※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

47 / 196
災肆ユディケス Ⅳ

 

 

 

 VIPルームに要人達が集い、試合開始を待つ一方。今回のクラス代表対抗トーナメントの主役たるクラス代表は控室等で試合開始の時を待っている。

 

 第一試合は1組対3組のクラス代表。その為、最初の試合の出場者は控室では無く、双方のピットにて待機する事となっていた。

 

「はぁ……初戦からいきなり専用機持ちと当たるなんて、ついていないなぁ」

 

——出来れば1組、2組、4組以外と初戦は当たりたかった。

 

 偏向重力カタパルトに固定された量産機である打鉄を見ながら対戦カードによる試合相手の表記の内容を思い出して肩を落とす。彼女は3組のクラス代表、日本人では珍しい白い髪。コレは祖父母の代が北欧系の混血であるが故の髪色だ。まぁ日本生まれである為に感性は日本人寄りと言える。

 新年度始まって初のイベントとは言え、試合結果によって成績が決まる事は理解している。ならば極力、勝ち星を得たいのが本音である。

 

 かく言う今年は1年は4人も専用機持ちが居る時点で圧倒的に不利である事は否めない。

 専用機持ちは国や企業から貸与される程のエリートである事は事実。専用機を持っていない一般生徒とは雲泥の差だ。アリーナの使用権でも隔たりがあり修練の練度も遠く及ばない。

 だからと言って性能差で諦めたく無いと言うのも本音の内だ。

 

——相手は1組の織斑 一夏君。専用機は『白式』……。初手からいきなり単一仕様能力が発現している特別仕様。その内容は恐らく織斑先生が使ったとされている『零落白夜』……一撃でも貰えば1発でアウト……。

 

 彼女は対戦相手の情報を整理する。コレもクラスメンバーからの協力で集められた情報だ。

 クラス代表対抗トーナメントと言うのは何もクラス代表や専用機持ちだけが活躍するイベントでは無い。1組の生徒は男子生徒と同じクラス故か或いは完全に浮かれているのか完全にクラス代表である一夏に任せきり、2組は中国代表候補生が強奪した所為か、関係がギクシャクしている。

 

——でも、クラス代表決定戦までは何故か剣道ばかりしていたと言う話があった。他にもアリーナの使用時間は平均1時間程……。専用機持ちなら最低でも2、3時間は使うのが普通らしい中で異例。

 

 その中で3組は企業代表やら代表候補生と言った者が居ない一般家庭出身の一般生徒だけのクラスであり、お互い協力する姿勢があった。

 クラス代表を始めとして3組は各人協力し今日までに各クラスの代表やその専用機の情報を集め、分かりやすい形に纏め、その対策を練ってきた。

 

 量産機だからと言っても汎用性を元にしている為にカスタマイズの自由度はある。

 更に2年生や3年生の協力要請を掛けて相応の仕様に仕上げ、中々取れない中でも何とか漕ぎ着けた数少ない訓練の時間を全て注ぎ込んだ。自分でも付け焼き刃程度の認識ではあるがやれるだけやって来た。

 

——確認出来た限り、織斑 一夏君の武装は雪片弐型のみ。射撃武装は確認されなかった事から恐らく飛び道具は無い筈。

 

 専用機持ちは良くも悪くも目立つ。こと、一夏は唯一の男性操縦者故に余計に目立つ。目立つと言う事はそれだけ情報が出回り易く尚且つ、対策を立てやすいと言う事に直結する。

 

——後手に回るのは危険。相手は接近戦しか出来ない想定で動くならば、此方は相手から極力距離を取り射撃武装で少しずつ削っていく作戦が無難かな。後は、ハイパーセンサーの応用を交えれば……何とかなるかも。

 

 堅実。その一言に限る。

 IS同士の試合ならば見る方としては派手で見応えのあるパフォーマンス性を求めるだろう。しかし、実際にやっている方としてはそんなエンターテイメント性をやっている余裕は無い。

