からは大型の機械が吊り下げられており、壁際には試作品なのか様々なパーツや武装等が立て掛けられていた。

 

「……待っていましたよ」

 

 その部屋の中央にて、多数の空間ウィンドウを展開して何かしらのデータを確認している影が見えた。褪せた卯の花色の長い髪を靡かせた女性が居た。甕覗色を基調とした修験者を彷彿させる装束の上に白衣を羽織りと言う近代的なこの空間に置いて余りにも場違いな服装であった。

 

——和装の上に白衣ってアンバランス……。

 

「お初目に掛かります。私は此処の開発フロア主任のレーキュと申します。単に皆様からはDr.と呼ばれていますが……呼び方に関してはお好きな様に」

 

「は、はい。ドロシー、です」

 

「……此処は調教を行う場では無く何よりも、人の目もありません。そうでしょう? 更識 簪」

 

「……は、はい」

 

 レーキュは既に話は聞いているらしく、余計な話は時間の無駄との事。その為、早速、機体を見せて欲しいと言われた。

 

「おいで……打鉄弐式……」

 

 簪の周囲に光の粒子が収束され彼女の専用機(未完成)が顕現する。打鉄の後継機かつ、発展型を想定されている。スカートアーマーは機動力を確保する為に独立型のウィングスカートに換装されている。防御主体の打鉄とは打って変わり機動型だ。

 だが、未完成故に浮遊する事は叶わないので速やかに跪く姿勢となり装着解除して降りた。

 

「武装は……まだ。それに機体も中途半端な状態のままだから……」

 

「……その様ですね。ですが、正直に言わせて貰いますと、使われている鋼材の材質は耐久性が心許ない粗悪品ばかりです。それに明らかに途中で付け替えた痕跡も見受けられますね」

 

「……え?」

 

 その言葉に簪は言葉を失った。途中で付け替えた?

 

「此の儘、機体製作を続けますと恐らく実戦……或いはそれ以前の試運転中に事故を起こすでしょうね……。良くて爆発四散でしょうか」

 

 機動時の圧力等で自壊し墜落すると言う意味である。

 

「み、見ただけで分かるの?」

 

「……こんな子供騙し程度の小細工、見抜けずして研究者や技術者を名乗るなど言語道断。

 それから付け替えた人物は右利きが4人、左利きが1人。身長は160〜170程、全員が恐らく男。簪さん、該当する人物に心当たりはありますか?」

 

——この人、千里眼かサイコメトラーか何か⁉︎

 

 然も、パーツを粗悪品に入れ替えた人物の大まかな特徴も見抜いた。

 

「……わ、分からない」

 

「事情から考慮するにケチりたかったのかも知れませんね。開発契約を無期限凍結する為に違約金代わりにISコアを譲渡するが装甲パーツ等の費用を回収したかった……そんな所でしょう。

 ふむ……技術者として正にムシケラにも劣る存在ですね。早々にこの世から抹消した方が人類の為かも知れませんね」

 

 ヒナタから性格に難があると言われたが、言動もまた物騒であった。そして、開発企業により簪に譲渡される前に使われた装甲等は粗悪品にすり替えられていた様である。





 Googleでレーキュって検索すると神獄塔メアリスケルターの項目と学戦都市アスタリスクのシルヴィア・リューネハイムが出てくる……(心当たり普通にあるけど)。
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