5月中旬。
IS学園では今年初めての来賓を招いてのイベントとなるクラス代表対抗トーナメントが実施される。
IS学園では年に何回か『トーナメント』と言った形式で実際にISに搭乗しての試合イベントが行われる。今回のクラス代表対抗トーナメントもその一環である。
今回のイベントでも多数の来賓が訪れる。有名なIS企業のスカウトマン、或いは企業上層部の人間や政府要人が来校する予定であり、将来有望そうな者を物色される事が予想される。
事、今年初め……即ち『第一印象』が決まると言っても過言では無い今回のクラス代表対抗トーナメントは非常に重要な自己アピールの場となる。1年生はまだ楽観的ではあるが、2年、3年生は本格的に採用、或いは代表候補生への昇格を賭けた重大な場面である。第一印象が悪ければ今後の人生に大きく響き最悪の場合には
今年は『男性操縦者』の存在もあり、過去最高の来賓者数が予想される。他にも異例の専用機持ちの人数もある事から、異常な年とも言える。
来賓の中には関西方面で一大財閥とも言われ、多種多様の業界に勢力を誇る四十院グループの会長や、IS学園に来校するのはもはや初とも言え、極めて高いIS技術力を誇るIS企業『ストラトス・デザイア』の代表が来校すると大きく報じられた。
双方共に、メディアと言った場に姿を見せる事は殆ど無い為に一躍話題となった。
そして、今日……。トーナメント開催当日を迎えるのだった。
IS学園の来賓様用の駐車場。其処には続々と有数のIS企業や、各国政府の要人達を乗せた高級車が来場して駐車し、企業上層部の人間や政府要人、スカウトマン達が下車しIS学園の方へと歩いていく。その最中、一際目立つ一行が見えた。来賓達もその光景に2度目する程であった。
『やれやれ、人間も集まれば煩わしいとはこの事だ。そうは思わんかね? リーリス君』
明るい茶色の長い髪を靡かせ、白衣に黒袴と言う和装の出で立ちの女性。『ストラトス・デザイア』の代表であるリーリス・セレスティェリア。
そして、その隣にら黒い長方体(リーリスはボロ缶と)にアームが付いたシンプルな構造のロボットが存在していた。
「……私としては、そのボロ缶に人間の何たるかを論ぜられる方が煩わしいと思いますが? 四十院の大将」
『ボロ缶とは何だ⁉︎ ボロ缶とは⁉︎ これは最新鋭のサイエンスとテクノロジーと血と涙と汗の集結晶であるマシーン・甲である‼︎』
そのロボットこそ『四十院グループ』の頂点に君臨する会長……と、信じる奴は居ない。如何考えても遠隔通信で本人は何処かで隠れている。外部と接触する時にこのロボットを使っているのだろう。
「はぁ……。何故、私はこんなロボットのエスコートをしなければならないのかしら?」
——理由は分かるが、釈然としねぇ。
女尊男卑の影響で男性の社会環境は深刻な状況に陥っている。首都圏に関しては政治家以外はほぼ全滅状態であり、都内は女性しか闊歩しておらず並ぶ店もほぼ女性向けの内容で占められている。10年前まであった多種多様の企業も殆ど生き残れず都内から撤退したり倒産、廃業となり駆逐されている。それでも女尊男卑思考は留まる事を知らずに進んでいる。
都内よりも深刻なのは首都圏と地方都市の境界線。即ち女尊男卑主義思想とそうで無い箇所が繋がる場所、其処では日々数多くのトラブルが乱立しており語るも無惨な光景が広がっており、侵食するかのように女尊男卑主義が広がっている……。
現に和奏はリーリスとして女装しなければ外を出歩けない状況。四十院の会長も、こうしてマシーン・甲で外部と接触を図れない。故に理由が分かる為に強く非難は出来ない。
——まぁ、その反動を俺達が利用しているのは何とも皮肉な限りだ。
「今年は男性操縦者が居ますな。さて、1ヶ月程度でどれ程の技量になったのか」
「4月と5月上旬では、基礎しか出来ないのでは?」
「何はともあれ、トーナメントで対峙した生徒には勝って頂きたいモノですな。仮にも1年以上ISに関わっているのですから。負けてしまっては話になりません」
駐車場から試合が開催されるアリーナへ向かう傍らで各国要人やスカウトマン達の談話が耳に入る。やはり、目下の話題は件の男性操縦者である。
「さて、今年の一年生で見所のある生徒は居るでしょうか?」
「此方は今年卒業した卒業生を1人、採用しましたが……見込み違いでした。期待を掛けましたが大きな損失でしたよ。まぁ、投資した分を返済して貰う為に暫く抱えますがね」
「操縦者は最近の傾向ですと余剰ですな。何せISの機体自体が限られていますから幾ら優秀な者を集めた所で活躍のしようがありません。その為、我が社では整備士に絞り込む予定ですよ」
男性操縦者への視線もあるが、それだけで終わる程、甘い選考では無い。来賓の中にはそもそもIS操縦者の採用は見送り、整備士……。ISの整備や製造に携わる人材を物色する方針の企業もいるようだ。
『ふむ。私も今回、お招きに与ったが……他企業は人材確保に余念が無いようだ』
「他所は他所、ウチはウチでしょう。他社の経営方針に首を突っ込む理由は無いでしょう?」
『まぁ、確かにそれは言えるな……。して、仕込みは如何に?』
「ええ、ご心配無く。予定通りに進む保証はありませんが、まぁ多少のアクシデントは大目に見てもらいましょう。アレでもマシな部類を選んだつもりです」
『……まぁ、病姉妹や修験者君に出しゃばれると流石に学園自体が持たないだろうな』
「褒め言葉と受け取っておきましょう。さて、どの様な形で評価を付けるかは各人に任せるとしましょう。……私としてはつまらなさ過ぎる茶番劇に過ぎませんので」
『フフフ、済まないな。本来ならリデア君やフィウ君とイチャコラしつつ絶対服従の教育プレイをしているのに、大人の我が儘に付き合って貰ってね』
「如何やら四十院の大将は今すぐに減量をご所望の様ですね。良いでしょう、木っ端微塵に粉々にして重さ1gの粉粒に転生させてあげます。良かったですね、世界で1番軽いロボットになれますよ?」
『待て待て‼︎ 早まるんじゃない‼︎ マシーン:甲は繊細なのだ‼︎ あ、ちょ待ッ⁉︎』
蒼天の下、IS学園にて甲高い高音が響き渡った。