※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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アブダクター

 

 

 スタート地点たるフロアを抜けた先は大型の機械が犇く空間に出た。巨大なタンクが規則正しく並べられており、今も稼働している事が窺える。天井付近は大小数々の歯車が動いており近未来とアンティークな雰囲気が両立されていた。

 

「さて、先ずは何処に向かいましょうか?」

 

「……何処にって言われても、特に目的地は無いんじゃ?」

 

「ええ、目的地は自分で設定するモノですからね。単に探索と言っても道標がある訳ではありませんわ。デバックモードみたいなモノですので取り敢えず、奥へ奥へと進んでみましょう」

 

 どの道、β版の為にこのダンジョンフロアで発見したモノは反映されない。β版と雖もダンジョンフロアがどう言う状態か確認する必要があるのだろう。そう考えて一先ず廊下が見えたので道なりに進んで行く事にした。

 

「……そうですね、ドロシーさん。モノは試しに捕まってくれませんか?」

 

「捕まる……?」

 

「はい。先の説明で戦闘不能中にエナミーに捕獲される以外にも、拘束攻撃を受けて抵抗せずに拘束完了まで放置するのともう一つありますわ、……アレをご覧くださいな」

 

 廊下を抜けてまた別の広い空間に出る。吹き抜けの広い空間で階段が幾つかあり、複数の方角へアクセス出来る小規模の中継地点の様だ。

 神楽が指示す先は高架通路。其処には人を1人包めそうな大きさの水母の様な姿をしたロボットが移動している。青色の半透明で見る分には綺麗に思えるが……。

 

——アレがこのダンジョンを徘徊している敵キャラ、エナミーの一種……。

 

「アレはアブダクターと呼ばれる種類のエナミーですわ。プレイヤーを発見次第、直接捕獲して何処かの監禁エリアや調教エリアへと誘拐しますの」

 

 倒す事は出来るが、捕獲する事をメインにしている為か、他のエナミーよりも耐久性は強めになっているとの事。

 

「……エナミーによって捕獲する為の手段は様々ですが……手っ取り早く囚われの身になりたいのならアブダクターを利用する事をオススメしますわ。特に必要な条件はありませんので」

 

 その説明だと条件が揃うと捕獲行動に移るエナミーも居るようである。

 

「本来ならば捕虜になると規定時間か救助されない限り解放されませんが、β版ですのでその機能はありません」

 

 β版に限り捕獲されてもエントランスに戻る等の退室は可能……この点は事前にヒナタから説明されていた。

 

「なら、やってみる」

 

——仮想現実だから多少、過激な真似も可能な筈……そろそろ説明聞くのも疲れて来たし。

 

「では、此処から先は別行動と致しましょうか。こう言うピンチと言うのは逸れて孤立した時、際立つと言うモノ……何かあった時、同じチームであれば連絡する事も可能ですので」

 

「良いの?」

 

「はい。私も説明するのも疲れて来ましたので……そろそろ、陵辱されたいのですよ」

 

 どうやら神楽も考えている事は同じ様である。そう言う訳で神楽は早々に離脱し、別の方角へと行ってしまった。

 

——行っちゃった……。まぁ、良いかな。じゃあ、私もそろそろ行こうか。

 

 曲がり角から神楽の姿が見えなくなったのを見計らった簪は薙刀を構え直して向き直る。目的が無ければ自分で作れば良い。

 

「……取り敢えず此処を抜けて散在しているアイテムとか集めてみよう」

 

——取得物の概念があるから、多分配置されている筈、多分。

 

 地図の類は無い為に道なりに進むしかない。と言っても工場の内部なのである程度は憶測が付く。現在地はこの大広間の最下層、螺旋階段で高架の上に上がる。

 

——アレがアブダクター……。

 

 高架通路には下から見えた水母型のロボットであるアブダクターが通路上を行き交う形で徘徊……いや、哨戒している様にも見える。

 

「……あっちにも居る」

 

 螺旋階段の場所を中心に十字上に高架通路が伸びており、その先の部屋の壁に別の場所へ通じる廊下が見える。その4本の通路の内、2本にアブダクターが1体ずつ通路上を行き交う形で徘徊している。

 安全を考慮するならば敵の居ないルートを選ぶのが定石……しかし、コレは被虐者向けの仮想現実ゲーム空間。

 

