リムジン内でリデア相手に決死の対抗を続け、何とかギリギリの所まで踏ん張り『ストラトス・デザイア』の職員用地下駐車場にまで持ち堪える事が出来た。
定例会議は何故か電脳空間フロアの仮想現実内で行う運びとなっていた。取り敢えず何処で会議しようが
それは、彼らにとって不文律だからだ。
開発フロアに件の『商品』を送った後に電脳ダイブで仮想現実空間へと進入した。
「少し見ない間に、パッチノートを多く適応したわね」
仮想現実空間のエントランスフロアに降り立つ和奏。仮想現実空間内でのアバターは『リーリス』の姿であった。当然、利用者は女性ばかりなので其処に男性が割り込むのは如何し難いと言う理由となっている。
適応されている衣装は現実と同じ白い紬に黒袴と言う出で立ち(単純に面倒くさがったと言うのもある)。
——やれやれ……彼女達は何処で集っているか。
「リーリス、お待たせ」
その時、同時にログインしたリデアがロードを終えてエントランスに到着し、声を掛けて来た。当然ながら和奏が(何度も言うが情勢都合で)女装している為に呼び方はリーリス呼びだ。
「って、貴方ねぇ……その服装で以前、終わったと言うの?」
——流石にその衣装は攻め過ぎだと思うんだが……。
「そ、そうかな?」
振り向いた時、リデアの衣装はと言うと白いウサ耳に真っ白なボディスーツに白いニーソ、そして純白のヴェールと言うホワイトバニーガール姿と言う姿だった。
「……姫舞め、何てモノを実装したのよ」
——こりゃもっと過激な衣装データを実装していても可笑しく無いな、いいや絶対している。普段からボディコンだし。
「兎は寂しいと死んじゃうし、常に発情期だって話、知ってる?」
「…………廻空から聞いているわ」
——それ、最早追い込みのレベル……‼︎
どうやら仮想現実空間でも迫ってくるつもりの様である。側から見れば百合に見えなくも無いが……。
取り敢えず、要件のある幹部連中を探す為にエントランスフロアを見て回る。
「……相変わらず『エクストリーム・ストラトス』は閑古鳥が鳴いている惨状ね」
「挑戦しても数秒で蹂躙されちゃうからね」
開始、10秒以内に戦闘不能に追い込まれる為に人気が無いのだ。難易度を下げてポイント制にしても人気が無い。
——モデルが
例えるならソシャゲで良くある課金しなきゃ到底揃わない最高レアの存在(適性)の全て揃えて挑戦する事前提の超絶的な高難度クエストに、ゴミや初期状態固定で挑まされる様なモノである。そりゃ人気出ない。
「姫舞はどう言う理屈で実装したのか……」
「単純に職員のストレス発散?」
「だとするならレーキュの奴に集中してそうね、色んな恨みで」
そんな事を話している最中、この電脳空間の目玉であるダンジョンフロアへの入場口前に差し掛かる。その近くの出店の客席にて件の要件人間達が屯していた。
「あ、ご主人様。電脳空間で会うのは久し振りね」
「やほ〜」
「いえ、数日前に会ったばかりじゃない(人の寝室に猫耳、肉球の拘束ミトン、アナル尻尾以外、全裸の姿で)」
ユリエ、ヒナタ、そしてまだ眠っているフィウの3人だ。その3人が円形のテーブルを囲って座って
「ご主人様、ちょっと聞いてよ。ヒナタが随分とまた面倒な機能を実装したのよ。全く、デバッグが大変な事になるわね」
「グローバル版の共用ダンジョンの事かしら?」
「……その件よ、その件。ただでさえクソ重いと言うのに余計にサーバー負担させる様な真似をしてくれるんだから後が大変なのよ」
そう言うユリエの隣では投影ウィンドウを開いているヒナタが考え込んでいた。何かトラブルが発生した様である。
「……ヒナタ、何かあったの?」
「うーん……。グローバル共用ダンジョンが想定外の干渉を受けているみたい……」
「想定外の干渉?」
「うん、リアルタイムでグローバル共用ダンジョンの構造データ、エナミーデータを見ているけど、β版だから事前に組んだプログラムしか無い筈なのに想定していないデータがあるの……」
管理人のヒナタが想定していないデータが混入しているとの事。つまりは、誰かが余計な真似をしていると言う事。このダンジョンフロアは同サーバー内でのオフライン仕様。関係ある端末からしか参入出来ない孤立したサーバー、つまりは内側からの介入。
「それ、ウィキリピアの悪戯じゃない?」
——100%、あの悪戯娘のやり口だろう。
「……でしょうね〜。このグローバル共用ダンジョンの事を何処かで聞いて侵入したんだと思うわ」
「既にβ版が始まっているから、今止めるのは得策じゃないわね……」
「問題無いわ、いや問題あるけど……フィウ、起きなさい」
「はい、マスター」
その時和奏の声に気付いたのか今迄、寝ていた銀髪の少女、フィウが目覚めた。金色の瞳を持った彼女は無感情で淡々とした口調で答えた。
「ちょっと、ダンジョンフロアで悪戯している
「了解しました。速やかに確保して来ます」
そう言うや否や、即座にダンジョンフロア内へと通ずる門の中へと飛び込んで行った。
「……取り敢えずコレで問題は解決するでしょう」
「そうかしらね……? 返って色々壊したりしないかしら? それよりもフィウって本当、アンタには絶対服従ね……どんな洗脳か調教をしたのよ?」
「人聞きの悪い事を言わないで……。あの子は元からあんな感じでしょ?」
「不思議ちゃんって感じだもんね〜。リーリスちゃんはああ言う子がタイプなの?」
——寝室に侵入して来た時は女豹なんだけど、アイツ。
「此処でそう言う話題は禁止。ついでに此処に来る前に余計な仕事が来たからその打ち合わせも済ませるから場所を変えるわよ」
「余計な仕事?何よ、ソレ」
「えーと、四十院グループから、なの……」
「……えー、彼処から〜? 此間、タラスクとエスタークを上げたばっかだよ〜」
「いや、別件。取り敢えず面倒な仕事よ」
その頃、ダンジョンフロア内。某所。
「つまんな〜い仕様だよ、コレ〜‼︎(/>ω<)/」
小柄な体格、小さな顔立ち、ヘイローが浮かぶ銀色の髪。その裏側たるインナーカラーは黒色の髪を両側は前は長く垂らし、後方は首元で赤紐で束ねている。
小柄な体格の割に身に纏っているのはぶかぶかと言って良い和装。両袖に至っては完全に腕を覆い尽くし裏地は宇宙の星空を彷彿させ、黒いインナーに短いスカートを履いてた。そして、裸足だった。
彼女はウィキリピア。見た目からして女児と言われても大差ない小柄な体格の少女は、空中に浮かびながら自身の周囲に複数の歪曲した球状の形状をした空間投影型のフル・カスタマイズ・キーボードを展開させた。
「む〜、こうなりゃ私が手を加えて調律しちゃえ〜‼︎(/ ̄3 ̄)/」
そう叫びながらまるで水中で魚が泳ぐかの様なアクロバティックな動きで次々とキーボードを叩いている。裸足の指先で叩き、両腕の袖で起こす風でも叩いていく。頭上にも足元にも展開し、身を仰向け、俯せ、更には逆転させて一瞬で叩き込んで行く。
その直後、縦横無尽に線が走り抜けて行き、その線で切り取られた空間がパズルの如く組み変えられて行き、その姿を変貌させて行く。
「……コレで、もっと面白いダンジョンになったかな〜?(・ω<)」