「本っ当にごめんなさ〜いっ‼︎」
ダンジョンフロアから強制ログアウトされてエントラスフロアに戻って来た簪と神楽。その後、仮想現実空間から現実の世界に完全ログアウトし、ログインスーツから簡易スーツに着替え電脳空間フロアの天球儀が鎮座する部屋にて管理人であるヒナタから謝罪を受けていた。今回の不具合と言うには大規模すぎる有様だった。然もそれが身内の悪戯が原因だとすると謝り切れない心境なのだろう。
「と、トラブルと言うのは往々して起こるモノですわ、ヒナタさん……」
「む、寧ろ……あれ程の規模のクラッキングが出来る人がまだ居たなんて」
「むにむに〜(ーωー)」チョコーン
その元凶はヒナタの膝の上に座り、ヒナタに今も頬をむにむにされている小柄な体躯の少女だと聞いて別の意味で驚愕する。名前はウィキリピアでレーキュやヒナタに匹敵する程、頭が良いらしい。……代わりに論理性が欠如気味との事。然も今回のトラブルを引き起こした理由が構って欲しかったらしい。子供の悪戯にしては中々、強烈だと言えた。
「ふえん、次からはウィキリピアちゃんの事を見ておかないと……」
——目が離せないとはこう言う事を言うんだね……。悪戯の規模が災害級……。
コレがオフライン上であったのが幸い。その気になればネットワークも平然と乗っ取れる技術を持っている事の証明。つまり経済状況を改悪に追い込む事も不可能では無いだろう。
「ヒナタさん。過ぎた事を蒸し返しては仕方ありませんわ。次に活かしましょう」
一応、参加者のメディカルに不備は無かった。こう言う場合、何かしらの脳に後遺症が出かねないと言う不安もあったのだが、本当に不幸中の幸いで参加者全員に何かしらの異常は見られなかった。しかし、経過観察の為に暫くは電脳空間フロアでのダイブは見送りになる形となった。無論、簪と神楽も例外では無かった。
「うう〜、そう言ってくれてありがとう。後日で今回の件の補填を皆のユーザーデータに反映させるから」
この手の不具合やエラー等が起きれば運営から『お詫び』として課金通貨やらゲーム内アイテム等が配布されるのが通例。この電脳空間フロアでも同様の処置が行われるらしい。
「では、話を変えまして……グダグダになりましたが今回のグローバル版ダンジョンの改善点や感想をお伝えしますわ」
「あ、最初にそれ伝えてた」
神楽は今回のβ版での不満点を管理者であるヒナタに伝えた。大半が拘束内容に関するモノばかりであったが。また、簪もアブダクターの責めの内容が甘いと言う意見も同時に伝えた。
「……他にもありますがこの辺りですわね」
「うん、分かった。ユーザーの意見として参考にさせて貰うね〜」
「あら、お邪魔だったかしら?」
其処へ第三者の声が電脳空間フロアのエントランスに響く。神楽と簪がその声に釣られて振り向いた。
姿を現したのは長い茶髪の靡かせ青から紫のグラデーションの双眸(然し瞳孔が無い)、白衣に黒袴と言う和装と言う出で立ち。もう1人は白銀の長い髪で金色の双眸に白を基調とした服装をして居る。
リーリスとリデアの2人組であった。その姿を見て神楽は社交辞令らしくお辞儀をした。
「ご無沙汰しておりますわ、リーリスさん」
「ええ、四十院の所の娘ね。今回の件、ウチのチミっ子が迷惑を掛けてしまった事を申し訳なかったわ……」
「え、えっと知り合い?」
「……この方は此処、『ストラトス・デザイア』の代表のリーリスさんですわ」
——つ、つまり社長とか所長って事⁉︎
「ごきげんよう、ストラトス・デザイアの代表のリーリス・セレスティェリアよ。今回のトラブルで快適なプレイを提供出来なくて申し訳ないわ」
「い、いえ……‼︎」
代表直々の謝罪。まさかの1番上の人間が顔を出すとは全く思ってもいなかった。
——……オーラが全然違う……。1番上になると威厳が出て来るモノなのかな……。カリスマ性、とか?
