「…………」
第1アリーナの選手控え室。其処で簪は第2、第3試合の実況映像を眺めていた。時刻的には第3試合が終了した直後。次は4組対6組による第4試合……つまり自分の番であった。
「すー……はー……」
——落ち着いて……。私でも、出来る。
第1試合。1組と3組との試合。専用機と量産機との試合だったが、生徒達の予想とは裏腹な試合展開となった。
3組代表は閃光弾(試合後、千冬から注意を受けた)、スモーク弾と言った小道具を駆使して1組代表である一夏を撹乱し、ISが持つ機能の抜け穴を突いて、勝利を収めた。
初戦、然もVIP達が注目している『世界初の男性操縦者』を破った無名の生徒の情報は瞬く間にVIP席へと浸透した。
素人とは言え専用機持ち相手に無名の生徒が勝利を収めた……。当然ながらアリーナは興奮に沸いた。3組一同は歓喜し3組担任は誰も見ていない所でガッツポーズを取った程。対する1組は初戦敗退との事で落胆のムードが漂っていた(理由は副賞のデザートフリーパスの希望が潰えたから)。
そんな思わぬ展開で始まったクラス代表対抗トーナメント。第2試合は2組と8組との試合……。第1試合の様に量産機を駆る8組代表生徒が喰い下がり剰え勝利を専用機持ちである2組代表から奪い取るのかと思われたが、相手は性格に難があれど僅か1年で代表候補生となった努力の者。2組代表の牙城を崩す事は叶わず、機体の性能差によって呆気なく敗退。2組の勝利となった。
続いて第3試合は両者共に量産機による試合。今年は1年生の専用機持ちが多い為に特異的に見えるが大体は量産機同士の試合になる。此方では普通に試合が進み、5組の勝利となった。
『続きまして第4試合。4組と6組との試合となります。各クラス代表はピットへと向かってください』
アリーナ放送にて、次の試合が始まる旨が通達される。次は自分の番、簪はベンチから立ち上がり控え室を出てピットへと向かう。
——……行こう。『打鉄レイ式』。
専用機が完成した際、スペックデータ、書類と共に名称も学園に通達する必要がある。その時に簪は『打鉄レイ式』と表記して提出した。本来ならば『打鉄隷式』と表記するべきだったが流石に大衆の目に『隷』と言う文字はマズいと考えたからである。
実践訓練……と言うには期間は短過ぎるが神楽の協力で数は熟して来た。後は力を示すだけである。
——まだマルチロックオン・システムは未完成……。だけど、私はやれる。
ピットから勢いよく飛び出し、指定された位置にて待機する。相手は量産機で奇しくも打鉄であった。
量産型の打鉄と、発展系で高速機動を是とする打鉄隷式と言う対戦カードとなった。
『クラス代表対抗戦、第4試合。開始‼︎』
試合開始のアナウンスと共にブザーが鳴り響く。同時に両者が動いた。
「へぇ、アレが
所変わりVIP席。
最後列の席にてリーリスは周囲の来賓達が試合を見ながら生徒達の成績等やパーソナルデータを見比べて忙しなく観戦している光景を尻目に退屈そうにトーナメントの試合を見ていた。
——第1試合は上手くやったな、と言う印象だ。今年の1年は出来が違うようだな。
来賓達も無名の生徒が勝利を捥ぎ取るとは予想外だっただろう。既に何人かのスカウトマンが検討の余地を視野に入れて優先順位を調整しているだろう。其方の話はさておき、現在はこの前『ストラトス・デザイア』に来た更織 簪の試合である。
『ふむ……あのお嬢さんは、動きが良いな』
「腐っても代表候補生ですからね。こんな公の場で無名の生徒相手に醜態を晒せば干されるでしょうから」
6組代表は日本刀型のブレード、対する簪は薙刀の武装で斬り結んで居る。高機動型である為に機動力では簪の方が上手だ。