 銃を持つ理由を知らないからそんな平和ボケた欲求が出るのかも知れない。

 

「良し……‼︎ 作戦は決まった。後はやるだけ……」

 

——本音を言えば射撃武装が充実しているルファールの方が良いかも知れないけど、打鉄の方が個人的に安定している。

 

『まもなく第1試合、1年1組と1年3組の試合が始まります。両者クラス代表はピットから出撃し上空でスタンバイをして下さい』

 

 アリーナ全体に響き渡る放送。そろそろ時間の様だ。

 

「心の準備は出来たかしら? 衣笠さん」

 

 ピットに足を運んできたのは3組の担任であった。担任としては自分が担当するクラスの生徒の行動は好ましく思っている。各人が自主的に動きこの日を迎えた。担任としても後は全力を尽くす様に見守るだけだ。

 

「はい」

 

 打鉄に乗り込み、3組のクラス代表である衣笠 名刀はそう答える。

 

「……貴方達は本当に良くやっていると思うわ。コレまでの貴方達の行動は正に理想の行動よ。

 さ、胡座を掻いて図に乗っている連中に1発お見舞いしてやりなさい」

 

「はい‼︎」

 

 偏向重力カタパルトが起動して、一気に加速しその機体がアリーナの上空へと飛び出した。視界が一気に明るくなった。観客席には見学の生徒達、VIPルームには来賓の者達が見える。

 

——落ち着いて……作戦通りにすれば、きっと勝てる……‼︎

 

 暫くするともう片方のピットから白い機体『白式』に搭乗した織斑 一夏が飛び出して来た。IS学園での試合はアナウンスが始まってから行われる。

 

『クラス代表対抗戦、第1試合。開始‼︎』

 

 試合開始のアナウンスと共にブザーが鳴り響く。同時に両者が動いた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉおおお‼︎‼︎」

 

——やはり、特攻‼︎

 

 半ば予想通りの展開だと歯噛み。一夏は零落白夜の煌めきの残光を引きながら急加速して突撃、対する名刀は後退し距離を取りつつサブマシンガンの弾丸をばら撒く。

 

「くっ‼︎」

 

——やっぱり、実際に動きながら撃つと腕の反動が大きい……‼︎ ISのバランサーがあるとは言え……まだ慣れてないのは明らかに不利‼︎ この状態で銃弾を当てる……。結構、厳しいかも知れない。

 

 脳内での行動と実際の行動は違う。銃弾の弾道はブレており何発かは有らぬ方向に飛んでいる。サブマシンガンはブレが激しい様だ。

 

——此処は距離を取る‼︎

 

 零落白夜相手に接近戦は危険。故にスラスターを蒸して一夏から距離を取る。当然、その後を追う一夏。接近を許せば負けだ。

 

——逃げてばかりじゃ居られない。次の手‼︎

 

 少し観察したが一夏は基本的に直進の移動しかして居ない。ならばと考えた名刀は拡張領域に入れて居た手榴弾を展開し、安全ピンを外して投げ付ける。

 

「ッ‼︎」

 

 ぶつかった衝撃かシールドエネルギーのバリアに接触した影響か即起爆。当然、コレで倒せるなら世話ないが爆発故に怯んだ為に距離は取れた。直ぐに別の銃火器に換装して構える。

 

—— 一般生徒でも射撃場なら何時でも使用出来る。ISの訓練は限られるけどそれ以外の訓練は決して無駄じゃない‼︎

 

 取り出した武装は対物スナイパーライフル。個人的にはサブマシンガンやアサルトライフルよりも使いやすかった。

 チャンスは1回切り、爆風が晴れる前に半ば勘に頼り発砲した。撃鉄の音が響き、観客席から驚きの声が上がったのが聞こえた。

 

——命中、した……‼︎

 

「くっ‼︎ 此の儘、やられるかッ‼︎」

 

