「まぁ……半ば、この結果は読めていたよ」
猟奇的な料理大会が開催されていた大食堂。しかし、今となっては爆発事故により大食堂がメチャクチャになってしまいなし崩しに中止、優勝者は無しと言う結末に終わった。和奏本人としては『防腐処理』ですら対応しきれない毒物の処理をしなくて済んだと言う意味で安堵の感情の方が強いが。
その為、現在大食堂では悪魔っ娘メイド群団による後片付けが行われており和奏はその一角でその光景を見ながら事の行く末を見届けていた。と言うか良い加減に足を返せ。
「よもや、ケーキが爆発するとは思わんかったなぁ」
「あんな無茶苦茶な組み合わせで成立するケーキなぞ、あって堪るかよ」
学院側の囚徒達は例によって例の如く無傷でやり過ごしていた。
しかしながら、観客として集まっていた学園側の囚徒達はそうとは行かずに爆発の余波により重軽傷を負っており、スタンバイしていた医療棟の囚徒達により担架で担がれて移送されていた。
「あ〜、本当に残念〜。折角、張り切って作ろうと思ったのに」
「ん。優勝自体が立ち消えになった……」
「料理大会と天下一乱闘会を合算したらああなるわい……」
心底残念そうなサリアとリデア。正直な所、彼女達の手料理も口にするには憚られる……最も、そんな事は口には出せないのだが。
「んで、大将。例の『セレクト・スターズ』に関して何か聞いてへんか?」
「……流石、乙音。耳が早いな……生憎ながらその件に関しては俺は関わって無ぇぞ。
「あ、そうなん? 物騒な案件にゃ、大体が大将が絡んどると思っとんたんやけどなぁ〜」
「……ま、どう言った内容かは憶測しか言えないが姫姉が言うには最終調整はほぼ終了したそうだ」
「と言う事は、仮想現実空間が使えるって事?いやぁ、結構長かったもんね〜。『ストラトス・デザイア』でバカな人達を使って何度もトライエラーを繰り返していたし〜」
「……ま、それでもサーバーが悲鳴を上げるから何人かは出禁になるだろうがな」
「大将、自分で言ってて悲しくならへん?」
「ま、其方はバカ共が勝手にやるだろうからな。個人的には別の案件にかかりたいんだよ」
「……別の案件?」
「『創造主』の件だ」
その言葉にリデア達は息を呑んだ。その言葉だけで誰なのかは察しが付くからだ。
「あの方の事だ。秘密裏に事を動かしている『セレクト・スターズ』の件も既に筒抜けだろうな。……恐らく、そのタイミングで来校する可能性が高い」
「『創造主』に謁見が許されるのは基本的に大将だけやしな。……気が触れてて相当に捻くれた人格やって話やしな」
「………………」
——実際は違うが、誤解を解く必要は無いのだろうな。あの方にとっては、其方の方が好都合なのだろうよ。気が触れてて話が通じないキチガイ狂人って言うレッテル……。そりゃ、誰も話したがらない虚像だ。
「ま、そう言う事だ。話を戻すと俺がやる事と言えば日時を設定する事だけだ。其方の件を踏まえて後々、痞えない日を選ばないとな」
「……ん?」
意識が覚醒する。視界に広がった光景は青紫色の大空の様な空間。自分はその空間に浮かんでいる複数の内の1つの六角柱の柱の上に立っていた。自身の機体、『打鉄隷式』は既に完全展開された状態であった。
——成程、地上は無くて空中戦、か。
柱の上から眼下を見下ろす。地面は見えず、一面を雲海が覆い尽くしている。イメージとしては成層圏に佇む不思議な遺跡群と言った趣だろうか。
「電脳空間だからか、現実ではあり得ない戦闘環境を用意する事も造作もないって訳か」
隣から声が聞こえてくる。同時にこの仮想空間にログインしたシャルロットの声だ。
「……まさか、ボクの元専用機のデータも保存済とはね。何処まで末恐ろしい事やら」
かく言う彼女は橙色のカラーリングのラファール・リヴァイヴをその身に纏っていた。フランスで元専用機と言う事からラファールを素体にフルカスタムした機体を専用機として使っていたと思われる。
「……流石に眼下に墜落したらマズいな」
IS学園であれば戦闘する場所はアリーナであり、地面がある為に墜落しても地面に激突、クレーターを作るだけで終わるのだが、見渡す限り眼下には雲海が広がっており仮想空間と言う前提もあるが、かなり高い位置になっている。もし、撃墜されれば其の儘、雲海を突き抜けてしまいかねない。その場合はどうなるかは分からないがシステム的に敗北や戦闘不能による離脱扱いになるのだろうか。
「シールドエネルギーや衝撃による意識喪失、姿勢制御にも気を配らないと行けない、と思う……」
