その頃……。
「……で、わざわざ何の用なんだ? 四十院の大将?」
一頻り罵倒の応酬を繰り広げた後、話を戻して相手の要件を尋ねる和奏。
『今度、IS学園のクラス別トーナメントがあるだろ?』
「ああ……アレね」
——各学年各クラスのクラスの代表がトーナメント方式で模擬戦をして優勝を目指す催し、だったな。イベントにも他ならないから来賓やスカウト陣も来る。上位に上がれば上がる程、各企業のスカウト陣や政府関係者に自身の自己アピールに繋がり採用に優位に働く……クラス代表は言わば平たく言っちまえばキャリア組としての採用されるかどうかの挑戦権。
クラス代表トーナメントはクラス代表同士による模擬戦である。クラス代表がそのクラスの代表としてトーナメントに参加し勝ち上がり優勝を目指す年間行事の1つ。
優勝したクラスには学園側よりデザート券が進呈される副賞もある為、各クラスに競争心を煽っているし、クラス代表ではない生徒はクラス代表に優勝を望んでいる。
「……正直、
——ものの役にも立たん。精々、肉便器程度だろうし……。
クラス代表に頼って自分達は見ているだけの雌豚に要件は無いのである。そしていざとなれば矢面になっている者達を非難して被害者面をする。呆れたクズ共である。
勿論、来賓やスカウト陣は一般生徒の成績にも目を通すがやはり篩に掛け総合成績上位の生徒のプロフィールにしか目を向けない。そして、その様子も目を向けるのだ。採用候補として。
『そう考えればお前ェらが異常なだけだ。寧ろ
通信先の声の主『四十院の大将』は衒いも無く言ってのける。人間なぞそんなモノだと宣うかの如く、断言する。同調する者も居れば裏切る者など当たり前の様に出て来るモノだと。
『個人的にゃ、レーキュや錯矢辺りなんかは裏切るのは目に見えているのに、その気配すら無ぇ……
「……余計なお世話だ。さっさと本題に入ってくれ」
『そうだな、お前らが頭が可笑しいのは今に始まった事じゃねぇ。で、そのクラス代表トーナメントにお前らも来い』
四十院グループにもIS企業が存在している。神楽の専用機はその表向きは企業製作となっている。その為、スカウト陣の来賓として行事時にIS学園に招かれる。
「はぁ? さっき言ったよな?
『別に新人見繕えとは言わねぇよ。逆に
「……何かやる気か? クラス代表トーナメントで」
『お膳立てされた舞台だけ見ても
——ははぁ、成程。
「つまり一芝居打って、その行動力を確認する。って訳か?」
『流石、察しが良いな。宵咲』
スカウト陣は生徒達の一挙一動、観察している。言動全てが採用に判断基準に繋がるからだ。それはクラス代表、代表候補生、一般生徒の枠組は関係ない。如何に代表候補生であれど不要と判断されれば解雇される。IS学園と言う監獄、不採用となればドロップアウトよりも酷い目に遭うだろう。
「……で、それは
『IS学園と日本政府、その他有力IS企業多数。後、来賓の国家政府関係者』
——嫌な民主主義だな……。
「理由は?」
『去年のIS学園の新卒採用者が使い物にならんかったから、だとよ。如何にIS操縦者
「そんな文句があるなら素直に軍学校からスカウトして来いよ……」
——ケツの青いガキに何を言っているのか、ああ……今のIS社会だと軍事的な面も出てくるわな。と言うか新人教育は各自でやれっての。まぁ、新人を教育する余裕が無いんだろうな。ああ、無情な事だ。
『中々言いおる。IS学園以外だと形態は異なるがお前らストラトス・デザイアの母体である
「…………で? 何を仕掛けるつもりで?」
『突発的襲撃事件を偽装して行い、その際の行動を視察する。と言う形式を取る。この件は既にIS学園の学園長と各来賓には通達されての極秘情報だ』
事情を知らない者達からすれば突然、正体不明の敵がIS学園に現れての襲撃事件が起きたとパニックを起こすだろう。
「……何も知らん教員とかは何とか迎撃しようと考えるわな。手元にISがあるんだし」
『だろうな。それに今回の行事では政府関係者の来賓は教員の職務態度も視察する算段になっているそうだ。そりゃあ、IS学園卒業生の評判は下から数えた方が早いから、どう言う教育をしてんだと気になるだろうな』
昨今のIS学園の卒業生の就職状況や職務態度の悲惨さは政府としても如何し難い事情の様だ。流石に日本政府も一枚岩では無い。特に野党側。
「……算段は分かった。で、誰がやるんだよ? その襲撃は」
『お前らだけどぉ?』
「はぁ⁉︎ 巫山戯てんのか、テメェ⁉︎」
——テメェ⁉︎ だから来いって言ったのか⁉︎
『なーに、ちょいとエキストラ役をやってくれりゃあ良いからさ』
「それを巫山戯ていると言っているんだ、四十院の大将」
『無論、タダとは言わねぇ。行動には対価が伴うべき、それが契約と言うモノだからな。相応の報酬を支払わせるさ』
「…………だが、やり方は此方でやらせて貰うぞ」
『ああ、構わねぇ。やり方は問わねぇよ、だが開始する際は通達しろよ?』
「……死人が出ても知らねぇからな。安全な襲撃なんてある筈が無かろう?」
——悪役ねぇ……まぁ、やっている事がやっている事だしなぁ。
『当然だ。少しは自分達がどんな世界に居るのか分からせてやれ。要件が終わりだ、じゃあ後は若い連中でイチャイチャすると良い、邪魔はせぬよ』
「おいッ⁉︎」
何とも気不味い爆弾を起爆して通信は終了した……。
「……和奏君、お話が終わったから、さぁ、選んで?」
代表同士の通信会談が終わった事を見計らいリデアが例のリモコンを和奏に差し出してきた。
「この流れでそのバイブのリモコンの話に戻されるのは無理矢理感が凄いんだけど……?」
「……ん、選んでくれないと全部、ONにしちゃうよ?」
「何故、俺はこんな訳の分からない脅しを受けているのだろうか?」
何とも言えぬまま、和奏はさっさと到着する事を願いながら時間稼ぎをする事にした。