——これは一体、如何言う状況だって言うの⁉︎
学年別クラス代表対抗トーナメント準決勝。2組対3組の試合に突如、アリーナ全体を覆うバリアシールドを
多数の歪んだ楽器を模した正に舞台装置を彷彿させるISを纏った幼女が突如として現れて、3組代表の名刀と2組代表の鈴音の試合に割り込んで来た。
『衣笠‼︎ 凰‼︎ 未確認ISの存在が闖入して来た‼︎ 速やかに撤退しろと言いたい所なのだが、事態は深刻だ……‼︎ 戦闘教員の部隊を投入したいがまだ準備が出来ない上に各出入り口がロックされ尚且つ、既に観客席に別の侵入者が現れて深刻な被害が出ている‼︎』
管制塔から千冬による公開通信が寄せられる。侵入者は複数、しかもバラバラでありアリーナに現れた舞台装置のISの幼女に加えて観客席にも既に侵入されていると言う状況だった。
『本来ならば、生徒であるお前達……。特に衣笠は専用機持ちでは無い衣笠には言いたくは無いが、教員部隊が投入出来るまで時間を稼いでくれ……‼︎ 決し』
突如として通信が切れてしまう。その最中でも戦闘は止まってはくれない。状況を把握した鈴音は率先として、名刀は困惑し試合では無い戦闘に尻込みしつつも不法侵入して来た幼女へと戦いを挑ん……だ。
——何で……‼︎
頭部の耳元スレスレを斬撃が掠る。直撃すればシールドバリアで損傷は免れても衝撃で失明はあり得る。故にIS同士の試合でも故意に頭部を狙うのはルール違反だとされている。
——如何して……⁉︎
突然、身体が衝撃を受けて後方に吹き飛びアリーナ全体を覆うバリアシールドに後面から激突して電撃が弾ける音と衝撃が身体を襲ってくる。明らかに機体の動きが鈍くなっている。
「何故、今、貴方と戦わなければならないんですかッ⁉︎
叩き付けられたバリアシールドから蹌踉めきつつ離れた名刀は上空に浮遊し、その主武装である双天牙月の刃を向けている鈴音へと叫んだ。
「何って……。アンタを
虚な目のまま、訳の分からない事を宣っている……。まるで操り人形みたいだ……。
そして、その後方、更に上部の空に舞台装置の様なISを纏う幼女が指揮棒を持って振っていた。
——彼女が指揮棒を取り出して指揮者様に振るった直後、クラシックのオーケストラの様な音楽が鳴り響いた。
名刀は自身の駆る打鉄の直線型ブレードを構え直してこの状況を考察する。
——舞台装置のISを纏う彼女は攻撃はしなかった。けど、凰さんと2人がかりで攻撃してもあのISのシールドバリアを破る事は出来なかった。
最初は自分達が攻勢を仕掛けた。しかし、彼女は涼しい顔でシールドバリアを持って悠々と受け流していた。
事態が急変したのは、彼女、ウィキリピアが指揮棒を量子変換し展開した時だった。
『演奏開始』
ウィキリピアが指揮棒を振るい始め、歪んだ楽器類から音が吐き出されクラシックを彷彿させる音楽がアリーナ全体に響き渡った。その直後、隣で共闘していた鈴音がいきなり名刀へと襲い掛かって来た。
『早い所、首チョンパしてくたばって墓標の下で歌ってなさい』
いきなり理解出来ない事を言い始めながら侵入者及び緊急事態の真っ只中だと言うのに試合の続きだと言わんばかりに鈴音が斬りかかり、固有武装たる『衝撃砲』と呼ばれる圧縮空気による不可視の砲弾でアリーナのバリアシールドに叩きつけられる様に吹き飛ばされ、今に至っている。
——明らかにこのオーケストラ音楽が流れ始めた時に、凰さんが可笑しくなった。……操られている?洗脳?……そんなアニメみたいな展開は冗談だけにして欲しい。
