「さて、リデア 。今日の予定をもう一度」
IS学園には生徒には知らない場所は沢山存在する。各種IS学園特有の特権がある生徒会長、教員陣すら知らず、一部の教員にしか知らない区画も存在している。あの織斑 千冬すら知らない区域も存在している。
そして此処はIS学園島地下にある機密の地下通路。IS学園と東京地下を繋ぐ海底トンネル……IS学園へ招かれる来賓でさえ此処を使用する事はあり得ず専ら地上の東京とIS学園島を繋ぐ大橋を使用する。つまり、使用する者達はIS学園にとって最も重要な相手となる。
その通路を一台の黒いリムジンが走行して居た。その車内の客室内にて、茶髪長髪の青目のリーリスと白髪長髪に金眼のリデアが向かい合う形で座って居る。
「はい。この後、『ストラトス・デザイア』に戻り『開発フロア』のレーキュに件の人権喪失者を受け渡す。その後、遅めの昼食を挟んで午後から幹部連中との定例会議の予定……となっている」
「……つまり、外部の連中と相対する必要性は無い、と言う訳ね?」
「はい、突発的状況が無ければ、恐らく……」
「そう……」
リーリスは頭部の茶色の髪を掴みズルりと脱がし——。
「女装、キッッッッツ……‼︎」
長い茶髪はウィッグであり、その下から出て来たのは黒い髪、童顔であった事もありリーリスは女装をしていたのである。
白い白衣に黒袴と言う和装も、女が着ても男が着ても違和感が無いからである。
「和奏君、お疲れ様。此処最近、一段と女尊男卑が酷くなって来たね……」
リーリスとは女装時の名前で本名は和奏であった。そもそも女装して居る理由は言うまでもなく昨今の『女尊男卑』思考の蔓延が理由だ。
女尊権利団体の専横により男性側は肩身狭い状況が続いており仕事、一般生活と凡ゆる場面で不利益を被っている。
果ては男性と言うだけで散々な状況に追いやられる事も多数ある。和奏の場合、状況が状況なので対外的には女装して『リーリス』と言う名前で相対せざるを得ないのである。
和奏は童顔で女装すれば女の子に見えるのが不幸中の幸いで声質を変えれば余程、勘の鋭い奴でなければ気付かれない。更に基本的に秘書を務めるリデアが対応する形を取っている。
「ったく、本当にソレだ。特に首都圏なんか政治家連中以外の野郎なんて絶滅危惧種通り越して絶滅したんじゃね? と思うくらい見ないしな……」
「大半の企業が倒産に追い込まれてその跡地に女性向けのアパレル関連企業が乱立しちゃったもんね……」
その為、首都圏内では男性陣は瞬く間に駆逐されている。更に女尊男卑が故に非常に住み難く……男性と言うだけで一気に排斥される為に誰も寄り付かない土地と化したのだ。首都圏だけあり女尊男卑思考も強いので男性からすれば住むのは愚かとても行きたくない土地と見做される様になって来て居る。そりゃ、そうであった。
「……まぁ、その辺はどうでも良いさ。どの道、需要供給の面で遅かれ早かれ、破綻するのは目に見えているからな。その辺は政治家連中が屋台骨を自ら腐らせて自滅するか、或いは財政破綻を起こしてこの国が分裂するか……まぁ、勝手にやれば良いさ」
——と言うか、分裂目前な気もするし、西日本は既に見切りをつけつつあるしな。
『ストラトス・デザイア』の総代である
「さて、そんな話は一旦終わりにしよ。私達がアレコレ言っても何も変わらないし、今は別の話をしよう、和奏君」
「ああ、確かにソレは言えているな」
閑話休題。リデアは昨今情勢の話を一旦、打ち切り自分達の話に戻す。
「……はい、コレ」
そう言いリデアは服の内側から小さな機械を4つ取り出した。ピンク色で上部にはメモリが刻まれたダイヤル式の器具が付いて居る。『無』から『強』と言う文字も見える。1つは弱になっているが、他は無に指されている。
「あのー、リデアさんや。コレは……何?」
「ん、電動バイブの無線リモコン。3つは件の人権喪失した物のアナルの中に突っ込んでいる」