——アブダクターに挑んでみよう。神楽の話だと、捕獲しに来ると言っていたけど……先ずは論よりも実際に試してみる。

 

 簪はアブダクターが此方に向かって移動して来るのを見計らって螺旋階段の下から飛び出して接敵した。近くで見ると本当に大きく、女子供を傘の部分で囲い込み飲み込む事が出来そうな程の大きさだった。

 

『……ッッ‼︎』

 

 対するアブダクターも簪の存在を認めたのか傘が少し膨らみ、傘の下に伸びる長い半透明の複数の刺胞触手がザワザワと揺れ始め、傘の中から口腕と呼ばれる半透明の部位が露出する。

 

——……来る‼︎

 

 アブダクターはゆっくりと浮上し簪の攻撃が届かない高さにまで上昇する。今の簪に遠距離武器が無いので高い所に昇られると手が出せなくなる。

 

「なら……ッ⁉︎」

 

 その時、身体が痺れるかの様な感覚に襲われる。ビリビリと痺れて脚が動かず思わずその場に倒れ込んでしまう。

 

——あッ……♡ コレが麻痺の、状態異常……‼︎

 

 目の前のアブダクターに気を取られていた為、もう片方の通路にいたアブダクターが簪の背後にまで音もなく接近してその刺胞のある触手で背中を撫でられたのだ。クラゲ型のロボットと言う事でその触手には対象を『麻痺』させて動けなくする(現実の場合、痺れる程度の問題では済まない場合もある)。

 片方が囮となりもう片方で仕留めるプログラムルーチンだったのかも知れない。

 

「……く、うう」

 

——本当に身体が動かない……ちょっと摩られただけで……痺れて動けないなんて、こ、この後どうなるんだろう♡ 動けなくなった獲物に対して、される事は……‼︎

 

 身体が痺れて動けない簪に対してアブダクターはゆっくりと近づき傘を広げて上から覆い被さる。気分としては半透明の風船の中に入った様。だが、それで終わる程、甘くは無い。

 

「や、やぁ……め……♡」

 

 傘の内側からまた別の半透明の触手が音も立てずに伸びて行き簪の手足や胴体に巻き付いてゆっくりと持ち上げる。身体が痺れている為に抵抗出来ず(簪としては抵抗する気は無かったが、取り敢えず悲鳴の1つくらいは上げた)されるがままに両腕を広げられ、両足も広げられ股を開く形で緩めに拘束されると同時に持ち上げられアブダクター本体も浮上して行く、ただ最初と違うのは簪を内部に捕獲している為に広がっていた傘の部分は完全に下方で完全に閉じられ、中身が見える風船の中で獲物である簪は触手に拘束された構図となった。

 アブダクターは其の儘、このフロアから移動を開始した。此の儘、何処かへ連れ去るつもりなのだろう。

 

——こ、コレが捕獲……。本当に触手に絡め取られちゃった……♡

 

 身体が痺れている為、自身の動きは非常に鈍くなっている。絡み付いている触手も感触では強く巻き付いているので麻痺を抜きにしても自力では振り解けない。

 この時、試しにメニュー画面を開いて見る。思考1つで空間ウィンドウを開けるのでこう言う時は便利である。メニュー画面を開くといの一番に目についたのが。

 

『【麻痺】、【拘束】』

 

 と言う状態異常を示す単語だった。

 

——確か、何処かの監禁部屋か陵辱部屋に連行されるんだっけ……?

 

 神楽が言うには搾乳タンクか或いはエナミーの生体ユニット……と言う形もあるらしい。が、其処は捕獲したエナミーのランダム性によるのだろう。

 

「……ん」

 

——本音を言えばもうちょっと厳重に縛って欲しい……或いは、移動中にも責められたり……。でも、こうやってダンジョンの内部を上から見下ろすって言うのも良いかも……。でも、拘束具合が甘いから、後で感想の1つとしてヒナタさんに伝えよう。

 

 ふわふわと浮かび漂う様な動きで移動するアブダクターの中、簪はそんな事を考えていた。





 『麻痺』

 RPG系のゲームではお馴染みの状態異常。大概、電気系の攻撃で発症する上に比較的序盤で目にする。身体が痺れて動けないと言うフレーバーテキストはポケモンとかではお馴染み。一定確率で動けないとか、素早さが下がったりとか、或いはゲームによっては一切行動不能とか……効果はマチマチだが、凶悪な状態異常なのに代わりは無いだろう。


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