その時、ハッと意識を戻してその場から離脱する様に回避。元いた場所では何かが激闘した際の衝撃音と風圧が視界外から肌へ感覚として伝わってくる。先程、受けた衝撃砲の砲撃だ。立て続けに喰らうのは危険だ。
「ミジンコみたいに漂ってみる?でも、キリンの様に逆立ちしても意味ないわよ」
——位置取り的にあの舞台装置のISを護衛する様な形だ……。あの侵入して来た人を如何にかしなきゃいけないのに、先に凰さんを何とかしなければいけないなんて……‼︎
相手は仮にも代表候補生の上に第三世代機と言う専用機持ちな上に僅か一年で並居る他の候補生候補を蹴散らして代表候補生になった努力の天才。一般人である名刀からすれば雲の上の様な存在……。明らかに深刻なレベルで不利な状況だった。
バゴォンと言う音が鳴り響く。それはIS学園のインフラの1つである配電盤が破壊される音だった。鈍器の様な物で殴られ集計路は大きく凹み、電線が断裂して火花が散っている。
「さて、この辺りのインフラは殆ど破壊したわね〜」
IS学園はオール電化やエネルギー讃歌の環境である。各施設の扉も自動ドア並で動くし掲示板も電光……つまり、インフラが破壊されるとあらゆるシステムがダウンし、各種扉も破壊以外に突破は不可能となる。
——今頃、ウィキちゃんとルヴィアちゃん辺りが大暴れしている頃合でしょうね〜。
拘束衣の様な服装をした彼女、蔡歌はモーニングスターの鉄塊部分を引き摺りながら、電力が失われ暗くなった廊下を歩いて行く。廊下の床、壁際には何かしらトラブルが発生した時用の、避難ランプが点灯している為に真っ暗闇とは言わないが暗い事には変わりは無い。
「……あら?」
その足取りは途中で止まる。蔡歌の視界の先、廊下の中央に陣取る様な人影が見えたからだ。
「拘束衣にモーニングスター……。今時にこんなふざけた格好の侵入者は生まれて初めて聞いたわ……」
——巫山戯た格好……。酷い、お姉さん傷付く……。
襲撃に加えてインフラに不備が出た事に不審を抱き此処に現れた人物は蔡歌の姿を見て若干、呆れを見せる。まぁ、普段から拘束衣を身に纏っている者を見れば確かにそう思う。
「アリーナでは侵入者2名に加えてIS学園のインフラ破壊……。随分と組織だった襲撃ね?」
——……日本政府の
蔡歌の目の前に現れたのはIS学園生徒会長兼ロシア連邦国家代表兼日本政府暗部更識家当主の更識 楯無であった。
「……一応、聞いてあげるけど目的は何? 噂の男性操縦者かしら?」
「違うと言ったら?」
「ま、答えてくれると思っていないわ。……インフラ破壊、アリーナに襲撃。他にも侵入者は居そうね……‼︎ 兎も角、IS学園の生徒会長として対処させて貰うわッ‼︎」
楯無は緊急事態であるが故に生身の人間相手にISを展開する事に躊躇いは無かった。暗部の人間である以上、相手がどんな存在であれ躊躇する訳には行かないからだ。
ISが纏うエネルギーの発光により暗い廊下が少し明るくなる。楯無の専用機『霧纏の淑女』のアーマースカートは水のヴェールに覆われ、循環するかの如く水流が靡く。
「ふぅん? じゃあお姉さんも少し頑張っちゃおうかしら?」
その光景を見て蔡歌はモーニングスターを一度、振り上げ、足元に鉄塊部分を落としてそう告げる。その視線は拘束衣を着せられた囚人の目では無い。……絶対零度を彷彿させる冷徹な目であった。
「貴方達の目的、1から100までキッチリ吐いてもらうわ」
楯無は主武装であるガトリングガン搭載の螺旋槍である蒼流旋を構えて一気呵成に攻勢を仕掛けた。生身の上に拘束衣の侵入者、唯の人間では無いと言う警鐘が楯無の中で響き渡っていたからだ。