※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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 出る杭は打たれる。或いは遠ざける。


有名=回避行動

 

 

「いや、本当に弾の所に行くの久し振りだなぁ」

 

 IS学園と日本国は海上大橋のモノレールで繋げられている。そのモノレールに乗り日本国内のIS学園行きがある駅で降りる。

 

——何と言うか、IS学園に出るだけでこんなに疲れる物なのか?

 

 東京の一角、今日も今日とて多数の人間でごった返している。ただ……IS発祥の地であるが故に女尊男卑の比率が高い国の首都ともなればその侵蝕率も酷くなる。見渡す限り女性しか居らず、男性なんて者はほぼ居ない。

 そんな異様な光景を目にしても一夏は気にする素振りを見せず雑踏の中へと入って行く。目指す先は、五反田食堂のある町。

 

 

 

 

『此方、G班。不審な人間を確認。国籍はカナダ、外資系企業に勤めていた。嫉妬深い記述があった為に処分完了』

 

『此方、L班。中国籍の不審物を確認。無職で貢献性は低いと判断して処分完了』

 

『女性権利団体所属の人間を確認。男性操縦者の行動ルート上に接触する為に排除完了』

 

『死体処理班、指定ポイントに到着。速やかに処理を実行』

 

 無線から次々と不穏因子の排除完了報告が届けられる。男性操縦者の視界に入れる理由は無いので即刻、排除するのが鉄則。

 何故ならば男性操縦者の遺伝子は愚か爪垢から毛髪に至るまで構成物質全てが貴重なデータとなる。故に外的要因に奪取される訳には行かないのだ。『持ち主』が決まっておらず宙ぶらりんの状態ならば出し抜くチャンスがあると誰もが考える。例え身内(・・・・)であろうとも。

 

「了解した。此方も男性操縦者を目視で確認している。方角としては……男性操縦者濃厚接触者である五反田家跡地(・・)の様だ」

 

『如何しますか?』

 

「構わない、私が対処する。各班は引き続き任務を続行せよ」

 

 指示を出して状況を変更。赤髪を翻して冷徹に任務に当たる。それが、彼女の役割であるが故に。

 

 

 

 

 

 

 

 都会から少し離れた所にある副都心とも言える町並み。此処に来れば『帰ってきた』と言う実感が湧く。

 

「何だかんだで2、3ヶ月振りだな」

 

——試験会場でISを動かしちまった時はホテルに缶詰だったからな……。それに連絡取れず終いだったし、流石に心配するよなぁ。巌さんとか。

 

 そんな不安も一入に昔は入り浸りとも言えた友人、五反田弾の家族が経営している五反田食堂の前に到着した。

 

「あれ……?」

 

 だが、その景観は一夏にとって見慣れない物になっていた。場所は間違っていない、忘れる筈も無い。見慣れている筈の『五反田食堂』の看板は見当たらず、更にシャッターが完全に降ろされており閑散とした光景が目に飛び込んで来た。

 

「おいおい、今日は休みだったか?」

 

——だとするなら今日は休日ですって言う張り紙をする筈なんだけどな。

 

 そんな記憶があるがその張り紙すらも見当たらない。そして、生活音すら全く聞こえない。まるで空き家の様な沈黙が立ち込めている。

 

「ははは……まさか、な」

 

「其処の飲食店は2ヶ月前、2月末頃に潰れましたよ」

 

 その時、一夏に声を掛ける声が聞こえた。聞き覚えのある様な声質。振り向けばいつの間にか赤髪の少女が立っていた。黒い服を着ており近寄り難い雰囲気を持っている、だが一夏からすれば別の意味で驚愕した。

 

「ら、蘭⁉︎」

 

「……男性操縦者である貴方と私は初対面です。その蘭と言う方はご存知ありませんが、普通に人違いです」

 

——いや、似過ぎだって⁉︎ 弾の妹である五反田 蘭に‼︎

 

 五反田 蘭。五反田 弾の実妹。その人物と面影が重なって見える。だが、当人は人違いだと断言する。

 

「失礼、私は日本政府所属の代表候補生です。今回、IS学園から男性操縦者が外出するとの事で護衛する人員として駆り出されました」

 

「だ、代表候補生……?」

 

——えーと、セシリアとか神楽とかも代表候補生、だったよな?