「……そう考えるとIS学園なんかよりも五稜監獄学院の方がよっぽどハードな試合や模擬戦だろうね。……戦闘環境と言う観点から見れば」
悪天候や悪環境でも戦闘は起こり得る。そう言う意図もあるのだろう。
「それよりも、あの子は何処だろう?」
テストプレイとは言うが対戦相手が居なければ話にならない。この場所から見えるのは眼下の雲海と雲海の地平線の先に見える青紫色の宇宙と大気中に散乱している様々な向きの六角柱の柱ばかりである。この場所からではウィキリピアの姿は確認出来ない。
「……ッ‼︎ 上だ‼︎」
何かに気付いたシャルロットは口を荒げ、その声に釣られて簪は上空を見上げた。其処には彼女、ウィキリピアがいた。
「……待たせた」
青紫色の宇宙空間が見える空を背景に、彼女は居た。注連縄が巻かれた要石に腰掛けており、半透明のシースルー状の袖に両手が覆われた巫女服とはまた異なる和服をその身に纏っていた。左目を風車で覆っており、その目は瞳孔が無く無機物さが漂う。
その手には先端が風車があしらわれた錫杖が握られておりそれが主武装だと思われる。
「アレが、彼女が新しく作ったIS……?」
——……機体装甲は全く見られない。やっぱり、この学院のコンセプトは元来とはかけ離れているみたいだ。
「彼岸が見たいか?」
「ッ‼︎ 簪ッ‼︎ ボサっとするな、来るよ‼︎」
シャルロットが叫ぶと同時、ウィキリピアは錫杖を振るうと同時に周囲に散乱していた六角柱の1つが凄まじい勢いで簪達へ向けて飛来。間一髪の所で双方共に反対方向へ飛び出す事で回避した。ぶつけられた六角柱は粉々に砕けるも、その柱には引力は働いていないのか無重力空間の様にその残骸が飛散するように飛び散った。
『いきなりかよ‼︎ やるなら始めるって言えよ‼︎』
公開通信でシャルロットが憤る。入場した途端に攻撃を仕掛けてくる。試合開始とかそんな宣言はこの場にはありやしないのだ。
——……テストプレイだからと言って手加減はしてくれないみたい。負けたらご褒美……いや、確かに其方も欲しいけど、真面目にやらなきゃ別のお仕置きに変えられるかも知れないや。
簪は薙刀を手元に量子展開で展開して構え、自身よりも上空に佇むウィキリピアを見やる。普段は人形沁みた風貌だが、今回に至ってはより一層不気味な程に人形沁みていた。……他にも口調も変わっている様にも思えたが、今は考えない事にした。
「……行きます‼︎」
先程の様な六角柱による大質量の投擲攻撃の直撃は受け切れない。この学院の囚徒達のISの操縦練度はかなり高い事は既に分かっている。故に相手が幼いウィキリピアと言えど相手のペースに乗せられるのは危険だ。ならば、此方のペースに持ち込むのが最善と言える。
『ステイ』
怪の災害類がLXV。
何処となくまどマギシリーズの魔女関連のデザインを彷彿させる黒い風車で頭部が覆われ錫杖を持った地蔵の様な姿をしている。
淡々とした口調で話すが節々に圧が感じられる。
進化適応すると容姿が激変し、地蔵のような姿から要石に腰掛け片目を風車で隠した銀髪の美少女の様な姿になる。
色々な意味で容姿がブッ壊れ気味な他の災害類と違ってかなり人間に近く整った容姿となる。が、話し言葉の圧力が強くなり、言動から精神に干渉する能力を持っている模様で彼岸に招き対象の生命活動を断とうと、災害類の中では明確に『死』に直結した行動を取るが、相手を殺して終わり……と言う訳ではなく共に居たいと言う意図も見え隠れしている。(実際に『我ら』や『共に』と言った言葉が台詞に交ざっている)
クエストは超ディザスター級。
メインギミックはダメージとポイズン。変換ではワームも登場する。
道中やボス含めてかなり高い防御力を誇り、特にボスは200万と言う非常に高い防御力に加えてパネル弱体化やカラーゲインもある為、中途半端な火力では突破はままならない。
このクエストでは殆どの攻撃が単体吸収攻撃となっており、対応するパネルが少なければ被ダメージが下がる為、バリアや変換スキルがあれば耐久にゆとりが出来るが、中にはCパネルやボムパネル吸収攻撃もあるので注意が必要。
超ディザスター級の中では即死行動が無いが、吸収攻撃が大半なので其方が即死級になる可能性があるが。
種族はヒューマン。地蔵……つまりそう言う意味なのだろう。
余談だが、ユニットとしての性能だが、ディザイアに何の恨みがあるのかと言いたい程にメタっており、そうでなくてもUnknownや攻撃タイプが相手であればリーダースキルは機能する。