「………ウィキリピアは、居るわね。少し話があるから来なさいな」
「うにーっ‼︎(/>ω<)/」
リーリスに呼ばれてヒナタの膝の上に座っていたウィキリピアが飛び降りてトテトテと走って行き、其の儘背中にしがみつきつつよじ登り肩車の形で座る。
「……この流れで言うのもアレだけど、以後この様な事が起こらない様に努めるわ。今後もストラトス・デザイアを宜しくお願いするわね。お二人様」
「はい、今後ともご利用させて頂きますわ」
「は、はい……‼︎ 私も、利用……させて貰います」
リーリスはウィキリピアを肩に乗せてリデアを引き連れて電脳空間フロアから退室して行った。
「……あ、レーキュから連絡が入ってる」
「え?」
ヒナタ近くに1枚の空間投影ウィンドウが展開される。其処の文章にはレーキュが簪の専用機体の件についての内容が記載されていた。
専用機の件はもう少し時間が掛かると考えては居たのだが予想以上に早かった。
「この後、予定ある?」
「……今日1日、電脳空間フロアのダンジョンで拘束調教三昧と言う予定でしたが、トラブルで時間が空いてしまいましたね。……私は少し考え中ですわ」
「特に予定が無ければレーキュさんの所に顔を出しては如何でしょう?」
「う、うん。そうする」
専用機の問題も解決していない。レーキュもレーキュで早めに終わらせてくれたのかも知れない。それにまだ専用機無しのままで過ごすのも気が滅入る。
「じ、じゃあ、レーキュさんの所に行ってくる」
「決まりですわね。私は機械姦フロアで残りの疼きの余韻を満喫するとしますわ」
簪が専用機の件でレーキュの居る
「うん、分かった。じゃあ、案内係の人を呼ぶからちょっとだけ待っててね」
その後、ラバーメイド服を身に纏ったユリエとヨウカクの2人が電脳空間フロアにやって来て其々、別の目的の為に案内するのであった。
「さぁてと、それじゃあ社交辞令抜きにして会議を始めるかね」
『ストラトス・デザイア』の『関係者以外立ち入り禁止』の扉の先にある『隔離フロア』内にある会議室。円卓であり外周に席があるタイプの会議室。其処で和奏を始めとした職員達が数人集まっていた。
「……和奏君。
リーリスの側に控えている秘書のリデアが欠席者の名前を通達する。幹部連中の殆どが欠席とは大丈夫なのか、この会議は?
「その連中は居ても居なくても今回は大して問題ないから一緒だ。チミっ子のトラブルが無ければ円滑に進んだがな……」
「(o・〜・o)」モシュモシュ
「あ、ウィキリピアお嬢様。口にクリームが付いています」
和奏の視線は席の1つでミソラにお世話されながらクリームを付けたスコーンを頬張るウィキリピアに向けられていた。まぁ、過ぎた事を嘆いても仕方ない。
「それで、要件のあるバーサーカー連中は何時になったら来るんだ? アイツらが居ないと話が出来ねぇんだが……。まぁ、フィウは其処で寝ているから良いとして……」
和奏の隣には机に突っ伏す形でフィウが居眠りしている。コレもまた何時もの光景。
「蔡歌は独房フロアで拘束を解錠中。サリアは拘束フロアで調教中、それからルヴィアは解体中」
リデアが和奏が今、要件がある面々の現在の状況を伝える。
「事前に通達していたのに、一体何をしているんだ……。定例会議の開催時間はとっくに過ぎているぞ」
「……何時もの様に人の話を聞いていなかっただけじゃない?」
リデアの半ば真相に近い言葉を言われて和奏は頭を抑えて呆れたのであった。
「はぁ……。今すぐに施設内放送で呼び出せ‼︎ 此方も此方で後が痞えてんだよ‼︎」
シードゥスよりも先に、蔡歌とサリアが登場しそうな件について。