「連絡事項として来週はクラス代表対抗トーナメントがあるわ。日程は追って説明するけれど、期間中はIS企業や各国政府と言った要人が来賓として来校するからIS学園の生徒として恥ずかしくない態度で望む様に」
日曜日が明けての翌日。朝のホームルームにて4組の担任教師が連絡事項としてクラス代表対抗トーナメントが行われる旨を説明する。
「まぁ、正直に言えば4組のクラス代表は更織さんだけど、専用機が無いんじゃあね……」
其処で担任は言い辛そうにそう告げる。流石に企業都合での無期限凍結で自力で組み立てようとしている為に経緯は知っているからか、余り強くは言えない。
「……なら量産機で参加するのですか?」
生徒の1人が質問する。専用機が無い以上、量産型で参加する事になるのか?と。
「それも手だけど、やはり其処は本人の意思確認が必要。と言う訳で更織さん、如何する?」
「……いえ、専用機は……完成、させました」
「「「えぇ⁉︎」」」
その言葉にクラス中が響めく。先週の金曜日時点では未完成のままであり、土日の2日間で完成させたと言われても俄かに信じ難い。
「え、ちょっと待って……⁉︎ か、完成させたって……本気で言っているの? 更織さんが土日、外泊届を出していたのは知っているけど、その期間だけで完成に漕ぎ着けるのは、無謀としか……」
「はい。ちょっと、ツテを頼って手伝って貰いました……」
簪の性格上、友人が多いとは思えない。人数を幾ら集めようと2日でほぼ0から機体を完成に持ち込むなんて無茶を通り越して不可能だ。少なくとも担任を始めとした教師もそう考えるだろうし、どんな企業でも2日で完成させろと言われても無理だと断言するだろう。
「……あり得ない。あり得ないを通り越して信じられないわ……。一体、どんなツテなのか気になるけれど、ISの製造云々は守秘義務があるから答える必要は無いわ。兎も角、専用機があるのなら正式に参加は出来るわね」
「はい」
簪がそう答えた直後、廊下に響き渡る驚愕の声が聞こえた。また、1組を始めとした『男性操縦者』絡みでトラブルでも起きたのだろうか?
「……相変わらず1組は男性操縦者云々で騒ぎが絶えないわね……。さて、脱線したけれど話を戻すわ。クラス代表対抗トーナメントはクラス代表が実際に試合に参加するけれど観客席に居る生徒達にも課題があるわ」
えー、と言う声が上がる。簪としてはこの担任はトーナメントの意味を説明しているみたいなモノだ。理解出来るか出来ないかで、生徒の未来が決まると言っても過言では無い。
「課題が如何言う内容かまでは言わない。貴方達が決める事よ、以上。ホームルームを終了して授業に入るわ」
その日の昼休憩の時間。IS学園の大食堂にて簪は神楽とばったり会う。特に理由が無いので同じ席に着いた。
「朝、騒いでいたけど何かあったの?」
「騒ぎ……。ええ、ありましたわね。何でも2組に転校生が来たのです。然も中国の代表候補生、そして勢いのままクラス代表を強奪したそうですわ」
「強奪って……」
何とも乱暴なやり方だ。しかし、このタイミングで転校生……。如何考えても男性操縦者の遺伝子やデータが狙いだと公言しているようなモノである。
「更に織斑さんの幼馴染と言う関係。……中国もこの関係性を利用しているとしか思えませんわね。……何故か織斑さんは酷く狼狽した後、安堵した事の理由が分かりませんが」
「……男性操縦者。狙う理由は沢山ある……交友関係に至る迄、全て」
「成程、既に手が打たれていた、と」
——正直、彼の事情に興味は無い。関わるつもりは毛頭無いのだから。
「それよりも、簪さん。少々お気をつけを」
「……何に?」
「お兄様……ステラお兄様がまた何か企んでいるご様子ですので。あの人が動く時、大概陸な事が起きませんわ。当日、努努気を抜かぬようにした方が宜しいかと」
「神楽のお兄さんが……?」
——神楽は四十院グループの……そうしたら兄は重役、とか?
「はい……。考え過ぎかも知れませんが、一応……忠告を、と」
「そう考えたキッカケは?」
「……今回のクラス代表対抗トーナメントを見に来る、と。それだけで勘繰ってしまいますわ」
——それだけで嫌な予感を感じさせるって相当だと思う……。神楽がそう言うのなら、そうかも知れない。
「う、うん。一応、気を付ける」
某日、某所。其処は照明が無かった。いや、過去にはあったのだが今ではその役目は果たせない。壊れてしまい使い物にならないからだ。
その場所に複数人の人間が集まっていた。年齢は10代〜20代。或いは30代以上も含まれているがそれは少数派だ。その10代と言った若年層の格好は少し異様と言えた。
「日程が分かった。間違いなく決行される」
1人の人間が告げる。
「IS企業に加えて政府の人間も必ず現れる。件の男性操縦者がいるのだ。珍生物を見たいと言う者は数知れない」
「……
暗闇の中で人影がその言葉に反応する様に蠢いた。