格納されたトランクはリムジンの荷台に乗せられて居る。人権を喪った存在は人扱いされない。
「後の1つは……?」
「……ん、私のアナルに入れて居る」
——君は今日1日、ソレを突っ込んで行動して居たのか⁉︎
「だって、今日はミソラの番だし……。だったら玩具で我慢するしか無いもん……」
リデアはそう言い顔を赤らめた。彼女達は日替わりで和奏に夜這いを仕掛けて来るのだ。理由は勿論、和奏とセックスしたいからである。
有り体に言えばハーレムみたいな状況なのだが、和奏は言い方は悪いがヘタレな上にそう言う事に疎い為に余り上手く事が進まない。被虐願望な上に隷属欲のある彼女達にとっては不満の種でもあった。その為、夜這いを仕掛けても和奏本人の決死の攻防戦が日夜繰り広げられている。
そもそも和奏としては気恥ずかしさから彼女達によるコスプレ奉仕が精神的限界だったのだ。
流石に彼女達が望んでいる調教プレイと言うのはかなり抵抗感があったが故に、立場上は和奏が『ストラトス・デザイア』の総代ではあるのだが施設内の設備等の運用は専らシノアやユリエ、ヒナタ達と言った彼女達に丸投げ状態なのである。
「コレを俺に持たせてどうしろと⁉︎」
「むー……察しが悪い……。本音の希望として、麻縄で縛り上げて吊るされて抵抗出来なくしてから、寸止めで焦らしつつ責められたいのに……」
「性癖とか色々、誤解を招くから止めてくれませんかね?」
「そうかな? 女の子を緊縛して気持ちよくさせるのが
そして、ストラトス・デザイアの職員ほぼ全員が和奏の性奴隷やメイドや所有物と言う構図(当たり前の様に和奏本人の意思は丸っ切り無視されている)が成り立ってしまっている。
「ソレが常識だなんて断じて認めたくない」
——……どうしてこうなった。いや、本当に。
「和奏君、取り敢えずどれか強めにして責めておこう? 適度に解して置かないと開発する際に時間ズレが起きるから」
「その前に、君に仕込まれたバイブのリモコンはどれなんだ?」
——嫌すぎるロシアンルーレットなんだけど⁉︎
「……む、教えたらやってくれないでしょ? それが嫌なら私をバニーガール姿で亀甲縛りにして拘束してから乳首をコリコリして虐めて?」
何ともマニアックな要求であった。内容がかなり特殊過ぎる。
「ソレ、容認したら他の連中も似た様な要求してくるんですけど⁉︎」
「じゃあ、どのリモコンが教えないよ? 1つは動いているから残り3つだね」
リデアは年相応に期待している様な眼差しを向けている。コレでもまだ我慢している方との事。
——俺、籤運は致命的に悪いからこう言う運試しは控えたい……。
因みに今年の御神籤は無事に『大凶』を引いた。その為、この運試しに近い3択だとリデアに仕込まれたリモコンを引いてしまいそうな気がするのだ。
これ以上、焦らすと箍が外れて飛び掛かって来そうなその時に和奏とリデアの間に1つの小型の空間投影ウィンドウが展開された。然も真っ暗であり音声のみ通達されるタイプ。和奏とリデアが知る限りコレを使う人物は1人しか思い当たらない。
『……どうやら、お楽しみ中だったよぅだなぁ。小僧ォ……?』
ドスの効いた声音。やはり予想通りの相手であった。
「いや、寧ろ助かった感満載なんだが、四十院の大将」
四十院の大将。つまり関西方面を主体する財閥、四十院グループの総帥がこの通信の相手であると言う事である。
『いいや、若いモンのズッコンバッコンの邪魔しちゃあ、悪いわな。セックスの邪魔する奴ァ、戦車に轢き潰されちまいなって言う諺があるだろ? お前らがヤってからにしてやらぁ』
「そんな諺、初耳なんですがね⁉︎ と言うか若い奴って言っても俺らと2歳くらいしか歳の差無ぇだろ⁉︎」
『あ゛ぁ゛⁉︎ まだ誰1人嬢ちゃんを抱いてねぇ、ケツの青いクソガキ童貞がイキ上がるんじゃねぇ‼︎』
「はぁ……」
ボロカスの言い争いを始めてしまいムードも滅茶苦茶になってしまったのを見てリデアは人知れず溜息を吐いた。