 

 クラスメイトにイングランドと日本の代表候補生が居る。IS学園に在籍していない代表候補生も当然居る訳である。

 

「いや、それよりも護衛……?」

 

「……貴方は自分の状況を良く理解した方が良いでしょう。貴方は世界で唯一の男性操縦者、目に見える全ての人間に対して警戒しなくてはならない。なのに、貴方は余りにも無防備過ぎる。

 それが例え、目の前にいる私でも、クラスメイトでも、身内でも、それこそ家族が相手でも。

 クラスメイトとは言いますがその実、貴方が標的のハニートラップ要員、教師も油断は出来ません。それに友人だと言う人物も裏では何をしているのか完全に理解出来ますか? そして、家族。家族とは血の繋がった他人であり、裏切る事もままある物です。……完全にシロだと言える人間は何処にも居ない」

 

「え、何を言って……?」

 

 代表候補生を名乗る蘭と瓜二つの少女は淡々と告げる。

 

「……貴方の手足や内臓、眼球、脳、生殖器や精子、遺伝子や排泄物に至るまで全てが研究材料になる。貴方を構成する物質は同質量の金ですら比較にならない程の価値を持ちます。

 何処で、誰が、貴方を、売ろうとするか分からない。勿論、第三者の手に渡る事は決して許されない」

 

 何を言っているのか理解出来なかった。蘭なんじゃないかと思っていたがその実態は本人では無いとむざむざと見せつけられている様だ。

 

「……例えば其処の五反田食堂。全員が男性操縦者との濃厚接触関係者。男性操縦者の情報を故意に部外者に漏洩させ日本政府に重大な損害を与え尚且つ外患を誘致するに至った容疑……つまり外患罪、国家反逆罪及び余罪諸々で三親等、死刑となりました」

 

——な、なんだよ……それ……⁉︎

 

「う、嘘だろ⁉︎ 弾が……巌さん達がそんなアホみたいな真似する筈が無いだろ……⁉︎」

 

「既に刑は執行されました。故に死人に口無しです」

 

 淡々と冷酷に告げる代表候補生。無表情で一夏の憤りに対して歯牙にも掛けず事実だけを述べる。

 

「貴方を狙う組織は数知れず、高額の報酬をチラつかせ情報を抜き取ろうとするスパイ活動は日々活発化しています。友人だからと言う理由による漏洩で許される行為ではありません。其れ程までに貴方の存在全てが貴重品ですから」

 

「だからって、殺す必要があるのかよッ⁉︎」

 

「私に憤りを見せても何も変わりませんよ。代表候補生如きに警察権はありませんし、弁護する権限もありません。それに、男性操縦者1人を守れるのならば、多少の犠牲も止むを得ないでしょう」

 

「…………ッ‼︎」

 

 ISを得て『皆を守る』と言う誓いを立てた一夏。だが、自分を守る為に誰かが犠牲になっていた。

 

「……巫山戯る、なよ……‼︎ そんなの、間違っている‼︎」

 

「間違い……ですか。現実を受け止め切れないのも無理は無いでしょう。ですが……事実です。彼らは目先の欲に踊らされ貴方の情報を反国家勢力に横流ししてしまった。気の迷い、騙されたと言ってもその行為は罪であり重罪……故に情状酌量の余地があったとしても死刑は免れなかったでしょう。それに貴方が何を言おうとも、貴方を守る為に行われた判決です。

 それに親族では無い貴方が訴えを起こしたとしても退けられるのが目に見えています。……もう一度言いますが貴方は自分の立場をもっと良く理解した方が良いでしょう」

 

「…………ッ‼︎」

 

「これ以上、話しても貴方の気分を害するだけでしょう。私の事は理解しなくて結構です。如何言う形であれ貴方の心情を踏み躙ったのもまた事実」

 

 ぶっちゃけ、彼女に何の非は無い。ただ、五反田家の末路を語っただけだ。しかし、一夏の印象が悪くなったのもまた事実。

 

「ですので、以降は貴方の視界に入らない形でIS学園に戻るまで護衛します。勿論、不審な人間には近付かない様にお願いします。後始末が嵩みますので」

 

 代表候補生はそう告げた後、踵を返して足早に去って行った。

 

「何なんだよ……何が起こっているんだよ……⁉︎」

 

 現実から目を逸らす様に一夏は徐に連絡用のスマートフォンを取り出した電話相手は弾の他に居る友人である御手洗 数馬と言う人物。しかし……。

 

『お掛けになった電話番号は現在使われておりません』

 

「嘘、だろ……⁉︎」

 

 他にも中学校の時のクラスメイトにも電話を掛けた。しかし、その全てと連絡が取れなくなった。誰1人として、連絡が途絶えていた。

 

「何なんだよ、何が起きているんだよ……⁉︎」

 

 

 

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