大食堂でもはや料理大会とは言い難い状況に陥っているその頃……。
「うにっ(/・ω・)/」チリン
「ごめんなさいね、いきなり呼び出しちゃって」
「い、いえ……大丈夫、です」
簪は蔡歌に教室棟の一室へと呼び出されていた。現在、殆どの生徒達は大食堂に居る為に他の場所は閑散としていた。
——……10月に入ったら皆、仮装するって言っていたけれど……。
2人の服装を見てみると、普段とは全く異なる装いに身を包んでいた。ウィキリピアは白衣に桜色の袴と言う桜巫女を彷彿させる格好であり、鈴の髪飾りを付けた装いだ。そんな小さな頭の上に更に小さな黒い兎みたいなモノがちょこんと乗っかっている。
対して蔡歌は豊満な胸故に横乳を思いっきり露出させるハイレグスーツに網タイツ、そしてウサギの耳を模したカチューシャと言うバニーガール姿。お姉さん風貌故にかなりセクシーかつエレガントに着こなしていた。
かく言う簪も数日前に神楽と一緒に見繕ったハロウィンと言えば魔女と言う事で黒ローブにトンガリ帽子と言うスタンダードな魔女の格好をしていた。普段から掛けている眼鏡も相俟ってより一層、それっぽく見える。
「ふふっ、魔女の格好はベターね。魔女と言えば4月と5月の境目なのだけれど」
ハロウィンには魔女と言う選択をした簪の仮装を見て蔡歌は含み笑いをしながらそう表する。
「……何故ですか?」
「『ワルプルギスの夜』って、聞いた事が無いかしら? 五稜監獄学院ではそれに因んでその日には魔女の格好をする行事があるの」
「いえ、初耳です」
——……何と言うか、この学院って宗教的な慣例を盛り込んでいるみたい……意外な観点かも。
「まぁ、この手の行事に関してはこの学院には色んな子達が居るし……学院長の趣味も多分に含まれているから知らないのも無理は無いわね」
「それで、ご用件は何ですか?」
——この2人には以前、ペットプレイをして貰った事がある。
簪は『臨島学校』の時にこの2人からお仕置きと称してヒトイヌにされて調教された事があった。その時の事を思い出して少し秘所が濡れて来た。商業棟での市販品である為、其方の意味では対策は皆無だ。
「ふふっ、残念だけど其方の理由じゃないわ」
「えっちー(ーwー)」ウニーッ‼︎
簪が妄想しているのを見越してか蔡歌は違うと予め先手を打って来た。
「ち、違うんですか……」
——魔女の格好をしているから『魔女狩り』と称して拷問部屋で調教されるのを期待していたのに……。魔女っ娘なら、縄で縛ったり古めかしい設備で監禁されるシチュエーションくらい用意出来る筈なのに。
「コラコラ、白地に落ち込まないの。少し前に機械で彼方此方、ヤッたでしょう?」
「……それで、本題に入ってください」
其方の理由では無いので話題を本題へと戻した。其方じゃ無ければ何だと言うのだろうか?
「貴方は『ラビット・ハント』の事を聞いているかしら?」
「はい。IS学園の一般生徒向けに殺し合い同然のデスゲームを仕掛けたとか」
「ええ。アレはIS学園の生徒達の成績を付ける為の試験みたいなモノもあったのだけど、ある種の最終調整に近い側面もあったのよ〜」
「最終調整?」
「そ、そろそろISを用いた『戦争』を考慮しなくちゃいけないのよね〜。私達も」
色んな意味で忘れがちだが、五稜監獄学院の生徒達は皆、ISを所持している。学院内では使用制限されている為に使う機会は滅多に見られない。
「……! もしかして『ストラトス・デザイア』の電脳空間区域は」
「察しが良いわね〜。あの技術を使用してのトライ&エラーやデバック等を繰り返していたのよ。その過程で貴方達にテストプレイ兼楽しませていたってワケ」
仮想現実空間でのお楽しみを提供しつつ彼女達の思惑の為の実験体にされていた様である。中々、上手い事を考えていたらしい。
「じゃあ……学院内でも導入、開放するつもりなんですか?」
「ええ、そして最後の調整の為のテストプレイを貴方にお願いしたいのよ。勿論、報酬は用意してあるわ」
「具体的に何をすれば良いんですか?」
「あら? 即答ね」
簪が受ける受けない以前に内容を問うた事を見て蔡歌は少し疑問符を呈した。
「……何故って、私は人権を放棄しました。そして、私はこの学院の所有物に過ぎません。つまり、初めから拒否権なんて無いんですから」
簪はそう言い纏っていたローブをズラして胸元の肌に刻まれた管理用のバーコードを見せた。人権破棄し命令には絶対服従と言う奴隷……簪はこの学院での地位は最下層に位置しているのだ。
「うふふふ、そうね。そうだったわね……。IS学園の生徒達の存在もあってすっかり忘れていたわ。ごめんなさい、愚問であったわね。
内容は簡単よ。指定したフロアでISで戦って欲しいのよ」
「……ISで戦う? ですか?」
「ええ、実はちょっと前に今度は『セレクト・スターズ』と言うゲームをする事になってね。
どうせならば、其方の予行練習も一緒にやってしまおうと思ったのよ。ぶっつけ本番でやると不測の事態が起こる可能性があるからね」
『セレクト・スターズ』に関しては初耳ではあるが、恐らくは『ラビット・ハント』と同様のIS学園の一般生徒向けの残虐性のあるゲームであろう事は予想出来た。
「……成程?それで、誰が相手になるんですか?」
——あの和奏って人は本当に何をしたのか分からない。他の人も相当、ヤバい兵装を所有していても不思議じゃない……。
「簡単に言うわね。この子が創った自立思考のISと戦って貰うわ」
「うにーっ(/・ω・)/」ウニーッ‼︎
蔡歌はそう言いウィキリピアの脇を掴んで持ち上げる。小さいからかその体勢は絵になっていた。……頭の上の黒兎がぴょんぴょんと跳ねている。
「え、つ、造った……?」
「驚くのも無理は無いわ。この子は篠ノ之博士を除いて唯一、ISコアを製造する事が出来るのよ。対してDr.はISコアさえあれば簡単に装備品を組み上げれるけれど、ISコア自体は意図して造らないのよ。まぁ、造ろうと思えば造れるでしょうけれど」
「…………」
その言葉に簪は絶句する他に無い。見た目は幼い体躯の幼女で舌足らずで言動も幼い。それが天災に比類する程の存在だと言われて誰が信じようか?
「……ふふ、理解はしなくても良いわ。『特別』と言うのは特別な苦痛を強いられる……でも、この子には理解するには幼過ぎるの」
「うにー(/・ω・)/」パタパタ
——秘匿された学院……。この子の存在が明るみになるとどんな事が起こるか……容易に想像出来る。
何故なら先例があるからだ。絶えず保護者を付けるのも頷ける。イタズラ好きも加われば何を仕出かすか分からない。
「さ、この話はお終い。では、他にも募っているから早速、その場所に向かいましょう」
「は、はい‼︎」