——し、瞬時加速ッ⁉︎

 

 次に驚いたのは名刀だった。一夏はISの操縦技術の1つである瞬時加速で一気に間合いを詰めて来たのだ。距離は既に肉薄間近。この距離では離脱には間に合わない。

 

「応えろ、白式ィィィィィィィィ‼︎‼︎」

 

 瞬時加速で肉薄、振り上げられた雪片弐型は零落白夜の煌めきを纏っており、直撃すれば敗北は免れない。だが、名刀はまだ諦めなかった。

 咄嗟に取り出したのは閃光弾。スタングレネードと呼ばれる非殺傷武器。それを、その場で起爆させた。

 

「「「⁉︎」」」

 

「ぐわぁぁぁぁぁ⁉︎ め、目がッ⁉︎」

 

 突如、アリーナ全体に閃光が眩いた。突然の強烈な閃光は至近距離で浴びた一夏は元より観客席の者達も遠目であるがダイナミックに観戦する為に拡大する為の空間投影ディスプレイが観客席近くで展開されていた為にその閃光をモロに浴びた。

 

「ど、どうよ……?」

 

——分かって居たから目を瞑ったけど、それでも目がチカチカする……でも、織斑君は武器を大上段で構えて咄嗟に目を覆う事が出来なかったから直撃は避けられない。

 

 名刀は起爆の際に自動落下してアリーナの地面に墜落、激突する形で下へと離脱。落下衝撃、閃光弾の至近距離での燃焼でシールドエネルギーが削られたが一撃敗北よりは遥かにマシだ。

 

「くっ……め、目が痛ぇ……‼︎」

 

 ハイパーセンサーで強化され彼の声が聞こえる。相手が体勢を立て直す前に此方も立て直さないと行けない。起き上がって浮上し再び距離を取る。

 

——落下したこの際だから今の内に仕込んでおこう。

 

 名刀は起き上がり上空へと飛び上がる前にアリーナの適当な位置にあるモノを投げておいた。今回の3組に協力してくれた整備科の生徒が戯れに近い形で造ったモノ。IS同士の戦闘では役に立たないって言われたが使えるモノは使わないと行けないのが実情だ。

 

「……クソ、正々堂々戦えよ⁉︎」

 

 一夏は右手で目を覆いながらそう吠える。無論、そんな戯言に構うつもりは一切、無い。

 

——彼がまだ目が眩んでいる内に、勝負を決める‼︎

 

 判断は一瞬、名刀は小型の空間投影ディスプレイを起動して『起爆』の項目に触れた。その直後、アリーナに白い煙幕が噴き上がり始め視界を白い煙で覆われ始める。範囲としてはアリーナの4分の1程度ではあるが、距離関係的に一夏と名刀の位置を覆う位の範囲はあった。

 名刀が先程、投げ付けたのは遠隔操作式で起動するスモーク弾。視界を白い煙で覆う煙幕であった。

 

——ISにはハイパーセンサーがあり、常時他のISの位置を捕捉する。だから煙幕や遮蔽物に隠れても位置は直ぐにバレる。

 だけど、それは搭乗者の視界(・・)が確保されてなければ意味は無い‼︎

 

 その位置も空間投影ディスプレイに表示される。……その表示を見る事が出来なければ、無意味。考えた末にその隙間を突いた活用の方法が生み出された。

 

——さようなら。

 

 煙幕の影響下では射撃武装は非常に使い難いとされている。そもそも標的が視認出来ず、誤射を起こす可能性が高い。だが、ISのハイパーセンサーで位置は捕捉出来る。

 名刀は再び対物スナイパーライフルを構えて一夏へと狙いを定める。フラフラと動いて居るがその動きなら狙える。

 

「ッ‼︎」

 

 ガァンと言う撃鉄の音が響き……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了‼︎ 勝者、3組代表。衣笠 名刀‼︎』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。