リーリスの予想では簪の勝利と見ている。そうでなければ簪の未来は潰え、『
機動力を生かして接近、後退を繰り返して相手のペースを握らせない戦い方をしている。あの戦い方は
それも作戦の1つだ。手札がバレると言う事は対策される。如何に専用機の性能が良くても対策されれば糸口を掴まれる。第1試合が良い例だ。
第2試合は2組代表が転校して直後で情報が乏しかったから対策しようが無かった。簪もまた情報を開示せずに初戦を突破したい腹つもりなのだろうか。
「量産機を駆る者として機動力で劣る上に練度差もある。嫌な戦い方でしょうね」
『ヒット&ウェイ。戦術としては正当だ。相手よりも機動力が上だからこそ出来る戦術だ』
6組代表としては焦りが出て来る頃合。得物のリーチ差もある上に此の儘では負けると判断したのか距離を詰めて接近戦を仕掛けた。
「……ほう」
正面から突撃する6組代表を見て簪は動いた。自身の脇付近に新たに2門の砲塔
「成程、焦らさせたのね。必殺の一撃を確実に当てる為に」
続いて簪の後背に聳える8連装のミサイルポッド、6基の射出口が展開されミサイルの弾頭が顔を覗かせる。
その直後、凄まじい音を立てながら次々とミサイルが射出され至近距離から爆撃の嵐を浴びせた。立て続けに巻き起こる爆裂に装甲やシールドバリアも関係無しに破砕されて行く。
『……なんと言うか、エゲツない真似をするお嬢さんだ』
「ウチの職員に比べたら可愛い方だと思うわね」
そんな感想を漏らすと同時にあちこちの装甲が砕かれシールドバリアもほぼ全損し、絶対防御が展開された状態で鎖の拘束から解放された6組代表がアリーナの地表へと墜落。4組の勝利を告げるアナウンスで第4試合は幕を降ろした。
「さぁてと……それじゃあ、そろそろ楽しい楽しい『茶番劇』を始めましょうか。各国来賓、各スカウトマンの皆々様方」
リーリスは無言で席を立ち上がりVIP席の前、大型の展望ガラスの前に赴きそう言い放つ。その言葉を聞いた来賓達はリーリスの言葉に耳を傾ける。コレから起こる事は既に示し合わされた『茶番劇』。
「『茶番劇』の開幕は準決勝第1試合。
襲来者は我が社の職員4名。少々、気が触れておりますので襲撃を受けた生徒から死人が出るやも知れませんね。
この度の『茶番劇』を持って……皆様方、IS学園の学生達に対してどうぞ冷徹なるご評価を」
IS学園、某所。
「あ、来た。えーと準決勝中に始めろ、だって」
襲撃者4名を見ているリデアがリーリスから連絡を受け取っていた。
「……その、ジュンケッショウって時に殺せば良いんですか?」
ルヴィアがそう質問して来る。
「うん。そう、やり方は皆のやり方に任せるから、好きな所で暴れて大丈夫。あ、でも流石に和奏君が居るVIPルームに行っちゃダメ。後で怒られちゃう」
「あくまでIS学園が標的って訳だね〜。うん、分かった〜。あ、サリアさん達が固まって虐殺するよりもバラバラに分かれて殺った方が良いんじゃないかな〜?」
「同時襲撃による対応力を測る意図も作れるから、良いかも知れないわ。私は賛成ね」
サリアの意見に蔡歌は同意した。と言うよりもルヴィアと一緒に行動すれば暴力に巻き込まれる。
「うにーっ(/・ω・)/」
「ウィキちゃん? そう、分かったわ、アリーナはウィキちゃんに任せましょうか。私はインフラを破壊しに掛かるわね」
その場で各々が何処を狙うのか決めた。開幕はトーナメントの準決勝の最中。まず間違いなくパニックになるであろう事が予想される……。
「……さてと、どう言う結末になるかな。最も、IS学園としては散々な目に遭うと思うけれど」